「杉原千畝 スギハラチウネ」
第2次世界大戦直前、リトニアに赴任していた外交官・杉原千畝は、ドイツ占領下の
ポーランドからリトニアに逃れてきたユダヤ難民にビザを発給し、6000人もの命を救
ったといわれ、「日本のシンドラー」と呼ばれた彼の半生を描いた作品です。
監督はアメリカ人の父と日系アメリカ人の母の間に日本で生まれたチェリン・グラッグ
で、彼はハリウッドと日本の双方で数々の大作に携わってきている人で、手馴れた演
出ぶりを見せてくれます。俳優陣は唐沢寿明をはじめ、小雪、濱田岳、小日向文世に
ポーランドの俳優たちが出演、ポーランドロケも効果を上げています。
杉原千畝は堪能な語学と豊富な知識を駆使し、諜報外交官として世界各国で諜報活
動に携わったところからスタート、1939年にリトアニアの日本領事館に赴任するまでは、
自ら構築した一大諜報網をもって世界情勢を分析、日本に情報を送り続けていたの
でスパイ物語です。
後半が日本政府の命令に背いてナチスに迫害されたユダヤ難民に日本通過のビザ
を発給した話になります。結果的にやや中途半端な展開に終わらせないようにし、ど
ちらかに視点を集中した方がもっと面白いか、感動的な作品になったと惜しまれます。
いずれにしても本国外務省内部の状況説明が省略されているので、それが物語全体
を弱くしています。
「独裁者と小さな孫」
各国の映画祭で称賛され話題になった作品で、クーデターで地位を追われた独裁者
と幼い孫の逃亡の旅を描いたヒューマンドラマです。監督は祖国イランを離れ、ヨーロ
ッパで亡命生活を続けている「カンダハール」のモフセン・マフマルバフの最新作で、
平和への想いや未来への希望を込めて製作したと伝わってきています。日本では昨
年東京での映画祭に「プレジデント」のタイトルで上映され、観客賞を受賞しています
が、やっと一般公開されましたので期待して見ました。
それなりに面白かったし、子役も自然の演技で微笑ましいのですが、思ったほど全体
的に物語の深みが欠けていて、挿話にも最後までキッチリ描かれていないところがあ
り、私としては今一歩だなと少々不満が残りました。