今日もまずまずの天気。
この時期、梅雨入りまでが、1年でも一番いいシーズンかもしれない。
佐藤信さん編集の古代史本は、ずっと読んできた。
今回は、古代史に限らず、世界遺産という切り口での編集。
著者は、ばらばらだから、各遺産によって、書きぶりが異なるが、逆に面白いし、世界遺産の紹介本としてはオーソドックスではない章にも、新鮮さを感じた。
ここで取り上げられているのは、日本の世界遺産全てではなく、歴史や、文化に関連する世界遺産のみ。
取り上げられている世界遺産には、一部のものも多いが、全て行っている。
佐渡島の金山も申請予定として取り上げられているが、ここには行ったことがないので、近い内に訪れたい。
本書で、発見したこと、思い出したことをちょっと箇条書き。
そもそも世界遺産は、変遷はあるものの、ユネスコの定めた基準に基づいて選定されるため、日本の世界遺産をつなげても、日本の地理、歴史がカバーされるものではないことに留意が必要だ。
宗像・沖ノ島の章では、宗教的な意義について語られるが、当時、神郡といい、その郡からの収入を神社のものとする制度があったそうで、伊勢神宮、安房神社、出雲大社、宗像神社、鹿島神宮、香取神宮、日前宮(和歌山)の7社が対象であったという。日前宮にはまだ訪れたことがないので、早い内にお参りしたい。
福津市に宗像氏の営んだ墳墓群があり、新原・奴山古墳群と呼ばれているそうで、ここも訪れたことがないので、近くに行く機会があったら、是非立ち寄りたい。
法隆寺の柱に見られるエンタシス状のふくらみは、ギリシャの影響と理解していたが、「他人の空似」と否定されてしまった。
間をつなぐ地域・時代に同様の建築技術がないという。
確かに。
奈良の平城京は、木造建築によって当時の姿を伝えている例がない点と、山と森が一体となる景観が保全されている例がない点が極めて貴重という。
これも、言われてみればその通りで、それが、我々が憧れを感じる理由だろう。
遷都により、その後の開発から取り残されたことで、残されたのだが。
京都も多くの寺社がある中で、選ばれた寺社が世界遺産の対象になっているが、その切り口は、首都・宗教建築・庭園という。
確かに、基準を設けないと、選定対象に切りがなくなってしまう。
紀伊山地の霊場については、仏教が日本独自の発展を見せた点と、カバー範囲が広大なところが特徴。
世界遺産の申請する中で、微調整が行われた。
富士山の指定経緯もユニーク。
自然遺産で申請したところ、通らず、文化遺産で申請し、通ったことは有名。
元々、自然遺産と文化遺産の両方の価値を持つ遺産は多いのだが、選定チームが異なるため、合わせ技が難しい。
その中で、文化遺産を前面に出したことが効を奏したが、自然遺産としての価値も大きいことは当然理解されている。
長くなってきたので、端折るが、琉球王国の城(グスク)群については、まず、沖縄の江戸時代までの歴史を理解する必要がある。
考えてみれば、ほとんど知らなかった。
日光の社寺については、頼朝、家康が、深く信仰したことにより、その価値が大きく高まった。
雄大な自然と相まって、すばらしい世界遺産となった。
広島の平和公園には、もともとセントルイスにあるような巨大なゲートがデザインされたそうだ。
建築が難しく、今の慰霊碑になったとのことだが、ずっといい。
禍転じて福となすの典型か。
明治の近代遺産については、当初薩長地域が対象だったが、範囲が全国に広げられた。
たぶん調子に乗った安倍政権への忖度が働いたのではないだろうか。
その後の議論で、日本全国に対象範囲が広げられ、東亜細亜に、産業革命が一気に導入された特異性を理由に、選定された。
合掌造りについては、事前に地元に相談がなく、寝耳に水の認定だったとのこと。
確かに、行った時も、団体客の扱いに苦労している様子だった。
ただ、この景観が残されたのは、ごく一部で、移築されたものも、ほとんど維持できず、取り壊されてしまったという。
富岡製糸場の話も面白かった。
製糸に近代的な手法を導入した好事例として認識していたが、この製法が必ずしも、どこにでも通じるベストな方法ではなく、富岡製糸場でも試行錯誤を続けたし、他の地域では、他の製法を用いたりもしたそうだ。
三井G→原財閥→片倉工業と引き継がれたことも知った。
片倉工業は、一企業でありながら、当時の姿を維持した意義は極めて大きい。
まだまだ書いておきたいことがあったが、この辺で。
日本の歴史、日本の世界遺産に興味のある方には、絶好の書。
この時期、梅雨入りまでが、1年でも一番いいシーズンかもしれない。
佐藤信さん編集の古代史本は、ずっと読んできた。
今回は、古代史に限らず、世界遺産という切り口での編集。
著者は、ばらばらだから、各遺産によって、書きぶりが異なるが、逆に面白いし、世界遺産の紹介本としてはオーソドックスではない章にも、新鮮さを感じた。
ここで取り上げられているのは、日本の世界遺産全てではなく、歴史や、文化に関連する世界遺産のみ。
取り上げられている世界遺産には、一部のものも多いが、全て行っている。
佐渡島の金山も申請予定として取り上げられているが、ここには行ったことがないので、近い内に訪れたい。
本書で、発見したこと、思い出したことをちょっと箇条書き。
そもそも世界遺産は、変遷はあるものの、ユネスコの定めた基準に基づいて選定されるため、日本の世界遺産をつなげても、日本の地理、歴史がカバーされるものではないことに留意が必要だ。
宗像・沖ノ島の章では、宗教的な意義について語られるが、当時、神郡といい、その郡からの収入を神社のものとする制度があったそうで、伊勢神宮、安房神社、出雲大社、宗像神社、鹿島神宮、香取神宮、日前宮(和歌山)の7社が対象であったという。日前宮にはまだ訪れたことがないので、早い内にお参りしたい。
福津市に宗像氏の営んだ墳墓群があり、新原・奴山古墳群と呼ばれているそうで、ここも訪れたことがないので、近くに行く機会があったら、是非立ち寄りたい。
法隆寺の柱に見られるエンタシス状のふくらみは、ギリシャの影響と理解していたが、「他人の空似」と否定されてしまった。
間をつなぐ地域・時代に同様の建築技術がないという。
確かに。
奈良の平城京は、木造建築によって当時の姿を伝えている例がない点と、山と森が一体となる景観が保全されている例がない点が極めて貴重という。
これも、言われてみればその通りで、それが、我々が憧れを感じる理由だろう。
遷都により、その後の開発から取り残されたことで、残されたのだが。
京都も多くの寺社がある中で、選ばれた寺社が世界遺産の対象になっているが、その切り口は、首都・宗教建築・庭園という。
確かに、基準を設けないと、選定対象に切りがなくなってしまう。
紀伊山地の霊場については、仏教が日本独自の発展を見せた点と、カバー範囲が広大なところが特徴。
世界遺産の申請する中で、微調整が行われた。
富士山の指定経緯もユニーク。
自然遺産で申請したところ、通らず、文化遺産で申請し、通ったことは有名。
元々、自然遺産と文化遺産の両方の価値を持つ遺産は多いのだが、選定チームが異なるため、合わせ技が難しい。
その中で、文化遺産を前面に出したことが効を奏したが、自然遺産としての価値も大きいことは当然理解されている。
長くなってきたので、端折るが、琉球王国の城(グスク)群については、まず、沖縄の江戸時代までの歴史を理解する必要がある。
考えてみれば、ほとんど知らなかった。
日光の社寺については、頼朝、家康が、深く信仰したことにより、その価値が大きく高まった。
雄大な自然と相まって、すばらしい世界遺産となった。
広島の平和公園には、もともとセントルイスにあるような巨大なゲートがデザインされたそうだ。
建築が難しく、今の慰霊碑になったとのことだが、ずっといい。
禍転じて福となすの典型か。
明治の近代遺産については、当初薩長地域が対象だったが、範囲が全国に広げられた。
たぶん調子に乗った安倍政権への忖度が働いたのではないだろうか。
その後の議論で、日本全国に対象範囲が広げられ、東亜細亜に、産業革命が一気に導入された特異性を理由に、選定された。
合掌造りについては、事前に地元に相談がなく、寝耳に水の認定だったとのこと。
確かに、行った時も、団体客の扱いに苦労している様子だった。
ただ、この景観が残されたのは、ごく一部で、移築されたものも、ほとんど維持できず、取り壊されてしまったという。
富岡製糸場の話も面白かった。
製糸に近代的な手法を導入した好事例として認識していたが、この製法が必ずしも、どこにでも通じるベストな方法ではなく、富岡製糸場でも試行錯誤を続けたし、他の地域では、他の製法を用いたりもしたそうだ。
三井G→原財閥→片倉工業と引き継がれたことも知った。
片倉工業は、一企業でありながら、当時の姿を維持した意義は極めて大きい。
まだまだ書いておきたいことがあったが、この辺で。
日本の歴史、日本の世界遺産に興味のある方には、絶好の書。