kametaro爺さんのよもやま話(ペイント画を含む)

日常の生活の中で、主に気付いたことやしたことをまとめておきたい。また、ブログにアップしたい

小林喜多二・蟹工船(3/3)・・・・柏シルバーAクラス講義

2009-03-15 06:16:32 | 柏シルバー大学院

林多喜二の上京について・・・中野重治作

小林多喜二に会ってみて、その印象のチグハクなのに、私はおどろいた。全くの意外といっていいくらいであった。それまでの小林の一字も消し後のない原稿の端正な書体や、写真で見た面長の貴公子然たる風貌や、小樽高商での銀行員ということなのだから、私は長身で色白の美男子と想像していたのである。

ところが実際の小林多喜二と名乗る男は、色こそ白いが痩せた小男で、出目に近い目、やや厚めの唇を田舎者然とだらしなくあけて、がさつな嗄れ声で話す。田舎弁丸出しである。それに高級銀行員で、銀行で小説を書いているようなゴシップまで伝わっていいほどなのに、そのご当人は古ぼけた焦げ茶の洋服を着て、股にツギのあったズボンを穿いていたのだった。何か一杯食わされたような感じで、何もわざわざと、そん/恰好をして来なくてもよさそうなんものだ、とさえ思ったほどである。

「東京に住んだらどうかね」との問いに、「オレみたいな田舎者は、東京へ出てきたらダメになる。東京日は、おっかなくて・・・」と歯の欠けた大きく口を開けて、笑った。

本当に飾り気のない、田舎者丸出しの人柄であった。

講義を聴いていて、労働運動に一生を捧げ、挙句の果て、拷問で死去、大変気の毒な一生であったように思える。今日の社会であれば、全くの自由で、こんな一生を送らなくてもと・・・・。これも歴史の中の1ページか。

また。景気が回復されると忘れゆく小説家か。時勢によって購読者の変化の小説とともいえるのか??。