3-9 新歌舞伎の流行
明治から大正にかけて、「狂言作者(きょうげんさくしゃ)」とよばれる歌舞伎専門作者ではなく、欧米の演劇や小説の影響を受けた外部の作者による作品が、近代的な演技・演出法に基づいて上演されるようになりました。理由として、外部の人々が歌舞伎に関わりやすくなったことや、有力な狂言作者が育たなかったことなどが挙げられます。
これらの外部の作者による作品は、それ以前のものと区別して「新歌舞伎」とよばれます。代表的な作家としては、坪内逍遥(つぼうちしょうよう)・岡本綺堂(おかもときどう)・真山青果(まやませいか)・長谷川伸(はせがわしん)などが挙げられます。
大正から昭和初期にかけての古典歌舞伎の演目も継承され演じられた。
歌舞伎の作品や演技・演出の多様性は、観客の立場から見れば「間口」、つまり「入り口」の広さに通じます。観客が興味を持つための「きっかけ」が、多く存在するということです。一般的に歌舞伎とは、「現代人が分からない言葉で演じられている」とイメージしがちですが、それは多様な作品の中の一部に過ぎません。さまざまな作品に触れることで、歌舞伎の新しい一面を見つけられるはずです。