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エンゼルスへ

 「松井、エンゼルスと1年6億で合意間近か」
という見出しを見たのは、携帯のサイト「ワールドベースボール」上でだった。目覚めて間もない時だったので、「本当かな?」と半信半疑だったが、それから少しして喫茶店で同じサイトを覗いたところ、
 「松井、エンゼルスと1年契約で合意」
と断定口調になっていた。
「松井、エンゼルスに決まったんだって」
と妻に呟きながら、詳しく記事を読んでみた。
「エンゼルスが、ヤンキースからフリーエージェント(FA)になっている松井秀喜外野手と1年契約で基本合意した。14日、AP通信など複数の米メディアが伝えた。
 身体検査を経て正式発表される見通しで、年棒は今季の推定1300万ドル(約11憶500万円)から約半分の650万ドル(約5億5250万円)になるとみられる。
 35歳の松井は4年契約の最終年だった今季、主に指名打者で142に試合に出場して28本塁打、90打点。ワールドシリーズでは3本塁打の活躍で9年ぶりの世界一に貢献し、最優秀選手(MVP)に選ばれた。 
 FAとなっても、ヤンキース残留を希望していたが、ひざに不安を抱えていることなどから、ヤンキースとの契約交渉は進展していないとみられていた。
 松井は巨人時代の10年間でMVP、本塁打王、打点王を各3度ずつ獲得、2003年のヤンキース入団後も主軸打者として勝負強さを発揮したが、06年以降は左手首の骨折や両ひざの故障に苦しんでいた。ヤンキース7年間の成績は916試合出場、140本塁打、597打点で打率2割9分2厘。
 エンゼルスは3年連続地区優勝の強豪で、イチロー外野手の所属するマリナーズと同じア・リーグ西地区の球団」
コンパクトにまとめられていて、これ以上なにも付け加えることがないくらいの見事な記事だと思った。ヤンキースのGMのつれない発言が度々クローズアップされていたが、結局はヤンキースと再契約をするものだと思い込んでいた私にはまさに寝耳に水の出来事だった。だが、
「ジーターと敵になるのは辛いなあ・・」
とすぐに思ったものの、それ以上の感想はあまり浮かんでこなかった・・。
 あの歴史的なワールドシリーズが終わり、その余韻が徐々に冷め始めるのと同時に、私の松井に対する思いも次第に薄くなり始めた。FAとなり来季の所属球団がどこになるのか分からなくなっても、本当のことを言えば、どうでもよかった。この7年間、松井がチャンピオンリングを手に入れることだけを願い、ただひたすら応援してきた私の願いがかなってしまった時点で、私と松井の物語はフィナーレを迎えたという気さえしていた。映画や小説だったら、そこで幕を閉じればいいのだから、気楽なものだが、現実の世界は間断なく続いて行く。歓喜の渦の中にいつまでも身を委ねているわけにはいかない。私には私の生活がある。もうそろそろ松井から離れた生活を送ってもいいかな、となかなか移籍先の決まらない松井の去就を横目で見ながら、私の松井離れは静かに進行して行った・・。
 だからなのだろう、「エンゼルス移籍決定」のニュースが大して私の心に動揺を与えなかったのは・・。
「赤い帽子やアンダーシャツは松井に似合わないよなあ」 
上のニュースを読んでも、そんな下世話な感想しか浮かんでこなかったのだから寂しいものだ。
 松井を応援するのに大義名分など必要がないのは十分わかっている。「松井が好きだから応援するのみ」というゴジ健さんの声も十分に聞こえる。だが、私の松井に対する情熱は、MVPを取った瞬間に頂点を極め、一気に昇華してしまったような気がする。ブスブスと燃え滓が残っているのならまた火を熾すこともできよう。だが、完全に燃焼し尽くしてしまったものは、また燃え上げようとしても無理な話ではないだろうか・・。
 私はメジャーに移籍して何事かをなそうと必死でもがいている松井を見て、応援しようと心に誓った。それ以来、何事もなせずに必死でもがき続けた松井をずっと応援してきた。だが、何事かを成し遂げてしまった今の松井には私の応援などもう必要ではないだろうと思えて仕方ないし、「エンゼルス・松井を応援して行こう!」という熱い思いも湧きあがってこない・・。

 だが、来年4月、エンゼルスのユニフォームを着た松井を見たとき、私の心がどう動くかは、今の私には予測がつかない。松井が苦しみながら私に再び応援を求めてきたら・・、その時は何を差し置いても応援するに決まっているが、果たしてそんなことが起るだろうか・・。

 

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