見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

唐美人の枕/唐三彩と古代のやきもの(静嘉堂文庫美術館)

2009-07-10 00:01:00 | 行ったもの(美術館・見仏)
静嘉堂文庫美術館 『唐三彩と古代のやきもの』(2009年5月30日~7月26日)

 前半は漢代とそれ以前の灰陶や緑釉のやきものが中心、後半は華やかな唐三彩を取り集めた展覧会。前半で目を引いたのは、上記サイトにも画像のある、後漢~西晋時代の加彩武人。いまもイスラム教徒がかぶるような、頭頂部の平たい帽子をかぶり、どんぐり眼の武人が、片膝をついて身構える。全く類例が思い浮かばない。→※参考:考古用語辞典「加彩武人」(誰がつくっているのだか、こんなサイトがあるんだなあ)。

 後半の三彩馬、三彩駱駝、神将などは、本場中国でもなかなか見られないような大型品ぞろい。加彩魌頭(一対)も逸品である(そうか、時代によって形式の異なる鎮墓獣のうち、唐代の作を特に魌頭と呼ぶのか)。上掲の辞典には「西安周辺の初唐の王侯墓出土品とみてまず間違いのないところだろう」とある。うーん、正確な出土先が分からなくなってしまったのは、今となっては、もったいない。

 小品では「三彩鴨形容器」2点がよかった。長い首を伸ばしたものと、首を背中に埋めて毛づくろいするポーズのものとがあり、特に後者は、どことなく間の抜けた顔つきが愛らしい。これも上掲の辞典によれば、「1935年のロンドンの『大中国美術展』にバロン・岩崎所蔵として出品され、世界でもっとも魅力ある唐三彩として知られているものである」由。まあ、西洋人ってカモ好きだものな。

 私がいちばん印象に残ったのは、4点のやきものの枕である。いずれも掌におさまるくらいの大きさで、厚切り羊羹のような、愛想のない直方体だった。三彩印花文1点のほかは、「絞胎(こうたい)」という作り(異なる色の土の板を、重ねて叩き伸ばしたもので形を作り、表面に縞模様を表す方法~大阪市立東洋陶磁美術館)である。シックで飽きの来ないマーブル模様は、いかにも実用品を思わせる。果たして唐の宮廷で、どのような佳人が髷を横たえたのか。日本の和歌文学でも「枕」といえば、人知れぬ恋を知るものとして詠まれたことを思い合わせて、想像を誘われた。

我が恋を 人知るらめや しきたへの 枕のみこそ 知らば知るらめ(古今504)
→評釈と鑑賞(古今和歌集の部屋

 追補。ロビーに飾られた、彫刻家・新海竹太郎(本展の展示品の一部の旧蔵者)に関する情報もお見逃しなく。空豆みたいな似顔絵の所蔵印がかわいい。
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