見もの・読みもの日記

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巡回展の憂鬱/道教の美術(三井記念美術館)その2

2009-07-14 23:49:30 | 読んだもの(書籍)
三井記念美術館 特別展『知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」-道教の神々と星の信仰-』(2009年7月11日~9月6日)

 上記のサイトに上がっている出品目録(総点数180点)を見て、これは大規模な展覧会だなと思った。「展示替を6回予定しております」という告知にはひっくり返りそうになったが、やむを得ないか、と思って許した。6回は無理としても、3回くらいは通ってもいいという気持ちだった。さて、会場を見た感想は別稿に譲り、ここでは、展示図録『道教の美術』(斎藤龍一編集・構成、読売新聞大阪本社/大阪市立美術館、2009)について語りたい。

 一目見て、あまりの厚さに呆然とした。400頁超。うち、カラー図版が300頁ほど。それでも、パラパラと中をめくったとき、写真が小さい!という不満を感じた。1ページに2~3点、写真を詰め込んだページが多いのである。何せ、掲載作品数は400点以上だから、こうでもしなければ全部を紹介し切れなかったのだろう。詰め込みに詰め込んで、2,500円。ポップなソフトカバーの表紙も私好み。この「安っぽさ」と「お得感」が「道教」かもしれない、なんて思った。

 この展覧会、私は「こんなところに、こんなものが!」と驚く作品がものすごく多かった。彫像では、徳川美術館の黄金製の『伏羲像』(011)、京大人文研の銅鋳金の『道教尊立像』(079)。絵画では、京都・萬福寺の『関聖帝君像』(魁偉なこまわりくんみたい~)(309)、神戸市立博物館の『関羽像』(洋風画タッチの関羽!)(314)、滋賀・宝厳寺(竹生島)の『北斗九星図』(垂髪・白い羽衣姿の星の精が7人)など。また、「これってどこ?」という寺社の名前も多くて、資料発掘のご苦労に、頭が下がる思いがした。

 拾い読みしている巻末解説によれば、別述した『正統道蔵』が、もとは九州豊後佐伯藩の領主が購入所蔵していたものであるとか、福井・瀧谷寺(たきだんじ)に伝わる『天之図』(室町時代。キトラ古墳を除き、日本最古の星図)が、越前朝倉氏から寄進されたものであるとか、資料の由来が分かると、さらに興味が増す。

 それはよいのだが、困ったこともある。同展は、東京の三井記念美術館のあと、大阪市立美術館長崎歴史文化博物館を巡回する予定だが、巻末の目録を見たら、東京では見られない作品がすごく多いのである。掲載作品400余点のうち、3会場共通で展示されるものは、ざっと数えたところ、60点弱しかない。ええ~こんなの、巡回展じゃないだろ…。

 先だって『国宝・三井寺展』で注目した『鎮宅霊符神像』とその類似品も、図録には5点も収録されているのに、東京で見られるのが1点だけなんて、悲しすぎる。展示替えどころの騒ぎではない。東京・大阪・長崎の3会場をまわって初めて、「道教の美術」を見たと言えるということか。ただいま、煩悶中。
コメント
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