「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

モーツァルト・ピアノソナタの競演~その2~

2019年11月16日 | 音楽談義

前々回からの続きです。

毎日いろんな音楽のジャンルを聴いているがクラシック音楽となると、なるべく午前中に集中して聴くようにしている。

お粗末な脳内の独自のフィルターがせめて新鮮なうちにという目論見だが今回の試聴で、はたして功を奏するかな(笑)。



ヘブラー女史、ピリス女史、そしてグールドの偉大なピアニストたちを前にすると、まるでエヴェレストの最高峰を仰ぎ見ているような気がする。

ピアノソナタすべてを聴くのは時間がいくらあっても足りないので一曲に絞った。

大好きな「第14番のハ短調(K・457)の二楽章」でいこう。

聴いた順番は次のとおり。

1 ヘブラー女史の1960年代盤

2 同じくヘブラー女史の1980年代盤

3 ピリス女史

4 グールド

40分ほどかけて一通り聴かせてもらったが、楽譜を読めない素人が大家の演奏を聴いてせいぜい言えることは、技術的な話を云々するよりも心情的に心を揺り動かされるかどうかだけですよね(笑)。

ちなみに、昭和の評論の世界で一時代を画した小林秀雄さんの作品に
「美を求める心」というのがあって、正式に音楽教育を受けたことのない音楽愛好家にとって実に心強いことが書かれてある。

「極端に言えば、絵や音楽を解るとか解らないとかいうのがもう間違っているのです。絵は目で見て楽しむものだ、音楽は耳で聴いて感動するものだ。頭で解るとか解らないとかいうべき筋合いのものではありますまい。まづ何を措いても見ることです、聴くことです。」

都合のいいときに都合のいい言葉だけを引っ張り出して、自己の主張を正当化する「ご都合主義」は筆者だけが持つ特権なのでどうか許してほしい(笑)。

それはさておき、まず、注目すべきは各自の演奏時間だった。

1 7分54秒 2 7分46秒 3 7分28秒 4 12分10秒

グールドだけメチャ長い!

もうこうなると、一人だけ浮き上がってしまい、まったく異質の音楽になっているが、それにもかかわらずストーリーがあり、しっかりした句読点があって全体的にドラマティックというのだろうか、一番切なく胸に迫ってくるのもグールドだった。

久しぶりに聴いたが思わず目頭が熱くなった。いやあ、素晴らしい!

もちろんヘブラー女史もピリス女史も飛びっきりの演奏だと思うが、ちょっと次元が違う印象を持った。

なお、ヘブラー女史の1は「デッカ」レーベルだが原盤は「フィリップス」のアナログ録音で、2は「デンオン」のデジタル録音だった。

どちらが音が良いかといえば2だし、さらに演奏の方も若さよりも年の功というのかコクがある気がしたので総合的には1よりも2に軍配を上げたくなる。

さらに、ヘブラー女史とピリス女史の違いだが、「何も足さない、何も引かない」モーツァルトの素顔をそのまま描き出すのがヘブラー女史で、センス抜群のニュアンスを込めてうまく音楽的な演出をしてくるのがピリスだった。

もう、どちらが良いとか悪いとかは埒外で、あとはミューズの女神に判断してもらうしかない(笑)。

以上でピアノソナタの試聴は終わり。

次の試聴ポイントは歌劇「マクベス」のCD盤とUHQCD(ウルトラ・ハイ・クオリティ)盤の聴き比べ。

ピアノのときと違って今度はシステムを代えた。

DAコンバーター側で「176.4KHz」でアップサンプリングし、プリアンプは真空管式、パワーアンプは「6098シングル」、スピーカーは「ウェストミンスター」(改)。

歌劇の比較試聴では録音状態の優劣が実に分かりやすかった。

全体的な音の輝きが段違いとでもいうのだろうか、ボーカル、ホールトーンの響き、金管楽器の咆哮などにおいて断然「UHQCD」の方が上だった。とにかく音が一塊にならずに分解して聴こえるのだ。

たったCD盤の材質が違うだけでこれほどの差がつくことに心の底から驚いた!

近年流行りのハイレゾもいいが、CDだってもっとやるべきことがあるのではなかろうか、とさえ思わせた。

最後の試聴ポイントは「ブルックナー」の交響曲全集。

アバド、ベーム、マゼール、メータ、ショルティ、そしてシュタインといった有名どころの指揮者がズラリといったところだが、この中では「ホルスト・シュタイン」が一番好きなので、2番と6番を聴かせてもらった。

送り主の「M」さんによると「DECCA」の録音が素晴らしいとのことだったが、まったく同感だった。

いつぞやのブログにも記したように「DECCA」レーベルの録音でハズれた試しがないが今回もそうだった。

あの「水増しされた音楽」とも酷評されるブルックナーがとても音が良く鳴り響いてくれてちっとも退屈感を覚えないのである!

「録音さえよければどんな曲目でも楽しんで聴ける」というのは新発見だった。

それにクラシック音楽の最たる楽しみの一つはオーケストラの重厚で豊かなスケール感に尽きるというのも新発見でしたよ(笑)。

Mさん、貴重な名盤の試聴機会を与えていただき、たいへんありがとうございました。

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