「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~「音楽界のバッハ=文学界のドストエフスキー」

2010年12月31日 | 音楽談義

最近のテレビ番組は(NHKを除いて)あまりお金をかけないで手軽に済まそうとする傾向が目立つように思う。

たとえば、是非は別としてクイズ番組やお笑い番組などがやたらに多くなった気がするのもそう。

その大きな一環だと思うがTBSが製作したドラマ「JINー仁ー」は昨年の11月頃に放映されて大好評を博したが、この全10話をそっくりこの27日~28日にかけて2日間ゴールデンアワー〔19時~23時)に再放映したのには驚いた。

明らかに時流に乗った安上がりの「手抜き」事例ともいえるが、見方を変えるとよほどの自信作ということなんだろう。しかし、つい、娘と一緒にず~っと観てしまったがやはり面白かった。

さて、そこで今日は大晦日。

つい前置きが長くなってしまったが、自分もそれにあやかって、今年1年間の投稿の中からアクセスが比較的多かった「ブログ」をそっくり掲載させてもらうことにしたものの、いずれも再読に耐えない「駄作」ぞろいで選考に一苦労。

結局、以下のとおりになりましたが”あしからず”~。

長年、混迷の度を深めてきたオーディオ装置の改善もどうやら一段落し、今年あたりはこれまでやや敬遠してきたバッハの音楽に深入りしてみようかというのが年頭でのひそかな目標。

そこで、少しでも耳に馴染ませるため正月早々クルマのCDチェンジャーに「マタイ受難曲」を入れて運転しながら聴くことおよそ3週間あまり、果たして途中経過やいかに。

それが結構いい線をいっているのである。

随所に現れる清らかな、ホントに心を洗われるような美しい”調べ”にジンとくることがしばしば。運転中なのに~。

これは明らかに耳に馴染んできた証拠でなかなかいい徴候!

自宅のオーディオ装置で正対しながら聴くといかにも退屈でかた苦しい限りの音楽が随分と身近になる。

「ながら聴き」の効用というのはホントにバカにならない。こうして「マタイ受難曲」にめどがたつとさらに欲が出てきて、つい先日には、湯布院のA永さん宅に勝手に押しかけてバッハのもうひとつの代表曲「ミサ曲ロ短調」
(リヒター、コープマン指揮の2セット)をお借りしてきた。

そのうち「マタイ受難曲」と入れ替えてこれもクルマに収納しようと思っているが、どうやら今年の目標に対して少しばかり明かりが見えてきた感じ。

しかし、つらつら考えるのにクラシック歴およそ40年にもなるのに、モーツァルトやベートーヴェンの音楽はスット胸に入ってくるのに
バッハの音楽はどうしてこうも時間がかかって”てこずる”
ものなのか。

おそらく自分だけかもしれないが、同じクラシックの中でも異質というか孤高というか、ひときわ高い山を感じる。

こう書いてきてふと思ったのが、バッハとドストエフスキーとは似たような存在ではなかろうかということ。

「音楽界のバッハ=文学界のドストエフスキー」。

もちろん、自分の勝手な思い込みに過ぎないが両者ともにその分野で絶対的な存在感を誇り、何回もの試聴、精読に耐えうる内容とともに後世に与えた影響も計り知れない。

片や「音楽の父」、片や「20世紀以降の文学はすべてドストエフスキーの肩に乗っている」(加賀乙彦氏)と称されるほど。

さて、こういう”ややっこしい”バッハの音楽についてモーツァルトの音楽と比較することで分かりやすく解説してくれた本がある。

「モーツァルト 二つの顔」〔講談社刊)
 

                

著者の磯山雅氏(1946~)はバッハ研究を第一とし、モーツァルトの音楽を愛される学識経験者。

本書の第9章
「モーツァルトとバッハ」で、イメージ的な私見とわざわざことわった上で両者の音楽の本質的な違いについて、独自の考察が展開されている。

以下、要約。

 モーツァルトのダンディズム

バッハは真面目かつ常に正攻法で誠実に問題に対処する。一方、モーツァルトは深刻さが嫌いで茶化すのが大好き。

問題をシリアスに捉えてはいるのだがそう見られるのを好まないダンディズムがある。

 神と対峙するバッハ

バッハの音楽には厳然たる存在の神が確立されており、音楽を通じて問いかけ、呼びかけ、懺悔し、帰依している。「マタイ受難曲」には神の慈愛が流れ出てくるような錯覚を抱く。

モーツァルトにはこうした形での神の観念が確立していない。その音楽の本質は飛翔であり、疾走である。神的というより霊的と呼んだ方がよく、善の霊、悪の霊が倫理的規範を超えて戯れ迅速に入れ替わるのがモーツァルトの世界。

以上、「ごもっとも」という以外の言葉を持ち合わせないほどの的確なご指摘だと思うが、バッハの音楽はどちらかといえば精神的に”タフ”な人向きといえそうで、これはドストエフスキーの文学にしてもしかり。

道理で、両者ともに自分のような”ヤワ”な人間を簡単に受け付けてくれないはずだとイヤでも納得。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオ談義~「うれしい悲鳴」~

2010年12月29日 | オーディオ談義

ときどき山っ気が出る困った性格だが、最近も「掘り出し物」ねらいの冒険心」を起こしてオークションに挑戦し、RCAケーブルを3ペアほど購入してみた。

もちろん、「ビンボー人」なのでそれほど懐が痛まない範囲での買い物だがケーブルを購入したのは久しぶり~。

果たして「安物買いの銭(ぜに)失い」にならなければいいのだが・・。


     

左から順にケーブルの銘柄を記すと次のとおり。(オークションのタイトルどおり記載)

 「Siltech G5」

☆ 「Linn analogue interconnect」

 「BELDEN最高位83322Eケーブル16AWG」

試聴用システムは「WE300Bシングル」(モノ×2)でSPは「アキシオム80」で中高域専用。

試聴盤は「モーツァルトのヴァイオリン協奏曲4番第二楽章」(演奏:グルミュオー 指揮:コリン・デービス)。

この演奏はかなり再生が難しいとされていてヴァイオリンの音色がポイント。「アキシオム80」の高域が上ずってキンキン聴こえるかどうかですぐに判断がつく。

ただし、もちろんアウトになっても決して性能が悪いということではなくて、我が家の装置と「相性」が悪かったというだけなので「誤解」なきように。

「Siltech G5」はこの中で一番低価格でまったくの当てずっぽうで購入したのだが、ヴァイオリンの音色がキンキン聴こえてたいへん相性が悪かった。即、お蔵入り。

次に「Linn」は同じものを既に持っていて音の傾向は熟知しているので安心して聴けたが、やや線が細い印象を受けた。決して悪くはないのだが、やや決め手に欠ける。この程度なら現在使っているケーブルを替える必要はない。

3番目の「BELDEN」はオーディオ仲間のMさんご推奨のメーカー。Mさんから「○○万円もするケーブルも、実は素材にBELDEN製を使ってたなんて話があるよ」と記憶の片隅に残っていたので、つい乗り気になって購入したもの。

出品者は、かなり”こだわりのある方”のようで、「商品を発送しました」の連絡に次のようなコメントが付いていた。

「当ケーブルの特性上、数時間エージングしていただきますと本領を発揮してまいります。大体、5時間ほどで音が変わってくるかと存じますのでエージングの後、音のご判断をいただくとよろしいかと存じます。完全にエージングが完了するのには、数日はいるかもしれませんが、それでも音はすこぶる良いかと思いますのでお気に入りいただけますと幸いでございます」

通常、オークションの場合、商品の代金振り込みと受け渡しが済むと、それで「ハイ、サヨウナラ」とお互いの「縁」がスッパリと切れるのだが、この方は商品の性能に並々ならぬ自信と執着を持っておられるご様子。

たいへん面白い!

こういう”こだわりの製品”にはつい、こちらも身を入れて聴きたくなる。

そして、その試聴結果は・・・。

それが非常にいいのである!

ヴァイオリンの音色がキンキンすることもなく、クセのない素直で澄んだ音が爽やかに空間を漂う。しかも、まだエージングも済んでいないのに・・・・。

まったく値段に見合わない音。

現在使っているPADのケーブル1ペアでこの「BELDEN」を10ペア以上購入できる勘定になるが、中高域用にはこれで充分で
「いやあ、これだから冒険はしてみるものだ」と思わず”うれしい悲鳴”。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオ談義~「耳寄りな情報」~

2010年12月27日 | オーディオ談義

24日〔金)の夜のこと、奈良県のMさんからメールが届いた。

題して
「年末、クリーニングしました」。以下引用させてもらいます。


世間では年末の大掃除でしょうが、今日は年末オーディオクリーニングをしました。

そのトリガー〔引き金)は、書店の立ち読みで、クリーニング剤のお薦めがあったことです。

「アクリサンデー」という研磨剤です。アクリルを研磨するのですからソフトな研磨剤と思われ、
さっそく近所のホームセンターへ・・・アクリル板売り場にありました。100CC入りで458円です。

オーディオ業界ならこれが4,580円となるでしょう!
  
さっそく真空管の足からはじめてみました・・・これがなかなかものです!綿棒が真っ黒になりました。

本では、無水アルコールで研磨剤を除去とありましたが、愛用のCRCエレクトロニック・クリーナーで研磨剤を除去しました。

 
騙されたと思って、是非試してみてください。
 
追伸:ブログ(「世界で一番売れている薬」)興味深く拝読しました。一番のネックは発ガン性の疑いが払拭できなかったのが・・・。

追伸の件だが該当ブログで「遠藤 章」博士〔当時、三共)が世界で一番早く「スタチン」を発見したのになぜノーベル賞が取れなかったのか、結末が「尻切れトンボ」に終わっていたのがやや気になっていたところだが、きちんとフォローしていただいた。感謝!

結局、「三共が発ガンの危険性あり〔後で誤判断と判明)として手を引いたのを、アメリカのメルク社が膨大な実験で発ガンの危険性無しとして開発に成功」というわけ。

それはともかく、研磨剤の話に戻る。

真空管アンプの自作をされる程のメカに詳しいMさんのご推薦とあれば間違いなし。

そういえば、ずっと以前のことだがMさんに「簡単に音をよくする工夫はないものですかね?」と質問したところ
「それは真空管の足をクリーニングすることです」というお答えがあったのを思い出した。

翌日(土曜日)の午前中に近くの量販店に足を運んで、広い店内の中、店員さんが「アクリル板」コーナーまで案内してくれた。

「あった、あった」しかし、値段は468円なり。「あれっ、奈良県よりも10円高いぞ!」「まあ、いいか」。

          

さあ、早速昼食後にクリーニング開始。まず無難なところで2A3の真空管アンプから。

まあ、汚れが落ちるは、落ちるは・・・。見る見るうちに真っ白の綿棒が灰~黒色に変わっていく。

コツが分かったところで、いよいよ本丸のWE300B(’50年代)真空管アンプへ移る。

出力菅、整流管、初段管(12AT7)それぞれ2本づつ。

小さな真空管はピンの間隔が狭いので赤ん坊用のしっかり結束した綿棒を使ってやる。

         

左がその綿棒で、右側が普通の綿棒。とにかく次から次に汚れが落ちるのでじつに気持ちがいい。

予備のPX25真空管アンプが済むと、次はいよいよ機器同士を結ぶ
RCAケーブルの端子をクリーニング。真空管よりもむしろこちらのほうが効果があるかもしれないと思うほど汚れている。

その結果、次のように綿棒の残骸の山が・・・。

          

すべてクリーニング終了後に早速スイッチを入れて試聴したところ、雑音が皆無、余分な付帯音が無くなって随分とスッキリした音になった。ボリュームが従来よりも3dbほど少なくて済むのには驚いた。

まさか、こんなに変わるとは効果絶大!

最後に念のため手順を記しておこう。

 容器をよく振る

 蓋を外し裏返して容器にし、溶液を適量注ぐ

 綿棒を適度に浸して濡らし、ピンや端子の金属部分を磨く

 無水アルコールで拭き上げて研磨剤をきれいに除去

 柔らかい布で磨いて仕上げる

以上で終わり~。

真空管アンプ愛好家は是非お試しあれ!


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番組視聴コーナー~歌劇「ドン・ジョバンニ」(モーツァルト)~

2010年12月25日 | 番組視聴コーナー

いきなりの話だが、本日〔25日)の深夜23時からモーツァルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」が放映される。

と     き   2010年12月25日(土)23時~

チャンネル   NHKハイビジョン「プレミアムシアター」

曲    目   歌劇「ドン・ジョバンニ
」(モーツァルト作曲)


指    揮   フルトベングラー

管 弦 楽    ウィーン・フィルハーモニー

加えて「ハイビジョン・リマスター版」とあるので、これはもうたまらない番組。この録画を逃すとおそらく一生後悔することになるだろう。

モーツァルトは35年の生涯で600曲以上の作品があるが、自身が「オペラ大好き人間」だったので真骨頂を発揮しているのは何といってもオペラ。

そのうちでも最終的にいわゆる三大オペラと称されているのが「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」(年代順)。

そのうち自分が大好きだったのが「魔笛」。三十代半ばの頃から入れあげてしまい、とうとうCD、DVD合わせて44セットもの違う演奏を購入してしまったほどの熱中ぶり。

それからおよそ30年、「魔笛」もいいが最近では「ドン・ジョバンニ」も甲乙つけがたいほどの作品だと思うようになった。

「魔笛」はおとぎ話の世界の中で「天馬空を駆ける」ような”さわやかさ”と”物悲しさ”が全編を覆っているのが特色だが、「ドン・ジョバンニ」は現実的な物語で人間の生の感情をふんだんに漂わせたドラマ。

「ドラマティックなストーリー」と「人間の感情」と「音楽」が見事に一体化していて、近年ではあらゆるオペラの中でこれこそ「究極のオペラ」ではないかと思うようになった。

現在、手元には4人の指揮者のCD〔3枚組)がある。

☆ ヨーゼフ・クリップス指揮〔ウィ-ン・フィル)

☆ ダニエル・バレンボイム(ベルリン・フィル)

☆ リッカルド・ムーティ(ウィーン・フィル)

☆ ウィルヘルム・フルトベングラー(ウィーン・フィル)

このうちダントツの演奏(と思う)なのはもちろんフルトベングラー。(クリップスが次に来る。)

      

1953年のザルツブルグ音楽祭の実況録音なのでモノラルだが、そういう録音の悪さなんかまるで吹き飛ばすような緊張感と迫力にあふれた演奏。

「フルトベングラーの真価はライブ演奏によってこそ初めて発揮される」ことにいやがうえにも頷かされる。

今回の番組は1954年のザルブルグ音楽祭での記録映画で1953年盤と配役がほぼ同一だが、ドナ・エルヴィラ役がシュワルツコップからデラ・カーザに
変更されている。

CDと違って映像つきのオペラ、しかもハイビジョン・リマスターによって画像、録音の装いも新たに放映されるのだからその期待の程が分かっていただけようか。

それにフルトベングラーの演奏の後には何と「トスカニーニ」指揮によるワーグナーの音楽も予定されている。

自分は23時~3時10分の番組終了まで念を入れて2台の機器で録画することにしているが、現時点で「ドン・ジョバンニ」に興味のない方もこの番組だけは是非、録画されることをお薦めする。

最高のオペラ〔音楽)と最高の演奏がそろった番組は生涯のうちでもそうあることではない。


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

健康コーナー~「世界で一番売れている薬」~

2010年12月23日 | 健康コーナー

11月中旬の頃のことだった。

市役所からいきなり受診券(「メタボ検診」)が送られてきたので、重い腰を上げて罹りつけの医療機関で血液検査をしたところ、HDL(善玉)は無事パスしたものの「LDLコレステロール」〔悪玉)が基準値をかなりオーバー。

日頃からこまめに「食事」と「運動」に気を配っているものの、医師に言わせるとどうやら「本人の体質」によるものらしい。

すぐにコレステロールを下げる「クレストール」という薬を4週間分処方してくれた。

薬は副作用があるのでなるべく使わないようにしているが仕方なく毎日1錠服用しだしてからおよそ1ヶ月、以前と比べて随分と体が軽くなったような気がする。

それに真夜中に目が覚めてブログを投稿してからまた眠るという不健全な習慣がずっと続いていたが、これがピタリと止んで、一気に8時間ほどぶっ通しで眠れるようになった。

「この薬は相性がよさそう」と思う中、薬が失くなってきたので昨日(22日)受診してきた。

医師に「クレストールはなかなかいいですね。これはずっと飲み続けなければいけない薬ですか?」と訊いてみた。

「これはストロング・スタチンと呼ばれています。長期間の服用は想定していません。血液検査の様子を見ながら服用したり,止めたりということになるでしょう。人によっては肝臓障害という副作用がありますからね」

どんな薬も「両刃の剣」で副作用がつきものだが、クレストールも例外ではないようだ。

それはともかく久しぶりに「スタチン」という言葉を耳にした。

たしか以前にもブログに取り上げていたはずとアーカイブを調べてみたら「世界で一番売れている薬」のタイトルで掲載していた。

著者は山内喜美子さん。

この本は、スタチンという薬の誕生のドラマから新薬開発の現場、医学会が直面した様々な問題を浮き彫りにしている興味深い本だった。

                

以下、重複するが「スタチン」について。

「スタチン」とはそもそも高脂血症治療薬のことである。体内のコレステロール合成に重要な役割を持つ「HMG-CoA還元酵素」を特異的に疎外して血液中のコレステロール濃度を下げる薬。

スタチンはアメリカのファイザーやメルクをはじめとする世界の主要な製薬メーカーが競合し、現在欧米で7種類、日本で6種類が医家向け医薬品として販売されている。

2005年の全スタチン製剤市場は日本円にして約2兆8千億円で他の薬を大きく上回る最大の市場となっている。

コレステロールは周知のとおり人間が生きていくうえで不可欠だが、血液中の濃度が高すぎると動脈硬化を引き起こす。血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞の原因となって命を危険にさらす。

日本の高脂血症患者のうち約600万人が治療を受けており、そのうち8割がスタチンを使用している。世界では推定3千万人が使用し、心臓疾患、脳卒中の発症率を25~30%低下させた。安全性も高く「世紀の薬」「奇跡の薬」と呼ばれている。

このスタチンは実は1973年日本人の研究者によって発見された。当時三共(現・第一三共)の研究所に勤めていた遠藤章農学博士が青カビから発見した「ML-236B」が世界で最初に生まれたスタチンである。

しかし、「ML-236B」は臨床試験にまでこぎつけながら医薬として世に出ることはなかった。

遠藤博士のスタチン発見から30余年が経ったが、世紀の薬となったスタチンの元祖である「MLー236B」はどのようにして生まれ、いかなる運命をたどったのか、そしてなぜ、この薬は日本で最初に製品化されなかったのか。ひいては、なぜ遠藤博士はこの画期的な発見によりノーベル賞を受賞できなかったのだろうか?


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音楽談義~「フルトヴェングラーとカラヤン」~

2010年12月16日 | 音楽談義

20世紀の音楽界を代表する指揮者といえば、好き嫌いを越えて、まず「フルトヴェングラー」がきて、それからはちょっと難しいが「カラヤン」あたりではなかろうか。

もちろん「トスカニーニ」も外せないが指揮者だけではいい音楽は成り立たない。その点、前者たちは常任指揮者として世界最高峰のベルリン・フィルハーモニーを長期間率いていたことに意味がある。

この二人、親子ほど年が違っているのに彼らの間に飛び散った火花の激しさは有名だ。

フルトヴェングラーはカラヤンを生涯にわたって徹底的に嫌悪し決して認めることはなかったが、結局カラヤンはフルトヴェングラーの没後に後継者に納まった。

懐古趣味というわけでもないが、この二人が残した録音も膨大かつ多岐にわたり影響力も大きいので数々の伝説に包まれたこの二人の実像を知っておくのも悪くはあるまいと思う。

背景には時代の流れによって現代では指揮者とオーケストラの関係がすっかり様変わりしてしまい、今後こういったカリスマ的な指揮者の出現はもはや不可能に近いという事情もある。

幸いにもフルトヴェングラーとカラヤン、両方の指揮者のもとで演奏した全盛時代のベルリン・フィルの樂団員の何人かがまだ健在だという。彼らこそがこの両巨匠を一番身近に、そして一番自然に体験した人々であることは疑う余地がない。

こういう趣旨のもと彼ら団員たちに丹念に取材を重ねてまとめあげられた本格的なインタビュー集が次の本。

「証言・フルトヴェングラーかカラヤンか」(2008.10.新潮選書)

                                 


著者の「川口(かわぐち)マーン恵美(えみ)」さんはシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科卒業、シュトゥットガルト在住。

本書にはクラシックを愛好する人には興味津々の内容がオンパレードだった。

それも両者の優劣論よりもむしろオーケストラの楽団員たちが何のこだわりもなく率直に吐いた音楽やオーケストラ論の方が面白かった。

取材の対象者(元団員)は11名、うちカラヤンの思い出だけは5名。いずれも若いときから聴衆に音楽を聴かせて「幸せ」を与えてきたハイな職業の持ち主ばかりだけに生き方、境遇ともに最高にハッピーな老人たちである。

☆ フルトヴェングラーへの賛美

存命中の楽団員全員からフルトヴェングラーへの賛美は未だに尽きることがない。


☆ カラヤン容認論と否定論

樂団員たちの間でも帝王カラヤンとの当時の距離関係によって評価がまちまちで一概に決め付けるわけにはいかない。

しかし、カラヤンの晩年が彼自身、そしてベルリン・フィルにとっても大きな不幸だったのは全員そろっての証言で疑いない。カラヤンはあまりに独裁者すぎて
「引きどき」
を誤ってしまったようだ。

以下、自分にとって記憶に残った発言をごく一部に過ぎないが挙げてみた。

○ 
ティンパニーは出番は少ないがオーケストラの中で極めて重要な楽器。大きな音の一撃で音楽の流れを決定的に支配する力を持っている。指揮者、コンサートマスター、ティンパニー、この三者間に信頼関係がなければ指揮者は怖くて演奏できない。(ティンパニー奏者フォーグラー氏)

※ 
カラヤンは以前ティンパニー奏者だったのでこの楽器の演奏に異常なほどにこだわった。

 ベルリンフィルの常任指揮者は樂団員たちの投票によって決められるが、後継者選びにあたり常に違ったタイプの指揮者を選んできた。

厳格で正確な指揮をする
ビューローから、次のニキシュはまるで反対の緩いラフな指揮。

そのあとに
フルトヴェングラーという哲学者が登場すし、そして現実主義者のカラヤン

それに続くのが夢見る男
クラウディオ・アバド。彼の音楽は正確ではないかもしれないが本能やヒラメキがある。

そして現在のサイモン・ラトルの音楽にはおおらかで寛いだ人間的な温かさがある。(コントラバス奏者ヴァッツェル氏)

 フルトヴェングラーの後継者としてチェリビダッケが取り沙汰されたが、彼だけは楽団員の立場として「真っ平ごめん」だった。

それにベームもヨッフムも我々の目には二流としか映らなかった。後継者カラヤンは順当な選択だった。(コントラバス奏者ハルトマン氏)

○ カラヤンは素晴らしい業績を残したが亡くなってまだ20年も経たないのにもうすでに忘れられつつあるような気がする。

ところが、フルトヴェングラーは没後50年以上経つのに、未だに偉大で傑出している。

「フトヴェングラーかカラヤンか」という問いへの答えは何もアタマをひねらなくてもこれから自ずと決まっていくかもしれませんよ。
(コントラバス奏者ハルトマン氏)

 フルトヴェングラーはラヴェル(作曲家)を愛していた。大好きな「優雅で感傷的なワルツ」
を演奏会のプログラムでもないのにしょっちゅう自分のためだけに演奏させた。「スペイン狂詩曲」も好きだった。とにかくフルトヴェングラーのラヴェルは素晴らしかった。(チェロ奏者フィンケ氏)

以上のとおりだが、フルトヴェングラーとカラヤンの両方の指揮者のもとで演奏した団員たちはいずれも80代以上の高齢者ばかり。

「話を聞くなら、すぐに始めなければならない!」との著者の目論見はまったくの正解でカラヤン批判の急先鋒で本書の中でも最も精彩を放っていたテーリヒェン氏(ティンパニー奏者)が2回目のインタビュー後の2008年4月にあえなく他界。

2007年11月からほぼ10ヶ月をかけた取材のおかげで実に数々の貴重な証言が残されたことはほんとうに良かった。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオ談義~「夫唱婦随」~

2010年12月14日 | オーディオ談義

オーディオ仲間のAさん宅の「ハートレー」のシステムを聴いてから1週間あまり。

衝撃を受けたあの口径64cmの低音の興奮もようやく収まりつつあるが、我が家の低音もあそこまでとはいわないが、少しでも近づきたいと思うのが人情というもの。

何か改善の余地はないものかといろいろ考えた末、低音部分のボックスの中にまだスペースの余裕があると思いついたので吸音材をぎりぎり一杯に詰め込むことにした。

もちろん、これまでに何回も言及しているようにその材料は
「鳥の羽根」。

以前、Aさんから近くの量販店で「鳥の羽根の枕が安くて売ってたので10個買ったよ」との情報を聞いていたので早速出かけてみた。

目指す品物は2階の布団コーナーにあった。丁度、「羽根枕」1個578円の特売品扱い。

             

どのくらいボックスに詰め込めるか分からないのでとりあえず4個購入して帰宅。

この枕、そのまま吸音材に使えると便利なのだがカバーは綿なのに、残念なことに中袋がポリエステル。ポリエステルは音響効果にとって最悪なのはこれまでの経験で充分承知のうえ。

そこで一度バラして羽根を取り出し、別の袋に詰め替え作業をすることにした。

部屋中に羽根が飛び散り、大変面倒くさい作業になるが覚悟の上。「いい音」を得るためには、ひたすら実践あるのみ。

カミさんに「おい、木綿の袋が沢山いるんだけどな~」。

「余った木綿の広い布切れが沢山あるので買うのはもったないわよ。使わない大風呂敷もあるので適当に切ってもらったらミシンで作ってあげる」となかなか協力的。

「夫唱婦随」とはこのことかと、メデタシ、めでたし。

日頃の家事などへの協力で最近、良好な関係を築いている自分の努力(?)もあるものの「オーディオ」にも随分と理解を示してくれるようになった。

そういえば20年ほど前にタンノイ・ウェストミンスターを購入したとき、つい言いそびれてしまい、我が家に運び入れるその日の朝、いきなり告白したために「柳眉」を逆立てて怒られ、1週間ほどクチを聞いてもらえなかったことがあったっけ。

もっとも、「オーディオ狂い」にもうあきれ返ってしまって諦めたのかもしれない。

とにかく「オーディオの歴史はカミさんとの闘争の歴史でもある」わいなあ~。

さて、8個の袋に詰め込みが終わるとホッチキスで袋の端をチャカチャと閉じて片チャンネル4個づつをSPボックスに収めることにしているが、この袋への詰め込み作業の真っ最中にAさんがお見えになった。

丁度、別府に来られる用事があったとのことで、お借りしていた「歌劇マクベス」や「ワーグナーの楽劇」のCDを返却するために自宅に寄っていただいたもの。

作業をご覧になって「枕1個でもバラしてみると相当の羽根の量ですね~」

「ええ、スピーカーの裏蓋を開けてみると、4つの隙間があるので、購入した3個の枕をバラして詰め替えし、ぎゅうぎゅうに押し込むことにしました」。

「作業にこれから2時間ほどかかりますので、今日の試聴は無理ですね、明日〔11日の土曜日)の午後4時ごろはいかがですか。効果の程を是非聴いていただきたいものです」。

Aさんが帰られた後、SPボックスの裏側のスペースにまるで押し競饅頭〔おしくらまんじゅう〕のように、「羽根」の袋を目一杯詰め込んで作業が無事終了。

早速、ワクワクしながら試聴したところ「奥行感が深まった」「音楽全体が柔らかく聴こえる」「ボリュームを上げてもやかましくならない」と充分満足出来る結果に。

とはいえ、こればかりはどんなに自画自賛の世界に浸っても進歩がない。

明日のAさんとの試聴結果を期待することにした。

そして、当日はちょっと早めの15時40分頃、Aさんがお見えになったので暖めておいたアンプのもと、早速ワーグナーの「楽劇ワルキューレ」(ショルティ指揮)を聴いていただいた。

「一段と良くなりましたね!ステージが出来上がってます。これまでこの家で聴いた中で最高の音です。こんなに良くなるとは驚きました。羽根の効果は絶大です。全国でもこんなにうまくアキシオム80〔以下「80」)を鳴らしている方は少ないと思います」

Aさんは「悪いときは悪い」とはっきり断言される方なので額面どおりに素直に受け取ることにした。

これも、元々はAさん宅で聴いた「ハートレー」の低音の衝撃を受けた結果の所産なので「持つべきモノはオーディオ仲間」だと改めて感謝。

こんなに「いい音」を自分だけに閉じ込めておくのは何だか勿体ない気がする中、翌日の月曜日は朝から冷たい雨模様。

こういうときは外の塗装作業は出来ないに違いない。大分市で塗装業を営むN松さんに「今日は朝から雨で外の仕事は出来ないでしょう。この前お見えになったときよりもずっと音が良くなりましたので聴きに来ませんか」とお誘いしたところ、ひとつ返事でOK。

10月19日にお見えになったときのコンビの復活でN松さんと真空管アンプを自作されるN島さんのお二方が13時10分頃にご到着。

歌謡曲、クラシック、ジャズと次から次に試聴。

N島さんは前回のときはウェストミンスターの試聴だけだったので「80」については
始めて耳にされるとのこと。

「噂には聞いてましたが実に繊細な音を出しますね。こんなに”抜け”が良くて艶やかで楽器の音色を素直に出すスピーカーは聴いたことがありません。まったく言うことありません!」と感激の面持ち。

N島さんの知り合いに高齢のオーディオ・マニアがいてガラードのプレーヤーは譲ってくれたものの、どうしても「80」だけは手放さないのだという。「もう鳴らしていないのに」である。
 

「道理で手放さないワケが分かりました」 

「ほう、そんな方がまだいるんですか?「80」を欲しがる人は沢山いますけどオークションにも滅多に出ないし、まず手に入りません。」

「自分もスペアで2本持ってますがもっと欲しいので○○万円出してもいいですよ」と、持ちかけてみたが
「おそらくダメでしょう」とN島さん。

「現代のメーカーはなぜ80のようなSPユニットを作らないんだろう」「逆起電力の問題があるのでスーパー・ツィーターには別に専用アンプを準備したほうがいい」など、いろんな意見交換が出来てタメになる試聴会だったが、「我が家の音」にお二方が素直に喜んでくれたのが何よりだった。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読書コーナー「ニセモノはなぜ、人を騙すのか?」」

2010年12月12日 | 読書コーナー

「表題」に関連して、まずはじめに我が身に起きた最近の事例。

それは1ヶ月ほど前にオークションで購入した真空管。

いろんな銘柄の真空管の音を試したかったので「オークション」を覗いていたところ、目指す対象商品のタイトルに「ムラード」とあった。

これは信頼できるイギリス製の老舗ブランドなので「ムラードにしては安い」と乗り気になってすぐに落札した。

しかし、到着早々、ペア〔2本)のうち1本から雑音が出たのがそもそもおかしかった。「ムラード」がそんなに確率的にみて簡単に故障するはずがないと思うべきだったが、今となってはもう後の祭り。

とりあえず交換を要求したところ、すぐに代替品が送られてきたので1週間ほど続けて聞いてみたが、どうも音が歪っぽくてうるさく感じる。

高域がチャラチャラしていて安物の真空管に共通する独特の”匂い”が感じとれる。最初に聴いたときから気付くべきだったのに、まったく「自分の耳も当てにならない」。

知人も、あの落ち着いて穏やかな「ムラード」らしからぬ音だと断言するので、真空管に印刷されている文字をよく見てみると〔今更、何だ!)「Mulard」のMの一字さえも入ってない。

「しまった、騙されたか!」

今ごろになって気付くのがおかしいし、”うかつ”の謗りをまぬかれないところ。

あくまでも推定の範囲なのでどこの誰やら、出品者の公表を差し控えるがやはり「白箱」に入っている真空管にはある程度用心が必要。改めて「元箱」の重要性を認識した次第。

ともあれ、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」で出品者の居住する「T県」に対していっぺんに悪印象を持ってしまった。

これまでオークションで数限りなく取引してきたが明らかに「騙された」のはこれが初めて。真空管の代金「6,000円」をドブに捨てたようなものだった。

世知辛い世の中なのでこれからは「オークション」もある程度疑ってかからなくてはと、淋しい気持ちながらも「いい教訓」になった。

そこで、次の本。


「ニセモノはなぜ、人を騙すのか?」(著者:中島誠之助、2007年8月、角川書店)

                   

著者の中島氏はいわずと知れたテレビ番組「開運!何でも鑑定団」の中心メンバー。

この番組は「値付け」の面白さもさることながら、出品物の故事由来にも興味があって毎週楽しく観ている。


本書のテーマを一言でいうと”ニセモノを見抜く目を養い目利きとなるための心得”
に尽きるようだ。

構成は次のとおり

☆ 
世の中はニセモノだらけである

☆ 
ニセモノにひっかかる三つの法則

☆ 
骨董業界の厳しい修行方法

☆ 
感性を鍛えるには「現場を踏む」

☆ 
番組以外で絶対に鑑定をしない理由

☆ 
許せるニセモノもある

とにかく、掛け軸の90%、焼き物も80%がニセモノだといってよいそうで、そもそも骨董品に限らず世の中にはあらゆる分野でニセモノが氾濫している。

騙す人間と騙される人間の双方によってニセモノは成立するが、
本書ではニセモノはニセモノなりの存在意義を認めており「ニセモノ憎し」一辺倒ではないところに面白味がある。

「ニセモノがあってはじめてホンモノが光ってくる」「人間は投機性のあるものを好むので、運試しをしたい気持ちを適えさせる」など始めから終わりまで「寛容」の気持ちが一貫している。

こうした
気持ちの余裕”が逆にニセモノを見極める”目利き”
の秘訣なのかも知れないなどと思ったりした。

冒頭に掲げた「真空管」の話も、「そんなにうまい話があるはずがない」という気持ちの余裕と、まともな感性さえあれば防げたはず。

結局、「騙す人間」と「騙される人間」、どっちもどっちなのかもしれない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオ談義~「稲妻のような低音」~

2010年12月08日 | オーディオ談義

「やっとハートレーのシステムが聴けるようになりました。お見えになりませんか」。

かねて、この大型システムにチャレンジされ、ご苦労の程をよく知ってるオーディオ仲間のAさん。

明るく自信に満ちた声音に、これまで期待を裏切られたことがなく、すぐに駆けつけた。

12月5日〔日〕の午後のこと。

時節柄、観光客も少なくて快晴の中スイスイと30分ほどで湯布院に到着。

        

まずシステムのうち、口径64cmの巨大ウーファーに圧倒される。現在、独自にツィーターを加えて4ウェイで鳴らされているそうだ。

近年のシステムの流れはウーファーに口径の大きいものを使用せず、20cm口径クラスを2本~3本使っている例が圧倒的に多い。〔自分もそうだが)。

口径が大きくなるとコーン紙の重量が増してアンプが負けてしまい、(うまく駆動出来ずに)ボワ~ンと尾をひいたような低音になって締りがなくなるからだが、その辺をAさんがどのように解決されているか大いに興味をそそられる。

最初にルービンシュタインの「バラード1番」(ショパン)を聴かせて頂いたが実に締りのいい低音で全体のバランスもいい。アンプがこの巨大ウーファーを完全に制御している印象。

周波数は200ヘルツ付近でハイカットされており、低域用アンプに「EL156真空管を4本使ったパラレルプッシュプル」(モノ×2台)を持ってきてようやく満足のできる状態になられたそう。
             
      

このアンプは真空管なのに出力100ワットクラスだそうで、その威力の程を思い知らされた。

この馬力なら軽々とハートレーを駆動できるはずと納得。それにしても何という低音の迫力だろう。「ドカン」ときてサッと退散していく、
まるで「稲妻」のような低音。

このシステムを最大限に活かすソースをと、お願いしたところ歌劇「マクベス」(ヴェルディ作曲)を択んで聴かせていただいた。

       

まさに本領発揮で「立ちあがりの早い音=野太い低音=実在感=オペラ」の組み合わせにすっかり痺れてしまった。

一言でいえば”ちまちま”した細部にこだわる近視眼的なオーディオとはまるでかけ離れた異次元の音。

「ソースを替えましょうか」とのお申し出に「いや、あまりに心地がいいのでこのままずっと聴かせてください」と初めて耳にする「マクベス」を堪能した。

見通しが良くて艶やかな中高域のアンプにはWE300Bの特注アンプを使用されている。

        

増幅部と電源部がそれぞれ別の筐体となっており、トランスのカバーは鉄を使わずにすべて厳選した木で囲んであるこだわりの逸品。これは大宰府のMさんの作品。

また、Aさんによると今回のシステムで一番効果があったのはCDの音をアナログのような音に変換する回路を持つ「リアライザー」だとおっしゃる。

            

どうやら沢山のノウハウの積み重ねが伺われるところだが、結局2時間ほど試聴して下記のCDをお借りすることに。

「マクベス」「ラインの黄金」「神々のたそがれ」「パルシファル」「ジークフリート」。

単なる「きれい事」で終わってしまうオーディオと「実在感」のあるオーディオの違いをつくづく考えさせられた今回の訪問だった。

「オペラはオーディオ装置の判定にもってこいだなあ」と、”ため息”まじりにつぶやきながら家路を急いだ。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオ談義~「スーパー・ツィーター」~

2010年12月06日 | オーディオ談義

つい先日お見えになったKさんから、我が家のオーディオ・システムに対して「スーパーツィーターをつけるともっと臨場感が増すんじゃない」というアドバイスをいただいたのは前々回記載したとおり。

Kさんもオーディオ歴40年以上の兵(つわもの)、それなりの経験豊富な耳を持っておられるので、決してあら捜しではなく、気付いたことを率直に言われたのだろう。

趣味の世界なので「唯我独尊」でも一向に構わないが、素直に受け止めることで、もっと「音」が良くなればそれに越したことはない。

正直に白状すると、どちらかといえばよそ様の意見が気になって仕方がないタイプ。

結局、永遠に「ストレイ・シープ」〔さ迷える子羊)なのであ~る!

早速チャレンジしてみることにした。

ただし、Kさんが推薦する村田のスーパー・ツィーターともなればたしか20万円前後するはずで、そこまでの大枚をはたいて冒険する気はさらさらなし。

現在のところ所在なげに無骨をかこっているJBLのツィーター「075」で実験することにした。普通の075にステンレス製の特注のリング・ホーンを付けた代物で超・重た~い。

             

通常、SPユニット「アキシオム80」を使っていれば、2ウェイのつくりなのでツィーターをつける必要はないが、何せずっと昔のアナログ全盛時代のユニット。

しかも別のユニット(3本)で低域を伸ばしているので、高域をもっと伸ばしてもレンジに不自然さはないだろうという算段。

これは音響理論の権威オルソン博士が唱える「40万ヘルツの原則」による。

なお、普通、人間の耳に聞こえる高い方の周波数は2万ヘルツくらいまでとされている。

したがって、軽く2万ヘルツ以上を担当するスーパー・ツィーターなんて理論上、必要ない気もするがそこはオーディオの世界。

理論と現象が一致してないことが多々ある「魑魅魍魎」(ちみもうりょう)の世界なのでやってみないと分からないことのほうが多い。音響の世界は科学的にまだ未解明の分野が沢山あると思う。

たとえば接続ケーブルによってなぜ音が違うのかも理論的に解明されているわけではない。「こんな大事なことが未だに」と思うことばかりだが、最後の拠りどころは結局「経験とカンと耳」しかない。

さて、「075」の話に戻って、コンデンサーをSPコード(プラス)に挿入して周波数をローカットすることにした。

これでもオーディオ・マニアの端くれ、こういうときのために、予備のSPコードと値の小さいコンデンサーを常備しているのは言うまでもない。

コンデンサーの銘柄によっても音は変わる。いつもスプラグのビタミンQを愛用しているが、今回は0.1μF(マイクロ・ファラッド)の東一(とういち)のコンデンサーを使ってみた。

           

ちなみにこの0.1μFを使ったときの受け持ち周波数

を計算(肩落ち6db/oct)してみると次のとおり。

159,000÷(抵抗8Ω×0.1)=198、750ヘルツ

何とおよそ20万ヘルツ以上になる計算で人間の耳にはまったく受け付けない周波数になるわけだが、こうなるとコンデンサーが単なるボリュームの働きしかしないそうだ。

ただし、これも「075」が105dbと極めて能率が高いので成せる業。

早速作業にとりかかって、SPコードにコンデンサーをばっちりハンダ付けした。アンプは「アキシオム80」用の真空管アンプ(WE300B、モノ×2)と共用。

これで試聴してみると、うれしいことにまったく違和感がない。

「075」に耳をくっつけてみると、かすかに「サー」ノイズが聴こえて立派に稼働中なのがわかる。実際の音もかすか聴こえる程度なので目立たないが、外してみると明確に差が分かる。

そしてKさんがおっしゃった「臨場感」がたしかに増した気がする。わずかに全体がハイ上がりになった印象なので低域のボリュームを一目盛りほどアップするとバランスがバッチリ。

丁度、タイミングよくオーディオ仲間のAさんがお見えになったので、聴いてもらったところ
「鳥の産毛みたいな感じのデリケートな響きが一層出てきましたね」と好評。

知人宅でクォードのESL(静電SP)と村田のスーパー・ツィーターをセットで実験されたことがあるそうで、
「効果はたしかにあります。村田はいいですよ」のこと。

やはり「よそ様」のご意見は尊重するものだと、しばらくこの状態で聴いてみることにした。

             


 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読書コーナー~「絶妙な”数字で考える”技術」~

2010年12月04日 | 読書コーナー

昨日〔12月3日)の夕方、NHKテレビを観ていたら今年の世相を漢字一字で表すと「失」が一番になっていた。(街頭のアンケート結果によるもの)

”国の誇り”をはじめ、財産や信用など「得る」よりも「失う」というイメージが強かったのだろう。高齢者の「消失」問題もある。

ちなみに自分が瞬間的に思いついた漢字の「乱」は5位。国際関係、政治経済の「混乱」、海上保安庁職員の「反乱」によるビデオ流出、リーグ3位の野球チームが日本一、横綱の連勝記録が途切れる「波乱」、梨園の御曹司の「酒乱」など。

なお、昨年、どこかのお坊さんが公表した正式な漢字は「新」だった。

今年も恒例の10日に発表される予定だが果たしてどういう漢字になるのだろうか?

閑話休題(それはさておき)。


≪絶妙な「数字で考える」技術≫(2008.2.11、村上綾一著、明日香出版社刊)

                 

本書は数字(数学ではない!)が”ニガテ”という人に向けて書かれた本。

数的センス
を養うために豊富な実例が紹介されている。代表的な事例を4つほど。

☆ ウィンカーの点滅テンポに隠された秘密

クルマのウィンカーは、1分間に約70回点滅します。これは意外なものが基準になっている。ご存知ですか?

実は、ウィンカーの点滅するテンポは、人間が適度に緊張したときの脈拍数とほぼ同じ。これ以上点滅回数が多くなると、あせってしまい、少なくなりすぎると間延びしてしまって事故が増えてしまう。

☆ とにかくNo.1

広告業界では、広告に載せるコピーはとにかく「No.1」が有効で、そのため、広告を作るときはその商品の「No.1」や「1位」を探す。

地域限定でもいいし、期間限定でもかまわない、とにかく客観データで「No.1」に出来る状況をつくりあげ大きくアピールする。

さて、どう頑張っても「No.1」が見つからなかったらどうするのだろう。

『そんなときは、「私たちは業界No.1を目指しています!」でOK』。

☆ 割合の盲点

アメリカ海軍のPRで、こんなキャンペーンがあった。

「海軍の死亡率は0.9%、ニューヨーク市民の死亡率は1.6%です。海軍のほうが死亡率が低いのです。皆さん、海軍に入りましょう!」

どこがおかしいかわかりますか?

海軍は健康な男子の死亡率、ニューヨーク市民は老人や病気の人も含めた死亡率。ニューヨーク市民の死亡率のほうが高いのは当たり前!

☆ シカゴにピアノ調律師は何人いるか?(シカゴの人口を約300万人とする)

物理学者エンリコ・フェルミに因んで「フェルミ推定」といわれているのが、仮説や推定を組み合わせて「およその数字」を見積もる方法。この調律師の問題は一番有名なもの。答えよりも、それに至る過程が大切。

 
始めに世帯数を考える。アメリカも日本と同じく核家族社会と考えて平均2~3人、計算しやすくするため3人とする。
  300万人÷3人=100万世帯

 
次にピアノのおよその台数を考える。ピアノ所有率を日本と同じくだいたい10世帯に1台程度とする。
  100万世帯÷10世帯=10万台

 
その次に調律の年間需要を考える。ピアノ1台の調律は平均して1年に1回程度とする。
  10万台÷1回=10万台

 
その次に調律師一人は年間に何台の調律が可能か考える。1日に3~4台が限界、年間に200~250日働くとすると1年間に600~1000台となる。真ん中を取って800台とする。

回答 
シカゴのピアノ調律師の数は次のとおり。
  10万台÷800台=125より、約130人。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオ談義~「デジタル機器に名器なし」最終回~

2010年12月02日 | オーディオ談義

〔前回からの続きです)

早速、エソテリックのCDトランスポート「P70VU」(以下「70」)とDAコンバーター(ワディア27ixVer3.0:写真右)とを接続。

     

ケ-ブルはワディアCDトランスポート270〔以下、「270」:写真左下部)のときは「音声信号」と「クロック・リンク」をともにSTケーブルで結んでいるが「70」にはその端子がないので、やむなく「音声信号」だけグラスケーブルで接続した。

テスト盤はエソテリック盤〔原盤デッカ)の「白鳥の湖」(フィストラーリ指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ)の8トラック目の「パ・ダクシオン」。

実に美しいメロディーでむせび泣くようなヴァイオリンの演奏が印象的。

「270」とすぐに切り替えができるので、何回も比較試聴。

「よ~く分かった。70も善戦してるけどやっぱり音の彫が270のほうが深くて一枚上だね。ちょっとした奥行きの差だけどこれが大事なんだよね。やっぱりジッターを除去するクロック・リンクの効果なのかな?」

「東京に行ったときに懇意にしている業者からdcsの総額1千万円ほどのCDシステムを聴かせてもらったけどアナログとの差がなかったよ」とKさん。

「上には上があるよ」というわけだが、Kさんの発言はさらに続く。

「しかし、その業者によると、”デジタル機器に名器なし”と言ってた。デジタルの進歩は日進月歩なのでどんなに高級品を購入してもそのうち新しい機器に追い越されてしまうからだって」

「○○さん(自分のこと)には悪いけど、このワディアのDAコンバーター(27ixVer3.0。以下「27」)もいまや中古で50万円で売ってるよ」。

ハハァ~ン、そうだったのか!〔と、池上さん?)

Kさんがわざわざお見えになったワケがようやく分かった。

「Kさんは現在中古の「27」を購入しようかどうか迷われている最中なんだ。そこでエソテリックの「70」と相性がいいかどうか確認に来られた」というわけ。

この「27」はバージョン・アップ代も含めて150万円ほどかかったが、今や中古で50万円かあ~。

ヤレ、ヤレ、まさに「デジタル機器に名器なし」の見本みたいな存在。ちとガックリだがKさんにはこう申し上げた。

「27を単独で購入しても意味が無いですよね。あくまでもクロック・リンクするという前提で270とセットで使うべきなんでしょう。しかし、270はもはや4年ほど前に既に製造中止になってますから相棒のない27がそんなに安くなっている理由もよく分かります」

「ウン、そうだろうね~。今やCDシステムの高級品はすべてクロック・リンクが大前提となってるからね。」

4年ほど前のあのとき、東京の「SIS」さんから「270がまもなく製造中止になります」との情報が入ったので、清水寺から飛び降りる思いで「270」を買ったが、思い切ってよかった!

結果的に「27」の価値がかろうじて存続することに~。

それにしてもデジタル機器のサイクルの短さには驚く。明らかにビンテージの世界とは程遠いので高級品を購入するときには一考の余地というか、それなりの覚悟が要ることをこの話は教えてくれる。

あとは、Kさんから「”村田”のスーパー・ツィーターをつけるともっと臨場感が増すような気がするけど」と貴重なアドバイスをいただいた。

別のオーディオ仲間のMさんに言わせると「スーパー・ツィーターなんて無駄遣いの極致だ」が持論なので、きっと怒髪天をついて怒られるに違いないが、一度試してみたい気もする~。

以上で「デジタル機器に名器なし」の3回シリーズ閉幕です。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーディオ談義~「デジタル機器に名器なし」♯2~

2010年12月01日 | オーディオ談義

(前回からの続きです)

およそ7年ぶりに我が家にお見えになったKさん。

Kさんの目的はもちろん「ご持参されたCDトランスポートの音質確認」にある。

しかし自分の目的は「我がオーディオ・システムの音に感心してもらうこと」なんて言うと、これはちょっと身も蓋もない話になる。

実をいうと、Kさんが大枚のお金をはたいてアナログ(レコード)に熱中されているのがいまひとつよく分からない。

「本当にCDの音を極めてからアナログに走られたのだろうか?」という本質的な疑問を持っている。

たいへん僭越だが、その辺をクロック・リンクしたワディアのCDシステムでどの辺まで払拭できるのだろうか、むしろその点に大いに興味がある。

「デジタル」対「アナログ」の対決!

何はともあれ現在のシステムの試聴が先決。そのあとでKさんの機器をつなぎ変えて音質を比較するという段取り。

テスト盤はベートーヴェンの弦楽四重奏曲作品127。

しばらく無言のKさん、ようやくクチを開かれた。

「昔と随分違うなあ・・。やはり仕事から解放されてたっぷりとオーディオに時間をかけないと音は良くならないねえ」としみじみ述懐される。


どうやら認めてもらえたようだが、「アキシオム80」のアの字も言及されないところがいかにも負けず嫌いでプライドの高いKさんらしい。

こういうときは「いい音でしょう」なんて調子に乗らずにそっと控え目にしておくに限る。

それからはKさん持参のCDソフトをひととおり試聴。エソテリックから発売された限定盤だそうで原盤はデッカ。往時の貴重な名演ばかりですぐに売り切れるので予約して手に入れられているそうだ。

        

        

        

ピアニストのクリフォード・カーゾンの名前は、たしか五味康祐さんの著書に出てくるが、その演奏を初めて聴いた。曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。

「こういう雰囲気を出せるのは内田光子さんぐらいだね。内田さんは世界でも最高のピアニストだと思う。すべてのアルバムを持ってるよ」とKさん。自分も同感。

話題が「音質」ではなくて「演奏」に及ぶのはたいへんいい傾向。

ほか「白鳥の湖」(フィストラーリ指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ)、素敵な女性ジャズボーカルのニッキ・パロットなどを聴く。

こうして我が家のCDトランスポート「ワディア270」〔次の写真の下部)の音質をみっちり確認したところで、いよいよKさんお目当てのエソテリックのCDトランスポート「P70VU」〔次の写真の上部)の出番へ。

          

当時の価格で85万円ほどしたそうで、たしかメカは「270」と共通のはず。

さて試聴結果はいかに?

続きは次回へ~。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする