ひとくちにオーディオ愛好家といっても多種多様な個性の持ち主ばかりなので「傾向と対策」並みに分類するのはたいへん難しいし、おこがましい気もするが、一番音質に多大の影響を与えるスピーカーで分類するとどうも大きく二つに括られるような感じがしてならない。
つまり「フルレンジ派 VS 多ウェイ派」、言い換えるとSPユニットをたったの1個で済ますか、2個以上を組みわせるかとなるし、さらに重ねて言えば「ハーモニー重視派 VS (周波数)レンジ重視派」ともいえる。
もちろん、どちらが正しいとか悪いとかいうことではなくて各人の好みの問題になるので論議しても仕方のない話だが、それだと終わりになってブログのネタにならないので続行するとしよう(笑)。
そういうわけで、意識する、しないに関わらず、結果的にそれぞれのシステムが「ハーモニーを優先しているか」、それとも「周波数レンジを優先しているか」、どちらかに区分できそうなのだ。
もちろんハーモニーも周波数レンジも両者兼ね備えたシステムがあれば万事解決だが、残念なことにそういうシステムはまだ聴いたことがないし、ありそうにもない。どうしてもどちらかに偏ってしまう。
現実的にはその辺を解決しようと同軸型ユニットがあることはあるのだが、やはり中途半端の感が否めようもない。
すると、どうしようもない悲劇が起こる。
フルレンジ派は3ウェイ派に対して「そもそも3つのユニットはそれぞれマグネットが違うし音色も違う。それらを混ぜ合わせて鳴らすなんてハーモニーがおかしくなるのは必定で不自然だ」と非難し、その一方、3ウェイ派はフルレンジ派にたいして「レンジが狭くて聴く気になれない」と反論する。
日本の津々浦々の各家庭の試聴会で大なり小なりこの種の堂々巡りが続いている。
そして、この論争は「クラシック好き」と「ジャズ好き」との相剋とも関係してくる。音楽的にみて前者はハーモニーに、後者はレンジに重点を置いていることは明らかだから。
そこで、肝心の自分はといえば「正体不明のご都合主義」(笑)なので、4系統のシステムを振り分けて、「3ウェイ」が一つ、「2ウェイ」が二つ、「フルレンジ」が一つと多様な構えをとっている。
つまり、いまだに「ふらふら」しているので「お前は永遠にストレイ・シープだ」と謗られても仕方がない状態。
以下、それぞれの利点について個人的に思うところを述べてみよう。ただし、真に受けられても困りますけどね(笑)。
☆ 周波数レンジを追いかけてもキリがない
周波数レンジが広がると確かに魅力的なのは間違いないが、一方では何だか音楽が「薄味」になるような気もする。
とはいえ、もはや広いレンジですっかり耳が慣らされているので狭い帯域を受け付けないだろうとは思うが「音の密度」に満足感を覚えるようになればしめたものだと思う。
そもそも人間の可聴帯域は周知のとおり「20~2万ヘルツ」だが、このところ歳を取って高音域の聴取能力が確実に落ちたせいもあって、現在せいぜい1万ヘルツ前後が聴き取れれば上出来だろう。
したがって高音域へのレンジ拡大はコスパから見て「?」ではなかろうかとの考えがときどき頭をよぎる。
そういう点では心情的に「フルレンジ」派に与したくなる。
☆ ボーカルを聴くときは「点音源」に限る
音楽を聴くうえで「ボーカル」というジャンルは欠かせない。そもそも大好きなオペラがそうだし、ポピュラーにしろジャズにしろ「女声ボーカル」は音楽の宝庫みたいな存在だが、あれや、これやいっても「ボーカル」はフルレンジの「点音源」が合っている。
そもそも人間の口は一つなのだから、当たり前である。これが3ウェイでボーカルを聴くと3つのユニットから別々に音が出てくるのでよほどうまく調整しないと不自然になる。たとえて言えば、顔をスピーカーのバッフルにたとえると、口からだけではなくて、鼻と目からも音が出てくる感じ。
それに3ウェイで聴くときは下手をすると歌手の口元がカバのように大きくなったり、ステージで足のない幽霊が唄っている印象を受けるときがある。
✰ スケール感、強力なアタック感が欲しいときは3ウェイに尽きる
とはいえ、ファンダメンタルな響きが不可欠なオーケストラを聴くときはやはり3ウェイに尽きる。こういう音楽は300ヘルツ以下の情報量でだいたい決まる。
またジャズを聴くときは、ベースとシンバルがうまく鳴ってくれないと興醒めになるのでウーファーとツィーターが必須となり、ここぞとばかり3ウェイの出番となる。
とまあ、ざっと以上のような理由で「決めきれない」わけだが、先日東京在住の仲間と話す機会があり「一番音がいいユニットはタンノイのモニター・シルバー(同軸)の口径30cmだと思いますよ」とのことだった。
この方はご自宅(福岡)で、タンノイ・コーナーヨークに「モニター・シルバー」(口径38cm)を容れて鳴らされているのだが、それでも口径30㎝の優位性を主張されておられるのだから「身びいき」のない良識派として尊敬に値します。
なお、口径38㎝のユニットはよほどのユニットでもない限りボリュームを絞ったときにまことにプアな響きになるので我が家では選択外に置いている。
それはともかく、生きているうちにぜひ、きちんとした箱に入った「モニター・シルバー」(同軸:口径30cm)を聴いてみたいものだ。
それに、「オールホーンシステム」(自作)の「T」さん(東海地方)の3ウェイもぜひ聴いてみたい。
さらにまた、重量80kgに及ぶ自作のバックロードホーンの箱に入った「AXIOM80」(四国)を聴かせていただくと、次元の違うオーディオ観になるやもしれず、まだまだ(身体的にもオーディオ的にも)成仏するわけにはいかないねえ(笑)。
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