「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

指揮者カラヤンが涙した唯一の演奏家

2014年10月30日 | 音楽談義

先日、クラシック専門チャンネル「クラシカ・ジャパン」(CS放送)で「ヘルベルト・フォン・カラヤン~その目指した美の世界~」(1時間40分)という番組を放映していた。

カラヤン(1908~1989)といえば没後25年にもなり、そろそろ忘却の彼方に去りつつある指揮者である。

以前のブログで「フルトヴェングラーとカラヤン」という本を紹介したが、その中でベルリン・フィルの旧楽団員が、「フルトヴェングラーは今でも愛好者が沢山いるが、カラヤンは段々忘れ去られつつある。どちらが優れた指揮者かはもう結論が出ている。」と述べていたことが印象に残っている。

どんな指揮者でもフルトヴェングラーと比べるのは酷というものだが、カラヤンは世界最高峰のベルリンフィルの常任指揮者としてクラシックの一時代を画した功労者であることは疑いを容れないので、この際録画したうえでじっくり観賞してみた。

この番組は当時カラヤンと共演した演奏家や家族が登場して思い出を語るドキュメンタリー形式だったが、いろんなエピソードが次から次に登場してきてクラシックファンにとってはたまらない番組だった。

たとえば当時一世を風靡したヤノヴィッツ(ソプラノ、魔笛の王女役)やルートヴィッヒ(メゾソプラノ、大地の歌)など、高齢にもかかわらず元気な姿で登場してきて実に懐かしかったが、とりわけ興味を惹かれたのが番組中程の娘さんの次の言葉だった。

「父の涙を一度だけ見たことがあります。ザルツブルグでキーシンの演奏を聴いた父はとても感動していました。」(曲目はチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番。指揮「カラヤン」、ピアノ「キーシン」、オーケストラ「ベルリン・フィルハーモニー」)

キーシンは当時のことを番組の中で次のように語っている。

「カラヤンと握手したら小柄な人なのに手はとても大きくみえました。そして体はとても“きゃしゃ”なのに握手は力強いものでした。彼が黒いメガネの奥から刺すような視線で私を見ているのを感じました。演奏の後、彼は無言でした。私が彼と皆の方へ数歩近づくと彼は私に投げキスを、そしてメガネを外し目をハンカチで拭いたのです。」

カラヤン夫人も「彼とは30年間暮らしているけれど、こんなに感動した姿は初めて見たわ」
と証言する。

そして、再びキーシンは語る。

「帰るときにカラヤンはそこに来ていた私の母に近づき、握手して私を指さし“天才です”と言いました。私は評価を期待して弾いたわけではありません。私の意思を超えた何かがカラヤンによって引き出されたのです。私の中に眠っていた何かが目覚めたのです。」

演奏時のキーシンはこの映像で見る限り非常に若くて10代後半の少年のように映るが、この若さで天下のカラヤンを泣かせたのだからその才能にはまったく恐れ入る。

そういえば、渡欧して指揮者チェビリダッケやスイトナーに師事し、現在プロの音楽家として活躍している高校時代の同級生O君がキーシンの演奏を評して次のように過去のブログに登載していた。
 

『<素晴らしい>という言葉を忘れてしまうほどに「自然な」音楽。どこにも何の無理も誇張も頑張りもアピールもありません・・・・。音楽という言葉すら忘れてしまいそうです。ピアノという楽器と音楽と自分という存在と思いとの全てが重なるわずかな一点を捉えて、その一点から一分さえもぶれることのない演奏スタイル。このようなピアニストは世界中探してもキーシンただ一人しかいないでしょう。仰ぎ見る大天才と言うべきでしょう、うれしい事ですね、こういう人が存在しているということは・・・。』

そういうわけで、「芸術の秋」にふさわしく、久しぶりにこの「仰ぎ見る大天才」の演奏を聴いてみようかといくつかのCDを引っ張り出してみた。

        

ここ2~3日、集中して聴いてみたが、たしかに心を打たれる名演には違いないものの不思議なのはどうしてこうもショパンの作品の録音が多いのだろうか。所詮、彼の音楽は二流なのに、これでは才能の浪費というものだ。二流という言葉が悪ければ、聴いた後に何も残らない音楽とでも言い換えようか(笑)。

なぜモーツァルトの「ピアノ・ソナタ全曲」やドビュッシーの「前奏曲集」、それからベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタ32番(作品111)を録音しないのだろう。これらを是非キーシンの演奏で聴いてみたい~。

最後に、この番組の中でカラヤンがリハーサルのときにワーグナーの音楽について語った言葉が印象に残っている。

「ワーグナーの音楽は演奏不可能だとよく言われるが、彼なりの根拠はある。出来るだけ多くの音符を懸命に演奏すればざわめく背景のような響きになり炎がシュッという音に聴こえるんだ。ではピッコロも一緒に・・・。これ(ワルキューレ」第三楽章)は、まさにベルリンフィルのための曲目だ。ワーグナーが“私の思い通りにこの作品が演奏されたら危険過ぎて禁止される”と言った意味が初めて分かった。」

実演でさえ困難を極めるのだから、オーディオ・システムでの再生ともなると“推して知るべし”でワーグナーの音楽は危険がいっぱい。しかし実に魅力的だ~(笑)。


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「低音域の物足りなさ」をどうする?

2014年10月28日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

オリジナルそれも最初期の「AXIOM80」(以下「80」)を手に入れたとあって、オーディオ仲間たちからいろんな反響があった。

Gさん(福岡)からはプリアンプに使う真空管のことでご連絡があって、その終わりがけに「ところで最新のブログを読みましたよ。オリジナルの80を手に入れられたそうですが、低音はちゃんと出てますか?」

さすがに日頃から耳を鍛えているGさんだけあって「80」の唯一の弱点とでもいうべき「低音域の物足りなさ」を鋭く衝いてきた(笑)。

そこで「低音は復刻版と同じであまり期待しない方が良さそうです。その代り、余った復刻版の1セットをサブウーファーとして使用することにしました。今のところ、なかなかいいみたいですよ!」と、回答したところ「あっ、それがブログの末尾に書かれていた名案(?)というやつですか!」

「そうなんです!」というわけで、その作業の顛末を“ひとくさり”(笑)。

自作派として百戦錬磨の「Gさん」にとっては実に他愛ないことだろうが、したり顔して“とくとく”と喋ったその内容をここでお知らせしておこう。

ただし、こういう聴き方は邪道かもしれないことを初めにお断りしておかねばならない。「80」を聴くときは「何も足さない、引かない」という正統派の方が圧倒的に多いのだから。

自分の場合は余分なアンプや80の復刻版を遊ばせておくのが勿体ないという、単なる「ケチ精神」から発したものなので念のため(笑)。

                

「百聞は一見に如かず」で、はじめに画像をご覧になっていただくと手っ取り早い。

簡単に言えば「オリジナルの80は周波数帯域をいっさいいじることなく、フルレンジで鳴らす。その一方、余った復刻版の80を使ってサブウーファーとして中低音域の量感を補足する」というもの。

オリジナルと復刻版は異母兄弟みたいなものだから、こうやって一緒に鳴らしても音色とかスピード(音声信号への追従性)にあまり違和感はないはず。復刻版の入ったエンクロ-ジャーは厚さ5センチの北海道産の木をつかっているのでオリジナルの80を載せても強度は十分だし、両方のユニットの振動板の縦位置もほぼ合致しているのが心強い。

また、80は背圧(ユニットの後ろ側へ出る音圧)の逃がし方次第で生きもすれば死にもするので、エンクロージャー内の羽毛の吸音材の量や裏蓋の細かい穴の数などの調整も行った。

残るポイントは復刻版80の周波数をどのくらいでハイカットするかというだけ。

現在手元にあるのは「6.8mh(ミリヘンリー)」(ムンドルフ)の数値を持つコイルだが、「クロスオーバーネットワーク早見表」によると、およそ180ヘルツ(6db/oct)付近でハイカットできることが分かった。

          

とにかく、やってみなくては皆目見当がつかないのでSPコードのプラス線にこのコイルをハンダ付けして取り付けた。この作業は実に簡単に済む。接続したアンプは「プリアンプ+刻印付き2A3」(いずれも真空管)シングルアンプ。

もちろんこの系統独自に音量調整ができるし、ソースによって不要なときはスイッチを入れないでおけば済むので使おうと使うまいと自由自在。

さっそく試聴した
結果、オリジナルと復刻版の音の繋がりが何だかおかしいので、復刻版のSPコードのプラス、マイナスを逆に繋いだところ正常な鳴り具合になった。どうもコイルの挿入が原因で位相が反転した模様で、理屈は不明だがひたすら聴覚優先。

ただし、もっと実験してみる必要を感じたので、今度は違う数値のコイルをネットで〇〇無線(東京)に注文した。

3日後に到着したのが「12.0mh」のコイル。

           

デンマークの著名メーカーのものだが、レコード時代に散々お世話になったオルトフォンのカートリッジを産んだ国だから音楽性の豊かさに不足はないはず。

しかし、宅急便の荷物を受け取ったときにあまりの軽さに「?」。ムンドルフのコイルに比べると随分重さが違うようでちょっと不安感を覚えた。経験上、オーディオ機器の性能は目方に比例することが多々あることを知っている(笑)。

購入した以上、「まあ、いっか」とさっそく繋ぎ替えた。「12.0mh」ということはハイカットの数値がおよそ120ヘルツ(6db/oct)というところだろう。この辺は細かく数値を詰めても仕方がないので聴感上で聞き分けるしかない。

試聴した結果、差は微々たるものでどっちがどっちとも言えないようで自分の耳では判断がちょっと覚束ない。同じ「80」仲間のKさん(福岡)に聴いてもらって確認しようと思ったところ、たまたまそのKさんからご連絡があった。

「オリジナルの最初期版の鳴り具合はいかがですか?程度のいいモノに当たられたみたいで良かったですね~。それから、復刻版の使い方ですがサブウーファーとして使ってやるといいと思いますよ。丁度200ヘルツあたりをハイカットするといいでしょう。」

「そうなんですよ!現在、丁度その作業を終えたところです。2種類のコイルで試してますが、なかなか結論が出ません。近々お見えになってぜひ一度試聴してみてくれませんか。」

         

コイルをワンタッチの着脱で簡単に取り替えられるように小型のSPターミナル2個を使って細工してみた。(上記写真)

ちなみに、この小型SPターミナルは昨日(27日)、隣町の「ノースウェスト トレーディング」社に出かけて購入したもので、経営者のSさんは相変わらずお元気そうで「メトロゴン」(JBL)の製作に励んでおられた。売れ行きも上々とのことでご同慶の至り。


さあ、道具立てはそろったので、あとは冷静な審判あるのみだが(笑)。


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オリジナル版と復刻版~その2~

2014年10月24日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

ようやく手に入れたオリジナルのSPユニット「AXIOM80」だから、グッドマン指定のエンクロージャーに取り付けるときはハラハラドキドキで緊張の連続だった。

結果的には滞りなく進んだが、作業のポイントはバッフル面への取り付けネジ(4か所)を均等に締め上げること、そしてやや軽めにしておくこと。

(SPユニットの)取り付けネジの締め付け具合はとても微妙である。以前、JBLの38センチ口径ユニットをタンノイ・ウェストミンスターに取りつけたときに、1か所のネジが緩すぎたばっかりに弱音のときに音が歪んでしまったことがあるので要注意。

          

これが取り付け終了後の画像だが、ご覧のようにSPコードは極細の単線(プラス側はクラングフィルム製、マイナス側はウェスタン製でいずれもヴィンテージ品)を使用している。撚り線を使ったこともあるがどうも音が滲むような気がしてならない。

またエンクロージャーの生命線とでもいうべき「ARU」(アコースティック レジスタンス ユニット)の部分については名設計者E・J・ジョーダン氏に逆らうようでまことに申し訳ないが、こればかりは我が儘を許してもらって、余分に極細目のステンレスの金網を上から張り付けている。

周りを赤いテープで囲んだ箇所がそうだが、この1枚で低音域がより豊かに鳴るような気がして仕方がない(笑)。

片チャンネルの作業におよそ20分、計40分でようやく無事に取りつけ完了。

さあ、いよいよ試聴である。長いことオーディオをやっているが最初の音出しのときほど緊張し、胸が高まることはない。とても最初から元気よくガンガン鳴るCDをかける度胸は持ち合わせていないので、まず可憐なソプラノ歌手「有山麻衣子」さんを聴いてみた。

実をいうと、あまりうまく鳴って欲しくないという心理もチラリと働いていた。その奥底には長年愛用してきた「復刻版」に肩入れする気持ちが明らかにあり、音質に大きな差が出るのはちょっと困るというような心境・・・。

「オリジナルと復刻版とは音質に雲泥の差がある」と散々、耳にタコができるほど聞かされてきたので、それに対する反発心ももちろん否定できない。

マニアの心理はとても複雑なのである(笑)。

そういうわけで、誰よりも両者の音質の差があまりないことを願っていたのは“ほかならぬ”この自分なのだが、実際に試聴してみると「明らかに違う!」。

低音や高音が“どうのこうの”というよりも、「音の佇まい」がごく自然で柔らかいのである。これに比べると、復刻版はやや肩肘張った強面(こわもて)という印象がする。こればかりは、片方だけ聴いている分にはなかなか分かりづらいポイントである。

日頃から“音の好き嫌い”を判断する要素のひとつとして「作為のない自然な柔らかさ」は必須だと思っているので「さすがにオリジナル!」と満足。

ようやく安心してお気に入りのCDを片っ端から引っ張り出してきて聴くとともに5台の真空管アンプとの相性を改めて探った。

「71A」、「WE300Bオールド」、「PX25」1号機と2号機、「刻印付き2A3」のそれぞれ直熱三極管シングルアンプ。

いずれも甲乙つけ難しだったが、これまでやや“くすんだ”存在だった「WE300B」と「PX25」が見事に息を吹き返したのが印象的だった。両アンプとも高域方向にややクセがあったのだがオリジナルによって見事に調教された感がある。

アンプの個性はスピーカー次第で生きもすれば死にもするので、早々に見切りをつけることなく簡単に手放さないほうがいいというのが自分の経験則。比較的容易に改造できるし、「球転がし」が出来る真空管アンプの場合、特にそうだ。

ひとしきり試聴した後にSさん(東京)に「オリジナルのあまりの音の良さに茫然としています!」とメールを打ったところ、次のような返信があった。

「遂にやりましたね!第一期バージョンの中でも最初期ロット版は数多くの80の中でも別格なのだと思います。私が手に入れたLHH2000もそうですが、最初期物は使ってある部品に手抜きが無いというのもあるのでしょうが、技術者が製品を世に問う為の気概が篭っているのでしょうか?

何故かその後で量産される物とは別物になってしまいます。設計は同じなのにオーディオ製品には間違いなくこの法則が当て嵌まるのが不思議です。サブコーンが茶色の最初期ロットは、いったい何台製造されたのでしょうか?まず市場で見掛ける事はないので、〇〇さんが今回手に入れられたのは奇跡に近いのかも知れません。それではどうぞ復刻版とは違う高音の伸びをお楽しみください。ソースはお選びになって低域は望まずフルレンジでお使いになる事をお勧めします(笑)。」

オーディオ機器の場合、メーカー側が改良と称して何代にもわたって製作するものが多いが、ほんとうに改良に値するのかどうか疑問に思うことが多い。単なる目先を変更するだけで値上げする口実になっているのでは?

古典管だって、「71A」、「WE300B(刻印)」「2A3の1枚プレート」「PP5/400」など最初期版がいまだにベストとされているので、「大量生産への移行 →コストダウン →品質劣化」の流れは残念なことに古くて新しい課題ともいえる。Sさんが仰る通り。


さて、“念には念を”で、生き証人(?)としてクルマで10分ほどの所にお住いのYさんに連絡して来てもらった。このところ、2週連続で我が家にお見えになっているので復刻版の音を熟知しておられ、オリジナルとの違いがたちどころに分かるはず。

試聴後のご感想は、やはり自分と同じだった。「明らかに違いますね。オリジナルに比べると復刻版の方が何か作られた人工的な音のように感じます。」

どうやらこれで「オリジナルとレプリカ論争」はひとまず終止符を打ってよさそうだ(笑)。

そして20日(月)の午後には大分から3名のマニアが集結。

改めてオリジナルの音を確認してもらったが「これはレコードの音と変わりませんね!」にはつい、うれしくなった。

そして後半に「JBL3ウェイマルチシステム」を聴いていただいたところ、「ジャズを聴くならやはりこれぐらいのスケール感がないと・・・」と、圧倒的な好評を博した。

日頃から大型システムを聴き慣れている向きには、小編成用の「AXIOM80」の世界に対してどうも違和感を持たれるようで、そういう意味ではとても万人向きのユニットではないことを再確認した。

さて、ようやく宿願のオリジナルを手に入れて積年の憾みに決着をつけたものの、使わなくなった「復刻版」の2セットをどう始末しようかと考える日々。

1セットだけはスペアとして取っておく積もりだが、残りの1セットは「ヤフオクにでも出すか」と思っていたところ、早朝の起き抜けにふと名案(?)が浮かんだ!
 


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オリジナル版と復刻版~その1~

2014年10月21日 | オーディオ談義

現在愛用しているSPユニット「AXIOM80」(以下「80」)はスペアも含めて残念なことに2セットとも復刻版。オリジナル版と比べて音質が落ちるという話をよく聞くが、実をいうと「もうこの音で十分」という気持ちをずっと持っていた。

しかし、同じ「80」仲間のSさん(東京)から「〇〇さんは80の伝道師だと思っていますので、ぜひオリジナル版を所有して欲しいと願ってます。」という言葉には正直言って心を揺り動かされた。

別に稀代の名ユニット「80」にふさわしい繊細な耳を持っているわけでもなし、愛着とか“こだわり”にしても自分よりもずっと熱心な方々が全国に沢山いらっしゃるので、伝道師とはちょっとおこがましい気もするが、こうしてブログでその魅力をこまめに発信するという意味では少しはその資格があるのかもしれない(笑)。

そのSさんから10日ほど前にメールが入った。

「ヤフオクに第一期版80がペアで出てます。今回のはコーン紙もカンチレバーも間違いなくオリジナルです。マグネットエッジがR形状かつサブコーンが茶色ですから完璧に最初期のものです。」

ずっと以前のブログに掲載したことがあるが、「80」は製造年代によっていろんな変遷を遂げている。大まかに分けるとⅠ~Ⅳ期ぐらいに分かれていて、マグネットの磁束、カンチレバーの薄さ、コーン紙の厚さの違いなどが指摘されている。

いずれも音質を左右する重要な箇所になるが、最初期のものはマグネットがもっとも強力、カンチレバー(下記の画像で白い線で囲んだ部分)がもっとも薄い、コーン紙がもっとも軽いとされており、音声信号に対する反応がもっとも敏感で繊細とされている。

これまで沢山の「80」がオークションに出品されてきたが、いずれも「帯に短し、たすきに長し」で何らかのキズがある物ばかりだったので、今回ばかりはSさんの言葉をしっかり受け止めて大きな期待を持ってパソコンを開いた。

該当する「80」の解説文にはこうあった。

オーディオマニアの叔父が使っていたもので定かではありませんが1940年代終わりか1950年の初めごろ購入されたと聞いております。GOODMANS社のAXIOM80の最初期タイプ保管品の出品です。目視チェックしたところコーン紙の状態は非常に良く破れや補修跡がない美品状態です。
  

1本のみボイスコイルタッチがありましたので大阪の専門業者に修理して頂きました。65年ぐらい前のアンティークなユニットですが長期保管のため多少コーン紙など埃や汚れはあります。1本はコーン紙が少し茶色に変色していますが動作、機能に関してはまったく問題なく両方とも低域、高域ともビリ付きもなく正常に動作しました。 
 
このような極上ユニットは今後出品されることはまずないと思います。 
 
バイオリン、ピアノ、ボーカル、ジャズのピアノトリオはスピード感のあるこれ以上ないサウンドを聴かせてくれます。またaxiom80のレプリカユニットもありますが外観は同じでもオリジナルとは似ても似つかないサウンドですからレプリカをお持ちの方は是非最初期タイプのオリジナルユニットを落札して聴いて使ってください。 
 
2本で一セットになります。テスト試聴では2本とも問題ありませんでした、65年前のユニットですから写真を参考にしてノークレームノーリターンでお願いします。」 

こんな文章を読むと、つい「乃公(だいこう)出でずんば蒼生を如何せん」という気になろうというものだが(笑)、文面から推測すると、おそらくオーディオマニアだった叔父さんの遺品なのだろう。なぜならマニアが存命中にオリジナルの「80」を手放すはずがないから。

自分の機器だって、一人娘はオーディオに興味がないし、甥っ子は沢山いるしで、いずれ「叔父が使っていたもの」としてヤフオクに出品される運命にあるだろうから、ホントに身につまされる~(笑)。

「名品を手に入れようと思えば所有者が亡くなったときが狙い目」とはよくいったもので、これから最初期の「80」の所有者の寿命がボチボチ尽きる頃なので世に出回る確率が高くなるかもしれない。


それはともかく、Sさんに次のような短いメールを返信した。

「いかにも程度が良さそうですね。今度こそは内心、秘かに期するものがあります(笑)。情報提供ありがとうございます。」

ようやく本物に巡り会えた気分で今回のオークションには珍しく気合が入った。

落札期日は10月13日(月)の夜。

結果から言えば、123件もの競争をくぐり抜けて見事に落札。価格の方はヒ・ミ・ツ(笑)。

今回は極上の逸品とあって通常の2割増しほどの落札価格だったが、「鵜の目鷹の目」とはよくいったもので入札参加者の皆さんホントによくご存知でホトホト感心する。

待望の現物が到着したのは、16日(木)の午後だった。じっくりと検分したが、まさに65年間にわたって注ぎ込まれてきた愛情と熱意が伝わってくるかのような程度の良さだった。以前の持ち主に負けず劣らず大切に使わせてもらいますからね~。

   

すぐにでも復刻版と取り換えて試聴したかったが、翌17日(金)に試聴会を控えていたので“はやる”気持ちを抑えた。

経験上、試聴会の直前にシステムの一部でも手直しすると、碌な結果にならないことをよく知っているから(笑)。

試聴会のお客さんは真空管アンプ製作の泰山北斗「Mさん」(福岡)で、当日は朝の8時頃にお見えになって2時間ほどの試聴でいつものようにいろいろアドバイスをもらった。お帰りになる際にボツンと一言「80で聴くジャズボーカルはなかなか面白いよ」。

いやあ、Mさんから初めて褒められました!(笑)

さあ~、いよいよ10時過ぎからオリジナルの「80」の取り付け作業開始。

なにせ精密機器なので、ネジ回しのときに手が滑ってドライバーでコーン紙を突き破ろうものなら、もう自殺ものである。「半田ごて」の取り扱いにしても、細心の注意が要る。

以下、続く。
 


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オーディオ訪問記

2014年10月19日 | オーディオ談義

昨日(18日)はまさに「北京秋天」とでもいうべき見事な快晴に恵まれて絶好のドライブ日和。

かねて予定していた福岡のオーディオマニア宅3軒をハシゴした。朝、9時に出発して丁度1時間半ではじめの訪問先のKさん宅に到着。Kさんとは同じSPユニット「AXIOM80」の愛好者として、そして真空管マニアとして親しく交流させてもらっている。

1か月に1回ほどのペースでお互いの家を行ったり来たりなので、どういう音かは熟知しているのだが、何せKさんは真空管アンプをパワーアンプだけで7台ほど持っておられるので訪問するたびに違うアンプとの組み合わせで聴かせていただいているのでまったく飽きることがない。

音声信号への繊細な反応とスピード感において「AXIOM80」の右に出るユニットはないと思っているが、これまた駆動するアンプの性格の差をこれほど如実に出すSPも珍しい。

今回は真空管2A3シングル・アンプで駆動されていたが、使用されている真空管2A3は稀少管とされる最初期の一枚プレートのもの。

「2A3」真空管といってもピンからキリまであって、いろんなタイプがあるがこの「一枚プレート」ものが最高峰とされている。RCAがライバルのウェスタンの300Aに負けじと満を持して発売したのがこの「一枚プレート」もので、これで300Aを駆逐したそうだがさすがにそれにふさわしい実力の持ち主であることを確認した。

この一枚プレートものは1年ほど前のオークションで16万円(ペア:RCAカニンガム)という破格の値段で落札されていたがマニア垂涎の的であることは間違いない。

1時間ほど堪能させてもらってから、今度はKさんのクルマで一路福岡市の中心部「天神」へ。二件目の訪問先は老舗の和菓子屋さんのGさん宅。

            

             

新たにプッシュプルアンプを組み立てられたとのことで、その試聴が主な目的。ジェンセンの口径46センチウーファー
(フィールド型)とウェスタンの555ドライバー+ストレート・ホーンの威力は前回の訪問で十分認識しているが、今回はそれに輪をかけたような音が出ていた。

数多くの場数を踏んだKさんが「これまでウェスタンの555ドライバーを使っているお宅をいろいろ聴いてきましたがその中ではベストの音でしょう。」と断言されるほどだから間違いなし(笑)。

Gさんによると「(555に取りつける)ホーンはいろいろ試してみましたが、カールホーン(曲がりくねったホーン)はどうしても正確な位相が取れなくて使いこなせませんでした。このストレート・ホーンにしてからやっと落ち着きましたが、低音域との位相がピタリと合うと、リスナーの周りを音が取り囲むようになります。」とのことで、我が家ではまだまだの感を深くした。

それにしてもアンプ技術者のGさんはとても器用な方だし、飽くなき探究心の持ち主なのでこれからも様々な工夫をされていかれるに違いない。

Gさん宅の試聴を終えて、次に向かったのが同じ福岡市内の郊外にお住みのNさん宅。

             

ここでもGさん宅と同様にあの名管の誉れ高い「WE300B」真空管を駆逐されて、新しい出力管に変更されていた。

音質も前回のときよりもずっと上回っていて、Kさんともども「素晴らしい音ですねえ!出力管を替えて正解でしたよ。」

Nさんも今となってはWE300Bにまったく未練はないそうで、つくづくオーディオはブランドじゃないですよねえ(笑)

持参していた「有山麻衣子」さんのCDをじっくりと聴かせていただいた。 

    

このCDにはKさんもゾッコンで大好評。この前の福岡の3人組も感心していたので、聴く人すべてが魅了されている。

企画・指揮した「宇野功芳」(音楽評論家)さんによると「声の訓練を日常受け続けるプロの歌手には絶対こんな声は出ない。ぼくはクラシックの歌手にアレルギーを持っている人にこそ、このCDを聴かせてあげたい。なまじ専門の声楽を習っている人は文句をつけるかもしれないが、芸術の一番の敵は常識なのだ。」

1時間半ほど聴かせていただいて、5時頃に辞去して夕闇迫る中をKさん宅へ急いだ。ベンツの高速安定性には脱帽しました(笑)。

「秋の夕べはつるべ落とし」で、Kさん宅に到着したのは6時頃だったがもうすっかり暗闇状態。

「夜の高速道の運転」は危険回避の意味でタブーにしているが、今日1日こんなに楽しい思いをさせてもらうと不満は言えない(笑)。

不安とはうらはらについビュンビュンとばして、1時間半で見事に自宅に到着。

テレビを観ている巨人ファンの家内が「また6点も取られている」と怒り狂う中、小さくなって夕食を取ったことだった(笑)。

 


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人物往来記 

2014年10月16日 | 独り言

☆ 運動ジムでの知り合いの方

去る13日(月)のこと、猛烈な台風19号の襲来により、いつもは午前中に済ます運動ジムでのトレーニングを午後に回して、閑散とした中でストレッチをしていたところ、旧知のご婦人とバッタリ出会った。外国旅行がお好きで見るからに知的でハイカラな方である。

「いやあ、お久しぶりです。台風のせいで午後に来ました。滅多にお会いできませんがお元気でしたか?」

「はい、相変わらずです。ブログいつも読んでますよ。ポチッといつもランキングを押してます。いつも1位ですが、2位のときは2回押してます!」

「どうもありがとうございます。ホントに感謝です。」

いつもオーディオがらみの内容なので門外漢には難しいにもかかわらず、こうしてきちんと追跡していただいている方がいる。こういう支えのおかげでブログを続ける意欲が湧いてくる~(笑)。

ちなみに運動ジム通いの方々にもいろいろ知り合いがいるが、(自分の)ブログの存在を明かしているのはこの方だけである。3年前に心臓にステントを入れる手術をしたときに、ご長男が国立大学の医学部卒ということもあって医学にも詳しく、薬の飲み方など親身になって心配していただき、それ以来お会いするたびに親しく言葉を交わしている。

しかし、そういえばまだお互いの名前さえも知らないのはちょっと変~。今度お会いしたときはせめてそれぐらいはお伺いしておこう(笑)。

☆ 我が家に来た大工さん

そろそろ冬の到来を心配する季節になってきた。猫の額ほどの小さな庭に家内が蘭などの観葉植物(?)を熱心に育てているが、小さな温室を作りたいとのことで、改築したご近所の紹介で当の大工さんに来てもらった。昨日(15日)のことだった。

すぐに工事にとりかかられたが、目ざとく庭の片隅に積んである大量のCDケースに気が付かれた模様で、家内に「ご主人は音楽が好きなんですか。実は自分も演歌が大好きでいつもクルマの中で聴いてます。」

というわけで、家内がその大工さんを我がオーディオ・ルームに案内してきた。

「ワァ~、凄い!」オーディオに素人の方が、室内に入られたら10人が10人とも同じ言葉を吐かれる(笑)。

歌謡曲とくれば光テレビの「ミュージック部門」に限る。

坂本冬美、美空ひばり、青江美奈など次から次に聴かせてあげたが、「実に澄んだ音ですね。こんな音は聴いたことがありません!」

それはそうでしょうねえ、システムの内訳は、dCSのCDトランスポート、ワディアのDAコンバーター、真空管71Aシングルアンプ、「AXIOM80」で聴くボーカルのレベルは、ちょっと自画自賛になるが相当なものである。

ひとしきり聴いていただいた後で、今度は「JBL3ウェイ・マルチ・システム」に変更して再び同じ曲を聴いていただいた。

単刀直入に「どちらがお好きですか?」と伺ってみたところ、「後で聴いた方(JBL)が、実際の本当らしい音に感じました。その点、はじめに聴いた方(AXIOM80)が、何か音づくりをしているように感じましたが、それが実に魅力的な音になっていて強く引きつけられました。断然はじめに聴いた音の方が好きです。」

同感! 素人さんの耳は怖い(笑)。

30分ほど熱心に聴かれてから、未練タップリに仕事に戻られたが「これから、気が向いたときはいつでもどうぞ~」と、申し上げておいた。

☆ ご近所の方

大工さんの試聴が済んで小1時間も立たないうちに玄関のチャイムがピンポ~ン。今日はやたらに忙しいなと、出てみると自治会の会計をしていた当時に知り合いになったご近所の方(徒歩で10分ほど)だった。

床清掃のモップの勧誘をされているそうで、「現在無料のお試し期間中なので使ってみませんか」。

「はい、家内が不在ですので預かっておきます」と、引き取ったが、大工さんの“ほとぼり”がまだ冷めやらぬ後ということもあって、つい「オーディオルームを見てみませんか」と大胆な言葉が出てしまった(笑)。

物怖じしない方とみえて「エッ、いいんですか」と、履物をサッと脱いで室内に入られた。どうやら人畜無害と思われたらしい(笑)。

ここでもまた、「ワァ~、凄い」。是非写真を撮らせてくださいと4枚ほどパチリ。

実際に聴かせてあげると、非常に音楽が大好きな方で澄んだ眼をキラキラ光らせて大感激。

はじめに光テレビの歌謡曲をひとしきり、次に「もっと音がいいですよ~」とCDに移行。

「ほんとにこれがスピーカーから出ている音なんですか?まるで目の前で歌手が歌っているみたいです。もう生演奏と変わりませんね!」

極め付きとなったのはジャズの名盤中の名盤「エラ&ルイ」。

      

「トランペット(サッチモ)の音がまるで突き刺さってくるみたいです!ジャズを初めて聴きましたが実に雰囲気が素敵ですね。これなら大好きになれそう。」

大工さんといい、この方といい、これほど素直に喜んでもらうと、実に気持ちがいい。久しぶりに世の中で善行を施した思いがする(笑)。

「単身赴任している主人にオーディオルームの写真を見せます。週末にでも一緒にぜひまた聴かせてください。」

「はい、いつでもどうぞ~」

☆ メールのやり取り

14日(火)に興味深いメールが飛び込んできた。お名前は仮にYさんとしておこう。

「はじめまして。いつも 貴ブログを楽しく読まさせていただいています。私は 40代後半のクラシック音楽好きで、オーディオにも興味があります。

あまり大きな音を出せない環境なので、音楽はヘッドフォンで聴いています。貴ブログを拝読しているうちに、私も 真空管アンプに興味が湧いて来たのですが、ヘッドフォンでも 真空管の良さは判るものなのでしょうか?

よろしかったら貴殿の見解を教えていただけないでしょうか。」

こういうメールは大歓迎である。自分も青春時代の間借りしているときに、スタックスのコンデンサー型ヘッドフォンを愛用していたので、ヘッドフォンの実力は十分織り込み済み。折り返し、すぐに返信。


「いつもブログを読んでいただいているようで、誠に有難うございます。お訊ねのヘッドフォンと真空管アンプの組み合わせですが興味深いテーマですね。

経験が無いので断言はできませんが、ヘッドフォンは非常に緻密な再生能力を持っていますので、むしろヘッドフォンだからこそ真空管アンプの良さが分かるように思います。ただし、真空管アンプといっても出力の小さいシングルタイプからプッシュプルタイプまで様々です。

もし使うとするならシングルタイプが良いと思います。一番いいのは、実際に聴き比べをしてみることですが・・・。」

すると、すぐにYさんから次のメールが届いた。

「おっしゃるように ヘッドフォンの中には 細かい音まで 拾うような精度の高い製品があります。例えば、私が所有している4台のヘッドフォンの内、リファレンス機として使っている ドイツ老舗メーカー、 ベイヤー・ダイナミックの T1 で 貴ブログで紹介されていた「有山麻衣子さん」のCDを 聴いてみると、かなりの臨場感で 会場内の 空調機の音まで聞こえる程です。

もちろん、 ヴィンテージ・スピーカーなどとは比べ物にはなりませんが、真空管アンプで聴くと どんな音がするのか 気になる所です。やはり、実際に聴いてみるのが 一番だとは思うのですが、 年末に帰省した際にでも、オーディオショップを回って見ようと思います。」

「ヴィンテージ・スピーカーなどとは比べ物にはなりませんが」とは、たいへんなご謙遜である(笑)。すぐに返信。

「ヘッドフォンの音は、ずっと以前にスタックスのコンデンサー型で聴いてましたのでその威力は十分知ってます。その音質はとてもヴィンテージ・スピーカーでも太刀打ちできませんよ(笑)。

それから、よく考えてみますとヘッドフォンとアンプの接続はどんなになるんでしょう?アンプ側には通常プラス、マイナスのSP接続端子が両チャンネルごとについてますが、ヘッドフォンだと、専用のジャックが必要ですよね。とすると、真空管アンプにも専用のジャックが要ると思いますが・・・・」

すると次の返信メールが。

「スタックスのヘッドフォンはコンデンサー型なので専用アンプが必要ですが、一般のヘッドフォンは たいがいのアンプに付いているヘッドフォン用端子にジャックを接続して使います。ですので ヘッドフォンアンプ一台あれは、色々な機種を楽しむ事が可能です。

ただ、ヘッドフォンはCDプレイヤー アンプ、ラインケーブル等 上流の機材に非常に影響を受けやすいので、きっちり鳴らすためには 組み合わせが大変難しいです。その点では 大変 おこがましいのですが、AXIOM80 に似ているかも知れませんね。(笑)」

成る程!凄く分かっておられる方である(笑)。Yさん、メールを無断引用しましたがどうかお許しください。


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困った!CDトレイが開かない

2014年10月14日 | オーディオ談義

去る9日(木)に泊まり込みの予定で福岡に行ってきた。

病院に入院している親族の治療がなかなか”はかどらず”、とうとう「緩和ケアしか処方出来ません」なんて、病院側から最後通告されたのでやむなく、とある大学病院の専門外来「セカンド オピニオン」(予約制)の受診に立会うためだった。

想像を絶するほどの立派で大きな病院だったが、ズラリと並んだ20あまりの診察室の一室で第一外科の「T教授」直々の見立てにより、「方法はバイパス手術しかありません。」の明快な一言で、きれいサッパリ解決の方向となった。

こういう究極の選択肢があるのなら、「入院先の病院が素直に紹介状を書いてくれればいいのに」と思ったが、お医者のつまらないメンツ(無知かも?)で患者の大切な命が左右されるなんて、そんなことがあっていいのだろうかと思わず義憤にかられた。

病院のレベル、医師のレベルには私たちが想像している以上の格差があることを改めて思い知ったが、そもそも「セカンド オピニオン」の専門外来を設けてくれていること自体が「地獄に仏」のようなもの。もちろん受診するには紹介状が要るが、今回は、とある医療機関(関東)からのもので経緯は長くなるので省略。

とにかく一般の病院では手の施しようがない難病患者に対して「セカンド オピニオン」としての役割の自信があるというわけで大学病院としての面目躍如たるものがあるが、逆に「最後の砦」から見放されると、まるで「青菜に塩」みたいになってしまいそう(笑)。とにかくメデタシ、メデタシ。

さて、この日は娘の所に泊まったが、「お父さん、この前のブログで藤田恵美さんのCDのことを書いてたけど、私も2枚持ってるよ。」と、貸してくれたのが次のCD。

        

購入しようと思っていたので「ラッキー」。ついでに東野圭吾の新作ミステリーも2冊。趣味が似かよった子供を持つと親は助かります(笑)。

ところで、一昨日(12日)、井上陽水のCDをクルマの中で聴こうと思って、コピーしたところコピー用のCD-Rの制限時間70分をオーバーしたため最後の18トラックが尻切れトンボになんてしまった。

「最後の一曲ぐらいコピー出来なくても、まあ、いいか」と、諦めて、念のため「CDトランスポート」(dCSの「ラ・スカラ」)で再生可能かどうか確認しようと、トレイを開けて放り込んだところ、「READ OUT」という表示が出たままでウンともスンとも言わずに動かなくなった。

           

通常の制限時間内にきちんと収まったコピーCDはこれまですべて再生してきたが、こういう尻切れトンボの中途半端なCDとなると初めてのケースで機器の方が必死で信号を読み取ろうと努力しているのだろうが、何とも手の施しようがない。

「さあ、困った!」。取説を改めて読んでみても、こういうケースは想定していないと見えていっさい対処方法が書かれていない。やむなく天板のネジを外してCDを直接取り出せないかと、20分ほどいろいろ格闘したがまったく処置なし。

「ヤレヤレ、販売店まで送り返すしかないか~」と嘆息。この大きな図体をしたCDトランスポートを、あのでっかい専用のトランクに入れて送り返すことを考えただけでウンザリ。送料だってバカにならないし~(笑)。

           

この際、頭を冷やそうとクルマで15分ばかりの公園まで出かけて台風間近の小雨交じりの中をウォーキングしながらいろいろ考えてみた結果、次の2点が浮かんだ。

 まず「CDトレイが開かない」でググってみよう。何か対処方法が書かれているかもしれない。

☆☆ 機器のスイッチが入って読み取り機能が働く前にCDトレイの引出機能を感知させるために、エジェクトボタンをずっと押したままにして、いきなり電源スイッチを入れる。

いつも三周するのに55分ほどかかる“ゆったりウォーキング”だが、早く家に帰って試そうと“つい”急ぎ足になってこの日は何と50分ほどで終了(笑)。

帰宅するなりググってみると、パソコンのトレイが開かないケースについてウィンドウズの操作方法ばかり書いてあって、肝心のCDトランスポートのトレイの開け方は一行も書かれてなかったのでガッカリ。

次に二番目の方法として「☆☆」を実行。

いやあ、これでやっとうまくいきました!!

エジェクトボタンを20秒ほど押し続けにしていたら「<PLEASE」と小さなウィンドウに表示が出たので手を放して、改めてエジェクトボタンを押したらこともなげにトレイが開いた。

急いで陽水のCDを取り出して「このCDは絶対使用不可」と付箋をでかでかと貼ってやった(笑)。

今回の騒動によって、うかつに「変なコピーCD」をかけてはいけないと肝に銘じた。

たまたま12日(日)の早朝に、このところ音信がずっと途絶えていた真空管アンプ製作の泰斗Mさん(福岡)から珍しく電話があって「17日(金)に用事があって別府に行きますので、ついでに試聴させてください」との連絡があったばかり。

このままだったら、やむなくお断りのご連絡を差し上げようかと危惧していたところだった。

Mさんは滅多にお会いできる方ではないし、やや直情径行の方なので「君は何か僕に聴かせたくない理由でもあるのか!?」と思われそうで、それがイヤだったのだが、これでスッキリ悩み解消。16日まではいっさいコピーCDは聴かないことにしよう(笑)。
 


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女性ボーカル

2014年10月07日 | 音楽談義

このところ最近導入した「ひかりテレビ」の新型チューナーにすっかり嵌ってしまった。なにしろ100万もの曲目が聴き放題だし”頭出し”が簡単ということもあっていろんな曲目を指定リストに入れているが、その中でもよく聴いているのが「なごり雪」。

ずいぶん古い曲だが、隣室に居る家内にも音が洩れ伝わっているとみえて、日頃は音楽にまったく興味を示さないのに「♪ ~去年より ずっと きれいになった~ ♪」と“くちずさみ”ながら、「この歌いいわね!」と言う。

「そうだな~」と生返事をしながら「な~に、お前の場合は“♪~去年より ずっと シワ・シミ増えた~♪”だろ」と、思ったが、実際に口に出すと非常に恐ろしいことになりそうなのでぐっと我慢した(笑)。

それにしても我が家には音楽好きのマニアがいろいろお見えになるが、総じて「女性ボーカル」は人気の的である。

先日のブログでも紹介したように「母親の胎内に居るときから女性の声を聴いているので大人になっても郷愁を覚えて安らかな気持ちになる」という説も十分頷けると思っている。

それに年齢を重ねていくと、オーケストラやオペラなど大掛かりな仕掛けを要する曲目と段々縁遠くなっていく傾向があるように思う。実をいうと自分の場合、近年こういう曲は聴く前から何だか気分が重たくなってくるのである。ベートーヴェンのシンフォニーなどは最たるもので、なかなかCDに手が伸ばないが、音楽鑑賞といっても重量級ともなると何かしらの心的エネルギーが要るのかもしれない。

さて、去る4日(土)に我が家に来てくれたオーディオ仲間たち(3名:福岡)にも女性ボーカルは総じて評判が良かった。

藤田恵美さんのCDもそうだが、とりわけ好評だったのが「有山麻衣子」さんの天使の歌声。

さすがに「宇野功芳」(音楽評論家)さんが見込んでCD化しただけあって、「まるで心が洗われるような声!変に技巧をこらしていないので清純、可憐そのもので実に曲目とマッチしている。」と、感嘆の声が上がった。

          

内容は「十五夜お月さん」「七つの子」「牧場の朝」などの唱歌集(全24曲)。ちなみに、この分野では「鮫島有美子」さんが有名だが「CDを持ってるけど何だか魅力に乏しくて、何度も聴こうという気にならない。」と、どなたかから発言があったが自分もまったく同感。

この有山麻衣子さんのCDについては「是非、欲しい」との声が上がったものの、「コピーは法律違反になるしねえ~」と、ハタと当惑(笑)。

我が家のCDコピー機は「プレクスター」(現在発売中止)といって、今でも世間では評判がいいようだが、発売以来かなりの時日が経過していることもあり、度重なるOSの変化に対応しきれず、書き込み速度となると「4倍速」しか選択できないのでコピーに時間がかかり過ぎるのも難点。そういうわけで、この場では涙を呑んでもらった(!?)。

ところで、6日(月)の朝一で別の用事があって「AXIOM80」仲間のKさん(福岡)にご連絡したところ、用件の終わりがけに「4日(土)の試聴会の結果はいかがでしたか?」

「それがですね~、一番評判が良かったアンプは意外にも“刻印付き2A3アンプ”でしたよ。」

「エッ、71Aアンプでボーカルを聴いてもそうでしたか?」「はい、皆さんどちらかと言えば協奏曲や管弦楽などの重めの曲目がお好きなようでJBLシステムの出番もかなりありました。なかなか思惑通りにはいかないものです。」

「やや大がかりな曲目になると71Aアンプにはちょっと厳しいかもしれませんね。しかし、刻印付き2A3アンプが評判が良かったことは十分納得がいきます。この球は別格ですからね。」

          

今さらだがアンプやスピーカーの好みは日頃聴く音楽のジャンルによっても大きく左右されるようだ。たとえば、「AXIOM80」は自分のようにボーカルや小編成を主に聴くタイプには向いているが、大編成の音楽を好きな人には明らかに不向き。

音の好みは“人それぞれ”で、「スピード感重視派」や「スケール感重視派」などのいろんなタイプがあって、自分の嗜好が普遍的なものだとはけっして思わない方がいい。そういう意味では自分の愛器を冷静に見つめるいい機会になった。

ただ、ボーカルなどの小編成とオーケストラなどの重量級を両方とも十全に再生できる万能タイプのシステムとなると非常に難しい。片方を立てれば、片方が立たずで、繊細・緻密さと豪快さは両立しない。両方とも中途半端に再生するのならそういうシステムは要らない。

これには異論のある方もいるかもしれないが、もしボーカルを「AXIOM80」以上にうまく再生できるSPユニットがあるのなら教えて欲しい(笑)。
          

それにしても、あれだけ念を入れて4日の試聴会のために準備したつもりが、終わってみると機器の突然の不調などがあって反省点がいくつもあった。

多彩な感性を要するオーディオという分野で完璧を期すのはどうやら並大抵の努力では追い付かないようで~。

ま、本人の能力不足もあるのだが(笑)。

 


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音のスピード感

2014年10月04日 | オーディオ談義

さあ、今日(4日)は待ちに待った我が家でのオーディオ試聴会。

「音楽とオーディオ」好きの仲間たち(福岡高校の同窓生3名)が高速バスでやって来る。前回は4月上旬だったのでおよそ半年ぶりの再会となる。

今回も「出来る限りいい音を聴いてもらおう」と、このところ準備におさおさ怠りなかったが、実はこれまでのおよそ7回ほどの試聴会では、事後になって「しまった!もっと組み合わせ次第でいい音が出せたのに~」と後悔することばかりだった(笑)。

それもこれも、自分の耳が「イマイチ」のせいだが今回はどうやら完璧の態勢で迎えることが出来るようだ。

その安心感の由来は同じ「AXIOM80」仲間のKさん(福岡)。

タイミングよく2日(木)にお見えになって4時間ほどみっちり試聴してもらった結果、「これまで聴かせてもらった中では最高の音です!」とのお墨付きをいただいた。

この日もいろんな真空管を持ってきていただいて「球転がし」をしながら二人で痺れまくったが、その顛末をかいつまんで述べてみよう。

はじめに聴いたのが「刻印付き2A3」出力管アンプだが、Kさんが持参されたのは1930年代の「一枚プレート」のアクチュラスとシルヴァートーン。まず滅多に手に入らない高価な稀少管である。

これは横綱同士の戦いをみるようでいずれも甲乙つけ難しだったが、後者の方が製造年が古いだけ音の厚みの点で一日の長があるように見受けた。初心者向きの球とされる「2A3」だが、ピンからキリまであってこのクラスになるとまったく別物である。

ちなみに試聴盤(CD)はKさんが持参された「フルートソナタ集」(バッハ)。レーベルはフィリップスで奏者はラリュー。通常フルートといえばランパル(フランス)が有名だが、Kさんによるとラリューの方が音楽性が豊かとのこと。レコード盤で擦り減るほど聴かれて、CDで復刻されるとすぐに手に入れられたそうだ。

楽器の中でもフルートとギターの再生はシステムのアラをたちどころに出す傾向がある。音のスピード感が悪いと何の変哲もない音になってしまうが、その点、「AXIOM80」はスピードに関してはまったく不安がない。

ひとしきり、2A3アンプの試聴を終えて今度は「71A」アンプへ。

ここで、試聴盤にボーカルを加えてみた。先週の土曜日にお見えになった近所のYさんが優秀録音盤として置いていかれた「藤田恵美」さんのCD。

         

「まるで唇の動きまで分かるような克明な再生音です。これはスピーカーから出る音ではありませんよ。もう肉声に近いですね。類稀(たぐいまれ)な音のスピード感がないとこうはいきません。ずっと浸っていたい音ですねえ~」とKさんが感嘆しきり。

耳のいいKさんがここまで“べた褒め”されるのは極めて珍しい。

家庭にオーディオシステムを持ち込んで本格的に音楽を聴くとなると、とても一筋縄ではいかないのはマニアならご承知のとおり。再生するに当たっていろんな留意点があると思うが、低音や高音がどうとかこうとかいうよりは、「音のスピード感の有無」が一番ではなかろうかと最近思うようになった。ちと、遅きに失したかな~(笑)。

ただし「音のスピード感」といっても、ちんぷんかんぷんの方もいるだろうが、まあ、俗に言えば音の立ち上がりと立下りのときの時間的なスピードのことだが、おそらく1000分の1秒ぐらいの世界だから、こればかりは他流試合で自分の耳で体験して実感するしかない。

それにしても、71A真空管のなかでも最初期(1930年前後)に作られた「特殊な71」管の威力はもの凄い!最近になってKさんからのご連絡でオークションでペアを運良く手に入れたものだが、まさに僥倖だった。

また、これは個人的な意見だが「音のスピード感」は真空管の大きさにも関係してくるようで、名三極管とされるWE300BやPX25にしても図体が大きいだけスピード感が劣るような気がしてならない。

最近お見えになったお客さんのOさんやYさんもKさんと同様に口をそろえて、“71Aが一番いい”と感心されて帰られたたので、ここまで評価が揃うと実に頼もしい。

         

今日はきっと71Aアンプがオーデイオ仲間たちを心から驚かすに違いない。

もう今から胸がワクワクする~(笑)。
 


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暮らしの中の左右学

2014年10月02日 | 復刻シリーズ

昨日(1日)は恒例の定期検診日だったので午前と午後に分けてお医者さん巡り。

午前中は内科だったが、血液検査(9月1日)の結果がやたらに良くて「ずっとこの調子で!」と、お医者さんも太鼓判。ただし、「先生、最近左足の親指の付け根が痛いんですが」と言って、実際に靴下を脱いで患部を見せたところ、少し赤くなって腫れていた。

「これは痛風かもしれないよ!最近酒量が増えたということはありませんか?」「いやあ、実はちょっと思い当たります・・」「そうでしょう。これからしばらく飲酒を控えてください。湿布薬を出しておきます。」とのご託宣。

ヤレヤレ、4日(土)の夜に高校の同級生たち(3名:福岡)とオーディオ試聴後に酒盛りを予定しているのでそれまでの3日間は断酒とするか~。

そして、午後は整形外科へ。

ここでも馴染みの医師に「先生、左足の・・・」と患部を見せたところ、「これは痛風ではありませんよ。赤くなっているのは歩行の際に靴と擦れたときの摩擦のせいでしょう。外反母趾で骨が変形しているかもしれませんので念のためレントゲンをとってみましょう。」

その結果、「骨は変形していないようです。だいたい1日どのくらい歩いているんですか?」

「朝食後に30分、午後は50分ほど歩いてます。」「そんなに歩いているんですか!えらい健康的ですね。」「はい、“歩かないと死ぬ”という覚悟で歩いてます(笑)。しかし、どうして左足だけ悪くなるんでしょう?」

「歩くときに自然と左側に重心がかかっているせいでしょう。どうしても個人差がありますが、○○さんは極端のようですね。これからは足の形にあった靴を履くことが大事ですね。適切なインナーソール(中敷き)を入れて足の甲を高くすると負担が少なくなりますよ。」

そこでやおら医師が取り出したのが100円ショップで売っている「うおの目パッド」。これを患部に貼って歩くと痛みが和らぐという。そこで、さっそく帰りに100均に寄って購入した。

        

それにしても、同じひとつの身体なのに左と右とでどうしてこうも重心が違うのだろうか。

ふと、ずっと以前に「左と右の違い」についてブログで薀蓄を傾けた記憶が蘇った。調べてみるとおよそ4年半前の記事だった。大半の方が忘却の彼方だろうから、以下、再掲してみよう。

私たちの日常生活の中であらゆる場面に影響を及ぼしている「左」と「右」との区分。

日頃、当たり前のことと受け止めて特に意識することはないが改めてその意義に気付かせてくれたのが次の本。
 

                 

著者は「小沢康甫」(おざわ やすとし)氏。

民間企業の勤務経験を持つごく普通の方で学者さんではない。個人的な興味のもとに長いこと「左右の探求」を両脇
に抱え込んで「病膏肓」(やまいこうこう)に入られた方である。

とにかくあらゆる分野にわたって「左」と「右」の概念が追求される。たとえば、「衣服の右前・左前」「男雛・女雛の並べ方」「野球の走者はなぜ左回りか」「人は右、車は左」「イスラムの右優越」など。

とても全部を紹介しきれないので興味を覚えた部分をごく一部抜粋してみた。

☆ 語源を探る

 → ”口”と”ナ”からなり、「口を使い、手を用いて相助ける意」。のちに”佑”(助ける)が本義となり「右」は単なる右手の意となる。

熟語として「天佑」「佑筆(貴人のそばで文書を書く人)」など。

 → 工具の意を表す「工」と”ナ”からなる。のちに”佐”(助ける)が本義となる。工具を左手に持って仕事を助ける意。

熟語として「補佐」「佐幕」。

筆者註:こうしてみると我が県のお隣の「佐賀県」という県名はたいへん語源がいい。「賀(祝うこと)」を「佐〔助ける)」とある。それに比べてわが大分県は「滑って転んで大痛県」と揶揄されるのが関の山!

左右はとかく左翼・右翼のように対立の関係で捉えられがちだが字源をたずねると左右双方から人や物事を助けていく、或いは左右相補ってことが進む点にこそ真骨頂がある。

次に、言い回しの由来を記してみよう。

 左うちわ

安楽な暮らしのたとえ。利き手でない左手で仰ぐと力が弱く、いかにもゆったりしている。そこから差し迫っていない、余裕のある暮らしに意味を通わせた。同様の例として、最も信頼する有力な部下を指す「右腕」がある。

 トラック競技の左回り

現在、陸上競技の競争は「規則」により
「走ったり歩いたりする方向は、左手が内側になるようにする」
とある。

根拠は不明だが有力な説が7つほどあって、そのうちの一つがこれ。

男性の場合、「睾丸」の左右のうち左の方が低い位置にあり、心臓が左によっていることもあって重心は左にかかる。走るには重心寄りに、つまり左に回った方が楽。

男性にとって日頃まったく意識しない「睾丸」の左右の違いを指摘されて本当に「目からウロコ」だが、これについては別項の「人体ウォッチング」にも次のようにある。

「睾丸」は一般に左の方が右よりも低い位置にある。大島清氏(生殖生理学)によると、その率は日本人で75%、米国人で65%。

その理由をこう述べる。

大半の人は右利き、つまり左脳優位であり右の挙睾筋〔睾丸を上げる筋肉)を収縮させるので右の睾丸が吊上がり、左側が相対的に下がった状態になる。つまり、左右の脳に差のあることが睾丸の高さの左右差をつくり、歩いても走っても激しい運動をしても、睾丸同士が衝突しないようにできている。

左右の睾丸が重なったりぶつかったりすれば、双方とも傷つく恐れがある。睾丸は精子の製造工場だから、これは由々しき一大事。左右差は子孫を残すための「天の配剤」といえる。

以上のとおり、本書は「左右」学の薀蓄(うんちく)極まるところ、通常まったく意識しない人体の微小な差異にまで及び、まことに新鮮味があって面白かった。

というわけで、自分の場合(右利き)もどうして左足に重心がかかるのか疑問が氷解した次第(笑)。


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