「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~デジタルアンプと真空管アンプ~

2008年05月27日 | オーディオ談義

日によって音が歪んだり、ガサガサと小さな雑音がしていた片方(右チャンネル)のSPユニット「アキシオム80」が、この程ようやくご機嫌を直してくれた。

カンチレバーのネジを締めたり、緩めたり、アンプの責任かもと疑ってみたりいろんな対策を講じてきたが、結局決定的な処方は簡単そのもので、
平面バッフルに取り付けているユニットの上下を逆転させただけ。

どうやら取り付け位置を一定のままにしておくと重力によって自然とコーン紙の丸い形がいびつになってボイスコイルが周囲と接触するのが原因のようだ。一般的にもSPユニットはときどき取り付け位置の向きを変えてやった方がいいという話はよく聞く。

ただし、何も音に異常がないときに無理して変える必要はないが、「アキシオム80」の場合特にデリケートなつくりなのでことさらに神経を使わねばならない。

ただし今回の措置で未来永劫破綻無しと考えるのは甘すぎるのでとりあえずは一段落という表現が適切だろう。

さて、こうしてひととおり落ち着きシステム構成が一段落すると久しぶりに湯布院のAさんのご意見を聞きたくなった。

電話をしてみると、自分の先日のブログ「難しいアンプ選び」をご覧になっていて、そんなに「アキシオム80」用のアンプ選びに苦労しているのなら、
「ソニーのデジタルアンプを持っていきましょうか」とのご提案。

デジタルアンプはこれまでまったく聴いたことはないが、低域はともかく中高域の素直な伸びと美しさは噂には聞いている。この際、アンプの最新技術の粋を聴いてみようかと思わず食指をそそられた。真空管アンプと音質を比べる絶好の機会でもある。

これまで真空管アンプを信奉し、使い始めて随分と時も経つが、もしかすると
”井の中の蛙”になっている可能性は大いにある。とにかく音が良ければ真空管でもデジタルでもどちらでも構わないのが偽らざる本心であり、真空管に義理立てする理由は一切ない。

「是非お願いします」と、すかさず言葉が躍り出た。

湯布院から別府までクルマで約30分、我が家ではアンプが本格的な調子になるには30分ほどかかるので丁度いい時間、早速電源スイッチを入れた。

お見えになって、まずはじめに現在「アキシオム80」専用の300Bアンプ(モノ×2台)用の3種類の真空管テストを実施。

1 ゴールデンドラゴン 4-300BC

 ウェスタン・エレクトリック WE300B(1950年代製造のオールドタイプ)

 CR 4300B

試聴の結果、がよかった。彫りが深くてエッジが際立っており音の形がきちんとした正三角形(底辺は中域)になっているとのAさんの弁だった。

については、これでも十分聴けるが高域が細身になりすぎているとのご意見。


については音が1枚ベールがかかったように曇ってしまって論外だった。

さて、についてだがブランドの真空管であり、昔、大枚のお金をはたいて購入した経緯もあって個人的に思い入れがある。

オーディオはお金を目の前に積み上げて聴くわけではないので安い真空管に負けてもしようがないが、贔屓目にみなくても
音色に捨てがたい魅力があると思っている。

SPとの相性、設計回路、出力トランスなどの条件で真空管の実力は大きく左右されるのでWE300Bオールドを何とか生き返らせる環境整備をとひそかに思う。

真空管テストがひととおり済むと、今度は早速デジタルアンプに交換といきたいところだが、クロスオーバーをカットする簡易フィルター(300Bアンプには内臓)が手元にないのでやむなく大型コンデンサー3個組み合わせて約250ヘルツ付近でカットしてみた。

つまり250ヘルツ以上をデジタルアンプの再生周波数帯域として試聴したわけ。

                       
           コンデンサー(1ペア)             デジタルアンプ

過大入力のときはSPユニットを破損することがあるので、始めはボリュームを最低限にしぼり、ゆっくりと上げていった。

デジタルボリュ-ム+8のところがベストマッチでバランスが取れた。なかなかクセがなくて素直な音という第一印象を持った。それにノイズ感がなくて聴きやすい。

これなら結構聴けそうで、早速いろんなCDの試聴に移ったがなかなか破綻を見せない。ソースとしては厳しいグリュミオーが弾くヴァイオリンもきちんとなんなく再生する。

これはお買い得品かも思ったが、念のためジャズの
「サキソフォン・コロッサス」の第1曲目「セント・トーマス」の冒頭のシンバルの音を聴いてみた。

このシンバルの音が十分に再生できず過去に泣いた機器は数知れないが、このデジタルアンプはどうだろうか?

結果は残念だがガッカリ。シンバルの音がチャリーンとは鳴ってくれず、金槌で鉄板を叩いたようなキャーンといった音になった。他のソースではあんなによかったのにこのソースだけなぜ悪いのかと簡単に諦めきれない気持ち。

よく考えてみると、接続した3個の大きなコンデンサーが邪魔をして高域の伸びを阻害しているのかも知れないと思いMさんに聞いてみたところその可能性は十分に有りとのこと。

真空管アンプの場合と比べて、デジタルアンプは反応がシャープなのでコンデンサーの悪影響がモロに出たのかもしれない。それに、これはプリメイン形式なので、デジタルボリュームとはいっても音質に悪影響を及ぼす抵抗が入っているので足を引っ張っている可能性が大いにある。

したがって、デジタルアンプの正当な評価をするにはまだ早計といったところ。またデジタルといっても価格的にピンからキリまであるだろうからこれ1台で判断するのも早計というものだらう。

それと磁界を形成して音質に悪影響を及ぼす鉄の使用調査をやってみたところ、何とケースの底板と信号の抜き差しを行う裏板に磁石がピタリと張り付いた。ソニーともあろうものが、こんな大切なところに鉄を使っている!

そういったいろんな条件を割り引くとしても、あえて自分の感想を言わせてもらえば「値段の割には十分いける、しかし真空管アンプのあの艶の乗った生々しさにはまだ及ばない」というのが個人的な結論。


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釣り紀行♯24~久しぶりの釣行~

2008年05月24日 | 釣り紀行

昨年の11月下旬を最後に、長らく中断していた釣りを久しぶりに再開した。

昨年のブログを見ると、5月23日にその年の最初の釣行を企てていたが偶然にも
今年もまったく同じ日となった。

週間天気予報によると当日は晴れのち曇り、昼から一時雨と、あまり芳しいものではなく、行こうか、行くまいかと迷っていたところ91歳になる母が「少しぐらい雨が降った方が魚がよく釣れるよ」と煽って後押しするようなことを言う。

フーン、どうやら釣ったばかりの魚の刺身を食べたいのだなとピーンときた。歳をとると食べること以外に楽しみがなくなるのはよく分かる。こうなれば、少々雨に濡れても行かざるをえまい。

22日の午後から釣り支度にかかったが、
約半年のブランクは結構大きい。道具の仕舞い場所とか細かい仕掛けのノウハウを思い出すのが大変。

約2時間ほど準備に専念しているとようやくカンが蘇ってきた。夕方には釣具店にマキエの解凍依頼をし、いよいよ翌日は雨が降っても決行との意思を固めた。

因みに、昨年クロをどのくらい釣ったのかしらんと思い、ブログの「釣り紀行♯1」から「同♯23」まで見て勘定したところ
全部で800匹ほど釣っていた。1回の釣行で平均40匹ほどの釣果となる。これにアジなどを加えると平均で60匹ぐらいにはなるだろう。

ただし、全体的に型がいまいちなので決して自慢にはならない。マキエを大量に撒いてクロを水面近くまで浮かせて釣る自分のやり方では数の方はともかく型の方はあまり期待できない。その辺が今後の課題だろう。

さて、当日は中汐で干潮が14時30分前後で
「上げ3分下げ7分」のセオリーからいくと12時~13時にかけてが最も釣れる時間帯となる。潮の流れが一番早くて魚の就餌に最も適した時間帯と言い換えてもいいかもしれない。この辺を狙い目にして、いつもよりは遅めの8時過ぎに出発し、釣具店に寄ってマキエを調達、お目当ての釣り場のF波止に着いたのは10時ごろ。

やはり平日とあって、波止場には釣り人が皆無。「フッ、フッ、フッ」こういうときが「毎日が日曜日」の人間の強み。釣りは何といっても場所選びから始まって場所選びに終わるのだから。

釣り開始は10時20分頃。どうせ始めのうちはあまり釣れまいと思っていたところマキエを2~3回撒いたらいきなり小型のクロがいっせいに湧いてきた。よし、今日はなかなかクロの活性度が高いので
いただきとこれまでの経験から確信した。

問題は型を見れるかどうか。始めから入れ喰い状態なのだが案の定で、3匹のうち2匹程度は手の平未満のミニサイズですべてリリース。

12時ごろから型もよくなるだろうとあせらず長期戦の構えをとった。魚は結構、学習能力があって、ワンパターンだと見破られるので釣り針の上の小さなオモリをつけたり外したり、あるいはウキ下を微妙に変えたりしながらひたすら潮時を待った。

                        
           全 体                         上部拡大       

これがズバリと当たって、12時過ぎからかなりの良型(足の裏サイズ)が湧いてきた。上記(右)の写真のように10匹前後がマアマアの型でこれはすべて12時ごろから13時ぐらいにバタバタときたもの。

しかし、14時ぐらいからピタリとアタリがこなくなった。空に分厚く雲がたちこめ、ときどき突風が吹き荒れて道具が飛ばされそうで釣りどころではなくなり、丁度マキエも切れてしまい納竿は14時30分頃。

結局、今回の釣行は手の平サイズも含めて60匹ぐらいになっただろうか。心配していた雨はとうとう降らずじまいで、まあまあ幸先のいい今年のスタートだった。

自宅到着は、16時ごろで釣果を見たときの母のうれしそうな顔・・・。

ただし、それからクーラーやマキエバケツなどの道具洗いが一仕事。

写真撮影後、とても全部は食べきれないので20匹ほどを残してあとはすべて新鮮なうちにとご近所にばら撒いた。「まあ、久しぶりの(魚と)ご対面」と喜んでくれたが少々型が小さいのが恥ずかしく、もらってくれるだけでもありがたい。

なお、昨年の12月にクルマのタイヤを
ミシュランのパイロット・スポーツから国産のヨコハマSドライブに替えて、後日、比較状況をということで延び延びになっていたが、今日はじめて新タイヤで高速をブッ飛ばしたので報告しておこう。

まず燃費だが両者とも同じくらい、
操縦性能はSドライブの方がいい、踏ん張るチカラがしっかりしていてコーナーリングに安定感がある、しかしロードノイズは明らかにミシュランの方が静かだった。価格はSドライブの方がずっと安いが結局あとは好みの差ということに。

と     き     2008年5月23日(金) 晴れのち曇り、海上やや風強し

と こ ろ       Y半島付け根のF波止

釣り時間       10時20分~14時30分

           中汐(干潮14時30分頃)

マキエ         オキアミ(小粒)1角、ジャンボ2角、パン粉1kg、
             集魚剤チヌパワー1袋

ツケエ         大粒サシアミ、オキアミ(小粒)

釣    果      クロ 60匹前後

メ    モ      次回はウキ下3mの仕掛けと竿を準備のこと(型狙いのため)

 


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オーディオ談義~スピーカー修理の達人~

2008年05月13日 | オーディオ談義

5月11日(日)は母の日。

自分は91歳になる母と同居しているわけだが、「一緒に住んでいることが親孝行」と横着に構え、当日は図書館から大活字本の「鬼平犯科帳」を借りてきてやったくらいで何も特別のプレゼントはしなかったが、福岡に住んでいる姉からは母宛にということで小包が送ってきた。

その中に「この新聞はtakashiへ」との添え書きで記事が同封。
2008年3月22日(土)付けの朝日新聞で「フロント ランナー」という別版になった特集記事に大きく
「よみがえる往年の音と響き」という見出しのもと「ビンテージ・スピーカー(以下、SP)修理の達人・佐藤絹子さん」とある。

これは非常にうれしくてためになる情報で大喜び。自宅でも朝日新聞を購読しているのだがツイ別版のため見落としていたとみえる。急いで中の記事をじっくり読ませてもらった。まとめてみると次のとおり。

山形県鶴岡市にある電器屋さん「オーディオラボ・オガワ」はビンテージSPの修理で全国に知られる。秋葉原はじめ全国の販売店から修理依頼が来ており、毎月60~70件修理して、半分が販売店から、残りは個人客で
「ゴッドハンド」への以来が2ヵ月先まで埋まっている。

その「ゴッドハンド」の持ち主が佐藤絹子さん。
特別に耳が良くて音の感じ方が違うそうで、SPの修理で一番大事なのは
カンと経験だとおっしゃる。不良品などのチェックで試聴したSPの数は誰にも負けず、これまで十数万台は手がけたという。

小川社長によると「彼女は音の感じ方がまったく違います。僕らはおかしいと感じてもどこが問題か簡単には分からない。彼女は一発で異常に気付き長い経験と実績で悪いところを突き止めます」

彼女によると、音の7割がSPで決まり、使い込めば使い込むほど音が良くなる、エイジング(熟成)が大切で手入れすれば半永久的に使える。SP本来の音が出るまで一般的に100時間かかり、10年後に「今が一番いい音」という方もいます。

それに大切なポリシーがあって、「元の音に戻すだけで音質を改良しないのだ」という。何故なら「元の状態なら素晴らしい音が出る。メーカーのオリジナリティー、音質を尊重したい。」とのこと。(この辺はやや耳が痛くなる話。)

どんなに古いSPでも修理できるそうで、これまで一番大変だったのは
「アキシオム80」という英国グッドマン社の製品で、50年代のSPで、音の調整が難しく、1ヵ月かかりました!

ついに出てきた「アキシオム80」。

この記事により自分が現在使っている「アキシオム80」がいつ故障しても修理可能の保障が確保できたわけでやっと一安心、実にタイミングがいい情報。

実は、つい2~3日前のことオイストラフが弾くブラームスのV協奏曲(コンヴィチュニー指揮)をWE300Bのアンプで鳴らしていたところ、第二楽章のところで「アキシオム80」の右チャンネルから2回ほどビビーと大きな雑音が出てきたのでビックリ仰天。

ものすごくデリケートなSPなのでスワ故障かと色めき立ち、他のいろんなCDをかけて聴いてみたが異常なしでまずは胸を撫で下ろしたばかり。

しかし、すごく気になるので湯布院のAさんが以前「アキシオム80」を修理に出された話を思い出したので電話でお尋ねしてみた。

それによると、アキシオム80の故障の症状としてはボイスコイルと振動板の間がものすごく狭いためそこが接触してガサガサと音がするとのことで、とても素人の手が及ぶところではない精密を要する箇所なので、とある専門店で修理してもらったところあまり満足のいく出来栄えではなかったそうで、もし故障したときは経験の豊富な工房を慎重に選ぶべきとのことだった。

次いで、同じくオーディオ仲間のMさんも昔このSPユニットを使用されていたので詳しく症状を話してご意見を伺ったところ、それはSPの責任ではなくてアンプが原因で高域部分に発信現象が起きている可能性が高いとの診断だった。SPの故障であればピアノを聴いたときに歪音が出て判断できるとのこと。

このアンプはひときわ高域のヌケがいいと高くかっていたのだが、どうやら紙一重の差で悪い方向にいったらしい。「アキシオム80」はアンプを選ぶとは聞いていたがどうやらこういう現象を指すようだ。高域が歪っぽいアンプは完全に拒絶する習性が段々分かってきた。

とにかく、当分の間この気難しいSPユニットに振り回されていろいろと勉強させられることが続きそうである。

 
 

 


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愛聴盤紹介コーナー~試聴盤あれこれ~

2008年05月10日 | 愛聴盤紹介コーナー

最近いろいろと気になるCD盤を手に入れたので試聴して感じたままを記載してみた。

☆ ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」

 演奏者      ヘンリク・シェリング
  指 揮      ハンス・シュミット=イッセルシュテット
  オーケストラ   ロンドン交響楽団
  録 音      1965年
  レーベル     PHILIPS

 演奏者      ヘンリク・シェリング
  指 揮      ベルナルト・ハイティンク
  オーケストラ   アムステルダム・コンセルトヘボウ
  録 音       1973年
  レーベル     PHILIPS 

                       
               1                       2

ベートーヴェンの「V協奏曲」については先般のブログで、17種類の試聴を行い、2のシェリング演奏(ハイティンク指揮)がダントツという結果に終わった。(あくまでも自分の感想です)。

しかし、実はシェリングにはこのV協奏曲をもう一つ録音したものがあって、それが1のイッセルシュテット指揮のもの。これも定評ある名盤との噂があって、むしろ音楽専門誌などではこちらの盤の方がランキングの上位に位置している。

ハイティンク盤よりもいいかもしれないと思うと、是非購入してみなくてはと早速、HMVに注文してイッセルシュテット指揮の盤を手に入れ、両者を聴き比べてみた。

シェリング自体の演奏については録音時期に8年の差があるものの技巧の差はまず感じられない。また、さすがに両盤ともに定評ある指揮者で全体の演奏も実力伯仲といったところで甲乙つけがたし、あとは好みの差ということに。

ただし、オーケストラの響きの方は明らかにアムステルダム・コンセルトヘボウのほうが響きが豊かで好ましく、それに録音の方も同じPHILIPSレーベルなのに8年の差はいかんともしがたく、鮮明で冴えわたっていて一日の長があった。

結局のところ、ハイティンク盤だけで十分であえてイッセルシュテット盤を購入する必要はなかった。

☆ ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」

 演奏者      ヘンリク・シェリング 
  指 揮       ラファエル・クーベリック 
  オーケストラ   バイエルン放送交響楽団
  録 音       1967年
  レーベル     ORFEO

 演奏者      ヤッシャ・ハイフェッツ
  指 揮       フリッツ・ライナー
  オーケストラ   シカゴ交響楽団
  録 音       1955年
  レーベル     RCA(レッド・シール)

 演奏者      ジネット・ヌヴー
  指 揮       ハンス・シュミット=イッセルシュテット
  オーケストラ   北ドイツ放送交響楽団
  録 音       1948年
  レーベル     PHILIPS

4 演奏者      ダヴィド・オイストラフ
  指 揮       フランツ・コンヴィチュニー
  オーケストラ   シュターツカペレ ドレスデン
  録 音       1955年
  レーベル     ドイツ・グラモフォン

       
     1            2              3             4 

世評ではヴァイオリン協奏曲と名がつく曲目の中でベートーヴェンのV協奏曲が王者とされているが、自分ではベートーヴェンよりもブラームスのそれのほうが上ではないかとひそかに思っている。

きわめて内省的でありながら、奥に秘めた感情がじわ~っと盛り上がってくるような独奏ヴァイオリンの展開を聴いていると、ブラームスの音楽ここに極まれりの感があり、コレに比べるとベートーヴェンのそれは、なんだか単なる外見的なきれいごとで終わっている印象でまるで感動の深さが違うといつも思う。

こういう大好きでたまらないブラームスのV協奏曲だが、ヘンリク・シェリングの出来具合がベートーヴェンのV協奏曲のときにあまりに良かったので、どうしてもブラームスのものも聴きたくなり新たに手に入れた。

同じ頃に、今度はハイフェッツのそれも湯布院のAさんからお借りすることができたので、シェリング、ハイフェッツと一流とされるヴァイオリニストが名を連ねるとなると当然のごとくヌヴー盤、オイストラフ盤を加えて比較試聴したくなる。

これまで、何回も書いてきたように昭和30年代に盤鬼と称された西条卓夫さん(故人)がヌヴー盤を数ある同盤の中から「トドメをさす」と絶賛されているが、自分もこれは神の域に達した名盤だと思っている。

これまで約40年にわたってクラシック音楽を聴いてきたが、この盤と同じくらい感動を覚えた盤は本当に少ない。
このヌヴー盤をシェリング、ハイフェッツが追い越せるかどうか興味が尽きないところ。

オイストラフ盤については6枚持っている中でコンヴィチュニー指揮をピックアップした。以前、ブログでヌヴー盤とこのオイストラフ盤を聴き比べて、圧倒的にヌヴー盤に軍配を上げたが、最近、オーディオ装置の一部を入れ替えたことだし再度チャレンジさせてみようと参加させてみた。

≪試聴結果≫

のシェリング盤はまるで期待ハズレだった。ヴァイオリンに力強さがなくひ弱な印象で、いろんな解釈があるのだろうが自分がイメージしているブラームスではない。ベートーヴェンのV協奏曲ではあれほどずば抜けた演奏を聴かせてくれたのにとがっかり。とうとう1楽章の途中で聴くのをやめた。これほどのヴァイオリニストでもやっぱり曲目との相性があるんだなあ~。

のハイフェッツ盤もいまいち。まずオーケストラがよくない。緊張感が足りず盛り上がりも感じられない平板な演奏。こうなるとハイフェッツのヴァイオリンの冴えも何だか虚しくなる。これも1楽章を完全に聞き終わるまでには至らなかった。

結局のところ、あれほど期待していたシェリング盤、ハイフェッツ盤はあえなく
討ち死にとなった。

のヌヴー盤はやはりいつもどおり期待を裏切らなかった。まず気合が違う。女流とは思えない音の太さ、音色の浸透力が出色。高らかな情感を波打たせて優美に表現される情緒の多彩さは他の追随を許さない。やや粗削りなところがあるが逆に、単なる美しさだけに留まらずブラームスの音楽の核心に迫っている印象を受ける。コレはやはり神盤だと再確認した。

のオイストラフ盤も思わずうならされた。最近、SPユニットをヴァイオリンを得意とする「アキシオム80」に替えたせいもあるのだろうか、以前よりもずっとずっとヴァイオリンの音色がいい。豊潤という言葉がピッタリ。オイストラフはやっぱりすごいなあ~。ヌヴー盤と遜色がないと思ったほどで認識を新たにした。

こうなると世評の高いクレンペラー指揮、セル指揮の同盤を引っ張り出して改めて聴き比べてみたが、好みの差はあろうがやはりコンヴィチュニー指揮の盤を断然かう


自分の場合、ブラームスのV協奏曲はヌヴー盤(イッセルシュテット指揮)とこのオイストラフ盤(コンヴィチュニー指揮)があれば完結する。あとの盤は要らない。


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独り言~海の幸づくめ~

2008年05月08日 | 独り言

4月後半から暖かい日が続いて、ぼちぼち野外活動がピッタリのシーズンになってきた。昨年の11月後半からずっと遠ざかっている「釣り紀行」も来週アタリからボチボチ再開しようかという心積り。

考えてみると、この5ヶ月間は冬篭りのような感覚で音楽、読書といった室内遊戯(?)ばかりで太陽の光をあまり浴びることがなかった。やや不眠症(早朝覚醒)気味なのもそのせいかもしれない。

それに自分の場合、「音楽&オーディオ」の虜になっているもののどこかに醒めた目を持っておくことで逆に正しいアプローチが出来ると思っているので、釣りなどの野外活動で集中力を分散するのは好ましいところ。

これからは気候も良くなったことだし、つとめて屋外に出て太陽に当たろう。

ということで、とりあえず7日(水)はオーディオ仲間のMさんの情報を頼りに「モズクとワカメ」採りに出かけてみた。

春の大潮のときは潮がずっと沖の方まで引き、普段近寄れない岩場からモズクとワカメが豊富に顔を覗かせて絶好の採取の機会だという。それも3月~5月が最盛期。

厳密に言えば7日は大潮直後の中潮の日だが、釣りのときに必ず利用する潮汐表(図形)によると満ち干きのカーブは大潮のときに劣らない程の深さなので大潮並みと考えてよさそう。

Mさんのお宅は別府からクルマで40分ほどのところで、遠浅で有名な国東地方の海岸のすぐ近くにあり、日頃から採取場所を熟知されているので案内してもらうことにした。何よりもここは採取する人が少なく地元漁協がうるさく監視していないのがいいそうだ。

当日は天気も快晴で春というよりもむしろ初夏の様相を呈しており、NHkの朝の天気予報では日中は7月上旬並みの気温になるとのこと。

さて、Mさん宅経由でお目当ての海岸に着いたのは13時50分ごろ。干潮が15時30分前後なので丁度よい時間。

ゴールデン・ウィーク中とはいえ7日は平日のことでもあり、やや中途半端な日のせいか人影もまばらで駐車場もたっぷりと余裕があった。

岩場から自生したワカメと触るとヌルヌルするモズクの見分け方をMさんに教えてもらい、足場が不安定な岩場を歩き回ってナイフ片手に採取に努めた。要領を覚えると面白いように取れる。

丁度切り立った崖の真下の岩場にワカメが集中して自生しており夢中になって採取していると、突然バサバサと上方から鳥の白い羽が細かく降ってきた。Mさんの話によると崖の途中にハヤブサの巣があり、どうやら雛に食べさせるため小鳥が犠牲になった様子。ハヤブサの数は近年減少する一方で全国でもハヤブサの巣をまじかに見られるのは珍しいそうだ。

また、偶然隣り合わせになった見知らぬ方からはトコロテンの材料になるテングサやヒジキを教えてもらったが、ワカメとモズクで大きなバケツが一杯になったのでとうとうそこまで手が回らなかった。とにかく、この場所は
海藻類の宝庫みたいなところ。


       
    海岸      ハヤブサ(中央付近)    モズク            ワカメ

Mさんご夫妻ともども大漁で大いに満足して15時20分前後に海を引き上げた。自宅に到着したのは16時20分。

実はそれからが大変な作業だった。大量に採ってきたモズクとワカメを適当に小分けして何回も洗うのが面倒しくて疲れ果ててしまった。

ひと通り、作業が済んだころに今度は2日連続でアサリ貝掘りに行っていた家内が帰参。どうやら今回も大量だった様子だが、自分が取ってきたモズクとワカメを見て完全に
ギブアップ!

結局、夕食はアサリ貝の炊き込みご飯にモズク(酢醤油)、ワカメ(一度湯通ししてメカブの部分をミキサーで撹拌して酢和え)、焼き魚と並んで海の幸のオンパレードだった。

モズクとワカメは日頃から好物だがこんなに簡単に取れるのならわざわざ店屋で高いお金を出して買うこともなさそう。それに採り立ちのモズクとワカメは店屋で売ってるものとはぜんぜん味が違うのには驚いた。野菜や果物と同様に海藻類も鮮度が命のようだ。

道も場所も分かったことだし、今後、大潮の日を見計らってちょくちょく出かけてみることにした。何よりも海の新鮮な空気が吸えることもいい。


 


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オーディオ談義~いいオーディオ製品の見分け方~

2008年05月06日 | オーディオ談義

前回に続いてのオーディオ談義、それも「何だ、またアキシオム80関連の話か」と怒られそうだが、今のところ、このSPユニットのことでアタマが一杯なのでご勘弁を。

この魅力的なユニットに
「なんとかうまくさえずってもらおう」といろんな詰めをやっているところだが、前回に続いて今回は次の取り組みをしてみた。やや細かくて専門的な話になるがオーディオはいじるところがヤマほどあって、悩みのタネであり一方で楽しみも尽きない。

☆ DAコンバーターの出力レベルの切り替え 

ずっと以前から気になっているのがCDプレーヤー・システムのうち、ワディアのDAコンバーター(27ixVer3.0)の出力レベルがどうも高すぎること。

取説によると、0.5db~100ステップ、50dbレンジ、-36dbまで絞っても16ビット以上の分解能を確保とあって、0~100までの目盛りのフルデジタル・ボリュームになっているが、通常使っている範囲はせいぜい40~60ぐらいまで。

ワディアの販売元「アクシス」は音質にとって一番いい状態は90ぐらいのレベルで使用するのが良いといっているので、当然ここは出力レベルの切り替えが必要。アキショム80をうまく鳴らすためには避けては通れない作業。

出荷時は標準出力4.5Vで調整していると聞いているが出力レベルの切り替えが可能で、これをもっと下げることが出来れば我が家の装置によりアジャストする。

簡単にできればいいのだが、このDAコンバーターは見るからに堅牢なケースに包まれた難攻不落のお城のような気配を漂わせて容易に人を寄せつけない雰囲気。

なにぶん、150万円ほどする精密機器なので下手にいじって壊すと高いものにつきそうなのでやや
びびってひるむ心が先にたつ。メーカーに送って調整を頼むのが安全策だがそういう悠長なこともやってられないので思い切ってチャレンジしてみた。購入して10年以上になるが初めての試み。

ケースの開け方は以前のブログで記載したようにCDトランスポート270のレンズの掃除をしたときの開け方とまったく同様。使用する六角レンチもまったく同じサイズだった。

ジャジャーン、さていざ蓋を開けて内部を露出させたもののどこをどういじってよいかさっぱり見当がつかない。購入時にも設計図は付属していなかったし、もともとメーカーは使用者が内部を開けることを一切想定していないようだ。
 

                 
       外見                内部             内部拡大 
           
コワすと元も子もないので、このまま諦めて蓋を閉じようかと思ったが、さすがに一緒に作業した仲間のMさんは簡単にサジを投げない。

まずインターネットで「ワディアのDAコンバーター出力レべル切り替え」で検索してみたらとご提案。なるほどと早速、検索してみたが作業の細部まで明らかにしたサイトは結局見つからなかった。

やむなく、信号の出力経路からたどって見当をつけたのが、上記右端の写真(内部拡大)の中央部の
橙色の部分。左、右のチャンネルの2箇所に分かれて4段階の小さなスイッチが設けられている。

仔細に眺めてみると、端から2番目の部分がスイッチが逆になっている。取説によると内部スイッチで9V~0.41Vの16ステップで設定できるとあるので、おそらくこの部分に間違いないと見当がついた。

ふと、ずっと以前に使っていたマーク・レヴィンソンのプリアンプ(No.26SL)のゲイン調整がこのタイプだったことを思い出した。因みにこのプリアンプを下取りにして購入したのがこのワデイアのDAコンバーターだった。

話は戻って、とても16ステップほどの詳しい操作はできないので、とりあえず次のようにしてみた。

元の状態 →下から順番に1番目のウイッチを1、2番目を2、3番目を4,4番目を8とすると2番目がオフの状態になっていたので合計数値は13となる。

切り替え →1番目と4番目のスイッチをいじらずそのままにして、2番目をオンとし、3番目をオフにしてみた。これで合計数値は11となる。

とりあえず、このままケースを開けっ放しにして電源を入れて試聴したところバッチリと当たった。これまでレベル40~60だったものが60~80程度にまでボリュ-ムを上げられ、音質全体が幾分マイルドになってややジャズからクラシック向きの音になった。

この出力段レベル切り換え(厳密に言えば出力ステージゲイン調整機能)はワディアのDAコンバーターを使用されている方にとってはおそらく本邦初公開の写真つきの情報提供なので是非役立てて欲しいところ。(ただし、ミスった場合はあくまでも自己責任の範囲)。

さて、開けたついでに詳細に内部を点検。

Mさんから”さすがにワデイアだなあ”と感嘆の声が上がった。ケースはもちろんだが
ネジ1本でさえも内部に鉄製品を一切使っていないのである。100円ショップで買ってきた磁石をいたるところ近づけてみるがまるで反応なし、くっつくところが1箇所もない!

鉄は磁気を帯びて磁界を発生させてその磁界が音質にワルサをするというのは周知の事実。メイン・アンプなども鉄製品を使わないのにこしたことはないが強度のこともあって鉄を全然使うなとはいえないがこと微小電流を扱うCDプレーヤー、プリアンプなどは最小限度に留めるべき。

メーカーは使用者をなめてかかって、コスト削減のため平気で鉄を使うケースが多いが、(オーディオ装置に高級、低級の区別をしたくはないが)あえて言わせてもらうと低級な装置はほとんど鉄の影響を聞き分けられないが、緻密な装置になればなるほど確実に磁気の影響を反映し、それは結局
音色に微妙に影響する。

巷(ちまた)にはいろんなオーディオ機器が氾濫しているが、
良品を見つけるポイントの一つとして鉄の材料をどんなところにどれだけ使っているかに留意するとよい。

そういう細かい行き届いた心配りをしているメーカーであれば、製品全体に音質への配慮が行き届いているのはまず間違いない。

皆さん、オーディオ店で機器(ヘッドフォンなども含めて)の選択をするときは
心臓部付近にどの程度鉄の材料を使っているか是非、店員さんに確かめましょう。

もっとも、店員さん自身が把握していないことの方が多いと思うので自分で磁石を持っていって使用する前にお断わりしてそっと近づけてみよう。


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オーディオ談義~「アキシオム80」の品とプライド~

2008年05月03日 | オーディオ談義

中域用のスピーカーJBL375をヴィンテージのSPユニット「アキシオム80」に取り替えて早くも1週間あまり経つが、聴いているといろんな可能性に満ちた音の世界へと案内してくれそうな予感がしてくる。

あのJBLのスカッと抜け切った青空のような爽快な音とはまた違った魅力が漂ってくる気配。

オーディオ評論家の瀬川冬樹氏(故人)の評価を再現すると、

~あくまでもふっくらと繊細で、エレガントで、透明で、やさしく、そしてえもいわれぬ色香の匂う艶やかな魅力~

これは自分が長年、スピーカーに求めている要素でありこれだけ満たしてくれれば理想の音といってよいほどで何もいうことはない。

もちろん現状は鳴らし始めたばかりなのでこれほどの域には達しておらず、これからこのユニットに対する
愛情の注ぎ方如何にかかっているといってよいだろう。

結局、現在のシステムの構成は次のとおりとなった。

スピーカー   超低域 ヤマハYSTーSW515サブウーファー(アンプ内臓)
               ~左右2台で40ヘルツ以下を再生~ 

         低域 JBL130A(エンクロージャーはタンノイ・ウェストミンスター)

         中高域 アキシオム80(平面バッフルに取り付け)
         
         低域と中高域のクロスオーバーは450ヘルツ前後

アンプ     低域用 ケンウッドL01-A(メイン・アンプに改造:トランジスター)
         
         中高域用 WE300Bシングル(モノ×2台:真空管)

アッテネーター FR AS-1

CDシステム  CDトランスポート ワディア270

          DAコンバーター ワディア27ixVer3.0 

ところで、つい最近NHK教育テレビの「人生の歩き方」という番組を見ていたら名優仲代達矢さんが映画俳優の演技と生き方にとって何よりも必要なのは
「品とプライド」だと語っていた。

フーン、
「品とプライド(矜持)」かあ・・・・、なかなか含蓄があっていい言葉。

このフィルターをかけて世の中を観察してみると普段気がつかないようなことでも、いろいろと違った見え方をしてくるように思う。

つい連想してしまったのが宮崎県の東国原知事。

タレント出身の知事として宮崎県の名前を一躍高め県産品の売り込みなどを通じて県民のために大いに役立っている(と思う)のは大変ご立派。

宮崎県民が選んだ知事なので、他県の人間がいろいろ言うことはないのだが、この人物には何だか大事なものが欠けていると以前から思っていたが、結局それは「品」というものだったと気がついた。(あくまでも自分の主観です)

とはいえ、実利があれば「品」なんて要らないという人もいるだろうから、結局それは各人の価値観、人生観の違いになるのだろうが。

とまあ、偉そうなことを言っているが「そういうお前に「品とプライド」はあるのか」と面と向かって問われると、いささか
たじろぐ思いで心もとない」が「少なくともそう心がけている」と答えざるを得ないところ。

さて、約40年近くオーディオをやってきたが音の世界にも大切な要素として
「品とプライド」が要るのではないかと思えてきた。

単なる文明の利器に過ぎない機械が奏でる音質に対して「大げさにも程がある、そんなものに品もプライドもあるもんかい」というご意見もあるだろうが、凝り性の自分にとっては結構大切にしたい事柄なのである。

オーディオの第一の目的はもちろん「原音再生」だが、あの大オーケストラの音を家庭で再現するのはもともと無理な話でまず不可能、とするとどうせ騙されるのなら少しでも「品」のある音で「品」よく騙されたいというのがこの歳になっての偽らざる本心である。

ここで「アキシオム80」の登場である。このユニットは何といってもその肝心の「品とプライド」が売りものなのである。

まず、「品」についてだが何といっても「生まれ」があの紳士の国イギリスである。タンノイもそうだが、イギリス製のスピーカーの音はいぶし銀のような奥ゆかしい趣があって総じて
節度と気品があるところに共通点があり、この「アキシオム80」もその例に漏れない。これは、いわゆるお国柄というヤツ。

次にプライド(矜持)。
とにかく簡単になびいてくれない独特のクセのあるユニットである。外径9.5インチ(約24センチ)というサイズは、過去どこの国にも例がなく相当に偏屈、しかも見た目がおそろしく変わっている。なにせ設計者があのジョーダン・ワッツの創始者E・J・ジョーダンなのである。

しかし、決して醜いわけではなく見慣れるにつれて惚れ惚れするほどの機能に徹した形の生み出す美しさが理解できるが、これほどうまく鳴らすのが難しいユニットもこれまた珍しい。

過去にもいろんな方々が、それもオーディオの猛者連中が果敢に挑戦しそして撤退している。それだけに「自分こそはいい音を出してみせる」と挑戦しがいのあるユニットといえる。結局、誰もが鳴らせるようなスピーカーははじめからレベルがしれているというのも紛れもない事実。

                      

とにかく反応が鋭いのが特徴で、少しどこかをいじっても敏感に応えるところがあって、それこそ毎日ご機嫌を伺うような気持ちで向き合わねばならない。ものすごくプライドが高いユニットといってよい。

ここ1週間でも次のようなことを試してみた。

 このユニットの位置をわずかに前後に移動させただけでも音質が変わる。やはり一番良かったのは、ウーファーのJBL130Aユニットと振動板の位置をおよその範囲で合わせたときが違和感がなかった。

2 現在使用しているアンプはWE300Bのシングルだがコンデンサーの一部を良質なものに交換し、それとプラグのターミナルを変わり映えのしない国産のものからWBTブランドに入れ替え。

 ユニットと平面バッフルの間の溝(約2.5cm)にフェルトを貼り付けて音の反射を抑制。

 アッテネーターのAS-1のカバーが鉄製のため磁気を帯び音質にワルサをしている可能性があったので、思い切って取り外してボリューム部分を剥きだしにしてコードを直接ハンダ付けしたところ音色が見事に改善し、鉄の臭いがしなくなった。

                 
溝の部分にフェルトを貼り付け  裏から見たアキシオム80      AS-1の改造     
            
以上のとおり、基本的な資質に恵まれているので少しでも良い音を出してやりたいといろんなことを試みたくなるSPユニットだが、どうやらこのままいくとアキシオム80の虜になりそうな勢いである。

ところで、29日(昭和天皇の日)には神戸から今は亡き次兄の長男夫婦が連休を利用して九州一周の道すがら立ち寄ってくれた。元気そうな様子を見てこちらもひと安心だが、当然のごとく我が家に来た以上オーディオ装置の音を聴いてもらったわけだがグリュミオーが弾くヴァイオリンを聴いて非常に音が澄んでいると感心した様子だった。

それはそれでいいのだが、どことなく次兄の面影を残した長男(甥)を見つめていると、ふと
”悠久の時間の流れ”を覚えてしまい、どうせこちらが先にクタバルのはわかりきっているので、”思い出”として「音楽とオーディオが大好きだった別府のおじさんのイメージが残るだけで十分」なんて普段考えたこともないような遠い先のことを想像してしまい何だか随分おかしな物思いに耽ってしまった。

さらに願わくは、あのとき聴いた音には「品」があってすごく「いい音」だったと記憶の片隅に残してくれるといいのだが、それはちょっと欲張りすぎというものかも・・・・・。


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愛聴盤紹介コーナー~ケーゲル指揮の「アルルの女」~

2008年05月01日 | 愛聴盤紹介コーナー

先日のブログ(4月24日)で、オッテルロー指揮の「アルルの女」をオークションで苦労して競り落としたことを披露させてもらったが、そのときに、ケーゲル指揮の「アルルの女」もスゴク評判がいいが既に廃盤で手に入り難いことを書いておいた。

厳密に言えば廃盤ではなくて供給が途絶えているため手に入らないのが実状。自分の場合HMVに注文したところ1ヶ月以上待たされた挙句、入手不可能とのことで予約を取り消されてしまった。(つい最近の4月の話)。

いずれにしても、そのケーゲル指揮の「アルルの女」がこれまた偶然にもオークションにかけられているのが分かった。教えてくれたのは仲間のMさん。

どれどれと、オークションの該当頁を開けてみた。

開始期日:4月19日、終了日時:4月26日、出品地域:三重県、開始価格:800円で現在の入札者1名、入札価格800円ということで何てことはない極めて平穏無事なスタートぶり。

「フッ、フッ、フ、これもいただき」と思わずにっこり。さっそく、終了日時の2日前の24日に問答無用とズバリ最高限度額5100円を設定していきなり勝負!しばらくして入札価格が840円と表示された。

翌日の25日も入札状況を見たところ入札者2人の840円のままで、どうやらこのまま推移しそうな雰囲気。

オークション終了日の26日(土)は、昼間運動しすぎてクタクタになり終了時刻の19時55分をまたず、すっかり安心しきって就寝。

翌日、午前4時ごろにゴソゴソと起きだしてさっそくメールを開いたところオークション落札の通知がきていた。さて、いくらで落ちたかしらんと見てみると何と価格が3130円にはね上がり、入札者は13名にも及んでいた。

みんな、この名盤の存在をよく知っていてひそかに狙っていたのだ!
落札当日までそ知らぬ顔をして「知らぬ顔の半兵衛」をきめこみ、終了直前にいっせいに勝負をかけてきたものとみえる。オークションにもいろんな駆け引きがあるもの。

まあ、とりあえず落札できてよかった。これで、オッテルローとケーゲルというほとんど入手不可能の名盤を相次いで手に入れることが出来た。
ラッキー!

とにかく、あまり有名ではない指揮者の名盤を手に入れるには、今のところこれ以外に方法がない。

さて、このケーゲル指揮の「アルルの女」がどのくらいスゴイ名盤なのか専門家のご意見を紹介してみよう。

「クラシックは死なない」~あなたの知らない名盤~(2003年刊、青弓社)

本書は著者がCD店の店主として非常な音楽好きで朝から晩まで聴く中で1ヶ月に1~2枚これはと思う盤があるそうで、これらの盤をまとめて紹介した本である。

ざっと、ひととおり目を通したが音楽評論家や音楽専門誌とちがって業界や演奏家としがらみのなさそうな評価なのでおおむね信頼してよさそうな内容。

ケーゲル指揮の「アルルの女」については非常に熱気ある筆致(25頁~26頁)のもとに次のように書いてある。

 このアルバムはCD店の店主となってから入手可能かどうかの問い合わせがもっとも多かったもの。

2 現在のケーゲル伝説をつくりあげた名演中の名演。聴くものを美と狂気の世界に引きずり込む恐るべき音楽

 「クラシック名盤&裏名盤ガイド」にはこうある。
「冷え冷えとした透明感が南フランスの太陽を奪い、追い詰められた精神的不安から狂乱に至る主人公フレデリの悲劇を心憎いほど暗示する。続くメヌエットとパストラールの弦のグリッサンドには怨念が渦巻き、アダージョはマーラーのように長い美しすぎる演奏で、怖い」

4 今日のケーゲル人気の土台を築いた許光俊氏は「名指揮者120人のコレを聴け!」でこう書いている。
「弦や木管の奏でる旋律はもはやこの世の音楽とは思えない淡々とした風情、舞曲はブルックナー9番のスケルツォみたいに抽象的であり、遅い部分はマーラーのようだ。私はこんなにゾッとするような音楽をほかに知らない」、「アルルがこんなにうつろに、こんなに透明に、こんなに感覚的な刺激抜きで、こんなに裸型の精神のように響いたことはなかった」、「大芸術家が死の前に達した恐るべき境地としかいいようがない」。
そして最後にひと言。「忠告めくが、ケーゲル晩年の音楽を決して気分が落ち込んだり、失恋したりしたときに聴いてはならない。命の保障は出来かねる」

筆者註:以前にも述べたとおり、ケーゲルは旧東ドイツの熱心な社会主義者だったが「ベルリンの壁」崩壊後、ピストル自殺を遂げた。

いやはや、ちょっとオーバー気味だがさまざまな伝説に彩られた名盤である。

さて、落札したCD盤(輸入盤)が自宅に到着したのは、30日(水)の午後。
このブログに間に合ってよかった。ぎりぎり滑り込みセーフ!

早速、試聴してみた。

☆ ビゼー作曲「アルルの女」第一組曲(19分)、第二組曲(18分)
  指揮:ヘルベルト・ケーゲル(1920~1990)演奏:ドレスデン・フィルハーモニー
  録音:1986年

やはり、これは聞きしにまさる名演だった。   

歯切れのよい弦合奏とサキソフォンなどの管楽器のゆったりとした調べが、悲劇性を帯びた物語の展開と南フランスの牧歌的な雰囲気をうまく対比させている。

オッテルロー指揮の演奏に比べると、良し悪しは別として情感の表現の起伏が激しい印象。それも第一組曲よりも第二組曲の方が顕著に現れる。
どうしようもなく暗く、しかもなんと切なくて淋しいこと・・・・。

この物語は主人公の飛び降り自殺でジ・エンドだが、このケーゲルの演奏では失恋自殺よりも世をはかなんでの厭世自殺みたいな感じで気が滅入ってくる。それほど演奏に感情がこもっている。

主人公フレデリの嫉妬に狂った情熱の熱気も欲しいところだが、この演奏は「アルルの女」の一つの解釈として十分成り立つというイヤでも納得させられる説得力を秘めている。

結局
「ケーゲルの演奏を聴かずして”アルルの女”を語ることなかれ!」というのが自分の至った結論。

                          
            ケーゲル(アルルの女)

 


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