「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

年末のご挨拶です

2013年12月31日 | 独り言

今日(12月31日)は1年間の締めくくりにあたる大晦日です。

大晦日といえば「第九」ですね。NHKの紅白が始まったら、今年もフルトヴェングラー指揮の「バイロイト祝祭盤」を聴いて1年間の「音楽&オーディオ」の終演にしたいと思ってます。

         

さて、皆様方に支えられて今年のブログもどうやら1年を無事乗り越すことが出来ました。ただ、ただ感謝の一言です。

ブログを始めて8年目ともなりますと、たびたび「ネタ切れ」に苦しむことがあり、そういうときはつい無理して“あらぬ”ことを書いて墓穴を掘ったりすることがあります(笑)。

「そろそろこのブログも店仕舞いしようかな」という思いに走ることがありますが、そのたびに、
このブログへの日ごとのアクセス数が少しでも増加しているのを見ると「読むのを楽しみにしている人がこれだけいるんだから」(実際にはどうかわかりませんが~笑~)と、老骨にムチ打ちながら何とか継続しているのが実情です。

実際に過去3週間のブログの週間ごとの解析結果を見ますと、訪問者数が「5220」、「5265」、「5414」IPと、上昇傾向にあり、ようやくコンスタントに念願の1日当たり700件(4900)以上の大台に乗せることが出来ました。しかも夢の800件の大台にも乗らんとする勢いです。

私にとっては大きな励みになっておりますので、来年もどうかこのブログを暖かく見守ってくださいね。

皆さま、どうかよいお年を迎えられますように~。

以上、年末の感謝のご挨拶にかえさせていただきます。


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「仕事納め」の日は図書館巡り

2013年12月29日 | 独り言

12月27日(金)はお役所の「仕事納め」。昔は「御用納め」と言っていたが、世間様に対して「御用とは何ごとか」というわけで、いつのまにか「仕事納め」に改められた。

図書館もお役所の一環なので年内最後の開館日となる27日は朝から3か所の図書館を巡回して、これまで借りていた本をすべて返却し、新しく13冊を借り入れた。

           

ただし、自分の場合すべての本を最初から終わりまで読むわけではなくておよそ1/3程度まで目を通してみて、面白くなければあっさりポイと放り出すことにしている。そうじゃないと時間がいくらあっても足りない。したがって、これまでの経験で「当たり」の本に出会う確率はおよそ25%ほどなので、4冊のうち3冊くらいは完読されない運命にある。

そういう中、今回借りたうちで一番のお目当ては「住んでみたドイツ~8勝2敗で日本の勝ち」(川口マーン恵美著)。

いつぞやの新聞の広告見出しでこの表題が目に触れて秘かにマークしていた本で、運よく借りられたのでさっそく昨日(28日)読んでみた。

ドイツ生活30年の著者が領土問題への対応などを含めて政治、経済、文化、教育などの幅広い視点からの「ドイツと日本」の比較論だが、たとえば教育については次のような記述があった。(137頁)

≪日本の義務教育はドイツに完勝!≫

「日本の義務教育は間違いなくドイツよりも良い。私は、教育の最大の目標というのは、国民の学力の最低線を上げることだと思っている。つまり、義務教育の充実だ。一握りのエリートと、沢山の蒙昧な国民がいる国は、良い発展が出来ない。日本に住んでいる人はあまり気付かないかもしれないが、日本は世界でも稀に見る格差のない社会である。

その第一の理由は、義務教育が充実していることだろう。初等教育の段階で不平等が起こると、それがいずれ貧富の差を作り、格差となり、ゆくゆくは社会不安を引き起こす。格差の有無は実は義務教育の充実度で決まるのである。

日本でも近年になり、格差が問題になっているとはいえ、そこで言われる格差など世界の他の国に比べればまだまだ生易しいといえる。

それは何万円もする高級レストランで食事が出来る人々がいるのに、一方ではコンビニのお弁当しか食べられないというような差だ。教育の機会不均等に根差す根源的なものではない。」

といった調子で、著者はかなり色濃く自己主張をするタイプのようだ。しかし、改めて日本を客観的に見つめるのに格好の本だと思った。

もう一つ、「実は身の回りにあふれている日本のすごい発明」(武田知弘著)は雑学好きにはうってつけの本。さまざまな分野から61項目の世界に誇る発明品が紹介されている。

たとえば、ご存知の方も多いと思うがCDに録音ができる「CD-R」の発明は1988年で、発明者は「太陽誘電」社。(134頁)

「That’s」のブランドで知られる同社は「どんなCDプレイヤーでも再生できるCDーR」の開発に向けて、3年の歳月をかけて苦労の末にようやく基本特許を取得して完成するに至った。

したがって、CD-Rを購入するときは開発するときの膨大なコストと手間に敬意を払っていつも同社の製品を優先することにしている。

ほかにも音楽関係の本が3冊。

指揮者リッカルド・ムーティの自伝エーリッヒ・クライバーの生涯、そして世界の著名な演奏家たち50名をインタヴューしたうえで、料理のレシピになぞらえて解説した「クラシックはおいしい」はなかなか面白そうだ。

今回は珍しく「当たり」の確率が高い本が多そうな予感がする~。


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1枚が8400円もするCD!

2013年12月26日 | 独り言

近年、CDの値段が随分下がっている。

およそ30年前にCDが登場した頃は軽く3000円(1枚)ぐらいしていた記憶があるが、今では値崩れしてしまい、どうかすると全集物では1枚当たり200円前後になっている。もちろん音楽ファンにはうれしいことには違いない。

昨日(25日)もHMVオンラインからメールがきていた。

【コリン・デイヴィス/RCA全録音集(51CD)】デイヴィスが、「RCA Red Seal」レーベルに残した全録音をCD51枚に集成したセットの登場。協奏曲、オペラも含めた内容です。                       

この全集のセール価格がおよそ12000円なので、1枚当たり換算では200円を切る値段となる。

ちょっと話が逸れるが、このメールを読んでいたらデイヴィス(サーの称号を持っています)は今年(2013年)の4月14日に没したとあった。彼が最晩年に指揮したオペラ「魔笛」(モーツァルト)のテレビ放映(NHK BS:2007.4.29)を録画しているが、フィナーレの大団円で子供たちがゾロゾロ登場して舞台上に沢山並んでいた。

まるで次の時代を担う子供たちに明るい未来を託すかのように思えて、何となくデイヴィスの胸中を推し量った記憶がある。何せ随分高齢だったのでこの日のあることは予期していたものの、それでも何だか淋しくなってしまった。

                          

ところで、このように随分お安くなったCDだが、まるで時流に反するようにたった2曲入りなのに8400円もするCDがある!

          

近所のオーディオ仲間のYさんが我が家に23日(月)の午後、フラリとお見えになって持参されたのがこの「石川さゆり」のCD。彼女はあまり自分の趣味ではないが「津軽海峡・冬景色」などをテレビでちょくちょく聴いている程度。

このCDには「飢餓海峡」「花火」の2曲が収録されており、発売元はオーディオ愛好家にはつとに有名な「ステレオサウンド社」。

値段が値段だから、当然並みのCDとは手間のかかり方が違っていることは容易に推察できるし、さぞかし音質もいいことだろうて。何せ8400円・・(笑)。

ま、一度聴いてみる価値はあるでしょうぐらいの気持ちでワディアのCDトランスポート(270)に放り込んで聴かせてもらった。アンプは真空管WE300(モノ×2台)でスピーカーは「AXIOM80」。

いやあ、これは これは!

私たちは日頃、音質向上のためにアンプやスピーカーなどハード部分にとかく目を奪われがちだが、そんな虚しい努力(?)をまるであざ笑うかのように「さぞや生の音はかくも」と言わんばかりの音が目の前に展開した。

CD次第でこんなに音が良くなるのなら、「メーカーさん、もっと努力してくださいよ」という気になるのも当然。このCDの音の秘密をさっそくググってみると、

Stereo Sound Flat Transfer Series/スタジオマスターだけが持つ、市販のCDでは味わえない自然な生録感溢れるサウンドを、ぜひお楽しみください。

メディア:太陽誘電社製マスター専用CD-R
フォーマット:44.1kHz/16bit CD-DA
発売元:株式会社ステレオサウンド

この曲以外にも美空ひばりの「愛燦々/みだれ髪」、石川さゆり「津軽海峡・冬景色/風の盆恋歌」(現在、品切れ)が発売されていることが分かった。

美空ひばりの「愛燦々」は大好きなのでぜひ欲しい!しかし、8400円の壁が貧乏人の前に大きく立ちはだかる(笑)。

さて、注目すべきは「フォーマット」で通常のCDの44.1KHz/16bitなのにこれほどの音が出るのなら、現在流行の「ハイレゾ」なんて必要ないように思えてしまった。

また、このCD-R盤には太陽誘電社(That’s)製の「マスター専用CD-R」が使用されている。さすがである。

当方もこのマスター専用CD-Rを12枚ほど所有しているが、とっておきのCDをコピーするときだけ使用しており、ふつうのCD-Rとはまるっきり音が違うのでたいへん重宝している。

ちなみにコピー用としてパソコンの外付け用CDドライブに使っているのは「プレクスター」(信濃絹糸:生産中止)で、いつも「iTunes」を経由することなくストレートにコピーしている。

さて、この「石川さゆり」盤で聴くとグッドマンの指定エンクロージャー(以下、「オリジナル」)と自作のエンクロージャー(以下「自作)に入れた「AXIOM80」の違いがより一層、顕著に分かった。

Yさんによると「オリジナル」は箱鳴りがやや伴っていて「ふっくら」感がある、一方「自作」のほうは箱鳴りが伴わない代わりに音のエッジが鮮明に浮き出てくる、いずれも好みの問題で「甲乙つけ難し」とのこと。このCDーR盤はテスト用として使うのにはもってこいのようだ。

ところで、注目!

この石川さゆりのCD-R盤を手元のプレクスターを使ってThat’sのマスター専用CD-Rにコピー(書き込み:4倍速)した場合、劣化の程度はどのくらいなのだろう!?

これ以上は差し障りがあるので書くのを遠慮しておきましょう(笑)。


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やっと、謎が解けました

2013年12月24日 | オーディオ談義

これまで、いつも不思議に思うことがあった。それはオーディオ仲間のAさん(湯布院)のこと。

Aさんは我が家に試聴にお見えになるたびにSPユニット「AXIOM80」(以下、「80」)を聴かれて手放しに絶賛される。

それは非常にありがたいことだし、たいへん勇気づけられることなので大いに感謝しているが、それほどまでに「80」の音が“お気に入り”ならばご自身でも「80」を秘蔵されているのでご自宅で鳴らせばいいものを、それだけはがんとして活用しようとはなさらない。

いったい、なぜ?

Aさんは「システムの粗(アラ)に気付いたときははっきり悪い」と遠慮なく指摘される方で、けっしてお世辞を言うような方ではないし、「今さら他人と同じことが出来るか」というほどの意地っ張りでもなし(笑)、
その辺がずっと長い間の謎だったがようやく氷解する時がやってきた。

先週の19日(木)のことだった。

Aさんから珍しくお誘いがあった。「今日の午後は空いてますので試聴にお見えになりませんか?」

これはめったにないことで千載一遇のチャンスとばかり「はい、それでは13時過ぎにお伺いします。」と一つ返事。

その直後にこれまたオーディオ仲間のMさん(大分市)から電話があって「トーレンス(レコード・プレイヤー)の調子が悪いので午後から別府市内のショップに持っていく予定ですが、ついでに試聴させてくれませんか」

「あいにく午後に湯布院のAさん宅へ行く予定にしています。よろしかったら、同行しませんか」

「Aさん宅にはもう2年ぶりくらいになりますかね。システムも随分変わったことでしょうから同行させてもらいましょう。」

というわけで、午後から二人でAさん宅へ押しかけた。

           

励磁型の低域用ユニットにウェスタンの555+15Aホーン、それにカンノのツィーターの組み合わせで、半年ほど前にもこの組み合わせで聴かせてもらったが、前回と違うのはバッファーアンプが改造されていてSTCの真空管が総入れ替えになっていた。

このアンプは一言でいえば「CDのデジタル臭い音をアナログの音に直す」という役割を持っていて、そっくり同じツクリではないが我が家でも導入している秘密兵器で(笑)、DAコンバーターとパワアーアンプの間に挿入して「80」を駆動しているが満足の一言。


            

このアンプの効果は絶大ではっきり言って前回のときとは大きく違っていた。

音を言葉で表現するのは難しいしそもそも無理があるのだが、Aさん宅の音をあえて言わせてもらえば「蓄音機の音をそのまま低音域と高音域の両端へ伸ばした音」とでもいえばいいのだろうか。非常に分厚くて力強い音である。もともと、そういう音だったのだが一層その傾向が顕著になった印象を受けた。

この蓄音機のような音に合う格好のCDを聴かせてもらった。

           

1930年代前後に活躍していたテナー歌手たち4名。マルティネリ、ペルティーレ、ジグリ、ヴォルピ。いずれも声の張りといい艶といい、まさにゴールデン・ボイスでこの時代の芸術家たちのレベルの高さを思い知った。

同時にこのシステムでないとこれほどの再生は不可能でMさんともども「素晴らしい音です」と、賛辞を厭わなかった。

やっと(80を使わない)謎が解けました。これがAさんが目指す集大成の音なんですね~。」と、思わず内心呟いたことだった。

また、重量感がありながら、ピタリと制止する低音域の制動力にはいつもながら感心するが、これはバッファーアンプとパワーアンプの技術力の賜物。

これらのアンプの製作者はAさんが長年にわたって絶大の信頼を置かれるMさん(福岡県太宰府市)である。

アンプやスピーカーの「逆起電力」「渦電流」の対策といえば一般には馴染みがないが、Mさんはこれらに研究を重ねて技術的に独自の工夫をされとうとう特許まで所有されているというから驚く。

その辺のノウハウを探るためオーディオ界で著名なジャン・平賀氏がこれまで数回訪ねてこられたそうで、つい最近ではオーディオ好きのフランス人がわざわざ同行したうえで、すぐにアンプの製作を注文してから帰国したとのこと。

自分も注文したいが既に6台も真空管アンプがあって、これ以上増やすと誰かさんから叩き出されそうなので涙を呑んでいる(笑)。

2時間ほど試聴させていただいてからようやく帰途についたが、クルマの中で「まったく次元の違う音でした。あんな音はとても出そうにも出せませんね~。」と、Mさんと二人で興奮冷めやらずに語り合ったことだった。

しかし自宅に着いてから音の記憶が冷めやらないうちにと、すぐに「80」を聴いたがサッチモの輝かしいトランペットが脳天に突き刺さりクラクラッと来て、「やっぱり自分にはこの音の方が合っている」と、ひと安心(笑)。

他所(よそ)のお宅のいろんな音を聴かせていただくたびに「選択」という言葉が浮かんでくる。

「選択する」ということは言い換えると「主体性を持つ」ということだが、東奔西走して耳を鍛えることで世界が広がり(自分の)選択の妥当性が自ずと明らかになってくる。

オーディオに対して熱意のある方にできるだけ他流試合をお薦めする所以です~。 


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喋り過ぎるオーディオ

2013年12月22日 | 独り言

先日(12日)、NHK BSプレミアムで放映された「OZU世界NO1の秘密」は非常に興味深い番組だった。

これは往年の映画監督「小津安二郎」(おづ やすじろう:1903~1963)の特集番組だが、彼の代表作とされる「東京物語」は、このほど世界の映画監督たちによる歴代の名画を選ぶアンケート調査の結果、栄光の「ベスト1」(イギリスの映画専門誌)に輝いたほどの名作だった。

                  

この番組では「小津映画がなぜそれほどまでに今なお世界中から高い評価を得るのか」、その秘密の一端を往年の名女優や助監督が語り尽くす内容だった。

実際の映画のシーンを通じて、小津監督の狙いやこだわりが解説されていくので実に理解しやすかったが、これまで何度も鑑賞した「東京物語」だが、成る程そういう意味だったのかと改めて感心することばかり。

この映画は、田舎に住む老夫婦が自分の子供たちが住む大都会東京に遊びに行って邪険な扱いを受けて失望するストーリーだが「あれだけ可愛がって育てた子供たちでも大きくなって独立してしまうと親との心が通わなくなる。人生とは残酷なものですよ、これが小津監督の主張です」と、助監督を務めていた吉田喜重氏の言。

一番興味深かったのは「小津映画」の特徴として映像と台詞はできるだけ控えめにして、写しすぎない、喋り過ぎないようにする手法がとられていること。

たとえば、「東京物語」の中で老夫婦が懐かしい次男(戦死)を思い出すシーンがあるが飾ってある遺影をけっして大写しにはしない。カメラが一定の距離をとったところからぼんやりとブロマイドを撮影しながら「どんなに優しかったことだろう」と、観客のイマジネーションに完全に委ねている。

「人間の自由奔放なイマジネーションに追いつくものはない、映像や台詞はその手助けに過ぎませんよ」というわけ。

そういえば「行間を読む」という言葉があるが、優れた小説はその最たるものだろう。

ここで、思わず「音楽・音の世界も同じことではなかろうか」と思ってしまった。

どんなオーディオシステムだって演奏会場の音をそのまま再現できるわけでもなし、いくら努力したところで所詮は50歩100歩。

そういう意味では、何でもかんでも克明に再生しないと気が済まない「喋り過ぎるオーディオ」の罠に陥っている気がしないでもない。
「イマジネーションを掻き立ててくれるような音であってくれればそれでいい」という割り切り方もどこかで必要なのかもしれないなあと、ちょっぴり己を顧みて反省したところ。

そこで、つい思い出すのが名著「西方の音」(五味康祐著)の中で、満足にオーディオシステムを買えない五味さんが音楽カタログを見ながら空想に耽るクセがついてしまい、実際にレコードでフォーレのヴァイオリン・ソナタを聴いたときに「夜の海浜で貴婦人に抱擁される幻覚」を覚える箇所。

個人の空想の中で華麗に鳴り響く音楽・音に優るオーディオシステムはこの世には存在しない。

何だか精神論みたいになってしまったが、そういうわけでこの世界で最後に行き着くところは個人毎の「耳の教養」なんですよねえ。

なお、けっして自分に「耳の教養」があるなんて思ってやしませんから念のため~(笑)。

とにかく、いろいろ考えさせられた「小津映画」だった。
 


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3つの「甲乙つけ難し」

2013年12月20日 | オーディオ談義

18日(水)は朝から猛烈な寒波が日本列島へ押し寄せてきた。南国の地である九州も例外ではない。

普段なら寒波なんてまったく気にしないのだが、当日は福岡からオーディオ仲間のKさんがお見えになる日で、山間部を突き抜ける高速道の積雪状況が非常に心配。ずっと昔、雪道をクルマで走っていてスリップしたため命を落としかけたことがあり、その怖さは身に沁みている。

仕事ならともかく、趣味のために無理したうえで事故ったりすると目も当てられないので、「訪問中止」を視野に入れながら早朝からパソコンを開いて「ハイウェイ交通情報」のマップを覗いたところ、高速道の一部が「凍結防止剤散布中」とのことで、通行止めまでには至っていなかった。

9時半ごろにKさんから電話があって「今から出発します。今日はよろしくお願いします。」

「まだチェーン規制にはなってないようですが、くれぐれも雪道には気をつけてくださいね。慎重に運転してきてくださいよ。」

ようやく11時過ぎに予定の時間よりも10分ほど遅れて到着したKさんに「道路の状況はどうでしたか?」

「途中までは何てことはなかったのですが、山間部に入った途端に雪景色になりました。これは中止したほうが良かったのかなと一瞬後悔しましたが、低速運転でどうにか乗り切りました。夕方になると凍結しそうなので今日は早めに切り上げる予定です。」

「そうですね。今日の試聴は効率よく進めましょう。」

今回の試聴を振り返ってみるとハイライトは次の3つのバーサスだった。それでは順番に~。

☆ 「JBL375ドライバー」 VS 「AXIOM80」

はじめにJBLの3ウェイシステムから試聴した。中音域(800~9000ヘルツ)を担当しているJBL「375」ドライバーを駆動している真空管「2A3」の球転がし用としてKさんが持参されたのは次の4種類。

           

左上から「シルヴァニア刻印」 「エレクトロ・ハーモニクス(エレハモ)」(ロシア) 「ヴィシュー刻印」(フランス) 「アクチュラス刻印」

名にしおう古典管が3種類もあってなかなかの好勝負でいずれも捨てがたい持ち味があった
が押しなべて他を圧していたのは予想どおり「アクチュラス」。しかし、近代管の「エレハモ」も値段の割には善戦でなかなか好感が持てた。

それにしても「375」の再生能力はさすがで、口径10.4センチのダイアフラムはけっして伊達ではない。二人ともすっかり聴き惚れてしまった。

「AXIOM80(以下「80」)と比べると、原音を忠実に再生するという点からは375の方が上かもしれませんね。米良美一さんが唄う“うぐいす”では口から出す声と鼻にかかった声の微妙な使い分けを見事に再現できています。80ではとてもこうはいきません。」と、Kさん。

「そうですね。いい勝負です。80は“薄化粧美人”のようにうまく装飾して騙すところがありますからね。ま、甲乙つけ難しといったところでしょうか。」

☆ 「オリジナル・エンクロージャー」 VS 「自作のエンクロージャー」

昼食をはさんで午後からは本命の二つの「80」の比較試聴に入った。グッドマン社指定のオリジナル・エンクロージャー(以下、「オリジナル」)に入った「80」と自作のエンクロージャー(以下「自作」)に入った「80」。

                   

両方、みっちり聴いていただいた後でストレートに「いかがでしたか?」とKさんに訊いてみた。

「いやあ、どちらがいいとか悪いとか、これは難しいですね。もう好き好きの問題でしょう。自作の方ですが低音域の充実度はたしかに目を見張るものがあります。通常の80ではとても出せない音です。この点では我が家の80を上回ってますが、200ヘルツあたりがちょっと薄くなっているような気がします。まだエージング不足ではないでしょうか。その点オリジナルはグッドバランスですが自作と比較すると少し力感に欠けますね。」

というわけで勝負は「引き分け」ということに。メデタシ、メデタシ(笑)。

☆ 直熱三極管「WE300B(オールド)」 VS 「PX25」

現在「オリジナル」の「80」を駆動しているアンプの出力管は「WE300B」(アメリカ)、そして「自作」の「80」を駆動しているのは「PX25」(イギリス)。両方とも1950年代の古典管。

            

真空管の種類は数あれど、巷間、音が良いとされているのは「直熱三極出力管」だが、その中でも双璧とされているのがこの「WE300B」と「PX25」である。

「いやあ、今回の試聴でWE300BとPX25の個性を十分堪能できました。両方とも素晴らしい球ですね。これはまったく、甲乙つけ難しです。」と、Kさん。

「近年、やたらにWE300Bが値上がりしてますが、PX25は実力のわりに置き去りにされているようでちょっと可哀想です。ただ、ちょっと球切れしやすいのが難点ですが・・・。」

そうこうするうちにあっという間に時間が経って、「年内はもう訪れる機会がないと思います。どうかよいお年を・・」との言葉を遺してKさんが帰途につかれたのは予定の15時半きっかりだった。

心配していたところ17時ごろに「無事到着しました。」との一報が入った。


ああ、よかった。今日も素晴らしい一日だったなあ。なんて人生は楽しいんだろう(笑)。
 


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もう、笑いが止りません!

2013年12月18日 | オーディオ談義

前回からの続きです。

私たちオーディオ仲間の間ではシステムの改造後、メチャクチャに音が良くなったときに「もう、笑いが止りませんよ」という言い方をよくするが、結論から言えば今回の新たな「AXIOM80」(以下「80」)の取りつけがまさにそうだった。

とはいえ、紆余曲折があったのはもちろんである。

強力な助っ人のAさん(湯布院)とともに、改造後の「80」の試聴に入ったのは午後2時ごろだった。

テスト盤は「パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番」(庄司さやか、メータ指揮)で、冒頭の腹の底にズシ~ンと響くオーケストラのフォルテがどれだけ表現できるかがポイント。

駆動するアンプはWE300B真空管アンプ(モノ×2台)。Aさんは14日(土)にも我が家にお見えになっており、オリジナル・エンクロージャー(以下「オリジナル」)に入った「80」の音に馴染んでおられるので比較してもらうのは絶好の機会。

目を瞑って10分ほど黙って聴かれていたAさんが遠慮がちにやおら口を開かれた。

「どうも音が“ざらついている”感じがします。それに何だか全体的に音の佇まいがゴチャゴチャしている感じです。長い間待機していた80を久しぶりに鳴らしたせいでエージングが足りないのかもしれませんが・・・。ARUの位置を一番下の穴に移した方がいいような印象を受けました。」

さすがに百戦錬磨のAさんだけあって、的確にポイントを指摘されてくる。

「やはり、そうですか!すぐに作業にとりかかって移し替えますが、時間の方は大丈夫ですか。」

「ええ、時間は十分ありますよ。加勢しましょうか?」

「いや、独りで十分ですよ。」

さあ、ものの30分ほどかかっただろうか。移し替えが無事終了した。

                  

さあ、改めて注目の音出し~。

初めの一音を聴かれた途端に「これは驚きました!オリジナルよりもローエンドへの伸びが明らかにいいですよ。」

「いやあ、私もビックリです。こんなに変わるとは夢にも思いませんでした。80とARUは出来るだけ離した方がいいようですね。ホーンロードみたいな効果が出るのでしょうか。比較的低音が出にくいとされる80からこんな豊かな音が出るなんてとても信じられません!」

これだからオーディオは止められない(笑)。今回かかった費用はSPターミナルとARUに使ったステンレスの金網代くらいのものでしめて5000円程度というのもうれしい。

ただしオリジナルにもいい面があることはたしかで、ボーカルなどのあまり広大な周波数レンジを必要としないソースでは雰囲気の漂わせ方に一日の長がある気がする。

そのうちじっくり聴いていると面白いことに気が付いた。

出てくる音の形がエンクロ-ジャーの形と実に相似している!

片や、やや寸づまりの幅広い音、そして片や細身で上下のレンジがよく伸びた音。

これからいろんな方々に聴いていただいて、「肥満タイプ」と「長身痩躯タイプ」のどちらに軍配を上げるかお訊ねするのも楽しみのひとつだが、個人的には後者の方が総合力で上だと思うし、Aさんも同意見だった。

たいへん不遜な言い方になるが個人的に独自に作ったエンクロージャーが研究に研究を重ねたメーカー既成のエンクロージャーを部分的にしろ上回るなんて快感そのものである。

しかし、遠く海外などへの輸送コストの問題もあることだし、メーカーにもいろいろ制約があることはたしかである。

これと似たような話が名著「ベイシーの選択」(菅原昭二著)の中にもあって、JBLの低域用ユニット2発を独自に工夫した(とても輸送が困難な)特大のエンクロージャーに入れる話が出てくる。

とにかく、「メーカーの既製品を最良のものとして徒に信じることはない。」というのが自分のささやかなポリシーである。

まあ、ケース・バイ・ケースなのだが。

さあ、今日(18日)は福岡から同じ「80」の愛好者のKさんがお見えになる予定だがはたしてどういうご感想を洩らされるのだろう?


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二つの「AXIOM80」の聴き比べ

2013年12月17日 | オーディオ談義

昨日(月)は朝から大忙し。とうとう9時ごろになってオーディオ仲間のAさん(湯布院)に応援を求めた。

「以前からお話していましたようにスペアで持っていたAXIOM80(以下「80」)を、別のエンクロージャーにマウントしたのですが、いいのか、悪いのか、どうも判断がつきませんのでよろしかったらお越し願えませんか。ぜひ試聴していただいた上でご意見をお伺いしたいのですが。」

「いいですよ。それは楽しみですねえ。今日の午後なら空いてますから、また追って具体的な時間をご連絡します。」

経緯を説明しておこう。

これがないと「夜も日も明けない」ほどの大のお気に入りの「80」だが、この上ない繊細なツクリなので故障したときの用心のため2セット保有している。しかし、通常の使い方をしている限り(経験上、後面開放の使い方だけは絶対ダメ)、故障しないことが分かってきた。

「80はしょっちゅう鳴らしてあげないとサボり癖がありますよ」とのアドバイスもあって、この際思い切って遊んでいる「80」も使ってみることにして、1週間ほど前からコツコツと取付用の道具を買い集めてきた。

「80」の取り付けとなれば、ハイライトは「ARU」の工夫である。

「ARUっていったい何?」

いつも苦し紛れのすえに頼りにしているネットだが、今回もググってみると大助かり~(笑)。

「Acoustic Resistance Unit」の頭文字をとったもので、音響的に負荷をかけて低い音を平坦に伸ばす役目を持っている」

補足すると、要はユニットの背圧の逃がし方を微妙に調整する道具のことで、このおかげで豊かなふくらみのある音が得られるが、こればかりは実際にSP周りの作業をやった事のある人でないと分からないかもしれない。

位相、背圧、吸音材、定在波の処理など(SP周りの作業は)オーディオの宝庫である。

通常のスピーカー・エンクロージャーではスピーカーの前面の下部に大きな開口部があったり(バスレフタイプ)、タンノイの大型スピーカーに見られるように長大な「バックロードホーン」型などがあるが、「80」の製造元であるグッドマン社(イギリス)はこの背圧の逃がし方に天才的な着想を発揮したのがこのARUである。

「百聞は一見にしかず」。参考のために、「オリジナル・エンクロージャー」の裏蓋を開けてパチリと撮影。

                  

かなり大きな開口部なのに実際に背圧を逃がすのは中央の金網の部分で周囲はビニールみたいなもので覆ってあり、極めて微妙なツクリであることが伺える。

グッドマン社が研究に研究を重ねた結果がこれだろうから、ソックリ同じものを作るといいのだろうが、まったく同じものでは面白くない(笑)。

思い悩んだあげくに近くのホームセンターで仕入れてきたのが、ステンレス製の一番細かい目が詰まった金網で、これを2枚に折り重ねて使用することにした。ややこしい理論は後回しの、長年のカンだけに頼る実験の世界である。


注文していた最後の道具のSPターミナルがようやく届いたので15日(日)の夕方から作業に取り掛かった。いったん睡眠をはさんで16日(月)の早朝5時頃からガサゴソと室内を這いずりまわって、ようやく「80」の取付が終了したのは7時ごろ。文字どおり朝飯前の仕事だった。

          

楽屋裏を見せるようで気恥ずかしいが、後日の参考のため写真に撮ってみた。下部に詰め込んでいる羽毛の吸音材は不要かもしれないが、どうするかちょっと
迷うところ。どうせ一度の試聴では済まず、おそらくまた裏蓋を開けることになるだろうから、その時に考えよう。

ようやく、取り付け終了後の姿が次のとおり(右チャンネル)。

                   

右側のエンクロージャーに取り付けたのが新たな「80」で、左側が現在使用しているグッドマン社指定のオリジナルエンクロジャー(以下、「オリジナル」)に入った「80」。

課題のARUはエンクロージャーの上から3番目の既存の開口部(丸い穴)に取り付けたがはたしてこの位置でいいのかな?

興味津々で試聴を繰り返してみるものの渦中にいると当事者の耳がどうもナマってしまうようだ(笑)。ここはアッサリ第三者の意見を求めた方が得策。

そう判断して冒頭のようにAさんにお願いしたわけだが、実際にお見えになったのは14時ごろだった。

さあ、試聴開始。

以下、続く。
 


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図書館巡りと独り言

2013年12月14日 | 独り言

11日(水)は恒例の3箇所の図書館巡り。順番は「日出町」(隣町) → 「県立図書館」 → 「別府市図書館」。

全部で13冊をゲットした。

         

さっそく、昨日(13日)までに2冊を読破した。

1冊目は注目の「新検察捜査」。著者の中嶋博行氏は過去に「検察捜査」でミステリー作家の登竜門とされる「江戸川乱歩賞」(賞金1千万円)を受賞しているが、この作品は乱歩賞受賞作の長い歴史の中で指折りの名作だと今でも思っているので、この「新検察捜査」も期待を持って読ませてもらったが“さすが”の一言で1日で読み上げた。

鼻っ柱の強い女性検事が検察と警察の対立関係のもとで猟奇殺人の謎を追うストーリーでやや荒唐無稽の面もあるが、意外性もあって退屈せずに一気に読ませてくれた。

次に読んだのが同じく江戸川乱歩賞を「再会」で受賞した「横関 大」さんの「沈黙のエール」だったがこちらの方はハズレ~。前半はなかなかだが後半が犯人の設定も含めてお粗末。こんな作品を出版するようでは横関さんの未来は暗いと言っておこう。次回作に期待。

ほかには、好きな作家の貴志祐介さんの初めてのエッセイ集「極悪鳥になる夢を見る」も楽しみのひとつ。


さて、途中で立ち寄った県立図書館では月刊誌「選択」(12月号)を閲覧席で熟読。この本は世界、日本の時事問題が克明に得られる貴重な情報源として非常に重宝している。政界・実業界や官僚の動静も“こと細かに”綴ってある。雑学好きの人間にはもってこいの本だが、発売元には悪いが購入するまでには至らない(笑)。

読み終わった後に、今度はオーディオ専門誌「無線と実験」(12月号)を手に取った。どちらかといえば「アンプ製作者」向きの技術系専門誌で、随分長い歴史を誇っている。

ザット読み進んでいくうちに「読者の声」欄があって、次のようなコメントが寄せられていた。

「オーディオマニアの高齢化で高級オーディ機器が死蔵あるいは廃棄の憂き目にあっています。機器の売買、交換などを通じて次の世代に引き渡し、有効に活用できるような仕組みが欲しいところです。」といった趣旨だった。

まったく同感!

先日もオーディオ仲間のMさん(大分市)から、「スレッショルドのパワーアンプを高齢のマニアから預かりましたが、スイッチを入れると煙が出てきました。どこか点検と見積りができるところを知りませんか?」という問い合わせがあったので、別府市内のショップの紹介をしてあげたばかり。

Mさんはオークション出品の代行をされているが、近頃では長い間死蔵されてきたため故障の憂き目にあった高級機器の持ち込みが非常に多くなったと嘆いておられた。オーディオ機器はときどき電気を入れてやらないと劣化・故障の一因になるのは分かりきったことなのだが・・。

「高齢になってそろそろ耳も遠くなったし、音楽をじっくりと腰を据えて聴く“根気”もなくなったのでオーディオ機器が休止中だが、それかといって売るのも何だか勿体なくて未練があるし、このまま放っておくことにするかな」というシーンがまるで目に浮かぶようだ。

まあ、機器の売買をするのなら「ネットオークション」という手もあるわけだが、購入するのはともかく出品するとなると、なにぶんにも相手の顔が見えないので「売り甲斐」がない。

長年愛用してきた機器を見ず知らずの人間に売り払う“忍びなさ”はよく分かるし、それにトラブルが起きたときが面倒そうで「さわらぬ神にたたりなし」と、つい億劫になる。

したがって、上記のコメントのようにもっと手軽に双方の身元の情報がある程度分かる範囲で取引・交渉がやりやすい場が欲しいところ。もちろん専門の業者もちらほらあるようだが、商売気がムンムンしていてどうせ買い叩かれるのが落ちなのは目に見えている。

これから高齢のオーディオマニアは増える一方だから売買双方の身元をきちんと確認できる前提のもとで対象となる機器の「売ります、買います」情報を載せてくれるサイトがあると便利な事この上ない。どなたか“志”ある人がやってくれないかな~(笑)。

と、ここでふと疑問が湧いてきた。

昔の高級機器を売り払うにしてもそういう機器の本当の価値を分かってくれる受け皿の世代がはたして育っているんだろうか?

近年では60年以上も前の古典真空管が大いに見直されているように、オーディオの世界では最新鋭のデジタル向きの機器が値段の割に必ずしもいいとは限らないのだが、どうも巷では「新しいものほどいい」と、錯覚している人が多いように思う。

たとえば現在3つのブログランキングに参加しており、比較的若い層のブログを表題に興味を引かれてときどき拝読させてもらうが、総じて機器の選択などにどうも世代間のギャップを感じてしまう・・・。もう、これ以上は言わない(笑)。

あくまでも個人的な感想だが、傾向としてオーディオマニアの二極分化が起きているように思えて仕方がない。

いわばオーディオの「黄金時代」の熱気を通じて「オーディオの楽しさを十分に味わった」層と、「中途半端な楽しみしか知らない」層に分かれていると言ってしまうと身も蓋もないわけだが・・・・。しかも前者は高齢化で減少する一方である。

オーディオはいろんな所でいろんな音を聴かねば始まらない趣味だが、友人・知人の家で聴かせてもらった音、家庭で鳴り響く音楽に大きな衝撃を受けて発奮した人が後者にはいったいどれくらいいるんだろう?

オーディオの真髄に触れる機会が少なくなり、「愛情と熱意」が冷めている世代が増える一方のような気がしてしようがないが、これも時代の流れなのかなあ。


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高騰する古典真空管

2013年12月12日 | オーディオ談義

「昨日のオークションの結果をご存知ですか?」とオーディオ仲間のkさん(福岡)から電話があったのは9日(月)の早朝のことだった。

「いいえ、まだ確認をしてませんが。」

「何と16万3千円まで上がりましたよ!15万円までならと、狙っていたのですが途中から諦めました。この分では来年以降、20万円以上になることは確実です。本家本元のアメリカでは日本製の出力トランスを使った2A3(真空管)の評価がうなぎ上りで今では逆輸入される程です。全体的に品薄のようですよ。」

「こうなると、とても手が出ませんね~」と、思わず“ため息”が出た。

説明しよう。

待望の古典真空管「1枚プレートの2A3」のオークションが開始されたのは12月2日で開始価格は2万円。それがみるみるうちに値上がりして12万8千円で一時高止まり。入札しようかどうか興味を持って推移を見守っていたところだった。

出品者からの情報は次のとおり。

              

RCAの直熱3極出力管2A3です。 出品していますのは、発売当初のいわゆる1枚プレートで、2A3が製造され始めた一時期のみ販売されたタイプです。 1930年代前半の製品。細いフィラメントを何回も往復させる繊細な構造で、2A3の中でも音質に定評の有るところです。

出品していますのは、1本は新品元箱入り。 もう1本も新品元箱入りで、こちらは未開封の状態ですので、今回開封せずに出品しています。こちらも、2A3 1枚プレート独特の内部構造(中央部にフィラメント吊り金具を固定する長方形の金具とスプリングコイル)が箱の外からも確認出来ます。 

また、この状態で動作も確認済みです。 現在では、2A3 1枚プレートの新品元箱入、特に未開封品は極めて希少です。
どちらも今回出品のため測定しただけです。 特性はTV7/Uで確認済み。 測定値は、基準値38に対しどちらも63となっています。
入札価格は2本セットの価格です。 よろしくお願いします。

ちなみに、我が家では2A3真空管が6本(RCA4本、マルコーニ2本)あるがいずれも後期タイプの2枚プレートでペアで4万円程度の代物。1枚プレートと2枚プレートでは“月とスッポン”ほどの音質の差があることを実際に試聴して承知しているので、今回はぜひとも手に入れたかったが、16万円ともなるとちょっとためらう。それに2A3アンプはサブ的な存在だしねえ(笑)。

なお、オークションの出品者の身元は「名店」の誉れ高い「EU〇〇〇」さんなので、絶大の信頼が置けるところから入札者が殺到したのも一因。皆さん、実によくご存知で古典真空管の世界は実に目利きが多い!

その「EU〇〇〇」さんから、同時に出品されていたのが泣く子も黙る(笑)「WE300B」の古典管。

同じくオークションの情報によると、

           

WE ウエスタンエレクトリックの直熱3極出力管WE300Bです。 言うまでも無く、WEの代表的銘球で、出品していますのは1950年代半ばまでに製造されたいわゆるオールドタイプです。 3桁のロットで、プリントベースとしては初期の300Bです。 1950年製(013ロット)と1954年製(452ロット)。

どちらもプレート上部側面の3枚のマイカ板が長い長方形になっている点やプレート下部のマイカ板の中央部だけに白いマグネシアを塗布してある点(劣化の進行を防ぐため)など、どちらもWE300Bオールドの特徴を備えています(この特徴は、WE300B刻印からそのまま引き継がれたもの)。 黒つや消しプレート。

元箱は元からのものではないようですが、どちらもゲッタの減少も見られず、新品と変わらない状態のものです。 特性はTV7/Uにより確認済み。 測定値は基準値58に対し79、82となっています。
入札価格は2本セットの価格です。 よろしくお願いします。

このオークションの落札結果だが開始価格が5万円のところ、最終的に入札件数が141件、落札額は何と「615900円」。

たった2本の真空管がこの値段ですよ~!

通常の感覚からすると、おそらく「たかが真空管に61万なんてバッカじゃなかろか」と思われることだろう。

しかし、実際に「“いい音、いい音楽”に接したときに感激のあまり、
お金なんて問題外だ、どれだけ突っ込んでも惜しくないぞ」と心に誓うのがオーディオマニアの常なので、このWE300Bの落札者の気持ちは手に取るように分かるのである。

我が家にはWE300Bの1950年代が3本(ロットナンバーが139,139,214)、1960年代が1本、1988年製が2本、そして中国製が2本ある。実際に使ってみると分かるが「オールドタイプじゃないと出ない音がある」のはたしかである。

したがって、自分だってもし手持ちのWE300Bオールドが無くなれば「まるで麻薬が切れかかったようなもの」で、大枚をはたいてでも購入する可能性が大いにある。

な~に、あの世までお金を持っていけるわけではないから、生きているうちにここで使わないでいったいどうする!?(笑)。

それだけの魅力と価値を大いに秘めている真空管である。

ちなみに1990年代以降に作られたWE300Bもときどきオークションに出品されているが、10万円前後の価格なのに人気がまるでない。あくまでも噂だが、頻繁に”球切れ”するそうだ。

「女房と畳は新しい方が良い」という言葉があるが、真空管に限っては例外ですからね~。


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見事なJBL「メトロゴン」(レプリカ)!

2013年12月10日 | オーディオ談義

去る8日(日)の午前中のことだった。

「以前にお話ししていたJBL“メトロゴン”のレプリカを作られている方のお宅を今日の午後訪問しますが、ご都合がよかったら同行されませんか?」と、オーディオ仲間のMさん(大分市)から電話があった。

「いやあ、ありがたいです。もちろん同行させてください!」

訪問先の日出町(ひじまち)は別府市の隣にあるこじんまりとして鄙びた町で、クルマでおよそ20分程の所で週に一度のペースで図書館に通っている。そんな身近な場所でJBLのメトロゴン(レプリカ)を製作している方がいるなんて想像もつかなかった。隠れたオーディオマニアは世の中に沢山いる!いやがうえにも期待が高まる。

MさんとOさんのお二人がお見えになったのはきっかり約束の13時だった。

まずは、出発前に前回のブログ「オーディオは引き算・・・・・」で記したように我が家のプリアンプなしの「AXIOM80」を聴いてもらってご意見を拝聴することにした。お二人は1週間ほど前にも我が家にお見えになったばかりで「プリアンプ有り」の音を熟知されているので絶好の機会。

「まるっきり、音が変わりましたね!」とOさん。ベテランのマニアなら既にご承知の通りだが「音が変わった=良くなった」というのは早計でよく混同することが多いので要注意(笑)。

音像がよりシャープになって録音収録時の再現性が高まったのはたしかだが、プリアンプによる味付けも捨てがたい様子で簡単に結論が出せないというのがお二人の総合的なご意見だと受け止めた。

ついでにJBLの3ウェイシステムも聴いてもらったが、Oさんからズバリ「うまくまとめられてますが、ウーファーのD130ユニットと375ドライバーの繋がりがもっと良くなるといいですね」とご指摘があった。

「そうなんですよ。ここが一番悩んでいるところです。現在、両者のクロスオーバーを500ヘルツ付近にしていますが、エンクロージャー(ウェストミンスター)のフロントホーンの形状から考えて1000ヘルツ付近にしようかと考えていたところです。」

40分ほど試聴してから課題を残したまま、後ろ髪を引かれつつ日出町へ向けて出発。

予定どおり、14時前後に到着した。日光が燦々とさし込む農村地帯の見晴らしのいい立地条件に恵まれた邸宅でオーディオ環境満点、これなら周囲に気兼ねなく音楽が楽しめそう。

「いやあ、はじめまして~」、初対面のSさんにご挨拶。見るからに健康的で“はつらつ”とした方である。さっそくオーディオルームにご案内してもらった。

            

いきなり目に入ってきたのが、部屋の中央に鎮座するスピーカー。JBLの黄金時代を彷彿とさせる見事なメトロゴンの複製!

いやあ、見るからにいい音がしそうですねえ~!

中に収められているユニットはJBLのD130とLE85とのことで、さっそく持参したCD「米良美一さんの歌曲集」を試聴させてもらった。

プリアンプはマークレヴィンソン、パワーはサンスイ製で実にバランスが取れた「いい音」だった。

頭の中は質問したいことでいっぱいだが、何せ初対面なので失礼にならないように出来るだけ言葉を選ぶように心がけた。

☆ 作製期間はどのくらいかかったのですか?

きちんと型枠を作ったうえで3台同時に完成させました。全体でおよそ6か月くらいでしょうか。これからの分は(型枠を作らなくていいので)スピードアップできると思います。

☆ お値段の方はいくらぐらいするものですか?

現在、オークション(クリック可)にも出してますよ。

(実際に価格を教えていただくと予想したよりも半分くらいの値段だったので二度びっくり。我が家ではJBLのユニット「130A」(38センチ口径)「LE85]「075」ユニット、それに「AXIOM301」(30センチ口径)が各1セットあるので、2ウェイ、3ウェイとして十分使えそう。真剣に購入を検討してみたくなるが、問題はSPが3セットもある部屋のスペース!)

☆ 口径38センチ以外のフルレンジユニットなどの取り付けも可能ですか?

口径38センチ用の穴を開けてますが、補助バッフルを取り付ければもちろん可能です。

☆ 差支えなかったらエンクロージャーの内部を拝見させていただけませんか?

            

背圧を逃がすスペース(下部)もちゃんと開閉ができるようになっていてユニットの個性に対する適応能力も高いようだ。

個人的な感想だが、使い道としてはすでにSPユニットを持っていて既存のエンクロージャーに不満足な方、あるいは飽きた方などには最適だろう。

また、メトロゴンは音を反射させて鳴らす方式なので聴く位置が「スピーカーの正面じゃないとダメ」みたいなことがなく、どこの位置でもおおらかに聴くことが出来る。したがって喫茶店などのお店によくマッチすると思う。見栄えがして豪華だし、まるで家具みたいでオーディオっぽい見かけがしないのもメリットのひとつ。

1時間半ほど聴かせていただいてから一同興奮気味に帰路に着いた。

自宅まで送ってもらい、お二人とお別れした後に先ほどOさんから告知された課題のJBL3ウェイシステムのネットワークの手直しにさっそく取りかかった。

実に簡単な作業でウェスタン製の鉄心入りコイル「1.2mh(ミリヘンリー)」をD130ユニット(8Ω)のSPコードに挿入し、375ドライバー(16Ω)のSPコードには、ウェスタン製のコンデンサー「10μF(マイクロファラッド)」を挿し込むだけ。これで1000ヘルツ前後をクロスさせるネットワーク(6db/oct)が完成。半田ごてを暖める時間を含めて15分くらいかかったかな。

すぐに試聴してみると、さすがに人間の耳にとってもっとも敏感とされる1000ヘルツ付近までを1個のユニットでカバーするので音に安定感がある。ゆったりと包み込んでくるようで「これでどうだ」とでも言わんばかりの説得力。

ま、あまり細かいことを言わずにしばらくこれで聴いてみることにしよう。

ホッと一息ついたところで、「アッ、しまった!ウォーキングに行く時間が大幅に遅れてしまったあ」(笑)。

さて、9日(月)の早朝に別件でKさん(福岡)から電話があったので、そのついでに「日曜日にJBLのメトロゴンを聴きに行きましたよ!」と言ってみた。

さすがに百戦錬磨のKさん、実に反応が早い。「ああ、パラゴンの小型版ですね。ずっと昔にパラゴンとメトロゴンを両方聴きましたが私はメトロゴンの方が好きでした。素晴らしい音だと思いましたよ。それはぜひ聴いてみたいですね~。」

「次回に別府へお見えになったときにご案内しましょう。どうかお楽しみに。」


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冬の風物詩

2013年12月05日 | 独り言

風物詩=季節の感じをよくあらわしている物事(広辞苑より)

さて、「我が家の冬の風物詩を3点ほど挙げてみよう。

☆ ゴールデンカボスの収穫

           

我が家にはカボスの木が2本あって、それぞれ「種無し」が1本と「種あり」が1本ずつ。7月頃から実をつけはじめて9月が最盛期。とても酸っぱくて生食は出来ないので天然の酢として活用する。

抗酸化作用があって身体にいいそうだし、漬物や焼き魚などに使う醤油代わりにもなって高血圧の方などには重宝されている。

収穫の時期は一般的に10月前後とされているが、我が家の場合はとても食べきれないのでいつも12月頃が最終的な時期になってしまう。したがって、通常は青々としたカボスが黄色に変身~。

県農政の施策ではこの黄色いカボスを「ゴールデンカボス」と銘打って販売に躍起となっているが、果汁はたっぷり出るものの、やや酸味が甘くなって人気はイマイチのようだ。

先日の日曜日(1日)の午後、隣家のご主人が剪定ばさみを持って「ごめんください」と訪れてきた。「黄色いカボスがたわわに実ってますが、このままだと木が傷んで可哀想です。私に剪定をやらしてください」

おやまあ、たいへんご奇特なことで~。

そこまで言われて知らん顔をするわけにもいかないので自分もようやくヤル気になって二人で脚立を使いながら収穫。どうやら今年はカボスの表年だったようで、途中で県外の知人たちに相当数、送ったのだがそれでもこの有様。

さて、収穫したのはいいものの事後処理が困るんですよねえ~。

☆ 干し柿づくり

           

12月に入って寒風が吹きすさぶ頃になると、我が家ではいつも干し柿づくりをする。

かねて依頼していた渋柿をまとめて30個ほど近所の八百屋さんが持ってきてくれたのが2日(月)の夕方だった。その日のうちにおよそ1時間ほどの作業で終了。「皮むき」はもっぱら自分の役目で、家内は皮を剥いた柿をいったん熱湯に浸して屋外に吊り下げる役目。

「干し柿」の大半を自分の口に入れるので知らん顔をするわけにもいかず、渋々加勢をするものの包丁使いは慣れない仕事なので最後の方は手首が痛くなるのに困ってしまう。

お天気次第だが2~3週間ほどで食べ頃になる。「干し柿」ですぐに連想するのが2年前に亡くなった母。
大好物だったので最初の1個はお仏壇にお供えすることにしよう・・・。

☆ 「黒にんにく」づくり

今や二人に一人が罹る国民病ともいえる「がん」。1990年、アメリカの国立がん研究所が“がん予防”の可能性がある食品をリスト化しているが、その数ある食品の中で頂点に位置しているのが「にんにく」。

しかし、「分かっちゃいるけどあの匂いがねえ」と敬遠される向きがきっとあるに違いないがそういう悩みを吹き飛ばすのが「黒にんにく」。

3週間ほど前に「これは人に言わないでね」との前置きで家内が友人から教えてもらってきたのが家庭で手軽にできる「黒にんにく」の製造方法。ホントかいな、と半信半疑ながら3週間後に見事に出来上がった「黒にんにく」が次の写真。

            

オー、これなら市販の製品と少しも変わらないと感心した。現在、三食ごとに一かけらを口の中にポイ。

改めて「黒にんにく」の効用をネットから引用すると、

 白い生にんにくと比べてアミノ酸類が約2.3倍、ポリフェノール類が約7.5倍(赤ワインの約13倍)、抗酸化力は5倍以上

 食後の匂いをほとんど感じず、生にんにくと比べて消化も良く胃にやさしい。それに甘味と酸味がブレンドして美味しい。

 血管の老化予防、腸管の老化予防、免疫細胞の弱化予防に効果がある。

とまあ、いいことだらけ。

そういえば、このところすこぶる快調で午後の80分ウォーキングにも果敢に挑戦しているが、もしかしたら「黒にんにく」の効果かもしれないなあ(笑)。

 


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やはりノンフィクションは面白い

2013年12月01日 | 読書コーナー

今日(12月1日)は本当はブログ休刊日の積もりだったが、一昨日、昨日と面白い本にたて続けに出会ったので予定を変更して鮮明な記憶が残っているうちにと、急きょアップすることにした。

            

☆ 「関ヶ原」(2013.7.21、岡田秀文著、双葉社刊)

日本の歴史を大きく左右した天下分け目の「関ヶ原の戦い」は、司馬遼太郎さんの名作「関ヶ原」をはじめ沢山の著書があって枚挙にいとまがないし、あらゆる史実が公にされているので「今さら関ヶ原?」の感はどうしても拭えないがそういう中であえてこの題材を取り上げた著者の勇気にまず感心。

「よほどユニークな視点からの“関ヶ原”だろう」と、興味を持って読み進んだが期待にたがわぬ内容だった。

戦場の荒々しさを期待すると完全に裏切られるほどの静かな物語といっていい。

とても大きな事件が起こっているようには感じられないけれど、時勢は確実に「どこか」へ転がっていく。その先は誰にもわからない。今でこそ「東軍が勝利する」と後世の人は分かりきっているが、当時の関係者たちはまったく勝敗の予断が付かなかった。

「戦いは実際にやってみないとどっちに転ぶか分からない。果たして、どちらに組すればいいのか、どういう行動をとればいいのか」、自分の生命はもちろん一族郎党の行く末を案じて当時の武将たちの言動は文字どおり必死で命がけの状況だった。

徳川家康(東軍)、石田光成(西軍)、寧〃(ねね、秀吉の正室)、西軍を裏切った小早川秀秋をはじめ当時の関係者たちの切迫した心理がまるで実在する人物のように生き生きと克明に描かれている。

さらに、迷いに迷っても思惑通りに事が運んだ人は結局皆無だったという視点が実に鮮やか。結局、思惑がはずれながらも挽回する思慮深さと流れを読むに長けた家康の存在感が全編を通して際だっている。

歴史にイフ(if)は禁物だが、関ヶ原の戦いほどイフの魅力が横溢する事件はないといっていい。

とにかく、戦国物を読むといつも思うのだが敗者への残酷な仕打ちを見るにつけ「平和な時代に生まれることが出来てほんとうに良かった。どんなことをしても
命までとられることはないからねえ」(笑)。

☆ 「狼の牙を折れ」~史上最大の爆破テロに挑んだ警視庁公安部~(2013.10.29、門田隆将、小学館刊)

今から39年前の1974年8月30日に起きた三菱重工本社前(東京丸の内)の爆破事件の記憶は年齢からしておよそ60歳以上の方々にはまだ残っているに違いない。

死者8人、重軽傷者376人もの被害を出した大参事だったが、これは11件にも及ぶ連続企業爆破事件の嚆矢(こうし)に過ぎなかった。

本書はこの犯行声明を出した「東アジア反日武装戦線”狼”」の正体に迫る警視庁公安部の活躍を描いたもの。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるが文字どおりそれを地でいく様な内容で、当時の捜査官が次から次へと実名で登場し、地を這(は)う努力のすえに犯人を追い詰めていく模様が、まさにサスペンスドラマを見ているような迫力がある。

皆目手がかりがつかめない中、声明文の内容を細かく分析することにより思想的な背景が明らかにされ、アイヌ問題などを通じてじわじわと犯人の影が炙り出されるわけだが、その“きっかけ”となったのが「北海道旅行をしていた二人組の若者たちの手荷物(爆弾在中?)を何気なく触った旅館の女将が(若者から)ひどく叱られた」という人間臭い出来事だったのも非常に興味深い。

また、手柄を立てた捜査官たちの生い立ちなども詳しく紹介され人物像の彫り込みにも成功している。貧しい家庭に育ち、大学に行きたかったが家庭の事情でやむなく進学を断念して巡査になったという人たちがほとんどで、「同じ人間に生まれて、どうしてこうも違うのか」という世の中の矛盾を嘆きつつ「親の脛をかじりながら学生運動に身を投じる学生たちが許せない存在」に映るのも道理だろう。

また、容疑者たちの行動や仲間を把握するためグループに分かれて慎重に尾行を繰り返していたものの、絶対に気付かれていないと思っていた尾行だが、逮捕後に犯人たちが(尾行には)全て気付いていたと自供したのもご愛嬌。

そりゃあ、脛に傷を持つ人間が尾行に気が付かない方がおかしいよねえ(笑)。

結局、この事件で逮捕されたのは7人。しかし、その後のダッカ事件などで3人が超法規的措置として海外に逃亡、死刑が確定した2人も、海外逃亡犯の裁判が終了していないとの理由で刑の執行ができないでいる。当時のふがいない政府の対応が、捜査官の努力を無為にし、遺族の気持ちを傷つけ続けている。その意味でも、事件はまだ終わっていない。

実に読み応えのある一冊だった。


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