「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

番組視聴コーナー~「日本一<音>のいいジャズ喫茶」~

2008年06月30日 | 番組視聴コーナー

現役時代にストレスがたまったりすると、きまって考えていたことがある。

「いっそのこと、仕事なんかスッパリ辞めて本格的なオーディオ装置を備えたクラシック音楽喫茶をやってみたいなあ~」。

「店の名前はモーツァルトに因んで<アマデウス>にしよう、室内はどのくらいの広さにして天井の高さはいくらぐらいにする、どういうスピーカーを置いて、アンプはあれにする、CDプレーヤーはあのメーカーにしよう」なんて考えているとそれだけで結構楽しい夢をみさせてもらった。

結局、カミサンの安定志向にもとづく猛反対(当然ですよね!)で夢は適わなかったが今でもあのとき思い切って決断していたら今ごろはどうなっているのだろうと考えることがままある。

したがって、音楽のジャンルが違いこそすれ全国の
「ジャズ喫茶」の音にも、ずっと昔から興味を持ってきた。

自分の知る範囲で、「日本一<音>のいいジャズ喫茶」と聞き及んでいるのは
岩手県一関市の「ベイシー」である。

店主は名著
「ジャズ喫茶~ベイシーの選択~」で健筆を振るわれた菅原昭二氏。因みにこの本は自分にとって五味康祐氏の「西方の音」と並んで数少ないオーディオの「バイブル」になっている。

同書(当時)によると、「ベイシー」(当時懇意にされていた「カウント・べイシー」からもらった名前)のシステムは次のとおり。

レコード・プレーヤー      リン・ソンデック LP12(ベルトドライブ)

カートリッジ           シュアーV15タイプⅢ 

プリアンプ            JBLーSG520

パワーアンプ          JBLーSE460  3台

スピーカーシステム      低域  JBL2220B片チャンネル2本
                  中域  JBL375
                  高域  JBL075 

3ウェイの大型マルチ・スピーカーシステムでCDではなくて
レコード専用というのが大きな特徴。それに低域用の2220B2本を入れたボックスが巨大(吸音材として布団がブチこんである!)で、これが低域の迫力に大いに貢献している。

東京在住のジャズ喫茶経営の連中(寺島靖国さんなど)が「ベイシー」の音を聴いて低音のモノ凄さに度肝を抜かれたというエピソードを読んだことがある。

JBLの375と075はツイこの前まで自分が使っていたユニットで懐かしい。現在も部屋の片隅に置いてあるが十分に使いこなせなかったのでいずれ再挑戦という重くて楽しい課題が残されている。

ともあれ、自由の身になったら
クルマで日本一周をしながら是非一関の「ベーシー」に立ち寄って音を聴いてみたいというのが、これまで自分のささやかな夢のひとつだった。ただし、自由の身にはなったもののいろんな事情があっていまだに果たせないが・・・・。

その「ベーシー」が何とテレビの映像で菅原昭二氏のインタビューとともに公開されるとわかった。(月刊「デジタルTVガイド」)

と    き     6月17日(火)  19時~19時54分

チャンネル     BSデジタル・ハイビジョン  BSーi(106)

番 組 名     ハイビジョンのひととき「音楽名店探訪」

番組紹介      日本全国に点在するジャズ・クラシック喫茶の名店を探訪する。
            今回はみちのく岩手のジャズ喫茶の名店を紹介。
            盛岡市「開運橋のジョニー」と一関市の「ベイシー」を訪れる。

BS-iは他のチャンネルに比べてなかなか洒落た番組をときどき企画してくれる印象がある。

「開運橋のジョニー」はさておいても、「ベイシー」だけは必見だ。当日の朝に録画予約するともに当日19時からテレビの前に釘付けになった。

番組の前半は「開運橋のジョニー」の特集。早く「ベイシーに切り替えてくれよ」の願いも虚しくとうとう30分間ほど延々と続いた。

さて、ようやく「ベイシー」が始まると思いきや、今度は南部鉄器の工房や地元グルメの紹介に移った。「おいおい、いい加減にしてくれよ」という感じで待っていると、やっと「ベイシー」の放映になったが、もう残り時間がたったの20分程度になっている。


                 
      番組タイトル         「ベイシー」外観            菅原氏
 

                     
               ウーファー2発        ジャズ・レコードコレクション                 

全国のジャズ・ファンから「伝説のジャズ喫茶」と呼ばれているとのナレーションから始まったが、番組構成はバックにジャズが流れている中での菅原さんのインタビューが大半を占めており、一番期待していたベイシーの音を本格的に聴けるまでにはいかなかった。

もっとも、テレビ取材の持ち運び可能な機器程度では原音そのままの録音は到底無理だろうから期待する方が無茶というものだろう。

菅原さんの話し方や内容は随分温和であり穏当なもので、何だか「ジャズの仙人」のような印象がしてきて、それはそれでいいのだが、あの「ベイシーの選択」に書かれていた音に対する情熱、妥協のない研ぎ澄まされた先鋭的な感覚があまり感じられなかった。

たとえば「レコード音楽に対する音のこだわり」について「(他人に対するアドバイスとして)音に標準はないのだから自分が納得すればそれでいい」という言葉なんか、これはオーディオ愛好家にとっては非常に甘い言い方で「菅原さん老いたり」の印象を抱いたのは自分だけだろうか。

さらに、菅原さんは40年も経つとジャズ喫茶の辞め方が難しいなんて気になる発言をされていたが、先般の「岩手・宮城内陸地震」は阪神大震災以上の揺れだったそうだが、これがきっかけで「ベイシー」が廃業なんてならないように祈るのみ。

どうか自分が立ち寄れるようになるまでは是非営業を続けてくださいね~。

    

                        


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釣り紀行♯27~「隣の釣り人さん、どうもありがとう」~

2008年06月26日 | 釣り紀行

今年の梅雨は例年に比べて序盤から雨の降る日が多い。釣行出来る日を毎日のように狙っているので特に切実に感じる。

それでも6月23日(月)はようやく晴れ日和になった。週間天気予報ではずっと「曇り」だったのである程度当てにしていたのだが前日からの天気の移り変わりが良好で気持ちよく後押しをしてくれた。

22日(日)の夕方に釣具店にエサの解凍を予約。早めの就寝で英気を養った。

さて、天候に翻弄されるばかりで自然には到底太刀打ちできない釣行だが、
釣りにとって一体どんな天気がベストなんだろうか。」

釣りは、言い方は悪いが所詮は「人間と魚の騙し合い」なのでその観点から考えると自ずと解答が導き出される。

キーワードは「魚に警戒心を起こさせない」こと。自分の経験に照らして述べてみよう。

まず、人間の気配を魚に感じられないようにするためには、あまり晴れ渡っていてもよくない。海中から人間の姿がちらちら見えたりすると魚が用心してエサに喰い付かない。(釣り人が白とか黄色などの目立つ服で岸壁に立つのは論外)。

それに、海中の釣り糸が照りつける太陽光にきらりと反射し、目がいい魚に気付かれやすいのも大きなマイナス要因となる。魚がエサに喰いつくのは、下からみてエサと釣り糸の角度が一致して
「点の状態」になったときに限られる。

したがって絶好の釣り日和とは「どんよりとした薄曇り」これに尽きる。

次に風も大きな要因。

風が強すぎると、マキエが蒔きにくい、仕掛けが投げずらいなど大きな支障になる一方でまったくの無風でもこれまたマズイ。

「少しぐらい風が吹いて海面にさざ波が立つ程度」が人間の気配(音と姿)を断(た)ってくれるのでベスト。それに適当に海中が濁ってくれるのもいいし、投じたウキの着水音が目立たないのもプラス要因。

ずっと昔、それまでまったく釣れなかったのが途中から風が出てきて「さざ波」がおきたところ、チヌ(黒鯛)がバタバタと13匹釣れたことがある。

さて、当日のお天気はちょっと晴れすぎだが、低気圧が去った直後なので結構風が吹き抜いて適当に波立っているだろうからマアマアの釣り日和。贅沢はいえない。

いつもどおり型狙いでY半島を奥深く分け入って前回の釣り場所の神社横の釣り場に11時前後に到着。

                         
             釣り場の遠景                  近 景

誰一人いない釣り場を我が物顔でのし歩いて、結局前回と同じ場所に釣り座を構えた。釣り開始は11時20分頃からだが満潮が10時前後なので汐が引きにかかったばかりで当初はあまり釣れないと予想していたが案の定でさっぱり。

釣り開始から2時間程度たっても1匹も釣れず、ツケエがそのままの状態で上がってくるばかり。「釣れますか~」とルアーによるハマチ狙いの40歳前後とおぼしき釣り人が隣にやってきたが「全然ダメです~」。

たまには、こういうノンビリした釣りもいいもので今日は久しぶりに釣果ゼロかと思い始めたところ、
「釣れどきは下げ7分(ぶ)」とはよくいったもので、「下げ5分」ぐらいから、時刻にすると 13時半頃からようやく散発的に当たりだした。

結構型がいいクロ(メジナ)が浮いてくるようになり、こうなるとしめたもので、早速ウキ下40cm前後の仕掛けのついたメインの竿(7.1m)が大活躍。

汐の具合で同じ場所がこうも変わるかというくらいに面白いようにかかりだした。

良型のクロの引きは半端ではなく、先手をとらないと海底の根に潜り込まれるので、針掛かりしたと同時に竿先を青空に向けて高く立てて、満月の弧のようにしならせながらぐいぐいと強引にリールの糸を巻き上げるのみ。
魚の口先を常に釣り人のほうに向けておくことが肝心。

そのうち、この日一番の良型がかかったのでこれまた強引に引き寄せて慎重にタモ網に入れ海面から上げかかったところ、何と途中であの丈夫な柄がボキリと途中から折れてしまい「アッ」というまにタモ網が魚ごと海中にドボンと落ち込んでしまった。随分長い間使っていた柄なので材質の劣化が原因。

魚も惜しいが、タモ網の枠(直径60cm)は一万円ほどもしたチタン製の使い初めの新品でそれの方がもっと惜しい。しかし、
なんらなす術もなく呆然と立ちすくむばかり。


ここでまさかの助けの神が現れた。ちょっと離れてこの様子をじっと見ていた隣のハマチ狙いの釣り人がルアーを振ってうまく網に引っ掛けて魚ごと回収してくれたのである。頼みもしないのに自ら買って出ての行動でほんとにありがたかった。

「袖振り合うも多生の縁」という言葉があるが、たいへん意義のある縁で大感激。お礼の意味で引き上げてもらったクロを差し上げようとしたがどうしても受け取ってくれない。ハマチが1匹も釣れていないのに、この欲のなさ・・・・・。

以後の釣りは、良型をかけるたびにタモ網を借りる始末で釣り人としては情けない限り。そろそろ止めようかというときになってこの日一番の大物がきたが、道糸(1.5号)がウキ止めのところで無常にもプツンと切れてしまって取り逃がした。切れた原因は長くなるのでここには書かないが十分思い当たる点がある。

もっと居続けると確実に釣れるのは分かっているのだが、仕掛けをすべて作り直すのも面倒だし時刻も17時前後となりやむなく納竿となった。

丁度ハマチ狙いの釣り人と帰りが一緒の時刻になった(タモ網が必要なので自分が終わるのを待っていてくれたのかもしれない!)ので重ねてお礼を言いながら、「恩返し」のために自分もこれからは
釣り人同士の助け合いの精神」を肝に銘じながら帰路についた。

「隣の釣り人さん、どうもありがとう」。

                
             1               2                3

 左側12匹前後がクロの良型で約30cm前後、500g~650gでした。

 無事回収できた使い初めのタモ網のチタン製の枠(径60cm)

 折れたタモの柄(6.3m)

と   き   2008年6月23日(月)、晴れ、海上やや風強し

と こ ろ   Y半島K地区神社横の空き地

釣り時間   11時20分~16時50分

汐       中汐(満潮10時、干潮16時30分)

マキエ     オキアミ(中粒)1角、ジャンボ2角、パン粉1kg、集魚剤チヌパワー

ツケエ     オキアミ(中粒)、サシアミ

釣   果   クロ良型12匹程度ほか中小型合わせて24匹、丸はげ1匹、アジ4匹

メ   モ    この釣り場は干潮前後がよく釣れる。今後、時間帯を絞ること。


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釣り紀行♯26~釣れすぎても困る!~

2008年06月14日 | 釣り紀行

いよいよ九州中部も梅雨入り。ここ何日間かジメジメシトシトの天気が続いていたが、13日金曜日は朝からスカッと晴れ渡った絶好のお天気に。

「待ってました」と1週間ぶりの釣行である。今年は初回が5月23日(金)、2回目が6月9日(金)、そして今日といずれも金曜日に天気がいいようで偶然が重なる。

前回の釣行では型がいまいちだったがチヌ(黒鯛)が釣れたので今回も
「夢よもう一度」とここ数日仕掛けづくりに余念がなかった。

もっとも、仕掛けよりも事前に
「シナリオをアタマの中にインプット」するのが大変。

実は極端に言えば
「釣りは釣行前にすでに勝負が決まっている」のだ!

というのは、実際にフィールド(釣り場)に立つと大自然に囲まれ、海上の新鮮な空気を吸いながら「沢山釣ってやるぞと逸(はや)る気持ちが満々」になるが、実はこの時点で平常心を失っていることが多い。自分では平常心にあるつもりだからなおさら始末が悪い。

釣りから帰って冷静に思い返したときに、あのときこうしていたらというのが実に多い。ある程度のベテランだと自負している自分でもこれまでの数知れない釣行で毎回同じようなミスを繰り返している。

釣りには汐の流れや風向きにピッタリと応じた仕掛けや、さらにはエサ取りをかわす為のマキエの打ち方など複雑で細かい要素がいっぱいだが、現場では冷静さを失ってしまい、まず適正な対処が出来ない。とにかくアタマが回らないのである。

したがって、事前にきちんとしたシナリオを作っておく、たとえば「こういう汐の流れのときはこういうウキを使って、ウキ下をこのくらい取り、オモリは何号のものをハリスにいくつ段打ちする」などアタマの中にインプットしておいてそのとおりに行動しようという訳(わけ)。

これは釣りだけの話ではなくて、人生全般に通じるものがあるような気もする。

つまらん講釈はこの程度にして(笑)、今回の釣り場所は外洋に面して大物が釣れることで知られるY半島の奥深く、神社の横の旧家の取り壊し跡地。

釣り仲間のA君が大チヌを釣ったといういわくつきの場所で、天気が良すぎてチヌは無理かもしれないと思うが、チャレンジだけはしてみようということ。

釣り場に着いたのは10時前後で釣り人は誰一人いなくて広い釣り場が独占状態で絶好のポイントに釣り座を構えた。

早速、釣りを開始したが二、三投したあとに何だかおかしいことに気付いた。あれッ、タモ網を出し忘れている、手袋をしていない、釣り用ナイフを出していないなどボロボロと不備事項が出てきた。やっぱり、気持ちが上ずって平常心を失っている!

それでも最初から20cm前後の良型のアジの入れ食いだった。ウキ下3m、高感度の「たてウキ」がスポンスポンと海中に没するのでたまらない。このくらいの型になるとアジといってもバカにならないほどの引き味で海中を走り回ってなかなか上がってこない。

アジは口の周りが柔らかいので針がかりしても切れやすく柔らかい軟調の竿が適している。今日の竿は7.1mのチヌ用の軟竿でピッタリだったがそれでも5匹に1匹程度はバラした。

間断なく釣れるうち、こぼれたマキエにボラが数匹群れをなして襲ってきた。これはチャンス、前回の仇をとろうと急いでウキ下30cmの仕掛けを付けた別の竿を取り出してボラ狙いに変更。

これがズバリ的中した。小さな玉ウキがスット横に動いたので反射的に合わせたところ、ガツンという心地よい手ごたえ。

異常を感じたのだろう一気に沖のほうにグイグイと糸を引っ張っていった。リールを逆回転にして思いっきり糸を出してやった。根気勝負だとあわてず糸を巻いたり出したりしているうちに弱ってきたみたいでようやく足元に寄せた。

油断は禁物、ここからが一番危ない崖っぷち、ボラのアタマを海面から出して空気を十分に吸わせた。ここでようやく今日は取れると思った。大きい!タモ網に入りきれないくらいで根元の金具が曲がってしまうほど。

口にかかった釣り針を仔細に見たところ
上唇の理想的な位置にガッチリとかかっていた。ここなら釣り糸が上方から引くので口の中に空気が入りやすく、道理で早く弱ったはずだと得心がいった。

ドタンバタンと暴れまくるボラをナイフでトドメを刺した。

ボラ騒動はこのくらいにして、再びアジ釣りに専念。とにかく切れ目なく釣れるので15時終了予定だがやめるタイミングが見つからない。マキエはたっぷりと残っている。

釣り師たるもの、釣れないときを沢山経験しているので釣れるときは腹いっぱい釣ろうという気持ちを誰もが持っていると思うが、この場合がまさにそうで予定時間を過ぎるばかり。

ようやく隣にご夫婦とおみかけした二人連れの釣り人がやってきた。渡りに船とばかり、マキエを上げましょうかと提案したところ喜んで受け取ってくれた。

これでようやく帰られると一息。釣り場の後始末をして帰路についたのが16時10分だった。 

               
      1             2            3             4

 釣り上げたばかりのボラで帰宅して計ったら57cm、2.2kgの大物でした。

 釣り座からの対面の風景です

 マキエを差し上げたご夫婦

 アジが98匹釣れました

と   き     2008年6月13日(金)   晴天、海上微風

と こ ろ     Y半島K地区神社横旧家跡地

釣り時間     10時20分~15時50分

汐          長汐

マキエ       オキアミ(小粒)、ジャンボ2角、集魚剤(チヌパワー)

ツケエ       オキアミ小粒

釣   果     ボラ1匹、アジ20cm前後98匹、クロ5匹 


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オーディオ談義~「絵画、文学、そして音楽とオーディオ」~

2008年06月12日 | オーディオ談義

丸谷才一氏による書評と(本の)推薦文ばかりを集めた「蝶々は誰からの手紙」(2008.3.21、マガジンハウス刊)を読んでいたら、271頁に「生(なま)で読まう」(原文どおり)という表題の短文があった。

「同じモーツァルトでも、CDで聴くのと生の演奏ではまるで違ふ。セザンヌの絵を複製で見たって見たことにならない。同様に、文学はやはり原文で読まなければ、読んだとはいえない。~以下略~。」

文脈から推(お)すと丸谷氏の言いたいポイントは「文学はやはり原文で・・・」の部分にあり、フツーに読めば何てことのない文章だが、「同じモーツァルトでも、CDで聴くのと生の演奏ではまるで違ふ」この箇所を中心に何だか”ちょっかい”を出してみたくなった。

端的に言えば、

 「モーツァルトをCDで聴くのと生の演奏の違い」

 「セザンヌの絵のホンモノと複製の違い」

 「文学の原文と翻訳の違い」

この1、2、3を同列に論じていいものだろうかということである。

分かりやすいように次に掲げてみたが、これは以前のブログにも掲載したことがあるもの。

 ≪音楽≫ 作曲家→楽譜→演奏→(再生装置)→鑑賞者

 ≪絵画≫ 画家→絵→(複製)→鑑賞者

3 ≪文学≫ 作家→本(自国語)→(翻訳)→鑑賞者

ご覧のとおり、原作者の真意が鑑賞者へと伝わるまでに、いろんなものが介在していて2→3→1の順番でストレートさが薄くなっているが、特に音楽には「演奏」という行為が入っているのが絵画や文学と大きく違うところ。

つまり、音楽は
間接芸術であり、作曲家に劣らぬ程演奏家が重視される分野。

加えて、文学では文字を翻訳(外国文学の場合)するが、音楽では音符(♪)を演奏家が翻訳する、両者ともに記号を解読するという点では変わりはないが、どちらがより原作者の気持ちに正確に近付けるかといえば、やはり日常で身近に使用する文字を翻訳する方が有利だろう。

つまり何がいいたいかといえば音楽、絵画、文学では表現と鑑賞のありようがそれぞれに違っていて「ホンモノとそうでないもの」を同様のものとして並べるのは「少々無理がありはしませんか」ということ。

いささか揚げ足取りになってしまったが、「丸谷才一」ともあろう人が「ものごと」の表現は厳密に吟味したものでなければいけない。

(とはいえ、ご大層なことを言う資格は自分にはないし、物識(し)り顔をして小理屈を振り回すイヤミな奴とお叱りを受けそうだが、自分が本当に言いたいのはむしろ次の部分です。)

さて、もうひとつ気になるのが「CDに比べて生の演奏はそんなにいいんだろうか」ということ。

周知のとおり音楽鑑賞には「生の演奏を聴く」のと「CD(レコード)を再生装置を通じて聴く」の二通りに大別されるが、自分の場合ほとんど後者で楽しんでいる。

「なぜ生の演奏会に行かないのか」と問われればそれは
「魅力的な演奏者と曲目がないから」というのが一番の理由。

もちろん、時間的かつ経済的な距離に恵まれない地方に住んでいる悲しさで演奏会なんかに気軽に行けないことも否定できないがそれはほんの小さな理由。

たとえば、「コリン・デービス」が指揮するオペラ「魔笛」が上演されれば日本中どんなところにでも駆けつける気持ちは十分持っている。

一方、地元の別府で開催される「アルゲリッチ音楽祭」にはこれまで一度も足を運んだことがない。クルマで10分足らずだし音楽ホールの音もそこそこだが、連弾ぐらいでしか弾けない(過去の存在に過ぎない)ピアニストさんや成長途上の指揮者や演奏家の演奏、言い換えれば音楽性に乏しい演奏を聴きに行ってもしようがないと思うから。(音楽祭の関係者の方にはゴメンナサイ。)

つまり、生演奏の音がいいのは分かっているが、演奏会でミステイク混じりの演奏や興味のない曲目(自分にとって)を聴かされるのであれば自宅の再生装置で一級の演奏による好きな曲目を聴いていた方がマシとこうなる。

つい最近のNHK教育テレビ「人生の歩き方」で超大好きな
グレン・グールドピアニスト、カナダ:故人)が、一発勝負の演奏会を完全に放棄して後半生をスタジオ録音だけに捧げたと放映していたが「さすが、グールドだなあ」と大いに感心。

ということで、結局「生演奏はCDよりもいい」なんて一般論として割り切ってしまうのも無理があるというものだろう。

それにしても、一体、丸谷さんはどういう再生装置でCDをお聴きになってこういう発言をされているんだろう?

個人の趣味からプロの音楽評論家までCDを聴いての音楽云々の批評まがいのコメントが巷(ちまた)に氾濫しているが、自分の再生装置は「どこのメーカーのどの機種で」という注釈をあまり見かけたことがない。

再生装置によって音楽の表情は一変するんだから、これをつまびらかにしておくのは音楽愛好家としての最低限の良心ではないかと思う。

オーディオ装置のグレードと持ち主の音楽鑑賞能力が比例するというのは言いすぎだが、本当に音楽を愛する人であれば、オーディオに無関心、あるいは曖昧なままにしておくというのがどうしても理解できない。
 
この気持ち、
家庭で本格的に音楽を楽しもうと日夜、多大の手間と少なからぬお金を費やして汗水流しているオーディオ愛好家であれば多分理解していただけると思うがいかがだろう。

とは言いつつも、はたから見ると「オーディオ愛好家ってのはエキセントリックな(常軌を逸したor異様な)人種」というのがおおかたの見方になるんですけどね~。
 


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独り言~クルマの買い替えは遠い先~

2008年06月10日 | 独り言

☆「東急湯布高原ブライトコンサート2008」

たまには「生の音」を聴いてオーディオの参考にしようかと、このコンサートに昨年に続いて出席してみた。内容は次のとおり。

  と     き     2008年6月7日(土)  19時~21時

  と  こ  ろ     湯布高原ゴルフクラブハウス(湯布院町)

  演奏楽器       ヴィブラフォン

4  演 奏 者       ぶらん・ゑ・ぶらん(2名)

  プログラム      フーガ No.1      バッハ
                トルコ行進曲       モーツァルト
                ライムライト        チャップリン
                スカボロ・フェア      TRAD
                ラ・フィエスタ        チック・コリア
                アヴェ・マリア       バッハ
                ジャンゴ          ジョン・ルイス
                朝              グリーク
                アマ・ポーラ         ラカジェ
                グリーン・スリーブス   TRAD

「ヴィブラフォン」とはあまり馴染みのない楽器だが、打楽器の一種で木琴の下に共鳴用のパイプをつけたモノと思えば分かりやすい。

昨年のコンサートでは「ヴァイオリン、ビオラ、チェロ」の組み合わせでクラシックの王道ともいうべき弦楽合奏の響きを目前で楽しんだが、今年の楽器は「ヴィブラフォン」と聞いて正直言って当初、行くのを少々迷った。

しかし、まあ「楽器の生の音をかぶりつきで聴けるから」という誘惑が迷う気持ちを押し切った。

さて、実際にどうだったかといえばこれがさっぱり。ブログなのでもちろん私見だが以下、
ホンネを書かせてもらいます。

まず「ヴィブラフォン」はせいぜい伴奏程度が関の山で主役には到底なれない楽器の感を深くした。

とにかく、曲目のメロディがほとんど聴き取れずまったく音楽になっていない。始めから音楽性にはあまり期待していなかったが、これほどまでにはという感じ。

それに音の響きを楽しむのに重点をおけばいいのだろうが聞き耳をたてるほど美しくもなんともない。こんな楽器を主役にしてコンサートを企画した主催者の見識を疑ってしまった。

どんなに好意的にみたとしても、これ以上書いたら再び悪口の羅列になりそうなのでこの辺であっさりとお終いにします。 

次に、

☆クルマの買い替えは遠い先

ガソリンの価格が高騰している。6月現在で1リットル当たり177円(ハイオク)、いつもセルフで給油しているがそれでもこの価格。年内には200円の可能性もあるとの噂もちらほらで、小遣いの方が心細くなる一方。

今、乗っているクルマはクラウン(アスリートV)だが燃費の悪さがそれに追い討ちをかけている。馬力(280ps)はいいのだが1リットルあたり6km~7kmぐらいしか走らず不経済なことこの上ない。これから釣りシーズンで走行距離も一段と伸びそう。それに排出ガスの環境問題で街を走るときに段々と肩身の狭い思いに。

ネットでよく「恋人に乗って迎えに来て欲しい車」なんかのランクを見ると、昔はポルシェなどだったが今どきはハイブリッド車が結構上位を占めている。

今さら恋人云々のそういう歳でもないが「スポーツカーや外車などの高級車がステータス」の時代ははっきりと変りつつある。いまやハリウッドの大スター(ディカップリオなど)でさえ小型のハイブリッド車で「セレモニー」の会場に乗り付けているご時勢。

今のクラウンは2000年1月に購入したが、以後2回もモデルチェンジがあって、もはや先々代の
完全な旧型モデルで下取り価格もとても当てに出来ない。

走行距離が18万kmに達しているが、8年5ヶ月経過なので年平均にすると約2万km、ひと月に直すと1600km、1日にすると約50kmだからかなり乗っている方だろう。つまり交通の便が悪い地方に住んでいるので生活必需品並の取り扱い。

ガソリン代も高くなったしそろそろ買い替えどきだが、数ある選択肢のうち現在食指が動くのがトヨタが誇るハイブリッド車「プリウス」。最近、街を走り回るプリウスがやたらと目立ってきた。

以下、
少々みみっちくなって計算高くなるが、何といっても燃費が1リットルあたり21km(実走)も走るのがいい。現在、ガソリン代が月3万円ぐらいだが、それが1万円ぐらいになる勘定で大変な魅力。年間にすると24万円も節約になる。

早速、近くのトヨタの会社に電話して「プリウス」の納車はどれくらいかかるかと聞いてみると何と注文後から3ヶ月程度だという。「えー、そんなにかかるの~」というのが第一声。

せっかちなので、3ヶ月待ちともなるとその間に気が変わりそう。現実感が急速に失せてしまった。ついでにモデルチェンジ(昨年9月にマイナーチェンジ)の時期も聞いてみたが簡単に教えてくれるはずがなく、「今ではネット情報の方が販売店よりも先です」と逃げられた。

それと、よく考えてみると、プリウスを購入したとしても新車の値打ちは目減りが激しいので、1年に24万円ぐらいの(車両価格の)降下じゃとてもきかない。

今のクラウンでは車両価格の目減りはほとんど無いに等しい。ということはガソリン代の節約と新車の価格降下とを比べるとどっちが得なのかがよく分からない。

それに、老いたりとはいえクラウンの乗り心地と加速はバカにならない。高速はもちろんだが
交差点グランプリの出足もまずまずでほかのクルマに簡単に負けない。これまで幾多の挑戦を退けているし、現在でもマフラーをトムス製に替えたりしているので馬力はあまり衰えていない。こうみえても、そういう面での気だけは結構若い(軽薄?)のである。

プリウスは1500ccの排気量と電気モーターで2000ccクラスの走りというが、加速の面で2.5ℓターボ車には敵わないだろう。

結局、燃費とか加速性能、それに積載量や車両価格の低下などいろいろあって、ポイントが絞りきれないが環境問題には引き続き片目をつぶって、今の車を乗れるだけ乗ろうということになりました。

したがって、クルマの買い替えはずっとずっと遠い先のことになりそうです。

(えっ、「そんなことはどうだっていい」ですって?ハイ、ハイ。)

                      



 


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釣り紀行♯25~梅雨どきの晴れ間を縫って~

2008年06月07日 | 釣り紀行

6月6日(金)はやっと雨模様の天気が途切れて朝から太陽が顔を覗かせてくれた。

実は2日(月)から汐の具合(大汐)が絶好となったので、ずっと釣行を狙っていたのだが、5日(木)まであいにくの雨模様の連続で4日間待たされっぱなし。はやる気持ちを抑えながら、辛抱の甲斐あってようやくというところ。

汐は大汐直後の中汐になるが山(満潮)と谷(干潮)の潮位の落差は大潮並で干潮が15時前後。ということは、何度も言うようだが
「上げ3分(ぶ)下げ7分(ぶ)」からいくと13時前後が釣れそうな時間帯。

さて、今日は久しぶりにK防波堤に行ってみた。いつも行くF波止に比べて20分ほどY半島の奥地に入り込むが、それだけ外洋に出ることになって魚の型もよくなる。

今年のテーマは前回の釣行を教訓にして
「型ねらい」と定めている、つまり去年に比べて「量より質」「数よりも魚の型を優先しよう」という心積り。

このk防波堤は釣り人の絶えることが滅多にない一級ポイントで、久しぶりの晴れ間ということでさぞかし釣り人も多いことだろうと予想していたところ、10時30分ごろに到着したが防波堤には誰一人いない。

「おかしいなあ~」と半信半疑ながら(マキエ効果が高いので)
釣り人がいないのに越したことはないと、小学校の駐車場から荷車を押して約10分かけて波止の突端のA級ポイントに移動して釣り座を構えた。

よし、今日はここで1日中粘るぞと、意気軒昂にマキエを撒いて魚信を待つがこれがさっぱり。約1時間ぐらいの間に捨ててしまおうかというクラスのクロが2~3匹。こんなはずではないのだが、「この場所で釣れないはずはない」焦らずゆっくりノンビリいこうと自分に言い聞かせながら竿をふっていると、何とボラがいきなり10匹程度群れをなして海面を押し寄せてきた。

マキエに群がって貪り食うという感じで、そのうち目印のウキがスーッと横に動いた。瞬間、スパッと竿を立てるとガツンという衝撃が手元に伝わってきた。ウキ下30cm程度の針に1匹が掛かった模様。

ボラの引きは魚体が大きい(40~50cm)だけにハンパではない。ぐいぐいと一気にウキごと引っ張っていった。リールをフリーにして糸を思いっきり出してやったが、こうなれば長期戦だ。取り込むまでに10分ほどは覚悟しようと3~4分ほどリールを巻いたり糸を出したりと、やりとりをしただろうか、30mほど先の海面でいきなり手ごたえが消えてしまった。あ~、残念なことに針ハズレ。

きれいな海に棲むボラのうまさは絶品だが、舌なめずりしていた夕べの酒の肴が夢幻となってしまった。最初から大物を逃すようでは、今日は幸先が悪い、何だか不吉な予感がする。

以後、気を取り直してマキエの効果もあってポツリ、ポツリとクロが釣れだし型のほうも少しずつ良くなりだした。ときどきアジもかかりだした。

と、またここで再度ボラの群れが押し寄せてきて今度も見事に針がかり。

今度は絶対にとるぞと、慎重に念を入れて少しずつ引き寄せた。完全に手もとに引き寄せて、タモに手をかけたところナント最後の抵抗でボラがいきなり反転、1号の丈夫なハリスがプツンと切れてしまった。ウーン、これは大ショック。こればかりは心理的に後に引きずりそうで今晩はもう悔しくて眠れない。

以後警戒したのだろう、ボラは結局姿を見せることがなかった。

二度も逃がすと、もう取り込む自信がなくなる。仕方がない、ボラはもうあきらめようと別の竿を取り出して、まったく違うウキで3mほどウキ下をとって、深場を狙ってみた。

これが良かった。ウキがグーンと海中に沈み込んだので竿を立てるとかなりの手ごたえ。いつものクロとはまったく引き方が違うのでこれは
チヌだとぴーんときた。

胴調子の竿が満月のようにしなり、ウキも海中に潜り込んでしまって魚がどの辺にいるのかサッパリわからないままにとにかく竿の弾力を利用してリールを巻きながら手元に引き寄せた。

そのうち、鮮やかな白い魚体が浮いてきたのでやっぱりチヌだと一安心。ボラが何匹釣れようとやっぱりチヌにはかなわない。

チヌという魚は見かけによらず意外と諦めが早い魚で海面に浮かせて空気を吸わせるとまるで無抵抗になってしまう。6.3mのタモを繰り出してなんなく掬い上げた。時計を見ると13時40分だった。

                        
                  チ ヌ              真ん中の列がアジ

さてチヌとご対面だが、ヒェー、ナント釣り針が上唇にかすかにかかった状態で今にも外れんばかりだった。これは間一髪。おそらく胴調子の竿でなかったら外れていただろう。33cm程度で1Kgぐらいだろうか、まあ、小ぶりだがこれでもチヌはチヌ、やはり釣魚の王様ではある。

そのほか、釣果は大振りのウマヅラハゲが1匹、アジのかなり型のいいのが14匹、クロが28匹(写真以外にもあり)だった。

なお、長くなるので別の機会に詳述するが今日は
マキエの打ち方(量と打つポイント)」、「釣り糸へのオモリの打ち方(段打ち数、大きさ、位置)」がものすごく難しく改めて勉強させられた感じ。

この二つの
ノウハウはいくら本を読んでも身につくものではなく、自らの体験を積み重ねる以外に習得する術はないが、それでも神様でない限り100%到達は無理。


刻々と変わる汐の流れ、それも海面と海中で向きが違ったりするし、風向きなど自然の要素が複雑すぎてとにかく「読めない」のである。

と    き    2008年6月6日(金) 晴れ、海上微風

と こ ろ     Y半島K防波堤

釣り時間     10時50分~15時30分

汐         中汐(干潮15時)

マ キ エ    オキアミ(小粒)、ジャンボ2角、パン粉1kg、ヌカ、集魚剤

釣   果     チヌ1匹、クロ28匹、アジ14匹、ウマズラ1匹ほか


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オーディオ談義~真空管アンプの音が良くなる工夫~

2008年06月03日 | オーディオ談義

「オーディオはスピーカー(SP)選びが勝負」とはよく聞く話で、実際そのとおりだと思うがその肝心のSPを駆動するアンプもこれまた大切な存在で、最近ではうかつにどちらが優先とは断言できない気がしてきた。

特に、中高域用のスピーカーを「アキシオム80」に替えてからがそうで、やっぱり
「SPとアンプはセットなのだなあ~」とつくづく思う。

とにかく、このSPはアンプによって音質がコロコロ変わってしまうのに驚かされる。「すごくいい音を出す」かと思えば「聴くに耐えないような音を出す」といったような差をアンプを媒体として如実に知らしめてくれるのである。

そして、同じアンプでも部品の一部をちょっと替えてやるだけで音質が微妙に変化してシャープな反応を見せるので
、”いじりがい”があってオーディオ愛好家にはたまらない魅力。

それも真空管アンプだからこその話で、トランジスターに比べて回路がシンプルなうえに使ってある部品も少ないのでいろいろと手を加えやすく改良しやすいのが利点。

今回は工夫を二つほど。

なお、300Bアンプの「音質改善テクニック」についてはオーディオ季刊誌
「菅球王国Vol.12」(1999年春:172頁)に詳細に記載されている。

 カップリング・コンデンサーの交換

さてコンデンサーとは何ぞや。広辞苑によると外来語なのにちゃんと掲載されてあって、「蓄電器」とあったがこれは一部当たっているようで当たっていない。

真空管アンプに使ってあるコンデンサーは信号回路用と電源回路用に大別されるが、後者のコンデンサーの場合が蓄電器と称される。

音質にとって重要なのは信号回路にあるコンデンサー。真空管同士をつなぐのでカップリング・コンデンサーと呼ばれ、音声信号だけを通して直流電圧をカットする役割を担っている。

メーカーによっていろいろと品種があり、どれを使っても同じ音と思いがちだが、それが違うのがオーディオの面白いところ。

何といっても定評があるのは、あの名器とされたマランツ社(アメリカ)の製品に使用されて有名になった「スプラーグ」で仲間のMさんに言わせると、このコンデンンサーをツボの部分に使うと音質が一ランクも二ランクも向上するという。

スプラーグの特徴は何よりも
塗装の塗りの固さで、(電流通過時の)振動防止による鳴き止め効果が高いのが一番の理由。

余談だが、日本のオーディオ愛好家が菅球ではマッキントッシュのC22と並んで最高のプリアンプとされる「マランツ7」を設計回路どおり寸分も狂いがなく作ったが、どうしても音質が追い付かなかったという。

結局、その原因は部品の質の違い、それも「スプラーグ」のコンデンサーを使わなかったからという逸話がある。

さて先日、300BアンプとPX25アンプのカップリング・コンデンサーを思い切ってその「スプラーグ」に交換したところ、期待どおり。試聴結果は後ほど。  
             

        
 鉄の使用に伴う磁界の影響を最小限にとどめる

アンプの材料に鉄を使う弊害についてはこれまで散々書いてきたので重ねて言わないが、パワーアンプなどは強度的な問題もあって使用するのも止むを得ない一面がたしかにある。

先日、デジタルアンプの試聴で「ソニー」ともあろうオーディオの雄がケースに「鉄」を使っていると指摘したが、Mさんによるとすべての会社が似たようなもので、PL法とかいろんな安全基準があってそれに合格するのが先決で、音質は二の次になっているという。

したがって、使用者の段階で個別にそういう制約から解放してやることが必要で、これはあくまでも自己責任の範囲だがたとえば底板を外すとかのやり方がある。

二つ目の工夫もその一環で、鉄にまとわりつく磁界を少しでも排除しようと、ピンジャックと電源ケーブルをアンプのケース(鉄板)を通さずに
底から引っ張り出して外部で抜き差しできるようにしてみた。これも音質向上効果大だった。

なお、余談だがレコードを聴いていないため長い間押し入れに直しこんでいた「マランツ7」を久しぶりに引っ張り出して信号テストをしてみたついでに、肝心の信号を抜き差しする裏のケースを確認したところ鉄を使っていなかった。さすがマランツ!

       
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≪写真解説≫

→300Bアンプの改造箇所で右上部の茶色がカップリング・コンデンサーの入れ替え分とプラグを底から直出し部分、同様に左上部が電源コードの直出し部分

→PX25アンプの改造箇所で左下部の茶色がカップリング・コンデンサーの入れ替え分

→PX25アンプのプラグを底から直出し部分

→プリアンプ「マランツ7」

とにかく、以上2つの措置でダメアンプが見違えるほど変貌した。テスト盤は最初に「ちあきなおみ」全曲集のうちの「冬隣」。過去、何度も言ってきたが彼女の陰影に富んだ声質はオーディオのテストにピッタリである。

歌詞の内容と声質が見事に一致し、歌っているときの表情がくっきりと浮かんでくるほどで「矢切の渡し」では1番~3番まで微妙に声質を変えて歌っているのがはっきりと聴き取れた。

一緒に聴いていたMさんがあの昭和の歌姫といわれ女王として君臨した「美空ひばり」よりも上ではないかとおっしゃる。たしかに情感の表現にかけては一日の長があるかもとさえ思う。

うれしかったのは、ウェスタン社のオリジナルの真空管WE300Bが蘇って本来のちからが発揮できたこと。上記の二つの改造によって明らかにゴールデン・ドラゴンの4-300BCよりもグレードの高さが確認できた。

次いで、PX25アンプも同様に向上。グリュミオーの弾くヴァイオリン(モーツァルトのヴァイオリン協奏曲5番)の音色が独特の艶を帯びて限りない美しさ。

「これは美しすぎる。実際のヴァイオリンでもこうは鳴らない。」とはMさんの弁。

どうやら「アキシオム80」と同じイギリス製によるコンビの相乗効果が出たようで、こういう澄み切った独特の音はPX25真空管にしか望めないもので、現在手持ちのスペアは4本しか持っていない。あと何年生きるか分からないが大丈夫かな~と思わず脳裡によぎった。

「そうだ、日頃はWE300Bアンプで我慢すればいい。300Bなら丈夫で長持ちするし、まだウェスタン社のスペア菅(60年代)もある。特別のお客さんのときだけPX25を使おう!」

つくづく、真空管の音色に堪能した1日でした。ダメアンプがこんな”ささやかな改造”(?)でこれほど音が良くなるんだから~。


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