会社員の娘が今年の7月に定期異動で大阪から福岡に転勤になった。別府への帰省が便利になったので親としては喜ばしいことだが、大都市から中都市(?)に移った余波が我が家のオーディオに多大の影響を及ぼした。
「風が吹けば桶屋が儲かる」式の他愛ない話だが、経緯を順に追ってみよう。
1 大阪に比べて福岡の家賃は安い。たとえば同じ家賃で大阪は(マンションの)1室だけになるが、福岡では環境のいい静かな場所に加えて余裕のある2室となった。
2 部屋のスペースが広くなったせいで、娘はこれまで使っていたソニーの小型テレビ(アナログ13インチ)を破棄し、36インチ液晶テレビにグレードアップした。
3 画面が大きくなると、これまでCSの「宝塚歌劇専門」チャンネルを通じて「ブルーレイ」の最高速で録り溜めてきた番組を観る機会が多くなった。ちなみに娘はオヤジの「オーディオ・キチ」と同じレベルの「宝塚オタク」である。
4 画面の充実に比べて、テレビの音響の貧弱さに愚痴をこぼしだした。
「お父さん、アンプとスピーカーの余ったのがないかなあ?」
「窮鳥、懐(ふところ)に入れば猟師これを殺さず」という”ことわざ”がある。つい教養の一端がにじみ出てしまった。(笑)
日頃、カミさんとともにオヤジのオーディオに対して懐疑的な目を向けてきた娘だが、どうやらこういうときは”ひと肌”脱がねばなるまいて・・・。
「ああ、そんなことならお安い御用だ。今、テレビ視聴用に使っているシステムを一式持って行っていいぞ」
「大きいのはダメよ!小さくて可愛らしいのが好き~」
(「贅沢を言うな、贅沢を~」と内心つぶやきながら)「ああ、ちょうどピッタリのがあるぞ。(音量調整する)アッテネーターもアンプもスピーカーもみんな小さい。ちょっと見てみるかい?」と二人でオーディオルームへ。
「ワァー、この大きさなら丁度いいわ~」と満足気。
トレード濃厚の運命にさらされたアッテネーター、アンプ、スピーカーの映像は左から順に次のとおり
アッテネーターとトランジスターアンプ(出力10ワット)は「筐体」にこだわって人造大理石を使っているメーカーの製品を選んだ。購入したのは2年ほど前。後者については真空管アンプとの音の違いを確認したかったのが一番の理由。スピーカーは40年前の製品でフォスター(現在はフォステクス)のBF-103S(口径10センチ)。
この場合の音声信号の流れとしては「テレビのRCA出力端子」 → 「アッテネーター」 → 「アンプ」 → 「スピーカー」の順番で、これをケーブルで繋いでいけばOKだが、問題は最初の「テレビのRCA出力端子」があるかどうか。
娘が「スマホ」で該当の液晶テレビ(パナソニック)の接続端子を調べてみると残念なことにプラスティック・ファイバーによるデジタル端子しかない。今どきのテレビは随分とアナログ軽視なんだなあと驚いた。
次に「ブルーレイ」(ソニー)を調べてみると、ちゃんとRCA端子とデジタル端子の二つが装備されていた。「ブルーレイに接続して、宝塚以外の通常のテレビ番組もそれで観るといいだろう」と、したり顔のオヤジ。
これで、ようやく「トレード」が本決まり。ただし移籍料はタダ。段ボールの詰め込みの手間賃(?)や送料さえもこちらがいっさい負担。クソッ、いったい、どうなってるんだ!
おまけに、接続のための「フローチャート」まで作らされた。その後、お盆後の(娘の)福岡帰着に合わせて、荷物を発送したところ、順調に届いたようでその日のうちに接続が完了した模様。
電話で「どうだい、音が良くなったかい?」と訊いてみると、「ものすごく良くなったのでびっくりしたわ~。プロ野球を観ていたらピッチャーの投げた球が(キャッチャー)ミットに収まるときに”ドスッ”という音がするのよねえ。高い方の音もチリ~ンと音がして、もうこれで十分満足~!」
そりゃあ、そうだろう、何といってもタダなんだからなあ。
これにて「トレード」は一件落着だが、我が家ではこれから、選手が抜けた穴埋めをしなくてはいけない。どうせ控えの選手だったので、同じレベル以上の選手が”まだまだ”どっさり待ち構えている。我が家では二軍の競争も熾烈を極めているのだ!
スピーカー・ユニットでは口径16センチの「ジェンセンP8P」「アルテック403A」「リチャードアレンのニューゴールデン8」、口径30センチのグッドマンの「AXIOM301」、アンプの方は真空管アンプの2A3シングル、PX25シングル、VV52Bシングルと目白押し。
結局、グッドマンとPX25シングルのエース級のコンビで戦力補強をすることにした。トレードした選手よりも明らかに実力が上回っている。シメシメ。もちろん、テレビのモニター端子に接続だからCDはいっさい聴けず、テレビ視聴のときだけ活躍してもらう予定。ちょっと舞台が小さくなるが「控え」に甘んじるよりはマシだろう。
さっそく、余っていたエンクロージャーに「AXIOM301」の取り付け作業開始。
例によって、エンクロージャーの中には、小分けした沢山の木綿袋の中に吸音材の羽毛をびっしり詰め込み、適当に背圧を逃がすための穴を開けた裏蓋を取り付けて無事終了。設置後は次のとおり。
ちなみに、設置した床は他の機器と同様にすべてコンクリートの打ち抜き。大切な振動対策を担っているというわけだが、これでテレビの音を聴いてみると、以前と比べて段違いのレベルアップ。トレード大成功!
今日(31日)から、カミさんと2泊3日の予定で娘のところに行ってトレードに出した選手たちを秘かに慰めてあげるつもりである!