「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

独り言~ガソリンの節約対策~

2014年07月31日 | 独り言

近年、ガソリンがず~っと高値で推移している。1リットルあたり55円の時代を知っている人間にとって、もうため息が出るばかりだが、今年に入っても値が下がるどころか今や184円(ハイオク:2014.7.30現在))が当たり前の感覚になりつつある。

そこで、癪なのでここ1か月ばかり次のようなガソリンの節約対策を講じてみた。

☆ 車に乗る機会を減らす

現役時代は通勤に使っていたので年間2万キロほど走っていたが、現在は半分に減っておよそ約1万キロの走行距離となった。

使い道は運動ジム、図書館、オーディオ仲間のところへの往き来が主体だが、この際に走行距離をもっと減らそうということで、まず標的を「運動ジム」に絞り込んだ。

片道7キロほどの所だがわざわざ行かなくても、家の周りをウォーキングすればいいし、筋トレだって身の回りの小道具を使えばいいというわけで、これまで毎日皆勤賞のところを週2回程度に削減。

どのくらいの節約になるか計算してみよう。

自分が乗っている車(3代前のゼロクラウン)の燃費がおよそ8キロ/リットルだから、「184円÷8キロ」で1キロ当たりにすると23円かかる。

したがって運動ジムへの往復にかかるガソリン代は1回あたり「23円×14キロ≒320円」。削減分を換算すると1か月あたりおよそ7000円の節約になる。これは大きい。1年間、この調子でいくと立派な真空管アンプが1台買えるほどだ(笑)。

☆ 燃費のいい車を乗り回す

やや不便なところに住んでいるので仕方なく我が家には2台の車がある。

今年の2月に家内の足として購入したのがハイブリッド車「アクア」。

とにかく燃費が凄く良くて平均して「25キロ/リットル」ほど走る。前述したように自分のクルマがおよそ「8キロ/リットル」だから、ガソリン(レギュラー)の単価も併せて換算すると、1キロ走行するのにガソリン代がおよそ1/3の勘定になる。つまり1キロ当たり「23円 VS 7円」。

そこで土曜、日曜は家内の仕事が休みなので、まるで自分の専用車みたいに乗り回している。かなり馬力はいいし、狭い駐車場に入れるのも楽だし、目新しさも手伝って乗るのが楽しみ~。今ではちょっとした買い物や図書館などへの行き来はすべてまとめて週末に集中させている。

おかげで、去る6月20日に満タンにしたクラウンへのガソリン補給をいまだに(7月30日現在)しなくていいので大助かり。

ところが、けっしていいことばかりではなかった。

アクアに乗っていると、どうも周りのクルマからナメられているような気がしてならないのである(笑)。

まず、後続車がピタリと自分の車の後についてきて煽ってくるケースが格段に多くなった。急ブレーキをかければ絶対追突間違いなしの危険極まりない行為である。バックミラーでチラッと見ると結構若い女性ドライバーもいるので呆れてしまう。

それと、前車との車間距離を適度にとっているのに、厚かましくもライトの点滅もなしに平気で割り込んでくるクルマが確実に多くなった。

明らかに小さい車というだけで小バカにしたような行為である。万一ぶつけてもダメージは相手の方が大きいし、修繕代もたいしたことはなかろうという魂胆が透けて見えるようだ。これがベンツやBMWなどの高級車ならきっとこういうことは起こらないに違いない。

悔しいが背に腹は代えられない。得るものがあれば、失うものがあるのがこの世の“ならい”である(笑)。

以上、ガソリンの節約対策を滔々と述べてみたが、おそらく「この人、えらい“みみっちい”人やなあ!」と思われる方が大半だろうが、少しばかり弁明させてほしい。

もちろん、節約が主な動機であることは否定しないが、「地球資源の無駄遣いを防止する」「地球環境の保全に寄与する」「アラブの石油成金たちをこれ以上儲けさせたくない」という3つの心理的側面があることも十分理解してほしいので念のため(笑)。

ちなみに、節約ということでいえば今年に入ってからの前半だけでオーディオに突っ込んだお金はザット見積もって80万円ほどになる。

対象は「dCS」のCDトランスポート、TR式のプリアンプ3台、真空管アンプ「71A」1台、ナス型古典管などの購入費。これは1年間のガソリン代のおよそ4年分に相当する。

こういうことからするとオーディオに突っ込むお金を節約した方がずっと効率的なのだが、そういう気がまったく起こらないのが不思議。つまるところ、こればかりは各人の「価値観」に帰するのだろう。

最後に、クルマの話が出たついでにもうひとつ。

我が家に試聴に見えられるお客さんはすべて男性だが、駐車場に入れるときは必ずと言っていいほどバックで入れられる。ところがウチの奥さんはいつも前向きに入れてくる。

「おい、クルマを入れるときはバックで入れるクセをつけておいた方がいいぞ、出庫するときに楽なんだから。」と、口を酸っぱくして言うのだが「私のクルマなんだから、いろいろ言わないで!」と、えらく強情である(笑)。

ただ、家内ばかりでなくどうも前向きに駐車するのは女性ドライバーに多い傾向があることに以前から気が付いている。


先日も我が家にお見えになったKさん(福岡)が帰られるときに「女性というのは前向きに車を停める傾向があるようですね」と、水を向けると「女というのは目先のことが良ければそれでいいですからねえ」と、ポツリ。

苦楽に直面するときに「目の前の楽を先にとって苦を後回しにする」かどうか、これはとても些細な事例のひとつだが何だか男女の基本的な人生観の違いに通じるような話だと思う。

そこで思い出すのが「風と共に去りぬ」(原作:ミッチェル女史)のヒロインでビビアン・リー扮する「スカーレット・オハラ」が最後のシーンでつぶやく極めて印象的な台詞。 

「明日は明日の風が吹くわ!」

 

今回の記載にあたって、改めてググッてみると厳密な意味は「今どんな苦境にあっても、明日になれば物事はいい方向に転じるものである。」ことのようである。

そうか、女性は常に前向きで生まれつきの楽天家なんだ(笑)!

 


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音の三重苦

2014年07月29日 | オーディオ談義

タンノイのユニット「HPD385」(口径38センチ)を元のさや(タンノイ・ウェストミンスターのエンクロージャー)に収めてから、早くも10日あまり。オリジナルユニットとしての安心感や中高音域との円滑な繋がりがうまくいってすこぶる満足の日々が続いている。

何せ許容入力が凄くてたしか300ワットぐらいあるはず。それだけ丈夫に出来ていてどんなにパワーを入れてもビクともしない。

音質的にも今のままで十分すぎるくらいだが、オーディオマニアはとかく底の知れない欲張りだと相場が決まっている(笑)。

現在の真空管アンプ(低音域用)を入れ替えて、TRアンプに入れ替えたらもっと凄いことになるかもしれないと思い立った。

           

これが現在使用している真空管アンプ「VV52Bシングル」。20年ほど前に購入したアンプで以後2~3回ほど修繕しながら大切に使ってきた。

我が家の真空管アンプの中では最大の出力でそれでもたかだか10ワット程度に過ぎないが高能率ユニットにはそれで十分。ただ惜しむらくは近代管特有の音色を持っており高音域がちょっとケバいので通常は低音域専用に使っている。

後列中央の電源トランスはスイッチを入れてから時間が経つにつれ手で触れないほど熱を持つので、パソコン用のヒートシンクを張り付けて放熱対策を施している。

これを入れ替えて新たに組み入れようとしているのが次のTRアンプ「ケンウッドの01-A」(以下、「ケンウッド」)。

           

1980年前後の製品で当時「非磁性体」構造のアンプとして評判をとったもの。電源部(右側)は別の筐体となっており、本体にはネジ1本に至るまで鉄(磁性体)
を使っていないのがセールス・ポイント。磁界が発生すると渦電流を引き起こして音質に悪影響を及ぼすが、目に見えないので非常に始末が悪い。この頃はオーディオ全盛時代でメーカーが他社との差別化を図ろうと随分力を入れていた。

いずれにしても鉄は使わないに越したことはない。高級品になればなるほど筐体に鉄を使わないのはマニアならご承知の通り。とりわけ微小電流を扱うプリアンプなどの前段機器にはご法度だ。

このアンプはもともとはプリメインアンプだが知人に改造してもらって、トラブルを起こしがちなプリ部を外してもらっている。35年前の製品だが、いまだにいっさいのトラブルなし。出力が100ワットもあって、音色もTRアンプらしからぬところがあり、真空管アンプとのマッチングも思ったほど違和感はない。

今回は久しぶりに部屋の片隅からメインの舞台に再登場。電源コードと音声コードを繋ぐだけなので入れ替え作業はすこぶる簡単だった。

さあ、期待の試聴だと身構えてスイッチを入れたところ大音響が出てビックリ仰天。慌ててマッキンのC28プリアンプのボリュームを絞り込んだ。真空管アンプとは桁違いの出力なのが原因だが、ピタリとハマると低音域も伸び伸びと鳴ってくれて「なかなかいいじゃない!」(笑)。

それから2~3日間は夢中になっていろんなジャンルを聴き耽ったが、そのうち隣室にいる家内がドアをトントン。

「何だ!」「ちょっと音が大き過ぎるんじゃないですか?お隣にご迷惑ですよ。」

家内がこんなことを言うのは珍しく、ここ10年来では初めてのこと。よほど大音量で聴いていたものとみえる。

“もっと、もっと低音を”が、つい越えてはならぬ一線を越えてしまったようで(笑)。とにかく出力が100ワットもあるものだからボリュームを少し上げただけで敏感に反応して音が大きくなる。ややオーバーパワー気味でボリューム調整が非常に難しい。


(オーディオ・ルーム側の)お隣に住んでいる老夫婦はとてもいい人たちで、ときどき顔を合わせるたびに折にふれて「音がうるさくないですか?」と、お訊ねしているが「いいえ、ちっとも気が付きませんよ~」と気を利かして仰ってくれる。

しかし、最近その1軒隣りの家にもらわれてきた子犬がうるさくて食事と睡眠時以外は朝から晩までキャンキャンと吠えまくっている。しかも、つい最近新築して引っ越してきたお向かいさんの若夫婦には二人の幼児がいて子育ての真っ最中。子供の泣き声やガミガミ叱る奥さんの声などでこれまでの静かな環境にやや影が差してきた。

それに加えて我が家の大音響とくれば、お隣さんにはもはや「音の三重苦」である(笑)。

ついお気の毒になって、元の真空管アンプに戻そうかなあという思いがちらほら。

それに付け加えてもう一つ。「ケンウッド」がいくら真空管アンプ(中高音域用)と相性がいいといっても、やはり何らかの違和感があるのは否定できない。言葉ではうまく表現できないが、周波数レンジを十分確保していてジャズにはバッチリだがクラシックを聴いていると“くつろげる気分”にならないのが不思議。

オーディオ仲間のKさんによると、「なるべくなら真空管アンプ(2台)とTRアンプを混ぜて使わない方がいいですよ~」。

クラシックを取るか、ジャズを取るか、答えは分かりきっている。そこで再びTRアンプから真空管アンプへ逆戻り~(笑)。

 


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女流ヴァイオリニスト

2014年07月27日 | 音楽談義

ときどき、”オッ”と気をそそられる写真というのがある。

クラシック専門番組「クラシカジャパン」(CS放送)の8月号の表紙がそれだった。

                 

裏にパトリツィア・コパチンスカヤとあり1977年モルドヴァ生まれというから、当年とって37歳?パッと見た瞬間に20歳前後だと思った(笑)。初めて聞く名前だが「美しき次世代アーティストたち」とあるから、新進気鋭のヴァイオリストなのだろう。

モルドヴァといえば聞きなれない国名でいったいどこだろうとググってみたら、ルーマニアとウクライナの間に位置する国だった。旧ロシア領というから画像でもおよそお分かりのとおり、さぞや透きとおるような白い肌の持ち主なのだろう。

ピアノと並んで楽器の中で双璧とされるヴァイオリンはその優雅な曲線美から女性が持つと絵になる楽器だと思っていたが、この写真を観て改めて納得。

猛暑のなか、一服の清涼剤として目の保養にされてはいかが(笑)。

問題は腕前の方だが、初回放送は8月10日(日)21時とあるから録画してじっくりと鑑賞させてもらうことにしよう。

さて、過去の女流ヴァイオリニストといえば、いの一番にくるのが「ジネット・ヌヴー」だ。1950年代前後に活躍したヴァイオリニストだが惜しくも飛行機事故で亡くなった。彼女の「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」(イッセルシュテット指揮:ライブ))は絶品で、録音は悪いが大の愛聴盤。

         

以前、オーディオ仲間のAさん宅で聴かせてもらっていたところ、感動のあまり涙が溢れ出て困ったことがあった。人前で涙を流すのはみっともないからねえ(笑)。

もともと大のヴァイオリン好きだがブラームスのヴァイオリン協奏曲は特別で随分と収集したものだった。

現在手元にあるのは、シェリング、オイストラフ、マルツィ、ハイフェッツ、グリュミオー、ヴィトー、オークレール、コーガン、比較的新しいところでムター、レーピン、ハーンで次から次に聴きまくったが、結局ヌヴーを上回る演奏はなかった。

これからどれほどのアーチストが出てこようと、あの熱狂的な1948年3月5日(於ハンブルク)の運命の一夜の再現は不可能である。

聴衆を前にしてその場限りを命として燃え尽きる燃焼型のアーチスト(腕の方も超一流)が時代とともに消えて居なくなってしまったのは実に淋しい限り。


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やっと売れました!

2014年07月24日 | オーディオ談義

「身辺整理」と言うと大げさだが、もはや使う見込みのなくなったオーディオ機器を1か月ほど前からオーディオ仲間に頼んでネットオークションに出品してもらっている。

トランス、真空管などの小物が中心だが中には例外的な存在があって、それはワディアのCDトランスポート「270」(以下、「270」)。

   

9年半ほど愛用した製品だが、残念なことにこの3月に故障したので東京のオーディオショップに修繕に出し、その代替機器として送ってきたのが定評のある「dCS」の製品。

このdCSと、修理が完了した「270」を聴き比べてみると、それぞれ一長一短でどちらとも軍配を上げ難いが、ひとつ屋根の下に2台も要らないし、第一そういう身分ではない(笑)。そこで、泣く泣く「270」の方をオークションに出すことにして、手続きいっさいをNさん(大分市)にお願いした。

すると、次のとおり自分ではこうもうまく書けないと思えるほどの見事な解説文を作っていただいた。

☆  超ハイエンドCDトランスポートのWADIA 270です。 

☆  本品は、購入後9年半経過のため、長期安定使用を期待してメーカー(購入先経由→株式会社ノア)に全般的なメンテンナンスをお願いして不具合になりそうな部品を交換済(完了日:2014年4月1日)です。詳細は写真3のメンテナンス報告書を参照願います。
 
☆  機器の仕様は下記の通りです。
 
高精度1ppmTCXOクロック装備。また、27ixとのクロックリンク接続も可能とし、驚異的なCDドライブ能力を発揮します。VRDSメカCMK3.2搭載。16>24bitリゾルーション拡張機能。
 
●CD安定性:VRDS CMK-3.2 
●CDピックアップ:3ビーム対象レンズ駆動、875nm波長 
ピックアップ駆動方式:リニアモーター駆動
デジタル出力:STBNC同軸,AES/EBU
クロックリンク入力:ST
電源/消費電力:AC100120220240V 50/60Hz25W
寸法/重量:432W184H420Dmm)/24kg
価格¥1,380,000
 
 
☆付属品:本出品の付属品は、リモコン、スパイク コースター各4個、STオプチカルケーブル1本、取扱説明書、となります。 
WAIAの輸入代理店は、2013415日より、株式会社ノアに移管しています。 

以上、中古品ですが、前記の通りメーカーにて全面的なメンテナンス済です。現状渡しのノークレーム・ノリターンで
お願いします。

問題はスタート価格の設定だったが、東京のオーディオショップの下取り価格を考慮して「35万円」で出発することにした。

ところが3クール(1クール=6日間)経過しても入札者が1名もなし(笑)。これには参った!

あれだけ愛用し、今でも愛着があるのに何だかいつまでも衆人環視の前で晒し者になっているような気がして、つい可哀想になってしまった。

そこでNさんと相談して一気に値下げに踏み切ることにした。「35万円」 → 「28万円」へ。

すると途端に入札者が1名出現。ああ、良かった。もういくらでも構わない、とにかく引き取り先が見つかっただけで十分という気持ちだった。

そしていよいよ落札日の7月19日(土)の21:50の最終局面へ。結果はなるようにしかならないのでこの日もいつものように早めに就寝。

翌20日(日)の早朝、Nさんからのご一報にエーッと驚いてしまった。終了間際になって10件もの激しい競り合いがあったそうで、最終的には入札件数が32件、価格は何と「329千円」もの高値を呼んだ!

「270」は見向きもされない不人気商品だと思っていたが実はまだ捨てたものでもなかったようだ。
それにしても初めの設定価格「35万円」に対してそれほど変わらない落札価格になったのが不思議?とかくに入札者心理は難しい。

もちろん7万円もの値下げによって心理的に「非常に安くなった」という感覚が入札者の背中を後押しをしたのだろうが、それに加えて競り合いの中で「負けたくない」と、つい熱くなってしまう心理も無視できないようだ。

つまり、オークションの落札価格の構成とは「性能に見合った価格+競争心理価格」。

この上乗せ部分の「競争心理価格」を利用するには入札してもらうしかないので、やはり低めの価格設定がオーソドックスのようだ。

そこで、自分でもこれまで400件ほど落札してきた経験を踏まえてこれからの出品オークションには次のような作戦を考えてみた。

一般的に顔が見えない相手、それも商品の保証も定かではない取引なのだから市販品の相場よりはずっと低くて当たり前のオークション価格だが、はじめのうちはかなり高めの価格設定をしておく。入札予備軍に対して「出品者はかなり強欲なタイプ」というイメージを自然と植えつけておくわけだ。

そして、2~3クールほど回してから価格を一気に値下げすると入札予備軍に与える意外性のインパクトがことのほか大きく、一気に入札してみようという気になるはず。よし、これからはこの作戦でいこう!

昨日(23日)の午後、Nさんのご自宅にお伺いして荷造りを手伝いながら得々とこの考えを述べたところ「いえ、いえ、入札者は皆さん海千山千でそんなに甘くはないですよ~。」

そうかもねえ(笑)。


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ピンチはチャンス!

2014年07月22日 | オーディオ談義

前回のブログでここ1週間ほどお客さんが我が家へお見えにならないことを記載していたところ、さっそく土曜日(19日)の午後、大分市にお住いのMさんとNさんがご来訪された。

新しい組み合わせの「AXIOM80」+「AXIOM301」を聴いていただいたところ、どうやら好評のようでまずは合格点。

まあ、システムの所有者に対して面と向かって「悪い音です」とはなかなか言えないものだが(笑)。

ところが、「好事魔多し」でJBLシステムを聴いているときにトラブル発生。

つい、お客さんの前でいい格好をしようと低音域のボリュームを上げたところ左チャンネルからビリツキ音が出た。それも強い音声信号が入ったときだけの現象で、普通の音量のときはいっさいそういう兆候はない。

気になるなあ!

はじめのうちはユニットの故障かと思ったが、どうやらユニットのエッジが強く振れる時だけ何かに触っている印象を受けた。実は思い当たる節がある。JBLのD130ユニット(口径38センチ)をタンノイのエンクロージャー(ウェストミンスター)にマウントするときにユニットのネジ穴が合わないものだから、補助バッフルをつけてマウントしたのだが、どうやらそこに無理があったようだ。

しかし、それもこれも遠因はつい最近導入したマッキントッシュのプリアンプ「C28」のトーン・コントロールの威力にあるのは間違いない。うれしい悲鳴ではある。

とにかく、お客さんたちが帰られてから沈思黙考することおよそ1時間、JBLに未練はあるものの大きな音が出るたびにヒヤヒヤするようでは音楽鑑賞どころではない。「やっぱりタンノイのエンクロージャーにはタンノイのユニットしか合わないかなあ~」と、ここは涙を呑んでウーファーを思い切って入れ替えることにした。

しかし前向きに考えると「ピンチはチャンス」という言葉があるように、機器の故障が結果的にうまくいったことは数知れない(笑)。思い立ったが吉日とばかりに、翌日(20日)の早朝からおよそ1日がかりの仕事になると覚悟を決めて改造に取りかかった。

まずは押し入れの奥深く直しこんでいたタンノイの「HPD385」ユニットをネジ類を含めて引っ張り出した。

         

改めて見るのに、図体の割にはかなり貧弱なマグネット部分である。むしろ「AXIOM301」(口径30センチ)の方が大きいくらいで、はたして大丈夫かいな?このユニットは同軸の2ウェイ仕様だが、今回は低音域部分しか使わず、中高音域は既存のJBLの「375」+「075」のコンビに担当させる予定。

はたしてタンノイとJBLの組み合わせでうまく鳴るのかなあ(笑)!

それもこれも「375」の魅力が圧倒的なのでとても捨て去る気にはなれないのが一番の理由だが、実際にやってみなければ分からないのがオーディオの常。自分は「理論3割、“経験とカン”7割」のタイプで明らかに感覚派(?)の部類に属している。

とにかく実行あるのみというわけで、いよいよウェストミンスターの裏蓋(ネジ16本)を開けてご開帳。

ウェストミンスターを使い出して20年余りになり、もう数えきれないほどこの裏蓋を開けてきたが、その一方、タンノイをいたずらに神聖視してまったく手をつけようとしないマニアが何と多いことだろう(笑)。

           

エンクロージャーの内部を裏側から移した映像である。ギンギラギンのD130の4か所の取りつけネジを外して無事取り出し、その代わりに「HPD385」を取りつけた。

           

さすがに純正だけあって、既存の4つのネジ穴にユニットの穴が寸分の狂いもなくピタリと収まる。

使う予定のない中高音域については万一のときの予備としてケーブル(橙と黒の撚り合わせ)だけはハンダ付けして伸ばしておき、いつでも使えるようにしておいた。いわば保険をかけたつもりで、375との繋がりが悪ければこれを使わざるを得ない。

タンノイ社の木工の工作精度はさすがで、中蓋が寸分の狂いもなくピタリと収まるのはいいが、据えつけるまでが一苦労。こればかりは体験者じゃないと分からないに違いない。

丁度お昼時になったころに両チャンネルともに取りつけ完了。ここまでで3時間ほどかかった。道具が散乱している中でとりあえず結線して低音域だけ音を鳴らしてみたところ両チャンネルから無事、音が出たので万歳!どうやら作業はうまくいったようだ。

午後からは、裏蓋を閉じてエンクロージャーの上に「375」ユニットなどの重量級を抱え上げての結線作業。14時ごろにようやく作業完了で思ったよりは早かった。

                

ちなみに、システムの概要を後日のために記載しておくと、

低音域(~200ヘルツ)    ユニット「HPD385」、 アンプ(プリ マッキンのC28、パワー VV52Bシングル)

中音域(400~7千ヘルツ) ユニット「JBL375」、アンプ(プリ 真空管式、 パワー「刻印付き2A3」シングル)

高音域(7千ヘルツ~)    ユニット「JBL075」、アンプ(アッテネーター利用、パワー「71A」ナス管シングル)

ホンネを言うとタンノイとJBLの組み合わせに半信半疑だったのだが、実際に出てきた音を聴いてビックリ仰天!

これまで聴いたことがないような豪快な低音がでてきた。しかもボワ~ンとした低音ではなく、ものすごく制動力が利いていてまさに威風堂々という形容がふさわしい音。

この秘密は何といってもネットワークにある。通常のタンノイの大型システムはクロスオーバーが1000ヘルツ仕様になっているが、自分の鳴らし方が悪いのかもしれないがこれまでの経験では明らかにローエンドまで音が伸びない。

そこで、お気に入りの「375」を生かすためもあって、思い切りよく「HPD385」のハイカットをおよそ200ヘルツ(6.8mhのコイル、6db/oct)にしているのでそれが大いに貢献している。

なお、200ヘルツといってもえらく低いようだがあくまでも理論上の近似値であり、現実的には聴感上の問題として対処すべきでけっして神経質に考える必要はない。これまでコイルやコンデンサーなどを散々駆使してきたので「いい加減さ」がおおよそ分かる。

タンノイを使っている方は多いようだが、現状に満足している人は別として、限界を感じたり飽きてきた方は一度ネットワークをいじってみてはいかがだろう。

はたしてメーカー指定にこだわるか、それともこだわらないか、「to be or not to be、that is question」(シェイクスピア)である(笑)。

折しも昨日(21日)の午後、近くにご用事があったとかで湯布院のAさんがブラリと我が家にお立ち寄りになった。

「昨日、JBLからタンノイのユニットに入れ替えたばかりです。まあ、聴いてみてくださいな。」と、自信満々で試聴に臨んだ(笑)。

「これは私好みの音ですね。しっかりしたピラミッド型の音で、明らかにオートグラフよりも上を行くスケール感です。まるで地響きが伝わってくるような低音ですよ。375との繋がりも申し分ありません。改造後のたった1日でこれだけの音が出せるんですからネットワークをいじるマニアだけに与えられた特権ですね。」と最大級の賛辞をいただいた。

今回の改造でタンノイの新しい可能性に目を開かれた思いがしたが、改めてこの大型エンクロ-ジャーの底力に心から敬服した。

オーディオはつまるところ「目方勝負」の面があることはマニアならお分かりの通りだが、1本当たり100キロを超える重量はけっして伊達ではなかった。こうなればもっと早く「HPD385」にしておけばよかったなあ。

文字どおり「ピンチはチャンス」だった(笑)。

それにしても、「375」と「075」(ステンレスホーン付き)がそれぞれ重さが12キロ程度、そしてウッドホーンの重さもバカにならないがそれらを1個づつウェストミンスターの天板から降ろしたり、載せたりでもう大変だった。翌日は腕と腰が痛くてダウン寸前。

もう、ホトホト疲れた!
これから、こういう作業のときは必ず援軍を頼むことにしよう。 


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オーディオ 二題

2014年07月19日 | オーディオ談義

梅雨もそろそろ終わりに近づき、いよいよ猛暑の時季が目前となった。ここ2~3日にかけても日中は30度以上が続き、もう暑くて、暑くて~。しかもことのほか蒸し暑い!

こうなると、なにもかも意欲が減退する。食欲、読書、そして思考能力の低下。それは
ブログのネタ切れ事象で顕著になる(笑)。日課のようになっているブログにも波があって、いくつも書き溜める時期があるかと思えばネタ探しに追いまくられることがある。現在は後者の状況。

さて、エアコンを入れないときの日中は音楽を聴く気にもなれないが、不思議なことにオーディオに関してはいつも意欲満々で実験には“おさおさ”怠りなし。よほど好きなんだろう(笑)。たしかにうまくいったときの喜びは喩え様もないが、この心理はオーディオ・マニアならお分かりいただけようか。

つい最近もというわけで、オーディオ「二題」。

☆ テレビの音を少しでもいい音で聴く

日中、音楽を聴く気になれないとなると必然的にテレビ番組(録画した番組)の視聴が多くなる。たかが、テレビごときにいくつものオーディオ機器のスイッチを入れたり切ったりするのも面倒くさいので、昨日(18日)テレビ視聴専門のSPユニットを取りつけてみた。

         

およそ40センチ四方の平面バッフルに、取りつけたのはリチャード・アレン(イギリス)の「ニューゴールデン8」(口径18センチ)。裏側にはL型金具2個でがっちりネジ止めして直立できるようにしているが、この口径のフルレンジ・ユニットは人の声を聴くのにはもってこいなのでずっと手元に置いていたが、こういう時に役に立つ。

ただし、この小さな平面バッフルだとSPユニットの裏側に出た逆相の音が表側に回ってきて正相の音と打ち消し合うので低音域がいささか物足りなくなるが、何せ置き場所が限られているので半分は目をつぶるしかない。

そういうハンディはあるにしろ、駆動するアンプはテレビ内臓のものなので、リモコン・スイッチひとつで簡単にオン・オフが利くし、しかもテレビ内臓のちっぽけなSPユニットに比べるとはるかに音質がいい。

これで今年の夏は例年よりもテレビを観る時間が多くなりそう(笑)。

☆ 「AXIOM301」の活用

つい先日のブログに記載したようにマッキントッシュのプリアンプ「C28」を導入し、トーン・コントロール(低音域)をフル活用して「AXIOM80」を鳴らしはじめてからおよそ2週間あまり。

今のところボーカル、小編成の音楽などについては何ら不満はなく、明らかにこれまででベストの状態だと思っているが、欲を言えばオーケストラなどの大編成の音楽がもっとうまく鳴ってくれれば言うことなし。

ただし、この点に関しては以前から「AXIOM80」の致命的な弱点である。どんなにうまく鳴らそうと口径25センチのユニットにスケール感を望むのはそもそも無理というもので、いわば“無い物ねだり”。

しかし、執念というものは恐ろしい(笑)。

ふと思い付いたのがサブ・ウーファーとしての「AXIOM301」(口径30センチ)の活用。駆動するアンプは我が家で最強の出力を誇る「VV52Bシングル」真空管アンプにした。

ムンドルフのコイル(8.2mh)を購入して、およそ150ヘルツ付近でハイカット(6db/oct)して既存のエンクロージャー(北海道産の5センチ厚の材質)に収めてみた。これでフルレンジ・ユニット(ローカットなし)+サブ・ウーファーの組み合わせの完成。「AXIOM80」そのものはメカニカル2ウェイなのでこれで変則3ウェイとなる。

         

               

「AXIOM80」と「AXIOM301」のツクリはまったく違うのだが、さすがに同じブランドの「AXIOM」同士の組み合わせで、相互の音の溶け込み具合がこれまでよりも随分向上した気がする。それに口径30センチのユニットは手頃な大きさで38センチのユニットに比べて音声信号への追従力がいいので助かる

しかし、相互ユニットの音量のバランス調整が極めてデリケートになる。極端にいえばCDソースごとに「AXIOM301」のボリュームをいじることになるが、それもまた楽しからずや!

今のところジャズやオーケストラのときだけこのサブ・ウーファーをスイッチ・オンにしているが、しばらくこれで聴いてみることにしよう。

据えつけてから1週間ほど経ったが、その間お客さんがいっこうに見えないので意見を聞くことができないのがちょっと残念(笑)。


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「いい物を長く、いい音で使いたい」

2014年07月17日 | オーディオ談義

前回のブログに記したように古いオーディオ製品を愛好している輩のひとりだが、そういう製品に“つきもの”なのが性能の劣化や故障。したがって、メンテにはなるべく気を使うようにしている。

先日、ぶらりと本屋さんによってオーディオコーナーを覗いたところ目についたのが次の本。

「オーディオお助けハンドブック」~いい物を長く、いい音で使いたい~」(2014.3.31、音楽之友社刊)。

                         

まったく自分の思想にピッタリの標題(笑)。

迷わず購入して読んでみたが、なかなかタメになる情報が多かった。既に読んだ方もいるだろうが、内容をかいつまんで紹介しておくと、

☆ オーディオチェック&トラブル解消編

日常気をつけたいチェックポイントと電源事情、オーディオ接点のトラブル解消法、プロが伝授するトラブル解消法などが紹介されている。

☆ オーディオの病院・修理サービス編

 オーディオ名門ブランドのサービス修理部門探報としてアキュフェーズ、エレクトリなどの紹介に続いて、オーディオの病院・修理工房として全国津々浦々にわたる9社が紹介されている。

九州管内ではただ1社挙がっていたのが〇〇さんだが、オーディオ仲間のKさんからも「ここは間違いなく腕がいいですよ」と、紹介を受けていたところで定評のあるところがちゃんと選ばれているようで、本書への信頼度が増した(笑)。

☆ コンポのストーブリーグ・リセール中古・ビンテージ編

中古とビンテージ・リセール売買のQ&A、国産・海外ビンテージ100選、ネット・オークションの活用方法など多岐にわたる内容が記載されている。次のような箇所があった。(131頁)

「オークションが本格的に盛り上がるのは締め切り時間の1時間から30分前だ。そこから本格的に競り上がる。特に週末は凄い。ついつい競って熱くなり、予定よりも高額で落札に追い込まれてしまう場合もあるが、これも大人の衝動買いの一環。後悔するか、楽しむか・・・・最後の1分間が勝負でドラマチックでもある。心臓の悪い人はオークションは避けたいものだ。」

たしかに、自分もあまり強い心臓の持ち主ではないので最後の競り合いには参加しないようにしており、(自分が考える)限度額いっぱいで入札した後は潔く知らんふりして寝込ことにし、結果は翌朝拝見というパターンにしている。見事にフラれることが多いが命の方が大切なので“それで良き哉”(笑)。

さて、本書の中で一番興味を引かれたのは「オーディオ接点のトラブル解消法」。

オーディオにおいてトラブルのかなりの部分は接点不良が原因と言われている。機器内部は別として、外部の接続に関しては日常ユーザーの守備範囲である。

筆者によると、春夏秋冬、季節の変わり目には必ずシステムの隅々まで接点のメンテを行っているそうで、自分の場合はほぼ年一度くらいなので大いに触発されて、すぐに実践した。

使った道具は次のとおり。

           

綿棒は「赤ちゃん」用のものだが、細身のうえにきつく縛ってあって、しかも段がついているのでオーディオ用に持って来いで、昔から愛用している。価格も安い。右側の無水エタノールも必需品と言っていいほどで、随分重宝している。真ん中の電子機器クリーナーは本書の中で紹介されていたのでネットで取り寄せたもの。

この「三種の神器」を駆使して、それぞれの機器の接点を綿密にクリーニングしたところ数本の綿棒が真っ黒になった。RCAジャックもさることながら、ひどかったのがパワーアンプとSPコードの接続部で我が家ではこの部分はまったくの盲点だった。

梅雨もそろそろ末期になったようで、昨日(16日)には南九州地方が明けたとのことだが、“湿気とおさらば”のこの時期に簡単にできる音質改善方法の一つとして皆様も接点の掃除をされたらいかがでしょう。
 


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「古い音」へのこだわり

2014年07月15日 | オーディオ談義

前々回のブログで不要になったSPユニット「SLE-20W」(5ペア)の引き取り先を募集したところ、幸いにもこのブログの愛読者と仰るKさん(広島県)が手を挙げてくれた。

         

いくら「格安で譲る」と当方が勝手に記載したところで、Kさんにとってはそうではないかもしれないので(笑)、購入したときの価格やオークションでの取引相場などの情報を腹蔵なくオープンにしたうえで細かい条件の詰めを行ったところ無事商談成立。Kさん、どうもありがとうございました!

愛用したユニットなので、さらなる活躍を祈りつつ昨日(14日)に滞りなく発送した。

残るユニットはオーディオ仲間を通じてオークションに出す予定だが、スタートの価格設定はこのときの5割増し程度にする積もり。しかし、売れ行きが悪かったら徐々に下げていくことにしよう(笑)。

さて、ここから前々回のブログの続きに。

新兵器としてこのたび導入したマッキントッシュ(以下、「マッキン」)のプリアンプ「C28」についてだが、マッキンには真空管式の「C22」という名プリアンプがあり今でもオークションではバカ高い値がしている。例によって復刻版も出ているが、回路も微妙に違うそうだし〇〇製の部品が使ってあるので「?」だが、実際に使ったことがないので音質については何とも言えない。

この「C22」の後継機種に当たるのが、この「C28」だが、残念なことにこれはトランジスター式。トランジスターの音はあまり好みではないが、実際にオーディオ仲間のお宅で聴かせてもらったら真空管に近い暖かみを感じた。

そこでパワーアンプならともかく、プリアンプならトランジスターでも許せるかという気になったし、何よりもトーンコントロールの機能が設けられており、少し目盛を回しただけで劇的に効くのが大いに気に入った。

実は、先日のブログで記載したように「AXIOM80」(オリジナル)を愛用しているマニアが、中低音域が物足りないのでレコードのRIAA回路のように独自の補正回路を作って上首尾だったとあったので、この「C28」を導入してトーンコントロールで中低音域をブーストしてやろうというのが偽らざるホンネ。このやり方は邪道かもしれないが・・・。

        

ただし、その結果は狙い通りで今のところ概ね満足で当分の間、真空管式のプリと併用していく積もり。

さて、こうしてみると自分の身の回りにある機器は音の入り口のCDシステムを除いて、アンプやスピーカーなどすべて古い年代のものばかり。けっして食わず嫌いというわけでもないのだが最新の機器は音質的にどうも肌合いがしっくりこない。

レンジが広がるのは基本的に歓迎なのだが、その一方「音に力感がなくて薄く感じる」ケースも多々あるように感じられる。

これは感覚的な問題に帰するのだろうが、とにかく周波数帯域の幅は“そこそこ”でいいから密度が濃く聴こえる音の方が好きである。同年代のオーディオ仲間も一様に同じ感想を洩らされるのでこれは自分だけの現象ではないようだ。

先般紹介した「クラシックの核心」(片山 杜秀著)の13頁に「音楽というのは記憶と刷り込み」という記述があって、小さい頃に音楽を聴いたときの環境による印象が大人になっても持続するとあったが、まったくその通りで「音だって記憶と刷り込み」なので幼い頃に親しんだ当時のラジオや電蓄の音がいまだに耳に焼き付いているせいかもしれない。

「三つ子の魂百までも」で瑞々しい感覚の時の思い出は無意識のうちにずっと根を張りながら育っていく。

したがって広帯域の音で育った世代とは基本的なギャップがあるように感じられて仕方がないが、もちろん自分の方が時代遅れなので誤解なきように(笑)。

とにかく、このマッキンの「C28」を導入した直後に我が家に1か月ぶりにお見えになったオーディオ仲間のKさん(福岡)が「これまででAXIOM80が一番いい音で鳴っているようですよ」と仰ったのでひと安心。

当日はKさんが秘蔵されている珍しい「71A真空管」と「2A3真空管」を沢山持ってこられて、それぞれ専用のアンプで差し換えしながら長時間の試聴だったが、「この球だけは絶対に非公開にしてくださいね」と念を押された球に限って、さらにいい音がするのには驚いた(笑)。

真空管アンプも出力管の銘柄や整流管との相性次第でクルクル音が変わるし改めて奥の深さを堪能したが、真空管の魅力は1920~1940年代製造のものに尽きるようで“ほとほと”感心した!
 


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スピーカーの整理

2014年07月11日 | オーディオ談義

先日のこと、5年ほど愛用した自作のスピーカーボックスをアッサリ知人に進呈した。

「心機一転」のつもりだったが、手放した一番の理由は本命のスピーカーをうまく響かせるためにその周りをスッキリさせたかったからに尽きる。

どういう風に変わったのか、「百聞は一見に如かず」なので画像ご覧いただくと、

                   

見るからに音が良さそうだし、実際に試聴してみてもその効果は歴然としていた。

整理したスピーカーに内蔵していた「AXIOM80」(復刻版)は取り外してスペアとして保管することにしたが、少々惜しかったのはお気に入りのユニット(ウーファー用)だった「SLE-20W」(フォステクス)が使えなくなったこと。

エッジレス仕様の強力なアルニコマグネットによる駆動力は、切れが良く、弾むような低音となって随分楽しませてくれた。「AXIOM80」の低音域補強用として申し分なし。

当時、例によって「お気に入り機器の収集癖」によってスペアを含めて「5ペア=10本」を確保していたものの、もう使えなくなってしまった。しかし「二兎を追う者は一兎をも得ず」なので諦めるしかない。

これら10本はそのうちオーディオ仲間に依頼してオークションに出す予定だが、もし読者の方でご入用の方があれば格安でお譲りします。そういえば、片チャンネル4発を使用していた頃、このユニットを熟知している見知らぬ方から「4発ですか!実にうらやましい」というメールをいただいたことを思い出した。

            

オークションに掲載する文面はもう考えていて、次のとおり。

「口径20センチのアルニコマグネット・エッジレス・ウーファーです。ダブルウーファー片チャンネル2発、合計4発の使用をお勧めします。このウーファーはレスポンスがとても機敏ですべてのジャンルの再生が可能です。当時の販売価格は1本がおよそ18千円でした。

機械的サスペンション(エッジ)がなくなったので直線性が極めて優れており、エッジの異常振動によって起こった中域特性の谷や異常音がまったくありません。歪がなくてエッジレス仕様といえばあの英国の名器「AXIOM80」(グッドマン社)でも有名です。

仕様は次のとおりです。インピーダンス8Ω、周波数特性27~5000ヘルツ、許容入力100ワット、クロスオーバー3千ヘルツ以下、総重量3.8キロ、推薦エンクロージャーの内容積は45リットル。」

とまあ、以上のとおりだが、実を言うとこの「SLE-20W」が不要になったのにはもう一つ理由がある。

それには新たな秘密兵器「プリアンプC28」(マッキントッシュ)の存在がある。

        

このプリアンプの劇的に効くトーン・コントロール(低音域)によって、「AXIOM80」が見事に変身!


以下、続く。

 


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「AXIOM80」のネガティブ・キャンペーン?

2014年07月08日 | オーディオ談義

このブログで再々記しているように日頃から愛用しているSPユニット「AXIOM80」(以下、「80」)だが、残念なことに2ペアとも1970年代に復刻されたもの。

1950年代初頭に発売されたオリジナル・ユニット(以下、「オリジナル」)は別格の存在という話をよく聞くので、どれほどの違いがあるのか、一度自宅のシステムの中に組み入れて鳴らしてみたいとの思いは尽きない。

先日のことだが「オリジナル」の愛好者のSさん(東京在住)から、次のようなメールが入った。

「R形状マグネットエッジの最初期型オリジナル80がペアでヤフオクに出てます!〇〇で整備済とのことで状態良さそうです。片方のコーン紙に補修がしてあるようですが、左右で特性が合っているのなら問題ないでしょう。補修の有り無しよりも、折り返し形状エッジのオリジナル軽量コーン紙がついている事が最重要ですから。

破れたからといって後期の重いコーン紙に取り替えられていたら、オリジナルの最大の美点が失われてしまうところでした。今回の物件は、ウェンブリー工場製造であることは勿論のこと、ベークライト製カンチレバーの厚さが薄いこと、マグネットカバーのエッジ部にRがついていること、サブコーンの色が焦げ茶色であること、どこをとっても1950年代末頃から1960年代前半にかけて製造された第Ⅰ期バージョンです。

その中でも最初期の製造と判定できるAXIOM80でしょう。この先、完動品がペアで出てくることは相当稀だと思います。30万円までで落ちるなら間違いなく買いでしょう。既に結構な数の入札者が居るのが気になりますが、頑張ってください。」

          


久しぶりに“血湧き肉躍る”話(笑)。

とはいっても、メールにあるように(入札額が)30万円以上の勝負をするつもりはない。いくら「音楽=オーディオ=命」といっても、それで飯が食えるわけでもない。

また“お金優先”と言われるかもしれないが、オーディオに限らず何ごとにつけ「性能 ⇔ 対価 ⇔ 満足度」の相互の兼ね合いをはかるクセをつけておくことは「頭の体操 → ボケ防止」にとっても非常にいいと思う(笑)。

冗談はさておき、すぐにウォッチリストに登録して注意深く見守っていると、中古専門のストアからの出品なので例によって「1000円」スタートながら、あっという間に21万円まで跳ね上がってそこから小康状態に入り、いよいよ落札当日になった。

夕食を終えて、就寝前になってからいよいよおもむろに始動開始。これで結着だといわんばかりに「299000円」でいきなり入札したところ、何とその額以上のもっと高値をつけた入札者が既にいたのには驚いた!

な~んだと、一気に冷めてしまった。物事にはすべて“のり”(法、則、典、範、矩)というものがあるように思う。いくら「オリジナル」といってもこれ以上追いかけるつもりはないので、いつものとおり「足の裏叩き」を終えてご就寝(笑)。

翌朝、いったいいくらで落札されたんだろうとパソコンを開いてみたら「301000円」で落札されていた。

ウーム、2000円差かあ!ただし、本気で自分が勝負を仕掛けたらおそらく競り合いになってもっと値上がりしたことだろう。

というわけで、今回も「オリジナル」とは縁がなくてとうとう涙を呑みました(笑)。

しかし、改めて考えてみるのに「AXIOM80」はそもそも30万円に匹敵するような性能を持っているんだろうか?

オリジナルを使っているオーディオ仲間のKさん(福岡)によると「とても30万円以上の値打ちはありませんよ。」と、はっきり仰る。Kさんは歴戦の強者で、アルテック、JBL、タンノイなどを経て「80」に至った方で、しかも無数のアンプを使いこなしてきた方である。

これに勇気を得て、今回はいつもとは違って「80」をマイナスの視点からいくつか列挙してみよう。

いわばネガティブ・キャンペーン(笑)

 「80」はけっして万能型のユニットではない。たとえば、弦楽器群のファンダメンタルな響きはとうてい望むべくもないし、あの雄大なワーグナーやマーラーなどの音楽には向かない。線が細すぎる。したがって、せいぜいボーカルやヴァイオリン・ソロを聴くぐらいが関の山でとてもメインのシステムとなる資格はない。

 とにかく中低音域が物足りない。その辺も含めてうまく鳴らそうと思うと
メチャ手間がかかるユニットである。そもそも完璧に鳴るかどうかも定かではない。実際にいろんな方々の「80」を聴いてみても、自分も含めて“あと、ひとひねり必要”という印象を受けるばかり。

 とても気難しいユニットなので全体的なシステムの構成にも配慮しなければならず一か所でも手を抜くとすぐに反応する。取り分けパワーアンプの選択が難しくてとても一筋縄ではいかない。

我が家の例では、WE300Bアンプ(1950年代オールド)、PX25アンプ(ナス管)、刻印付き2A3(1940年代)アンプなど一般的に定評のあるものを使ってみたがいずれも「帯に短し、たすきに長し」で決め手に欠けており、いまだに「ああでもない、こうでもない」と迷路を彷徨っている。

実際に「80」の紹介記事が掲載されている「いまだからフルレンジ」(別冊ステレオサウンド)にも次のような箇所がある。(115頁)

「このユニットの本領を発揮させるには相当の力量が必要で、当時としても独特の繊細で、ふっくらした艶やかな響きを堪能していた人は稀だったと思う。」とある。

おそらく筆者は「瀬川冬樹さん」(伝説のオーディオ評論家、故人)に違いない。瀬川さんほどの方が後になって「80」から「JBLシステム」へ転向されたが、今ではその気持ちが分かるような気がしている。

とまあ、以上のとおりで結論から言えば“うかつに手を出さないほうがいい”ユニットである。

ところで、今回の例にもみられるとおり「80」の近年になっての高騰ぶりは目に余るものがあるようだ。

原因はいろいろあろうが、実をいうと「80が異常に値上がりしたのはあなたのブログにも一因がある」と、一部の方から責め立てられている。

たかが自分のブログごときが”それほどの影響力があるかな?”と半信半疑だし、むしろそう言われるのは光栄なくらいだがこのネガティブ・キャンペーンの効果によって、少しでも市場の「80」への熱が冷めてくれれば、それに越したことはない。

なぜなら「オリジナル」の相場が少しでも下がると手に入れやすくなるから(笑)。
 


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心配症

2014年07月04日 | オーディオ談義

「あなたは気に入ったとなると、同じようなモノをいくつも買いたがるわね。」と、家内からよく皮肉めいたことを言われる。

たしかに言われてみるとその通りで身の回りのモノのうち非常に大切と思うものは、たとえ一時的にしろ故障したりすると非常に困るので、日頃からとかくスペアを準備しておきたがる癖がある。いわば「心配症」。

さすがに「家内と一人娘」のスペアだけは確保できなかったが(笑)、日常的にその癖が顕著に発揮されているのが例によってオーディオ機器。

その最たるものは消耗品に当たる真空管だが、そのほかにもいろいろあってつい最近もスペアを確保したのがこれ。

☆ JBL2440ドライバーとダイアフラム

我が家のJBLシステムの中核をなしているのは中音域担当の375ドライバーだが性能には満足しているものの、なにしろ40年以上も前の製品なので、いつトラブルが発生しても不思議ではない。そういうときは修理専門店に出せばそれで済むわけだが、まず1週間以上は修理期間をみておかなければならない。つまり、その間は聴けないことになる。

若い頃ならいざ知らず、この年代になると残された時間も限られてくるのでたとえ1週間といえども非常に貴重な時間である。

そこで、オークションで格好のスペアがあれば確保しておこうと日頃から狙っていたところ、このほどジャンク品扱いで「2440」ドライバーが出品されていた。これは「375」の後継機種にあたる。そして、説明文にはこうあった。

「JBL 2440  ペア ジャンク品です。音は出ておりますがスペックを満たしているかは測定器が有りませんので確認できません。PAの現場で使用していた物ですので傷・汚れ錆等多々あります。最後に使用したのが5年ほど前と思います。16Ωと書いてありますがダイアフラムが16Ωかどうか定かではありません。ジャンク品とご理解いただきノークレーム・ノーリターンでお願いいたします。」

                 

「PAの現場」で使用されていたとあるが、PAってなんだろう?

さっそくネットでググってみると次のとおり。

Public Address(パブリック アドレス)とあって、端的に言えば聴衆向けの電気的な音響拡声装置のことだった。つまり「家庭用として使われたものではない → 比較的荒い環境のもとで酷使されている」と解していいだろう。

それに画像でもご覧のとおり見かけも非常に悪い。ただし、どうせ本体はウッドホーンで隠れてしまい試聴席からはいっさい見えないので、とにかく音さえ出れば外見はいっさいお構いなしの心境(笑)。

23件ものライバルをかわしてようやくゲットしたが、市価の1/5ほどでとにかく信じられないほどのお値段だった。おそらくジャンク品扱いと見かけの悪さで入札者の腰が引け気味だったのが一番の勝因。

「375」の分解掃除はもう何回もやっていて、自家薬籠中のものなので中身への不安はいっさいなかった。

指定口座に代金を振り込むと、出品者は福岡だったのですぐに現物が我が家に届いた。

さあ、いよいよ御開帳である。           

2台のうち最初に手がけた方はこれまで1度も修理されていなかったと見えて、(開けるのに)実に苦労した。カッターナイフの刃の方を裏蓋を区切っている隙間に当て込んで、背の方をゴムハンマーでコツコツと柔らかく叩いてみるのだが、まったく歯が立たない。

こうなると根気勝負だと、およそ10分ほど辛抱強く叩き続けていたらようやく(カッターナイフの)刃が5ミリほど沈み込んだので、今度は鋼(ハガネ)のドライバーをその隙間に挿し込んでグイとこじ開けた。

            

ご覧のとおり外見からは想像もつかないほど程度が良かった。ダイアフラムもいろいろあるが、これは間違いなくJBL純正のダイアモンドカットの代物に間違いない。現在使っている375のダイアフラムと同じ外見である。

さてもう片方のダイアフラムも同じなら言うことなしだがと、勇んで取り掛かったところこれは以前に修理歴があったとみえてパカ~ンと簡単に開いた。

不吉な予感がしたが、やっぱり純正以外の普通のダイアフラムが使ってあったのでガックリ!結局、左右不揃いというわけで、値段が値段だけにそうは問屋が卸さなかった(笑)。

しかし、大事なポイントは無事「音が出るかどうか」なので、気を取り直して真空管アンプにSPコードを繋いで(コンデンサーを挿入して)音出しをしたところ、きちんと音が出たのでひと安心。オークションの解説文に嘘偽りはなかった


気になるのは両者のダイアフラムの違いだがまあ、ほとんど聴感上での音の差は分かるまいと思うものの、念のためペアとなるダイアフラムを
別途確保しておくことにした。これもオークションで格安で手に入れたが念のため、質問欄で「16Ω用」であることを確認した。

              

日を置かずに送付されてきたのが上記の画像で非の打ちどころがない代物だった。さあ、これで「375」がいつ故障しても大丈夫なので安心して音楽を聴ける~(笑)。

なお、最後にオークションの利用について一言。

常にオークションを利用している仲間によると、オークションにも季節的に波があって現在はお値段が比較的お手頃の時期に当たるという。

その理由はこれから暑い季節に入るので「音楽を聴く気にあまりならない → その余波でオーディオ機器にも関心がもたれない → 動きが鈍くなって値段が安くなる」ということらしい。

逆に出品する側からいくと気候が良くなる秋口にかけて、オーディオ機器の値段が上がりやすいのでその時期が(出品の)グッドタイミングだという。冬のボーナスもあることだしねえ~。

したがって、今は買い時だ(笑)!
 


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音楽評論家「吉田秀和」さんの後継者

2014年07月01日 | 音楽談義

 音楽評論(クラシック)の大御所だった吉田秀和さんが亡くなられてからおよそ2年になる。

あまりにも存在が大きかっただけに、はたして吉田さんに続く後継者は現れるんだろうかと大いに心配(?)していたのだが、どうやらちゃんとふさわしい方がおられたようだ。

                          

つい最近「クラシックの核心」(2014.3.30、河出書房新社刊)を読んでそう思った。書いてある内容も随分と中身が濃かったが、それに加えて「です、ます」調の柔らかい文体がいかにも吉田さんの著作
を彷彿とさせてくれた。

著者の名前は「片山杜秀」(かたやま もりひで)氏。巻末の経歴欄を伺うと1963年生まれで現在、慶應義塾大学法学部教授。

過去に「音盤考現学」「音盤博物誌」「クラシック迷宮図書館(正・続)」などの著書があり、「吉田秀和賞」をはじめ「サントリー学芸賞」「司馬遼太郎賞」など数々の賞を受賞されており、道理で~。

本書の内容は次のとおり。

1 バッハ  精緻な平等という夢の担い手

2 モーツァルト  寄る辺なき不安からの疾走

3 ショパン  メロドラマと“遠距離思慕”

4 ワーグナー  フォルクからの世界統合

5 マーラー  童謡・音響・カオス

6 フルトヴェングラー  ディオニュソスの加速と減速

7 カラヤン サウンドの覇権主義

8 カルロス クライバー  生動する無

9 グレン・グールド  線の変容

この中で特に興味を惹かれたのは、「フルトヴェングラー」と「グレン・グールド」だった。

前者では「音は悪くてかまわない」と、小見出しがあって次のような記述があった。(137頁)

「1970年代以降、マーラーの人気を押し上げた要因の一つは音響機器の発展があずかって大きいが、フルトヴェングラーに限っては解像度の低い音、つまり『音がだんごになって』聴こえることが重要だ。

フルトヴェングラーの求めていたサウンドは、解析可能な音ではなくて分離不能な有機的な音、いわばオーケストラのすべての楽器が溶け合って、一つの音の塊りとなって聴こえる、いわばドイツの森のような鬱蒼としたサウンドだ。したがって彼にはSP時代の音質が合っている。」


オーディオ的にみて興味のある話で、そういえば明晰な音を出すのが得意の我が家のJBLシステムでフルトヴェングラーをまったく聴く気にならないのもそういうところに原因があるのかもしれない。

通常「いい音」とされているのは、端的に言えば「分解能があって奥行き感のある音」が通り相場だが、指揮者や演奏家によっては、そういう音が必ずしもベストとは限らないわけで、そういう意味ではその昔、中低音域の「ぼやけた音」が不満で遠ざけたタンノイさんだが、逆に捨てがたい味があるのかもしれないと思った。

「いい音とは」について、改めて考えさせられた。

次にグールド論についてだが、これはグールドファンにとっては必見の内容で、まだお読みになっていない方はぜひお薦めします。

さて、稀代の名ピアニスト「グレン・グールド」(故人、カナダ)が、ある時期からコンサートのライブ演奏をいっさい放棄して録音活動だけに専念したのは有名な話でその理由については諸説紛々だが、本書ではまったく異なる視点からの指摘がなされており、まさに「眼からウロコ」だった。

まず、これまでのコンサートからのドロップアウトの通説はこうだ。

 グールドは潔癖症で衛生面からいってもいろんなお客さんが溜まって雑菌の洪水みたいな空間のコンサート・ホールには耐えられなかった。

 お客さんのプレッシャーに弱かった。

 極めて繊細な神経の持ち主で、ライブ演奏のときにピアノを弾くときの椅子の高さにこだわり、何とその調整に30分以上もかけたために聴衆があきれ返ったという伝説があるほどで、ライブには絶対に向かないタイプ。

そして、本書ではそれとは別に次のような論が展開されている。(188頁)

「グールドによると、音楽というのは構造や仕掛けを徹底的に理解し、しゃぶり尽くして、初めて弾いた、聴いたということになる。たとえばゴールドベルク変奏曲の第七変奏はどうなっているか、第八変奏は、第九変奏はとなると、それは生演奏で1回きいたくらいではとうてい分かるわけがない。たいていの(コンサートの)お客さんは付いてこられないはず。

したがって、ライブは虚しいと感じた。よい演奏をよい録音で繰り返し聴く、それ以外に実のある音楽の実のある鑑賞は成立しないし、ありえない。」

以上、新説だが30年以上ひたすらグールドを聴いてきたので“さもありなん”と思った。非常に説得力があると思う。

そもそもライブのコンサートには(よほどの演奏家を除いて)まったく興味がなく、ひたすら文化果つる田舎の自宅のシステムで音楽に聴き耽る自分のような人間にとってはまことに「我が意を得たり」である(笑)。

「音楽は生演奏に限る。オーディオなんて興味がない。」という方をちょくちょく見聞するが、けっして自慢できる話ではなく、ほんとうの音楽好きとは明らかに違うことを銘記しておかなければならない。

さらにオーディオ的に興味のある話が続く。

「その辺の趣味はグールドのピアノの響きについてもつながってくる。線的動きを精緻に聴かせたいのだから、いかにもピアノらしい残響の豊かな、つまりよく鳴るピアノは好みじゃない。チェンバロっぽい、カチャカチャ鳴るようなものが好きだった。線の絡み合いとかメロディや動機というものは響きが豊かだと残響に覆われてつかまえにくくなる。」といった具合。

グールドが「スタンウェイ」ではなくて、主に「ヤマハ」のピアノを使っていた理由もこれで納得がいくが、響きの多いオーディオシステムはたしかに心地よい面があるが、その一方、音の分解能の面からするとデメリットになるのもマニアならお分かりのとおり。

したがって、グールドの演奏はJBLシステムが似合っていて前述のフルトヴェングラーの演奏とはまったく対極の位置にあることが分かる。

結局、こういうことからすると「いい音」といっても実に様々で指揮者や演奏家のスタイルによって無数に存在していることが分かる。逆に言えば、一つのシステムで何から何までうまく鳴らそうなんて思うのは愚の骨頂かもしれない。

世の中にはピンからキリまで様々なオーディオ・システムがあるが、高級とか低級の区分なくどんなシステムだってドンピシャリと当てはまる録音演奏があるのが何だか楽しくなる~(笑)。 
 


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