去る2日(土)の試聴会(計4名)で、仲間が持参した試聴曲のうち「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」(バルトーク)というのがあったが、自分のレパートリーの範囲ではとても及びもつかないような曲目だった。
中列の左から3番目のCDがそれで、バルトークの代表的な演目を指揮者として当時活躍していた「ショルティ」が珍しくピアニストとして「ペライア」と競演したものである。
一度聴いたくらいではなかなかその良さが分からなかったが、食べ物の好き嫌いと同じで、音楽も人によって嗜好に随分差があって、そっくり同じ曲目が好きだというケースは滅多にないようで、ここ数日間このことについてずっと考えさせられた。
たとえば自分の場合ではオペラ「魔笛」(モーツァルト)をこよなく愛好しているが、一方では「こんな盛り上がりのない退屈極まりないオペラは大嫌い」という人がいたりする。
たしかにイタリア・オペラに比べるとずっと地味だが、もちろんこれは人それぞれの受け止め方なので「いいとか悪いとか」という問題でもない。
音楽にも一度聴いてすぐに好きになる曲目があれば、何度でも聴いていくうちに好きになってくる曲目と二通りあるが、えてして、前者の場合、何回か聴いているうちに比較的早く「飽き」がくるが、後者では聴く度に新たな発見があったりして長期間の鑑賞に耐え得るケースが多い。
オペラは典型的な後者に属すると思うが、逆に開き直られて”いったいオペラのどこがそんなにいいのか”と問われた場合にその魅力を適切に表現する言葉がすぐに浮かんでこず、何ともいえない”もどかしさ”を感じてしまう。
そもそも音楽の魅力を口で表現するのは本質的に難しくて、なぜなら言葉(文字)で表現できないために音楽(音符)というものがあるのだから。
とはいえ、音楽関係のブログをはじめいろんな情報に接していると、オペラを食わず嫌いのままでずっと放っておく方が非常に多いような気がしているし、それはほんとうにもったいないことだと思う。もちろん「要らん世話」かもしれないが(笑)。
そこで「オペラへの誘惑」と題して、どこまで誘引できるかおぼつかないがチャレンジしてみることにしよう。
そして、オペラの魅力を語るうえで、前述した“もどかしさ”を解消し代弁してくれる恰好の本がある。
それは「ドイツオペラの魅力」(昭和56年、著者:中島悠爾氏、日本放送教会刊)である。
本書には、冒頭から「魔笛」がドイツオペラの草分けとなる重要なオペラとしてしてかなりのページを割いて詳しく解説しているが、音楽理論というよりもオペラ愛好家の立場から素人向きに執筆されていて大変分りやすい。
クラシックには交響曲、協奏曲、室内楽、管弦楽、そして声楽などいろんなジャンルがあるがオペラはこれらと、どういう点が違うのだろうか、というわけで「オペラの特質」について以下のように書いてある。
以下、続く。
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