今日は「石膏3」、「石膏」は今日で終わります。
これは石膏の結晶が放射状の集合体になっています。これよりももっと緻密に集合するとそれは球状になってしまうのでしょう。これよりももっと疎らに集合するとそれは線香花火のようになってしまうのだろうと思います。放射状の集合体も自然界ではよく見掛けます。それは鉱物界だけではなく植物界でもお馴染みの形です。この標本も「石の華」のひとつだと思います。
これは曲がって結晶成長した石膏です。鉱物界にはきりっとした直線的・幾何学的形態が多数派だと思いますが、中にはこのような湾曲したものが少数派ながら存在します。どうしてこうなったかは分かりません。このような形態にもそれなりの成因があるのでしょうが、よく分かりません。
今日の二つの標本を見ていると、ある一冊の本の事を思い出してしまいました。
その本とは「LECHUGUILLA JEWEL OF THE UNDERGROUND」という洋書です。その本はアメリカ、ニューメキシコ州にあるレチュギア洞窟の写真集です。レチュギア洞窟の美しさは目を見張るものがあります。その本にはレチュギア洞窟内の風景写真と共に洞窟内の鍾乳石等の生成物の写真も載っております。その中には上の写真の二つの標本そっくりなものも写っております。
上の標本の雰囲気に似ているは霰石の結晶です。その写真は出せませんが、線香花火のような霰石が写っています。下の標本の雰囲気に似ているのはヘリクタイトといわれる鍾乳石です。ヘリクタイトは曲がり石とも言われ、重力を無視した曲がり方が特徴的です。本に出ているヘリクタイトの質感は上の写真の石膏の質感に似ています。もしかするとそれは石膏のヘリクタイトかも知れません。
レチュギア洞窟には石灰岩だけではなく石膏も存在します。レチュギア洞窟にはかつてメキシコのヴィラルース洞窟と同じように硫化水素が充満していたと考えられています。その硫化水素が酸素と反応して硫酸となり石灰岩を溶かしたと考えられるそうです。そしてその後に残ったのが石膏です。洞窟を作ったのは硫化水素を食べて硫酸を排泄する古細菌の影響という説もあり、レチュギア洞窟には石膏のすばらしい樹枝状巨大結晶があります。
そうそう、その本には石膏と思われる細い毛のような針状結晶の写真も載っております。それに似たものが金沢市内のある施設で発見されたという話がありますが、その話は後日あらためて書く予定です。