昨日はうれしい来客がありました。それは大学で鉱物を学んでいる学生さんたちの授業の一環でのご来店です。学生達に石を見せながら石の解説をされていたのはAさんです。微笑ましい光景でした。
そのAさん、学生さんたちが帰った後にもう一度いらっしゃいました。それは何故かと言うと、店のざくろ石の棚に置いてあったブラジル産のウバロバイトのラベルの鉱物が気になって再度のご来店でした。
この写真がAさんが気になったという鉱物です。
Aさんは岩石学の研究者です。特にざくろ石は研究された鉱物でもあり、店にあったウバロバイトのサイズが異常に大きいので、本当にそうであるなら是非買いたいというお話でした。
その標本は昨年池袋ショーで入手した鉱物です。その鉱物はブラジル産のウバロバイトというシールが貼ってあったので、私はそれだろうと思い込んでいました。
Aさんの指摘でウバロバイトを調べ直しました。するとウバロバイトはロシア産のものが有名で、さらに3mm以上の結晶はほとんどないとされておりました。
私はもしや!と思いブラジル産のウバロバイトを探しましたが、なかなか見つかりません。
さらに、それに似たような鉱物があったと思い、トルマリンの引き出しを見直しました。
ブラジル Bahia Brumado 産 Uvite(ウバイト)
上の写真の標本がありました。六角形の結晶のセンターに正三角形の結晶面が出ている緑色の美しい鉱物結晶です。それとウバロバイトと思われていた鉱物結晶を見比べました。
すると結晶形がそっくりです。
それで分かりました。それはウバロバイト(Uvarovite 灰クロム柘榴石)ではなかったのです。
それはどうもブラジル産のウバイト(Uvite 灰電気石)だったのです。
私はAさんに間違いを伝えました。Aさんはその事をすぐに了承して下さいました。
その後、Aさんはざくろ石類とスピネルの引き出しを見て、北朝鮮産の巨大な正八面体結晶の黒いスピネルを買い求めて下さいました。その標本は恐らく戦前の標本です。何かの標本箱にあったものでしょう?「10」というシールが貼られていました。
Aさんとは少し立ち話をしました。オマーン・オフィオライトの話や東赤石山やアポイ岳の話です。いずれも静岡大学の道林克禎さんの講座で学んだマントル起源の石が地表に出ている特異な場所の話です。私は数年前に朝日カルチャーセンター名古屋・栄で道林さんの石の講座を受講していました。
Aさんの専門分野とも重なる部分があるのだろうと思います。
Aさんの指摘で、入手した鉱物標本のラベル情報が正しいとは限らない事が分かりました。
私はまだまだ経験不足です。鉱物標本に対して、もっともっと鑑識眼のレベルを上げなければならないと思いました。