今日は「石」です。石のブログを書いておりますが、タイトルの「石」は初登場です。
ただ、石そのものの事ではなく、「石」という名の写真作品集の事です。
私は金沢のオヨヨ書林せせらぎ通り店によく行くのですが、そこでは石の本が見つかったら教えて下さい、というお願いをしております。
私は鉱物コレクターを始めた17年前から鉱物標本とともに石の本のコレクターにもなりました。正確な数ではありませんが、これまでに石の本だけで2000冊は越えているような気がします。その位になると新刊本を待っているだけでは物足りなくなってしまいます。そうなると古本の世界に入って行かざるを得なくなります。そして私のわがままをきいてくれているのがその古書店でした。
先日、メールが入り、日本大学の紀要に「石」というタイトルの本があります、という情報がありました。紀要とは一般書店売りをしていない研究者向けの特殊な本です。その紀要が入手できます、という内容でした。しかも無料で直接送って下さる、という話で、すぐにお願いしました。
それから、しばらくして、本当に「石」が届きました。
「石」は日本大学芸術学科写真学科が平成20年に発行された紀要です。それは秋元貴美子さんと笹井祐子さんのお二人の写真の作品集でした。石をテーマに石の表情を写真と言う芸術手法で表現された写真集です。天然の石たちの見せる色鮮やかな表情が写真家の目でとらえられていました。そこには現代アートともいえる多彩な華厳の世界があります。そしてもの言わぬ石達のおしゃべりな声が聞こえて来そうでした。普段とは違った視点で石の世界を楽しめました。
この作品集にはそれらの写真作品以外にも面白いと思った事がありました。それは表紙がふたつあるような体裁です。その本には裏表紙はありません。表からと反対の表からとどちらからでも見て行けるような構成になっております。ひとつの「石」というテーマをふたりの写真家の作品集で構成するには最適な造りだと思いました。それは珍しいシンメトリーな構成の本でした。
珍しく貴重な石の本を入手できました。日本大学の秋元貴美子さん、笹井祐子さん、そしてオヨヨ書林の佐々木さん、本当にありがとうございました。
「石」を見ていると、別のタイトルを思いつきました。「SURFACE THE STONE」です。自然の石の表情はそれだけで芸術作品になりえます。石の表面には多様な表情があります。そして、その石がそこにある事そのものは地球誕生以来の幾多の歴史を物語っています。石の表情にはひとの表情以上に物語性があります。
「SURFACE THE STONE」は「WITHIN THE STONE」のもじりでもあります。
「WITHIN THE STON」はHyperCardを作った伝説のプログラマーであるビル・アトキンソンが出版した石の写真集です。日本では2004年にワークスコーポレーションから発売されました。「石」が石の表面をとらえた写真であったのに対し、「WITHIN THE STONE」は石の内部の多彩な表情をとらえた写真でした。それは天然石の標本の断面を研磨して撮った写真集です。それらの石の内部には驚くべき秘められた美しさがありました。その世界は現代アートの世界は勿論、宇宙や地球上空から撮ったとと思われるような風景もあり、さらに純粋幾何学的な模様もあったりで、森羅万象、ミクロ・マクロの相似性を感じさせる写真美の本でした。
その本の写真の中で私が特に気に入っている写真はPietersiteの写真です。その写真にはリアルな滝が写っています。そこには現実の滝があります。水が音をたてながら流れています。水石の世界にも滝石がありますが、それは見るこちら側のイマジネーションによってそれを滝に見立てているだけなのですが、その写真には写実的な現実の滝が写っているのです。驚異的な写真だと思います。
「石」も「WITHIN THE STONE」もしばらくお店に置いておきます。興味のある方はいつでも見れます。
今日のブログは写真の話題を写真無しで書きました。