いぬぶし秀一の激辛活動日誌

おかしな議員[わんちゃん]の激辛日誌です。日々感じたこと、活動報告、行政への提言など、本音で書き込む人気ブログです。

万歳の歴史的考察@国立公文書館

2012-04-02 | Weblog
 先月、大学院の修了祝賀会のしめの音頭で私が「万歳三唱」を行った。万歳を行う前に、私は必ず能書きを言うのだ。

明治天皇をお迎えして閲兵式の指揮官を執行した志野原中将は、天皇陛下に喜んでいただこうと「万歳三唱」を行った。その志野原中将のすばらしい指揮に、天皇陛下は「志野原に習え」と仰せになり、この地は以降、習志野と名付けられた。

そして、明治12年太政官布告により、万歳の実施要領が法定された。それによれば、1.右足を半歩前へ 2.両手を垂直にあげる。この際、手のひらを見せてはいけない。手のひらを見せるのは、ロ助(ロシアの蔑称)に降伏する場合だけだ。 3.あげた両手を五度外側に開く

これが、法律に基づいた正しい万歳である。と、やる。

 実際に、これは昭和47年、自衛隊生徒として採用されて以来、さまざまな場面で教えられた「能書き」であるし、確か「太政官布告の現物」と言われたものも見たことがある。(真贋は不明だが)

 ところが、ずいぶん前に日本経済新聞が「万歳三唱の太政官布告は偽物」とのコラムを書いたのだ。それでも、私は頑なに、上述した「能書き」を唱えてきた。

 が、さすがに学術の府、大学院の修了祝賀会である。参加者の先輩から「太政官布告」を調査せよ、との命が下ったのだ。さらには、親切な先輩がいて、ご一緒に国立公文書館に同行して下さるというのではないか。そこで、本日行ってきた。

 なかった…


 見つけたのは、「即位礼に稱ふる萬歳の稱へ方に就きて」(大正4年6月15日和田信二郎著)という書物だった。さらに、大正天皇ご即位の礼における式次第で「万歳」について記された政府公文書だ。

 和田氏の著書のなかに「帝国大学書記官清水彦五郎氏」のからのインタビュらしき文章が掲載されていた。それによると、我が国の万歳の歴史は以下のようなものだ。

「萬歳」は日本書紀にも載っており古く「支那(原文ママ)」から渡ってきた。読み方は「バンゼイ」又は「マンザイ」だった。

明治22年2月11日、大日本帝国憲法発布の日、天皇陛下におかれては観兵式ご行幸のため二重橋にお出ましになる。この国家的祝賀に際し、なにか陛下をお讃えする方法はないか、最敬礼では物足りない、と帝国大学(東大と思われる)で考えた。

諸外国では元首を讃える枕詞が定められていたが我が国にはなかった。文部省では当初「奉賀、奉賀、奉賀」と三回発声したらどうか、と打診してきたが、学生に練習させると「ホウガー、ホウガー、アホー」と、最後のほうが「アホー」と聞こえて調子が悪い。

「萬歳」ではどうか、と試してみた。古来の発音で「バンゼイ、バンゼイ」とやった。これもゼイという音が気になる。では「マンザイ」では。三河漫才と通じて不敬であろう。

そこで、外山文科大学長(たぶん文部大臣)の発案により「バンザイ」に決まった。ところが、天皇陛下がお出ましになる際は、普段は一同最敬礼をして、静寂のなか行列が通過するのが常だった。そこへ、突如若い帝国大学学生が「バンザイ!バンザイ!バンザイ!」とやったら、馬が驚いて大変だろう、と宮内省では馬を事前に訓練したそうだ。

そして、当日、当初は帝国大学渡辺総長が萬歳の音頭を執る予定だったが、総長が声が低いので、発案者である外山文科大学長が発声した。

同年、帝国大学秋期陸上大運動会において、皇太子殿下をお迎えした際にも萬歳三唱を実施した。爾来、帝国大学では「萬歳」は、天皇陛下、皇族以外には実施しないと決めた。

 他の資料を紐解くと、次のような事情も判明した。明治42年2月11日紀元節に登極令が発布された。これには、即位禮、大甞祭などの礼式について定めている。その「附式」には、萬歳の方法が以下のように書かれている。

内閣総理大臣、萬歳旗ノ前面に参進。萬歳ヲ稱フ三声、諸員之ニ和ス


 また、大正4年11月10日に行われた大正天皇陛下のご即位の礼の式次第を書いた公文書では「第六項 萬歳」とわざわざ項目を作って、その仕方を書いている。

内閣総理大臣「天皇陛下、萬歳」
諸員「萬歳」
内閣総理大臣「萬歳」
諸員「萬歳」
内閣総理大臣「萬歳」
諸員「萬歳」

 さて、以上のような経緯から、私が昭和47年から唱えていた「正しい萬歳」の歴史的裏付けが立証出来なかったのである。が、事情を説明した公文書館の優しい職員の方々が、うなだれている私を哀れに思ったのか「国立国会図書館で、法令全書をご覧になったらあるかもしれませんよ」と、慰めてくれた。

 よし!!!きっとあるぞ!正しい萬歳の仕方の「太政官布告」。いや、戦災で焼かれてしまったのか。ひょっとしたら、重大な「国家秘密」として敗戦時に、焼却処分になった可能性もあるだろう。