1716年、京都の青物問屋舛源に生まれ、23歳の時に4代目枡屋源左衛門となるも、家業を顧みることなく、趣味の絵に没頭し、40歳に家督を弟に譲り、隠居の身となり、晴れて絵画の人となった伊藤若冲。妻を娶らなかったとされていますが、小説の中では結婚もしていることで展開しています。
各章ごとに若冲の代表的な絵をモチーフに、「何のために描くのか」という絵師としての根本を問い続けていきます。
「絵師とは、人の心の影子。そして絵はこの憂き世に暮らす者を励まし、生の喜びを謳うもの。いわば人の世を照らす日月なんやで。」
「若冲はんの絵は、わしら生きている人の心と同じ(略)」
若冲は絵に生きる志を込めました。読者も問いかけられています。
『若冲』(澤田瞳子著、文春文庫、本体価格700円)