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これからやってくる素晴らしい世界の話

2021-07-19 16:24:57 | 

 書名の通り、これからやってくる時代に対する考え方や生き方は世界の先住民族、もしくは開国間もない国にあることがわかりました。久しぶりに目から鱗状態で読了しました。

 著者は、エクアドルの熱帯雨林のジャングルに暮らす先住民のアチュアル族から

 「あなたたちの文明は、『もっともっと』という考え方と、『足りない』という悪夢の中で暮らしている」

と言われ、「ジャングル、森はなんでも揃っている無料のスーパーマーケットだ」という彼らには所有の概念やお金の存在は無く、飢える心配もありません。人々は自然としっかりと繋がっています。

 夏の北極圏へ旅立ち、カナダのイヌイットはアザラシ猟で生計を立てていましたが、動物保護運動のために毛皮マーケットが縮小し、政府からの補助金で生活をしています。彼らは生きがいを失い、アルコールやドラックへ依存し、精神を病んでいます。その一方、デンマーク領のグリーンランドのイヌイットはゆりかごから墓場までの福祉支援と、職業も無料の資格講座で平等な職業選択が可能です。つまり、自らの思いで働き、生きがいを生み、苦しいときは保証が充実しています。この両者の差を知った著者は、「それぞれのアイデンティティーを育てられることが、よりよく生きるためには必要」と認識します。

 そして、国民総幸福量のブータン王国では、開国間もなくですが、国民の多くは農業に従事しており、飢えることがなく、チベット仏教の教えから、足るを知る考えや、死後四十九日後に何かに生まれ変わっている輪廻転生の考えからあらゆる命を大切にしています。

 翻って、これからの予想未来図では、現在でも様々な分野で使用されている特化型AIから、AI自らが過去のデータから知能を生み出す汎用型AIが誕生し、多くの仕事をAI搭載ロボットがこなすと、本当に創造的な仕事以外は人間には就職先がない、つまり無職になる可能性が生まれます。AIは自分で進化していくので、対価を求められず、AIはアチュアル族の森の存在になります。結局は同じ生き方になるのではないかという答えです。もちろん、飢える心配がないように、コロナ一律給付金のようなベイシックインカムが必要になりますが。

 第5章以降は、世界を回って知った幸せな生き方、社会について述べられていますが、先住民やブータン王国に学べということ。何も難しいことではないとわかりました。

『これからやってくる素晴らしい世界の話』(ヒロカズマ著、自由国民社、本体価格1,600円、税込価格1,760円)

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