趣味で落語をさせてもらって高座に上がり、皆様から笑いをいただいています!?私としては、落語家さんの生態を知りたい。上方には、二つ目、真ん打というしくみはありませんが、繫昌亭や喜楽館での寄席における落語家さんの出演順を顧みると、芸を磨いておられる姿はよくわかります。本書は立川談慶師匠の、たぶん実話に基づく小説なのだろうとお察しいたします。
二つ目の落語家、山水亭錦之助は様々な場面で落語を語りますが、落語の持つパワーの凄さを感じます。余命宣告をされているガン患者の前での生落語、不登校や生活態度の悪い中学生に対しての「文化講演会~落語から学べること」など、笑いの効用以上に、それを聴く人の生き方や過ごし方に影響を与えています。
「自分のいままでの経験を落語の真ん中に寄せてゆかなきゃズシンと来ない。(中略)上手くしゃべれたとしてもそれじゃ芯を打たないから、心も打たない。」
芸に人間味が滲みだして、初めて名演になるんでしょう。立川談志師匠の「落語とは人間の業の肯定である」という名言も、錦之助なりの解釈で、「人間はダメでもいいんだよ」というすべての生を受け入れる視点は、現代のSDGsに通じますね。
やっぱり、落語はおもしろい!
『花は咲けども 噺(はな)せども』(立川談慶著、PHP文芸文庫、本体価格780円、税込価格858円)