
著者の谷川さんは板宿に実家がある作家さん。本書の舞台はその実家が舞台。96歳のお父さんを看取る20日間の物語。各章の冒頭にお父さんのまだら模様の脳の記憶の1ページや過去の回想が綴られ、そのあとに実際の老衰への毎日が続いています。そして、その情景にマッチしたお父さんの好きな小林一茶の句が挿入され、あの小林一茶の晩年でさえ、我が姿と同じであるから一喜一憂する必要はないと教えられます。
檀家の勝福寺(須磨区大手町)さんや、通ってられた飛松中学校の百人一首大会のことなど超地元の光景がありありと描かれており、地元民としてはとても興味深い。また、自分の最期への道筋や家族による介護の模様、介護施設の様子など、小説を楽しみながら、現実への学びもあり、読んで損はありません。
『その朝は、あっさりと』(谷川直子著、朝日新聞出版、本体価格1,700円、税込価格1,870円)
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