去る4/17に有楽町に出たついでに三省堂で鈴木亘著の社会保障亡国論と言う本が目に付き購入して帰った。初めにのところで2014年4月から我が国の消費税率は5%から8%へと引き揚げられ2015年10月以後は8%から10%に引き揚げられますが、本当に社会保障の安定化や財政再建を果たすことが出来るでしょうか?残念ながら答えはNOです。と言うのを見て買ったのです。
その理由は、第1に、3&%の増収分が増えても、増税による景気腰折れを防ぐため「景気対策」と称して消費税率にして2%分を超える5.5兆円もの補正予算が組まれ、非効率な公共事業にバラまかれてしまいます。第2に、たとえ消費税引き上げによる増収分を社会保障費に全部使ったとしても、高齢化によって急増する社会保障費の財源を満たす事は出来ません。
特に私が興味を持ったのは第8章「貧困の罠」を防ぐ生活保護改革の章で、現在の生活保護制度は自立を難しくする「貧困の罠」を生み出す仕組みとなっているというところです。
そこには、現在の保護制度にはもともと稼働能力層はいないという前提に立った制度であるため、受給者の自立を促す仕組みが殆ど存在しない。という記述があり、-中略-稼働能力層に対する生活保護制度の最大の問題点は、働くとその分だけ生活保護費が減らされるという「働き損」の仕組みになっていることです。
-中略-現在月額15000円以上稼ぐ場合には稼いだ金額の実に9割が生活保護費削減として相殺され、手元に残る分は1割にすぎません。全国平均最低賃金(時給764円)で仕事をしている場合は、3日目からは時給が76円になってしまい、工事現場の、赤色燈振りや夜間のビルメンテナンス、ゴミの分別回収など、いわゆる3K6Kの職場が多く見られます。
-中略-それでも何とか働いて生活保護を抜け出した場合、生活保護でいるよりもむしろ生活水準がさがってしまう可能性が高いと言うことです。生活保護制度は、殆どの生活費や必要経費をほぼ過不足無く支給してくれます。家賃以外に敷金・礼金も支払ってくれますし、医療費や介護費用も無料です。更に認可保育園の保育料もNHKの受信料も無料です。しかし、生活保護からひとたび脱すると、これらの費用は全て自分で支払わなければなりません。それに加えて、今度は税金も支払うことになります。
-中略-せっかく自立した途端に、生活保護よりも悲惨なワーキングプワーになる位なら生活保護のままでよいと考えても何の不思議もありません。
貧困の罠を防ぐには「働き損」になる仕組みを改め、働いたらたとえ労働収入の半分でも自分のものになる制度に変える事が必要です。そして筆者の提唱するように福祉事務所の各自の口座に凍結貯金として独立するまで、積み立てる制度にすれば生活保護からの脱出がスムーズになります。
著者も改革委員の一人としていろいろな委員会で提案しても、各界を代表する委員達によってつぶされ現在に至り、この本に結晶したようです。
私見ですが何故こうした改革が実行されないのか不思議です。改革というとすぐ政府は有識者会議を作り各界の代表が参加して、ああでもない、こうでもないと議論百出して、最初から結論ありきの様な会合を重ね、元の鞘におさめるのが落ちだと言うことでは、会に参加した誰もが責任を取らない様な無難な方式では、税金の無駄使い以外の何物でもないとおもうのです。
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