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北大ボートblog

北大ボート部部員によるほぼ定期更新ブログ。

日本一を夢見て

2025-02-13 01:40:19 | 2024引退ブログ

井上晟佑です。

引退ブログです。引退してから想定以上に忙しかったため、季節外れのラストブログとなってしまいました。先日ようやく卒論が終わりブログを書いた次第です。久我さんラストブログを書いてほしいと言っていたのに遅くなってすみません...。

 

去年の付きフォアのクルーキャップを務めていたので、自分のボートへの考え方とか大事にしていたことを中心に書きます。

 ブログの構成としては前半にボートで大事にしていたこと、途中にcolumnを挟んだ後、後半にブログっぽいことを書きます。それではどうぞ。

 

 

〇狙いの決め方

練習してよく感じていたのが、乗艇シーズンにおける練習の進め方があまり確立していないため、練習の方針が迷子になること。クルーが全体的にこのままでいいのかなあという不安げな空気感になってしまうことです。北大はコーチが練習を仕切るわけではなく、基本的にクルーで練習方針やそれに沿った練習内容を決めるので、良くも悪くも自由度が高い体制になっています。そんな中で経験の浅いクルーや、ボートの知識のレベルが違う場合、自分が伝えたことと相手に伝わったこと、そしてクルーとして意識したいことなどに乖離が生じてしまいます。そのため、練習を進める上で最も大切にしていたことは、イメージの共有です。具体的には、今の動きがどうなっているか、それをどのように改善したいか、そのためにどのようなイメージを持つべきかを毎回の練習で共有することです。クルーで同じ意識を持つこと、そして知識のある人は経験のない人がイメージを持てるよう工夫することが大事です。

 先ほどクルー内でボートに対する知識に差があると意識の共有が難しいと書きました。この原因として、「狙いを決めるになぜその狙いにするのか」「その狙いの完成度を上げるにはどのような意識が必要か」「何が原因で違う動きになっているのか」を把握できていないことが挙げられます。特に「なぜその狙いにするのか」についての議論は浅くなりがちです。例えば、バランスが悪いからバランスを取るためにフォワードを狙おうとか、フィニッシュの力強さが足りないからフィニッシュをもっと押そう、のような大雑把な話し合いになってしまいます。そうではなく、まず原因を考えて(どこでバランスが崩れているか)、その根拠は何か(どのような揺れになることが多いか、動画を見てどうなっているか)、その根拠はある程度正しいと言えるのか(クルーの中でイメージのずれはないか)を十分に話し合って狙いを定めるべきです。

 

丁寧に振り返りできてていいね!

 

〇練習について

狙いを早く改善させられるほど、別の課題に動きに目を向けられるので、効率よく課題を改善させることが艇速に繋がります。ましてや練習期間が限られている北大ボート部なら尚更です。それでは実際の練習における狙い方について書きます。

最速で課題を克服する方法は次の二つです。

[1]試行回数を増やすこと

繰り返し同じ動きをすることで動きを体に定着させます。

[2]動きを簡単にすること

ドリルの動きを細かく分割したり、スローモーションにしたりすることで、ドリルの難易度を下げることができ、自分のレベルにあったドリルを行うことができます。

 

例えばフォワードのみでバランスを取ることを狙いとしたとき、[1]プレースメントドリル(抜き上げ、ハンズセットからエントリーまで)を何回も繰り返す、ということです。当たり前ですね。

[2]に関して説明すると、ドリルを行うとき、高度な(複雑な)ドリルになるほど意識することが増えて難しくなります。熟練度が低いクルーが最初から難しいことをすると何もできず何も得られず時間を無駄にしてしまうので、簡単なドリルから始め、そのドリルが出来たら少し難しいドリルにステップアップしていくことが基本です。ドリルの動きを簡単にする方法は基本的に、「動きを分割する」「動きをゆっくりにする」の二択です。例えば、プレースメントの動きを分割して、抜き上げ+ハンズセットだけでバランスを取ってみるとか、キャッチドリルのリズムをゆっくりにする、といった感じでしょうか。分割や動きのスピードを変えると実力に合わせたドリルをすることができ、短期間に意識を集中させることでよい感覚をつかむことができます。

 

〇練習メニューの具体例

以下に1スタンバイの練習スケジュールを示します。

 

インカレの付きフォア(UTの練習の日)

キャッチorフィニッシュドリル(どちらか大事な方)やルーティンとしているドリル15分 → 狙いのためのドリル10分~15分? → UT(8kmくらい?)

 → AT(1000×2や500×4など狙いや課題に応じて)

 

としており、狙いのためのドリルを10分から15分くらいとっていた気がします。先ほどご説明したようにこの時間でいかに試行回数を増やせるかを大事にしていました。

ちなみにステップアップする、ということを結構重要視していて、上に示した付きフォアの練習内容は、徐々に動きが複雑もしくはスピードが上がるため、難易度が上がるように設定しています。狙いがどの難易度のメニューまでできたのか、どこからできないのか、それはどうしてかについて深く議論することができるからです。

UTのメニューの日でもATをほぼ必ず入れていたのは、上の理由に加え、UTはなんとなく動きがあっているような感じがしても、基本的にATでは必ず言語化できるような明確な課題が見つかるからです。クルー内で問題意識を持ち続けるためにもATをしていました。

 

 毎日どれくらいの距離を漕いだかは正確に覚えていませんが、UTでめちゃめちゃ距離を稼いだというわけではないです。むしろ漕いだ距離は他のチームと比べて少ないほうなのかなと思います。あまり距離にこだわらなかった理由は、距離を稼ぐよりも漕いでいるときの感覚を重要視したかったから。また、そもそもクルーの体力値がある程度高いことも理由の一つです。ちなみにエルゴのクルー平均は6分45秒くらいといったところか。

UTはある程度の難易度で、試行回数を増やせること、有酸素能力を高められるという二つの観点で優れたトレーニング法です。しかし、有酸素能力を向上させることを目的として経験上1か月前くらいからUTをこなすのは個人的に好みじゃありません。理由としては1か月ごときで伸びた経験がないこと、そして感覚を比較的クルー内で共有しにくいことの2つです。そのため、クルーの完成度を劇的に向上させるためには、体力を向上させることを目的としてUTをするのではなく、一漕ぎ一漕ぎの試行回数を増やすドリルとして取り入れるほうが良いと思います。

自分の漕ぎに課題を見つけるたびにタンクローを使って練習していた。強くなるには孤独にならなければならない時がある。

 

〇インカレのコンディション調整

 大体の大会は普段と違う環境に身を置くことで、いろいろとストレスがかかるので、コンディション調整は特に気を付けるべきです。僕が実際気を付けていたのはメンタル面(緊張しすぎないこと)、手汗対策、暑さ対策です。順に説明していきます。

 一番大事なのはメンタル面で、緊張しすぎてしまうと普段以上のパフォーマンスはほぼ出せません。インカレで戸田に乗り込むと、大会の緊張や焦りに加えて、他のクルーが上手く見えて比較してしまうからメンタルの動きが如実に出るものです。プレッシャーがかかる場面で実力以上の能力を発揮できるかどうかは、レースに勝つことをプラスに捉えられるか、負けたらどうしようというマイナスに捉えてしまうか、という違いだと思います。僕は後者のタイプで、レースのたびにいろいろ考えすぎてしまう性格で、実際インカレ期間はあまり寝付けないほど緊張してしまっていました。主な原因は、他大学のクルーと自艇を比較してしまうことで緊張してしまうことだと感じていたので、戸田で練習していても他大の艇は観察しつつ、自分の艇とは比較しないようにしていました。確かに他大の情報は大事ですが、緊張するなら考えない方がいいと思います。

 

他に気を付けたことは、手汗対策と暑さ対策です。茨戸で練習しているときは手汗を気にしたことはありませんでしたが、戸田で練習していると僕の手汗か水質のせいか、かなりヌメヌメしてかなり感覚が違ったのでテーピングか、リストバンドを持っていくことをお勧めします。

暑さ対策に関しては、氷嚢を持っていき、レース直前まで手首や首回りを冷やしていました。アイススラリーと検索してもらえば出てきますが、長距離系のスポーツでは体温が上がりすぎてしまい、体力を消耗するため、暑い日はなるべく体温を下げておいた方が良いそうです。実際、個人的には夏より冬の方が圧倒的に調子が良かったので信憑性あり。

インカレにて下駄箱で異臭騒ぎが起こり、密かに消臭スプレーを吹きかける純大。靴のニオイの対策もしておいた方がいいかも。

 

〇強くなるための考え方

 僕の考えとしては、成長には2種類あって、[ⅰ]意識的な成長と[ⅱ]能力的な成長です。 [ⅰ] 意識的な成長

これは①自分足りない能力が何か、②どのように練習したら成長できるか、を把握できるようになることです。つまり、ボートの技術やトレーニング方法にとどまらず、上に述べたような自分の課題や改善点を理解できるようになること。

[ⅱ]能力的な成長

これはテクニックや体力など目に見えて成長するもののことです。

 

基本的に成長するときは[ⅰ]の後に [ⅱ]が起こると思います。自分の漕ぎの悪いところが認識できずに、それを直しようがないですから。[ⅱ]を重視しがちですが、[ⅰ]の方が大事で、これまで自分が感じなかった課題を見つけることが出来た時、「あれ、自分はこんなに下手だったっけ?」と思えた時、それは大きな進歩です。

[ⅰ]を起こすには自己分析を徹底的にやることが重要です。自分の漕ぎを動画で確認して、自分の漕ぎの課題や改善点を具体的に指摘できるかどうか確認してみてください。自分の漕ぎのどこが良くないのか、なぜタイムが伸びないのか、以下のように明確に説明できるようになりましょう。

  1. 自分の現状を把握する

・自分の課題は何か。なぜそれが課題だと感じるのか。その原因は何で、その課題を解決できたら自分の漕ぎがどう改善するか

 

  1. 解決策を考える

・課題を解決するにはどのような練習や意識が必要となるか

・複数ある課題の中で何を優先的に直すべきか

 

  1. 記録する

・他人が見てもわかるように記述してみてください。そうすると後から見直してもわかる上に、チーム内で意見交換できるようになります。

 

1や2が分からなければわからないと記述して知識のある人に聞いてください。何より自分で考えることが大事です。

 

以上のことに付随して、自分の課題を認識する手段は多く持っておいた方がいいです。エルゴだけでなく、ウエイト、バイク、そしてそれぞれの種目の中でもUT、AT、インターバル、筋肥大、MAX重量などの能力のうち自分が得意、苦手とする分野の分析をしてみてください。

それを日々続けて沢山トライアンドエラーを繰り返すとローイングが体系的に理解できるようになると思います。

 

以上でローイングの話終わりです。

どの話でも一貫していますが、一番重要なことは「強くなるために考え抜くこと」です。

過去一の自信作だったが、ウケがいまいちだったのでここで供養しておく。金谷は笑ってくれた。

 

column  夢の皿じゃん強者へ

個人的にボート部生活で熱を入れていた皿じゃんについて語ります。実は皿ジャンのブログ書こうかなと思っていたのですが、ブログのせいで皿じゃんの勝率が下がったらたまったもんじゃないと思い、書くことができませんでした。皿じゃん弱者の方々には申し訳ない。

 

ボート部ではエッセンを食べた後に自分の皿洗いをかけたじゃんけんバトル、通称皿じゃんが定期的に開催されます。もちろん負けた場合は相手の分の皿洗いを行わなければなりません。皿ジャンの参加人数が多ければ多いほど負ける確率は低くなるものの負けた場合の絶望は何物にも代えがたいものです。

先にお伝えしますが、皿じゃんとは確率ではなく勝負です。いかに自分の勝率を上げる戦略を確立できるかがカギになります。それでは、大人数でのじゃんけんの場合と、少人数、特に一対一の場合の順番にご説明します。

 

〇大人数の場合

大人数の場合は、少人数と比べて圧倒的に皿じゃんのプレッシャーが小さく、各々負けてもまだセーフみたいな雰囲気があります。しかしそこで気を抜かず、「まるでじゃんけんにやる気のなさそうな男」、略して「マジオ」を探しましょう。もしそのマジオが考えなしに出すタイプの人であれば、カモです。ほぼ何も考えていない人はグー、チョキ、パーを順番に出したり、パーを出すときは少し手を開いて準備したりする場合があるほか、パーを出すときは少し手を開き気味にしていたり、グーの時は強く握りこんでいたりします。よく観察して自分の出す手を熟考してください。

 

〇少人数の場合

先にお伝えしておきますが、この戦略は少人数であるほど効果的です。(私の個人的な統計データによる)皿ジャンの勝負はじゃんけんの前から始まっています。負けたら皿を洗わなくてはいけないという究極のプレッシャーの中で如何に相手にさらなるプレッシャーをかけて優位に勝負をかけられるかが最も大事です。プレッシャーをかけるためにも体は極限までデカくしておきましょう。ちなみに僕は皿ジャンのために5kg以上増量しました。

僕がどうしても勝ちたいときによく使う戦略が、「自分が出す手を宣言すること」です。そして実際に自分が出す手はその宣言した手に対して勝つ手をだします。例えば「グーを出す」と宣言したとすると、実際にはパーを出します。これはどういうことかというと、相手は、無意識のうちに宣言された手に対して負ける手を出さなくなるからです。グーを出すといわれたのにチョキを出したいか?ということですね。つまり、じゃんけん慣れしていない人はこの宣言であいこか負けしか可能性がないということです。

この戦略を使えば玉川には100%勝てます。

 

 

 

日本一を夢見て

 僕がボート部に入ったのは何でもいいから日本一になりたかったからです。あー、日本一になりたいと思いながら北大の受験帰りの新千歳空港で北大の部活を調べていると、YouTubeのボート部のPVに「君も日本一を目指さないか?」と書いてありました。やっぱ日本一っていいよなと思いつつ、ボートで日本一になることに思いを馳せながらボート部に少し憧れを持ったのが懐かしい。

 

 入部した理由が日本一になることだったから、1年生の時は自分の実力と目標との差に一番思い悩んだ時期でした。気胸や肩のけがで満足に練習できず、練習してもコロナで一回も大会に参加できず、俺は何のためにボートを漕いでいるんだ?と耽るようになりました。それに加えて、ボートが意外にも難しく、衝撃でした。驚くべきことに俺がスポーツをやるんだら日本一はいけるだろうと本気で思っていました。もちろんそんなわけ無く、シングルを初めて漕いだら難しすぎて絶望しました。そして大層な自信とは裏腹に入学した時は体重60kg程度で、ボート経験者のあべたいや純大との差が大きく、このままで日本一になれるのだろうか、このまま続けていても何も成し得ないのではないかと悩んでいました。

僕がヒョロガリだった一年生の時、伊藤さんに「俺はインカレで優勝する」と熱く語った時、鼻で笑うことなく真剣に向き合ってくれたのを覚えている。最高の新トレ。

 

冬練に入っても日本一になるにはどのように練習を工夫すればよいのか、どう時間を使うか、どれくらい練習したら日本一になれるか分からなかったため、日本一という目標が現実的でないと感じ、部から離れることにしました。(ちなみにこのブログのはじめに練習のやり方みたいなものを書いたのは僕がそれを知らなくて悩んでいたからです。)そもそも日本一になるという目的の下、ボートという手段を選んだのであって、日本一の希望が薄いのであれば手段を変えるのが妥当だと思ってしまいました。先輩にはすごく気にかけてもらっていたし、期待されていた分、多少申し訳なく感じていました。LINEでボート部をやめることをグループに伝えた次の日に同期の安永、千里、ジャガーと西井の四人で僕が勉強していた北図書館に押しかけてきて、一緒に漕ぎたい!!と思いを伝えられるかと思いきや「まさすけがやめると次の新人戦クルー組めんくなるから、戻ってきてくれへん?」と言われ、初めて同期がやばい奴だと感じました。もちろん辞めました。

 

ちなみにその後化石発掘サークルに入りました。化石発掘で日本一になろうと思いました。でもアンモナイトを見つけるのが難しすぎて諦めました。一応書きますが、北海道は日本有数の化石発掘地で、三笠や夕張の河原に行くとアンモナイトが転がってます。アンモナイトを初めて拾ったときは本当に感動しました。インカレ準優勝の次くらいに感動しました。もし興味のある人がいるならシュマの会で検索を。

 

復帰したきっかけは、部活を辞めてから半年後の東北戦でした。印象的だったのは「絶対勝ってくるよ」と言ってレースに臨んでいた向井さんの姿です。絶対に勝つと自分を鼓舞して勝負する、その姿に痺れました。日本一になりたいと本気で思っていたのに、勝負すらせず自分に限界を決めて諦める自分を恥ずかしく感じました。そしてボートそのものに魅かれたのもこの時で、レースをして感情を爆発させる姿に感動しました。「日本一になりたい」から「ボートで日本一になりたい」と思った出来事でした。

 

2年のインカレはスタッフとして帯同しましたが、そのときに見た最終日の決勝レースが印象的で、勝ったチームが雄叫びを上げて喜ぶ姿が輝かしく見えました。ここまで自分の魂をかけられるほどの努力をして勝って、チームで喜びたいとその時強く感じました。

野田さん   1,2年の時のコーチだった。僕に大きな影響を与えてくれた人の一人。

 

 そして2度目の冬練に突入するのですが、今思えば冬練が一番きつい冬練でした。暖房が利き過ぎの部屋でアイヌ語の授業を一年生と一緒に90分受けた後に体育館のギャラリーでやった1時間のエルゴUT。もう僕の頭はぶっ壊れそうでした。伊藤さんがエルゴを担いでいく姿に対して修行みたいと言っていたけど、まさにその通りだと思う。

 

 三年になって、やっとエルゴで7分を切り、東北戦のエイトに乗ることに。東北戦の練習は自分が日々成長していくことが実感でき、クルーで議論することが楽しく、充実した練習をしていたと思います。だからこそ負けたときはすごく悔しかった。来年は絶対にリベンジすることを誓いました。ゾロの「もう2度と負けねえから!!」みたいな感じです。

インカレの練習では僕が長い間怪我により練習を休んでしまい、クルーとなった4年目にかなり迷惑をかけてしまったと反省しています。今思えば4年目はずっと僕を気遣ってくれていて、多分僕をクルーキャップにしたのも、当時は建前で一番スカルうまいから、みたいな感じのことを言っていましたが、本当は4年目に遠慮せず自分の意見を言ってほしいと配慮してくれていたからだと思います。僕が休んでしまってかなりスタンバイが減っているのにうまくいかなくても僕にプレッシャーをかけることなく、クルーとしてどう成長すべきかに常に焦点を当てて議論してくれていました。いい先輩だったなあ。

クォドにて初めての沈。大熊さんがゲラゲラ笑って写真を撮っていた。あんなに楽しそうな大熊さんを初めて見た。

 

練習の取り組み方に疑問を持ったのもこの時で、練習の振り返りが十分に実のあるものになっていないのではないか?と感じていました。知識のある人とない人の間で情報共有がされなかったり、狙いを決めるときになぜそれが大事かについて深く議論できなかったりしていて、狙いの重要性を認識しないまま練習して、意識の統一ができていなかったと思います。

そこで、3年目の最後の冬練では意識的な成長に重点を置いた練習をしていました。常に自分よりエルゴが回る人と漕ぎを比較し、その違いを次の練習で実践して、また比較して..の繰り返しです。そうやって練習した結果、どこを変えたらどの動きが良くなって、そのあとどんな動きにつながるか、効率よく漕ぐにはどうしたらいいかをある程度把握することができるようになったと思います。

 

インカレが終わって自分の代になり、キックオフミーティングに向けて男子の目標を決めることになった時、目標をインカレ優勝にするか、メダル獲得にするかで同期間で揉めました。言わずもがな僕はインカレ優勝派で、インカレで優勝を目標にできなければボート部にいる意味はないと思っていました。一方同期にとっては、その年のインカレは対校がC決勝進出で、インカレ優勝チームなど雲の上の存在という認識だったようです。結局目標決めの折り合いがつかず、僕が折れてインカレメダルとなりました。正直インカレ優勝を目指していない人に無理に目標を変えさせても意味ないですから。きっと自分たちの可能性を信じきれないチームになってしまっていたのだと思います。それが悔しくて、キックオフミーティングで「僕は一人でもインカレ優勝を目指します」なんて言っていました。

それからの練習は、部内で競い合っているレベルでは話にならないと自分に言い聞かせて練習していました。だからチームで練習していても孤独感を感じていました。同期からも絡みづらいと感じられてしまっていたと耳にしています。

 

4年目の練習ではクルーキャップとしてクルーをまとめる機会が増え、まとめることにかなり苦戦しました。特に春合宿ではクルーの動きがバラバラで何から手を付けるべきか分からず、そのせいで練習しても上手くならないことにクルーの士気が下がってしまうことも多々ありました。結局東北戦まであまりクルーのまとめ方や練習方針の立て方が確立できなかったと感じています。

 インカレのクルーでは対校4+のクルーキャップになり、クルー作りについて深く考えるいい機会になったと思います。僕はクルー作りで一番大事なことは意識を統一することだと考えています。意識統一のため、クルー全員が狙いの重要性を認識すること、ローイングイメージをすり合わせることの2つを特に大切にしていました。

しかし茨戸の練習ではいろいろあり、正規クルーで練習できたのは1か月半のうち半分くらいでした。コックスがいない時は付きフォアの船でなしフォアで練習したり、漕手が欠けた時はペアに分解して一人黙々とエルゴを漕いだりして試行錯誤していました。クルーの課題が山積みでタイムも芳しくなかったことから、かなり焦っていた時期でした。戸田入りしてからも練習について思索を重ねました。残り数スタンバイの中で疲れを溜めずに完成度を高めるには何をすればよいか、レースが始まってからもレースプランメンバーで話し合い、A決勝前日まで突き詰めました。レースをするたびに成長することができたのはこのような背景からだと思います。

レース期間はプレッシャーと気持ちの昂ぶりから寝付けない日が続いたものの、周りから支えられたことがかなり精神的な支えになりました。スタッフはもちろん、チーム全員に一身に応援されて、存分に自分の漕ぎをすることができました。改めてありがとうございました。

蹴りだしてこんな大勢に応援されたらプレッシャーも吹っ飛んだ。

 

インカレで準優勝して、一番嬉しかったのは周りの人が泣くほど喜んでくれたこと。応援してくれた人が涙を流す姿を見たとき、ボートを漕いできて、そして日本一を目指して努力して良かったと心から思いました。僕は2年前に憧れたような、自分を信じぬいて漕ぎきる、そんなボート選手になれただろうか。

僕を応援してくれた沢山の人と涙を流して喜びを噛みしめることが出来た。

 

最後に

インカレで良い結果を出すことができたのは、先輩や後輩から受けた刺激が凄く大きかったと思います。OBの人たちがインカレで泣いて喜んでくれたのは、次の世代に勝ってほしいとそれだけ願っていたからからだろうし、僕も入部した時からそんな先輩たちの思いをひしひしと感じてきました。だから強くなれたし、ボートそのものが楽しいと思えました。思う存分に練習できる土日が僕の最大の楽しみでした。これまで関わってくれた全ての方へ感謝申し上げます。

僕にとってはボート部で過ごした全ての瞬間がかけがえのないものだった。そう思わせてくれる場所だった。

 

次の世代へ

日本一になったわけではないので、僕としては満足していません。日本一になることができなかったのは日本一になりたいという執念が足りなかったからです。僕の代は自分たちの可能性を信じ切ることができず、日本一を想像する事すらできませんでした。でも今は「超戦」という素晴らしいスローガンを掲げ、自分の可能性を広げられる最高のチームになっていると思います。

そして君たちは自分の夢見る世界に向かって努力し、困難に立ち向かう力があると感じています。夏に女子が練習時間前に集合して練習を始めていることに驚いたし、Slackを見ていても反省の言語化能力が大幅に上がってきていると思います。きっと君たちなら日本一を成し遂げてくれると信じています。

 

最後に、自分がどうなりたいかは自分が決めることです。それは日本一でも世界一でも何でも構いません。君たちはどんな姿に憧れ、どんな夢を見ますか?君たちが夢見る世界を、いつか僕にも見せてください。

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1 コメント

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Unknown (ソシエール石井)
2025-02-16 07:19:19
井上お疲れ
かなり珍しいボート部経験をしたね
一回退部してからの復帰は珍しい
アンモナイトの発掘はすごいな

そしてクォドで沈するのも相当珍しいぞ
クォドはかなり安定してるから沈する方が逆に難しい

そして井上はしっかりと練習メニューを考えて実行に移してたことがブログから伝わる

4年間お疲れ
井上の勇姿は後輩がちゃんと見てたよ

活躍おめでとう
そして引退お疲れ

この経験を活かして未来はトビウオへ
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