事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

わたし、怒ってます~中山発言

2008-09-29 | ニュース

Photo 教育費篇はこちら

「日本は随分内向きな単一民族といいますか」
「日教組の子供なんて成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低い」
「ごね得というか、戦後教育が悪かったと思う。自分さえよければ、という風潮の中で、なかなか空港拡張ができなかった」

……この中山前国土交通大臣の発言が、“失言”などではないことはみんな気づいている。失言というのは、認識が甘いか知識が足りないからうっかり口にするってことでしょう?鹿児島ラサール~東大法学部~大蔵省と、絵に描いたようなエリートコースを歩んだこの男に、アイヌや成田闘争の知識がなかったはずはないし、もし本当に認識が甘かったのだとすれば政治家として最初から失格なのである。

 要するに彼は言いたくて言いたくてたまらなかったのだ。自分の本音を。
 だって誰も聴いてくれなかったから

 大蔵省で同期だった奥さん(中山恭子)の言うことはいちいちマスコミがとりあげるのに、なんで俺の発言はみんな無視するんだ、と内心ムカムカきてもいたのだろう。だから閣僚になって“取捨選択されたメディア”である大新聞の記者たちとの懇談という、自分にとっては待ちに待った場で本音が炸裂したわけだ。

 ここまでなら、わたしもそんなに怒りはしなかった。ちっちぇー、とは思ったが。自民党の、特に国家主義者が多い町村派の人なんだからこりゃしょうがないとまで。

 問題はそのあとだ。エリートとしての彼が期待し、論議をまきおこしてくれるはずだった、彼と同じようにエリートである大新聞の記者たちは、計算違いにもその後「これはさすがにまずくね?」と談合し、紙面は中山批判一色となった。あわてふためいた彼は路線を転換する。日教組批判のオンパレードだ。つまり、プライドの高い彼は、失言によって地位を失ったのではなく、自らの信条に“殉じた”形にもっていくことにしたのだろう。迷惑なのは日教組の方。この、一種の抱きつき心中は、体のいいテロみたいなものである。極右テロ。冷静な判断力を失った中山は、まわりの迷惑もかえりみず、閣僚じゃなきゃ何言ってもいいんだろ、とばかりに辞任の翌朝(つまり今日)、みのもんたの番組で日教組批判をくりかえしたとか。まさか「自分さえよければ」なんて考えたわけじゃないですわね?

 とりあえず言っておこう。まもなく総選挙を迎えるこの時期に麻生が組閣したこのメンバーで、やるべきことは選挙だけなのだ。それなのにこんなザマ。いやしかし凄いな、この緊張感の無さは。

 よかったね中山さん。今じゃみんながあなたの発言に注目している。でも「学力テストは日教組と成績の相関について調査するためのもの」って学テの矮小化は文科省を激怒させたろうし(全国の教職員が怒りまくってるぜ)、なりふりかまわない姿勢は自民党内でのあなたの地位を思いきり下げたことだろう。もしも激励してくれるとしたらそれはネット右翼ぐらいのものだ。彼らには“都合”という概念がないしね。

 日教組の一員であるわたしは、迷惑ではあるけれど自公政権の崩壊への直接の引き金をわざわざひいてくれたことに、ちょっと感謝もしている。どうか、ご自愛を。この調子でぜひとも長生きしてください。わたしは、本気で願っている。

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「キングダム 見えざる敵」The Kingdom('07)

2008-09-29 | 洋画

The_kingdom 監督 : ピーター・バーグ  製作 : マイケル・マン
出演 : ジェイミー・フォックス  クリス・クーパー  ジェニファー・ガーナー

サウジアラビアの外国人居住区で自爆テロ事件が発生した。事件で同僚を失ったFBI捜査官のフルーリー(ジェイミー・フォックス)は現地での捜査を強く主張し、マスコミの手を借りてそれを実現した。メイズやサイクスら同僚と共にサウジへと渡るフルーリー。サウジ国家警察のアル・ガージー大佐に迎えられた彼らは空港から爆発現場へと直行し、そのすさまじい状況を見て愕然とする。そしてフルーリーたちは早速本格的な調査を開始しようとするのだが…。

結果的に傑作となってしまった作品、というか。基本的なストーリーはピンチに陥ったアメリカ人を騎兵隊が救いにくる、というお決まりの路線だけれど、テロに対して公平に対峙しようとする姿勢が意外な結実を生んだ。

この作品は、現在の世界の不安定さがサウジアラビアを抜きにしては考えられないことを再認識させてくれる。オサマ・ビン=ラディンはサウジアラビア人であり、9.11のテロを行った犯人の多くもサウジアラビア人である。それなのにアメリカは世界最大の産油国であるサウジアラビアを悪の枢軸にはカウントしていない。もちろんそれはアメリカが世界最大の石油消費国であることが影響しているわけで、この映画はその現実から目を背けていないのだ。

ピーター・バーグの演出はまことに快調。自爆テロ、とマスコミは軽く表現するが、画面で再現されるとその緊張感がひしひしと伝わってくる。手持ちカメラの映像が気持ち悪い?深作欣二の国の映画ファンはそんなことは気にしないのである。製作にマイケル・マンがかんでいるから戦闘シーンの迫力は“実戦”を感じさせるほどだし、ジェニファー・ガーナー(ベン・アフレックを立ち直らせた奥さんです)が運動神経のよさそうなところを見せてすばらしい。アラブ系の俳優たちを不気味なまでに愚直に描くことで、彼らもまた正義を希求しているのだということを痛切に訴えている。

見えざる敵”とは何かを観客に訴える力。FBIが他国でも展開できるという事実にもびっくり。必見!

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