事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ララピポ」 奥田英朗著 幻冬舎

2008-09-28 | 本と雑誌

Alotofpeople 奥田らしい“壊れた人たち”の物語。短篇の登場人物たちが少しずつ関係していって……。なにより題名がいい(後半でこのタイトルの意味が判明)。たくさんの人々が、それこそ様々な人々がいて、そしてそれぞれが連関して描かれる妙味。うまい作家、という形容が嫌みにならないぐらいの礼儀正しさ。中味はほとんどポルノだけどね。

このカバーデザインはしかし思い切ったなあ☆☆☆★★★

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「この人と結婚するかも」 中島たい子著 集英社

2008-09-28 | 本と雑誌

4087748731 男性と出会うたびに、ひょっとしてこの人と結婚するのかも、と構えてしまう私設美術館につとめる若き学芸員。冷静なようでいて、やはりどこか勘ちがいをしている。そんな彼女に転機が訪れるのは、結婚を意識することをやめた(と自分が勘ちがいをした)ときだった……

独身女性のディテールが渋い。妄想に走ってしまう主人公が、しかし期待しないように期待しないようにと悲観ばかりしているシチュエーションは、独身男女に共通する課題なのかも。併録されている勘ちがい男の暴走「ケイタリング・ドライブ」の妄想ぶりはなおその上を行ってて笑える。

 でも恋愛って勘ちがいと妄想と暴走の所産じゃないのか☆☆☆★★

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「硫黄島からの手紙」

2008-09-28 | 事務職員部報

Lettersfromiwojimapicture 「父親たちの星条旗」特集はこちら

監督クリント・イーストウッド 主演渡辺謙二宮和也

 前号の「父親たちの星条旗」と対をなす傑作。映画自体もすばらしいが、主役のモデルとなった栗林中将とはどんな人だったかをお知らせしたくて特集します。この人をとりあげた毎日新聞の00年8月9日付【余録】全文掲載。

「末娘のたか子さんは、当時10歳だった。別れの日は門の前で泣いた。お父さんの栗林忠道さんは『たこちゃん、元気ですか』という短い遺書を硫黄島から送った。『お父さんはお家に帰って、お母さんとたこちゃんを連れて町を歩いている夢などを時々見ますが、それはなかなか出来ない事です』

▼『たこちゃん、お父さんはたこちゃんが大きくなって、お母さんの力になれる人になることばかりを思っています。からだを丈夫にし、勉強もし、お母さんの言いつけをよく守り、お父さんを安心させるようにして下さい。戦地のお父さんより』

▼若いころ米国に留学して国力の差をよく知っていた栗林さんは、米国との戦争に勝ち目はないと主張した。そのため主戦派の軍上層部に嫌われ、絶対に生きて帰れない硫黄島守備隊の司令官を命じられたと言われている

▼着任した栗林さんは、まず島の住民を戦火に巻き込まないよう強制疎開させた。掘ればすぐ硫黄ガスの混じった蒸気がわき出る島にトンネルを掘り、要塞化した。そして、できる限り敵を食い止めるから、早く終戦交渉を始めるよう上申した

▼地下の洞窟に立てこもった硫黄島守備隊二万は、押し寄せる米軍上陸部隊六万、支援部隊二十二万を相手に歴史に残る激闘を演じて、全滅した。しかし東京のソファに座った戦争指導者たちは終戦の決断ができなかった。いたずらに時が流れ、沖縄、広島、長崎と、多くの国民の命が失われた

▼重い責任を負わされたらだれでも逃げたくなる。体が逃げなくても、心が逃げれば思考停止になる。だが栗林さんのように踏みとどまる人はいる。いっしょに散歩したたこちゃんの小さな手の感触が支えだったのだろうか。責任から逃れたくなったら、栗林さんの短い文章を思い出すといい。時を超えて励ましてくれる気がする。」

……この硫黄島からの手紙に、現代の日本からどんな返信ができるのか。わたしたちが突きつけられているのはその一点です。

06年12月14日付事務職員部報「改革派②」より。

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