事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「東京奇譚集」村上春樹著 新潮社刊

2008-09-03 | 事務職員部報

51fsexihvbl 作品のなかで実在の固有名詞を使用するかは微妙な問題だ。映画やテレビでは『この作品はフィクションであり、実在のものとは関係ありません』的なタイトルが出るのが常になっている(笑ったのはハリー・ポッターのエンドタイトル『この映画では一匹のドラゴンも虐待されていない』)。しかしなかには意図的に利用する人もいる。ミステリ作家の原尞などはその典型で「“毎朝新聞”だの“関東テレビ”だのという名を使うことは耐えられない」としている。

 村上春樹もこのあたりは絶妙で、この短編集のなかでもメリルリンチやスターバックスなどの実名がいい味を出している。使われた方もオトナだから怒ったりはしないのだろう。
所収の「品川猿」にはしかし唐突にこんなフレーズが。主人公の夫の実家が酒田という設定で……

彼女は名古屋の生まれ育ちなので、北国酒田の冬の寒さと風の強さにはいささか閉口させられたが、年に一度か二度短いあいだ訪れるのにはなかなか良いところだ。

……大きなお世話だっ!住んでいる身にもなってみろ(笑)。おっと、ここで怒ってはいけない。わたしも一応オトナの酒田市民なんだから。

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「蝉しぐれ」黒土三男脚本・監督 市川染五郎主演

2008-09-03 | 事務職員部報

Semisigure2  まことに端正につくられた良心的な作品であることを承知しながら、さすがに地元でも公開が終了したのでちょっと指摘。この映画、ひとつ計算違いをしているのだ。

 ストーリーはこんな感じ。かつて父親を死に追いやったサムライ社会の非道さとほぼ同じ構図に追いやられた主人公が、少年の頃に父親の事件のせいで別れなければならなかった女性、おふくを助けることで状況をひっくり返す……この因縁話を感動にもっていくためには、年齢を重ねた男女の「違う人生はなかったのか」という“悔恨”と“諦観”がうまく描かれなければならなかったはず。ところが、蝉しぐれ(人生の夏真っ盛りってことか)のなか、父の遺体を運ぶ少年と少女の方が印象深いのだ。

原因はいろいろと考えられる。「父を恥じてはならん」と遺言し、死に行く緒形拳と、豊かではないが幸福な武家の妻女を演じた原田美枝子がうますぎたとか、あるいは単にわたしが主演の木村佳乃が苦手だとか(笑)。しかし最大の理由はおふくの少女時代を演じた佐津川愛美が監督の意図を超えて素晴らしすぎたからかも。愛すべき映画だが、原作の藤沢周平の渋味にいまひとつ及ばなかったのはそのせいか。おしい。       

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「いっぽん!」佐藤タカヒロ著 秋田書店刊

2008-09-03 | 事務職員部報

25320868  少年チャンピオンを読んでいる部員なら、なぜ部報でこの作品をとりあげるかお気づきのはず。はっきり言ってこの柔道スポ根ヤンキー漫画は

・画はまだまだあらい。
・展開は「柔道部物語」(小林まこと)「スラムダンク」の亜流

……なのだけれど、なにしろ舞台が驚くべきことにわたしの地元酒田で、

・酒田高校VS黒羽高校

なんて試合が組まれているのでうれしい。お察しのように佐藤は酒田の出身。それどころか現在も酒田に住んで連載を続けているのだ(ウチの学校のご近所さんらしい)。登場人物のモデルもたーくさん存在する。これはぜひとも応援してやらなくては。がんばれ佐藤!大金持ちになってもっと住民税を払ってくれ(笑)。

05年12月1日付事務職員部報より。

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