彦根の歴史ブログ(『どんつき瓦版』記者ブログ)

2007年彦根城は築城400年祭を開催し無事に終了しました。
これを機に滋賀県や彦根市周辺を再発見します。

『剣と紅』

2013年04月14日 | 書籍紹介
小説『剣と紅』を読みました。

主人公は井伊次郎法師直虎です。
最近では女地頭として戦国史の中でも知られてくる存在になりましたが、われらが彦根市民としては、井伊直政の前の井伊家当主であり、直政を徳川家康に引き合わせるように演出した女性としても忘れてはならない存在です。


井伊直盛の娘として誕生し“香”という名を与えられたのですが、生まれた頃からただならぬ力を持ち、見えざるものが見えたためにと呼ばれて井伊谷の領民の信仰の対象にもなりつつあったのです。
そして従兄弟である亀乃丞(後の直親)を婿に迎えて井伊家の家督を継がせるように決まっていたのです。
しかし直盛の3代前直氏の時に家老として井伊谷に迎えた小野政直はこれをよしとせず、今川義元に訴えて、亀乃丞の父である直満とその弟直義が駿府に呼び出されて殺害されたのでした。
義元は亀乃丞殺害も命じ、香の機転で亀乃丞は井伊谷を脱出。そして政直嫡男政次が香を嫁にしようとするのを遮って出家してしまうのでした。
ここから井伊家の崩壊は始まり、直盛は桶狭間で討ち死に、その間に井伊谷に戻って元服し直親と名乗っていた亀乃丞も義元の息子氏真によって殺害されたのです。
跡継ぎが居なくなった井伊家は香の曽祖父直平(直平―直宗―直盛―香)が、預かり直親の嫡子が成長するまで見守ろうとするのだが、小野政次の策によって毒殺され、その後の井伊家を支えていた新野左馬助と中野直由も戦死してしまうのです。
そのような状況から、香は井伊家の当主の証である次郎を受け継ぎ、直虎という男性の名を使って、井伊次郎法師直虎として井伊家の名跡を継ぐのでした。



井伊家千年紀として調べた、直政以前の井伊家の姿が次郎法師を主人公にして描かれています。
「あぁ、この人調べたなぁ」とか井伊家の関係者として登場する、中野・新野・奥山・貫名などの姓を懐かしく見てしまいました。

直虎は、見えざるものが見えるのにその力が何にも役立てない苦悩する人物としても描かれています。滅びゆく井伊家とそれを何とかして守ろうとした人々、策を弄じて井伊家を乗っ取ろうとした小野親子など、彦根藩主井伊家の根柢の部分を読める小説でした。