われらが『Carmen』マエストロは顔に似合わぬ低音の持ち主。
ソリストさんがお休みのときは、高い音域のところだって
メロディーの途中で器用に1オクターブ上げ下げしながら
とても正しい発声で代わりに歌ってくれる。イケメン先生
がいつも、
「マエストロみたいな感じで!」
とお手本にさせるくらい、“歌えるマエストロ”だったりする。
オペラ歌手ぐらい歌えるマエストロってだけでもすごいんだとは思うけど、
でも、それ以上に感心するのは、さすがの聴力。
みんながざわざわしてるときでも、
少し離れてほかの誰かと話してることが、
ちゃんと耳に届いてて返事されたりすることはしばしば。
『Carmen』仲間によれば、「指揮者だからね。」
とご本人も自覚してるらしい。
あっち向いてほかの事やってるみたいなのに、
全然関係ないことが聞こえてて分かってて返事までできる、というのは
この職業の人たちには当たり前なんだろーか。
窓の外の動くものとか足元のアリンコとか眺めはじめたら最後、
目の前にいる人の話すらきいてないことがあるヒイラギには、
『Carmen』の稽古時間はオドロキの連続なのである。