マエストロの稽古を子守唄代わりに眠ってしまったおかげで、
目が覚めたときから頭の中では『MACBETH』が渦巻いて、
思ったよりも憶えてるなぁというこのときを逃してはなるまいと、
昨夜の楽譜を開いてみる。
ひととおりさらったところで、明日は日曜日だと思い出す。
三絃を始めたときに使っていた木の撥を押入れから探し出す。
メンテナンスのために鼈甲クンとはしばしのお別れ中。
持ち方からしてカンが狂いながら、明日のための付け焼刃。
ひと息ついたときには、とうにお昼を過ぎていて、
慌てて家を飛び出して、15分ほど電車に揺られる。
ぼぅっと揺られてるうち、近づいてくる足音みたいに頭の奥で鳴るメロディー。
秋本先生に習った『AIDA』の凱旋シーンが不死鳥のごとく蘇える。
今月の初日を迎えた歌舞伎座で観劇。
この時間の最初の演目は「真景累ヶ淵 豊志賀の死」
怪談噺のハズなんだけど、福助さんの演技力に思わず笑う。
勘三郎・勘太郎父子の所作のおかしみにまた笑う。
結構笑って、でも終わってみるとちゃんと怪談だった。
あー面白かった、と思ったら、なんか頭のなかがすごくスッキリしていた。
さ、こういう気分のときこそ、論文直しのつづきだ。
二演目はドタキャンして、まっしぐらに家に帰る。
データ分析をやり直して、原書に貼った大量の付箋をチェックして。
1時間ほど、われながら尋常じゃなく集中。
お腹が空いて、夕飯つくりながら、三つの音楽を思い出してみる。
朝よりも、ずいぶん落ち着いてきてる感じ。
実感。
笑うと、記憶がきれいに定着するらしい。
研究室に独りきりの日は、BGMを流して仕事していたりする。
昨日は一日中『AIDA』を聴くともなしに聴いていた。
で、なんかふっと思った。
このお話、どうして主役はアイーダだったんだろ。
アムネリスじゃなくて。
なんとなく『CARMEN』と重なって、
キャラ的にアムネリスが主人公に思えてしまう。
勝手なイメージだけど。
アムネリス≒カルメン
アイーダ≒ミカエラ
ラダメス≒ホセ が最後に選んだほうが主役なのかな。
アムネリスだって、アイーダ以上になんの他意もなく、
ただものすごくラダメスを好きだったんじゃないかって気がする。
勝手なイメージだけど。
ラダメスと一緒に死ねるアイーダの喜びの愛よりも、
ラダメスの命を救えなかったアムネリスの、
やるせない哀しみの愛の深さのほうが計り知れない気がする。
勝手なイメージだけど。
そんなこと思いながら夜は『MACBETH』の稽古。
完全に「Gloria」な感じになっちゃってる頭で、
お鍋にヒキガエルやらトリカブトやら入れてかきまぜたりして。
あぁ、混乱。