自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ツクバネの種蒔き

2017-02-19 | 植物

ツクバネはおもしろい生態の持ち主です。花・実の付き方,実の姿が独特で,それだけでも目を引き付けます。

もう一つ。ふつうの木本植物は自立して生きていきます。自立とは妙な表現なのですが,生長に必要な栄養分は自分で地中から吸い上げ,葉で光合成をしてまかないます。これとちがって,ツクバネは他の植物に頼らなくては生きていけないのです。自分でも栄養分をまかなうものの,全体からみればじゅうぶんではありません。不足分をまかなうのに,他の木に寄生してそこから栄養分を得ているのです。それで,半寄生植物と呼ばれています。

我が家の庭のツクバネはモミジの根元に植えているので,モミジに寄生していることになります。

そういう生態だと合点して種を蒔きました。つまり,木の根元に蒔く,または発芽してから根元に移植する,このいずれかです。今回わたしは両方でやってみることに。

まず一つ目の方法。宿主をモミジ・スギにしました。あちこち5カ所に蒔きました。モミジは,雄株が育っている宿主とは別の若木にも。根元の土を入れ替え,腐葉土混じりの良質のものにしました。


二つ目の方法はポット蒔きです。ポット一つに3,4粒ずつ蒔きました。これだと能率的です。管理もしやすく,移植も手間どりません。

前例では春に発芽したので,これも同じ時期に芽生えることでしょう。ほしいのは雌株です。何本かは発芽するでしょう。そのなかに雌株はあるはず。それがわかるまでに数年要します。息の長い話です。蒔き終わって,「春よ来い。早く来い」の気持ちになっています。 

 


ロウバイ,花と昆虫(9)

2017-02-18 | ロウバイ

寒い寒い,ほんとうに寒い日でした。ロウバイの花を見て行くうちに目に入ったのがツマグロキンバエ でした。それが花弁の間で,寒さを避けて避難しているようでした。じっとして微動だにしません。

 
近寄って写しました。ふつうなら外の気配が感じられて反応しそうなところなのに,動きません。からだの機能が完全に停止しているようです。

 
もっと近寄って撮影しました。それでも一向に動こうとはしません。からだにはロウバイの花粉らしきものがかなり付いていました。


冬を生き,寒さを乗り切ろうとするいのちは自然に逆らうわけにはいきません。環境にどう適応して行き抜くか,一刻一刻試されているとさえいえます。

 


地域ミュージアムで考える(49)

2017-02-17 | 随想

ミュージアムの水槽で育っている魚にカワムツがいます。これはわたしが数年前にまだ小さなサイズだったものを入れ,年が経って大きく成長したものでう。それだけに愛着を感じて見守っています。

そのうちの一匹が口をぱっくり開けて,どうやら貝の殻らしいものを入れているのを来館者が目撃。それを聞いて様子を確認すると,どうやらカワニナの殻が入ってどうしようもない状態であることがわかりました。途方に暮れているはず。 


こちら側を向いたときに撮ったのが下写真です。これでは殻を吐き出すわけにもいかないでしょう。それにしてもこの魚が貝を食べるとはなあ,と驚きました。確かにカワニナの殻は底にいくつかは散らばっているのですが,すべて死骸です。食べたのは殻なのです。餌を与えているのにいったいなぜ? 

 
スタッフと,そんな話をしていて目に留まったのが先日入れたシジミ。その一つが殻を開いて,中に貝柱が見えていました。中身がなくなっているではありませんか。ひょっとするとカワムツがそれを食べたのかもです。足が出ているときに襲ったのではないでしょうか。

 
そうすると,貝を食べられると判断して,口に入る大きさのカワニナを口にしたと推論できそうです。

 
この出来事をとおして,カワムツと貝との関係に意外な側面があることが見えました。じつにおもしろい事実です。それを来館者がまず目撃したという話は値打ちがあります。

口に入った貝殻については,スタッフが取り出しました。口の大きさとちょうど同じ大きさだったので,そのままでは取り出せず砕いたそうです。もちろん,このカワムツは今元気にしています。

 


竹紙づくり(5)

2017-02-16 | 野草紙

漉いてから5日目です。紙が乾き,やっとステンレス網から紙をはがせる段階になりました。実際の作業は,後日仕事が休みの日に行いました。作業は慎重に慎重に。


こうして見本紙ができました。

 


できたものの,まだ繊維間に隙間があって緻密さに欠けるので,プレスして繊維密度を高めます。使う道具はガラス瓶。それをローラー代わりにして,硬い板の上においた紙を圧縮していきます。何度も何度も瓶を回転させて,できるだけ紙の厚みを薄くするのです。

 


こんなふうに手作業を繰り返して出来上がったのが下写真の紙です。

 


この見本紙と,これまでに漉いてストックしていた竹紙を数枚合わせてMさんに手渡すことにしています。 お気に召していただけるか,ちょっと心配しているのですが……。

 


ロウバイ,花と昆虫(8)

2017-02-15 | ロウバイ

2月10日(金)。寒い寒い夕方。気温3.0℃。まさか昆虫はいないだろうと思ったのですが,いました。例のユスリカのなかまが蕊の上に乗っかかる格好でじっとしていたのです。この虫にとって,寒さ除けに好都合であるばかりか,いい匂いに包まれていうことなしってことでしょうか。 


餌を食べているふうでなく,そこでじっとしている感じでした。 


2月12日(日)。朝は雪。昼過ぎもときどき雪模様。寒い寒い一日でした。上写真とは別種のユスリカでしょう,寒さ避けにここに来たようです。


どちらも体長5mm程度なので,ふつうだと目に入らない大きさです。黒っぽいので,それがわずかに目印になったのでした。花が咲いていれば,とことん探すのが冬の昆虫探しのコツです。 

 


今冬のマンサクと昆虫(8)

2017-02-14 | マンサク

2月10日(金)。雪の朝を迎えました。マンサクの花にも雪が被さって,さすがにこの花だって震えているような。枯れ葉の下側にいるクモがじっと寒さに耐えているような。 

 
昆虫はいないかなあと思って,すこし探してみると,例のユスリカのなかまがいました。低温にかなり強そうに見えます。

 
もっと探してみると,いました,いました。異なる種類のユスリカです。中には,クモに捕まって死に絶えたと思われる個体もありました。

 
雪解けが始まってから改めて確かめると,やはりクモに捕まった証拠が残っていました。小さないのちは,小さないのちに狙われるのです。

 
ユスリカのなかまはさすがに強そう。よくよく見てくと,あっちにも,こっちにもいそうです。

 
そっちにも。

 
水玉が風景を取り込んで膨らんでいました。


夕方見ると,頭に花粉が付いたユスリカが花にいました。それが歩いて枝に移動したところを撮ったのが下写真です。送粉の手助けをしていることが窺えます。

 
寒くて,冷たい思いをしながらもいのちの観察ができました。これが昆虫の生態です。 

 


今冬のマンサクと昆虫(7)

2017-02-13 | マンサク

クロヒラタアブがどんなふうに行動するのかなと思いつつ,引き続き観察を続けました。

この日,仕事から帰って夜見ると,同じ葉にいました。ただ,姿勢は変わっていました。暗くもあり,寒くもありで,このまま朝を迎えると思われました。写真はずいぶんピンボケしています。


そのとおり翌朝見ると,前夜の格好のままでした。


虫の目写真に収めました。


寒いので,じっとしたまま。からだが動かないので,どうしようもないという感じです。

また夜を迎えて見に行きました。そこにはヒラタアブの姿はありませんでした。最高温度は7.6℃。この気温でも活動したのです。結局,2日以上同じ葉にとどまっていたことになります。

 


今冬のマンサクと昆虫(6)

2017-02-12 | マンサク

2月6日(月)。晴れのち小雨。昼間は気温が7,8℃。冷たい風が吹いて寒さが身に沁みました。この日,思いがけないタイミングでクロヒラタアブに出合うことに。

マンサクを観察中,枯れ葉にとまってじっとしているクロヒラタアブが目に入りました。寒さのせいで,そのときはまったく動きませんでした。


マンサクの花をめがけて訪れたにちがいありません。写真に収めているうちに,歩いて花の方に移動しました。


口吻を出しましたが,そこでエネルギー源を補給する様子でもありませんでした。本来なら花の中をペタペタと舐めたいところでしょう。動きは緩慢そのもの。


やがてもとの葉に戻って,また静止しました。風が葉をしきりに揺らすのに,微動だにしないといった感じです。低温が動きを抑えているとしかいいようがありません。


再び花に移動。今度は口吻が伸びたところを画像に記録できました。明らかに餌を口にしようとする意志の表れです。


そのとおり,ほんのちょっとだけ花の中に頭を突っ込みました。


それもほんとうに瞬間的な動作でした。花の上に上がって静止。


また葉に戻って来ました。ありがたいことに,ちょうど前方から写せる位置でとまりました。しめしめと思いつつ撮ったのが下写真です。


10℃に満たない気温ではさすがに行動がしにくいと見えます。ただ,観察者にとっては寒さに耐える必要があるとはいえ,なかなかすてきな被写体です。

夕方見ると,近くの葉に移ってじっとしていました。たぶんこのまま一夜を過ごすのだろうと思い,気になって深夜見に行くと,やっぱりそこに。夕方降った雨で葉は濡れていました。複眼もすこし。気温2.3℃。


さらに翌朝撮ったのが下写真です。小雪が舞う朝でした。一晩をここで明かしたことがわかります。

 

 


今冬のマンサクと昆虫(5)

2017-02-11 | マンサク

雨が上がったひととき。しずくが花弁から垂れ下がっていました。見ると,景色がぎゅっと詰め込まれていました。


内部が水滴で覆われた花もありました。 さすがに寒さに強い花にとっても災難でしょう。

 
そのうちに見かけたのが,懐かしいあのキタオオブユ。花の間をゆっくり歩いていました。


ゆっくり,ゆっくりだったので,ゆっくり撮影できました。 

 
小さなからだ。意外にもカラフルな色彩。ふしぎなからだつきをしています。

 
観察している間,花の中に入ることはありませんでした。再び出合えるかどうかわかりませんが,もし出合えたら花に頭を突っ込んでいる姿を見たいものです。 

 


今冬のマンサクと昆虫(4)

2017-02-10 | マンサク

晴れた日のこと。もう来ているのではないかと期待しながら,虫を探しました。しばらくして,目にとまったのが下写真の虫。「おっ,キタオオブユかな。タネバエかな」。 そう思ったのですが,きちんと確認できずに終わりました。枝が高かったので,できなかったのです。惜しい!

 
もっと探してみました。今度目に入ったのはハナバエのなかま。周りの花はまだ開花前のものばかりです。これでは,期待したとおりに餌を口にできるわけがありません。それ程まだ寒いってことです。

このハナバエ,動きは鈍くってじつにゆっくりしていました。

 


冬に咲く花も当然のことながら,受粉したくって虫の仲立ちを期待しています。たくさん咲くのは,「大多数は無駄花になっても,そのうちのほんのいくつかは確実受粉させたい!」と強く願っているからでしょう。つまり,季節に関係なく昆虫と花との間には,「開花していれば,必ず虫は見つかる!」という<きまり>が成り立っているのです。

自然はほんとうにありのままです。素直に向き合っていけば,シンプルな結論が得られます。マンサクに感謝。これからがますますたのしみです。