虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

世界ノンフィクション全集の紹介 27巻 ロシアの夜

2009-12-16 | 読書
今回は27巻。

「ロシアの夜」「友人への手紙」「私の半生涯」

ロシアのヴェーラ・フィグネル、ドイツのローザ・ルクセンブルク、日本の福田英子。3人とも同時代に生きたといえるが、歳の順からいえば、ヴェーラ、福田英子、ローザになる。3人の女革命家ということだけど、革命家と言うより、社会をよくしようと理想に燃えた女性たちだ。

なんといっても、「ロシアの夜」のヴェーラの回想記が貴重。実際は大部の著作で、ここには原作の5分の1しか訳されていないけど、それでもこの巻の半分、
200ページを費やしている。

ヴェーラは裕福な貴族の娘として静かな森の中で恵まれた生活をしていたが、社会の矛盾に気づき、ナロードニキ運動に入り、その指導者になり、革命のシンボルだったが、ついに逮捕。(ヴェーラが逮捕されたことを聞き、絶望して自殺した青年もいたらしい)。
死刑の判決が出たが、無期懲役に減刑。しかし、減刑されたといっても、政治犯を収容する要塞監獄の独房に閉じ込まれる。ここに入ったものは数年で発狂するか自殺するかといわれる死の牢獄だ。

ヴェーラはこの独房で20年間を過ごす。この本は、ヴェーラが獄を出るまでの回想、自伝の記録。なお、ヴェーラは1904年に出獄後、流刑地に流され、のち、革命後のロシアに帰り、第二次世界大戦中に90歳で亡くなったそうだ。
革命後のロシアをどう思っただろうか、興味があるところだが、それについての記述はない。

全訳したものは「遙かなる革命」という題で出ているが、そこには自分の幼年時代や革命家とのさまざまな交流など詳しく書かれている。このノンフィクション全集を読んで、ヴェーラに興味を持った方は「遙かなる革命」を読むと思う。

出獄前のヴェーラはチェーホフを読んでいたらしい。でも、「もういい、読めない」と言うようになる。

「ここに(チェーホフ)見られたのは、よりよい生活のために、実際的な仕事をするのではなく、そのために闘うのではなく、長椅子にすわって、「200年後にはどうなるかお話しましょう」と言っている人々であった。現在の世代はほんとうにこんなものなのであろうか?ほんとうに生活はそのように生気なく、動きがなく、死んだようなものなのか?そうだとしたら、自由の身になっても、何になるのだ?要塞の壁から出ても、小さな監獄の代わりに、大きな監獄にはいるようなものだ。それでは出ても何になるのだろう?」(ロシアの夜)

明治時代のロシアには、ヴェーラのような青年婦人たちが無数にいた。だからこそ、トルストイもドストエフスキーもあのような作品を書かなければならなかったのだと思う。

画像はヴェーラが30歳ころ、逮捕された時の写真(かな?)。



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