虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

神の微笑

2009-07-16 | 読書
図書館で芹沢光治良の「神の微笑」を借りてきた。
この「神の微笑」は芹沢の晩年の神の書シリーズの第一作だ。
自分の過去のこと、少年時代のことや留学時代のことなども書かれていて、興味深い(ロマン・ロラン記念館のロマン・ロラン未亡人に会ったことも書いてある)。

奥付けを見ると、昭和61年7月20日発行とあり、昭和61年9月25日4刷となっている。2ヶ月で、4刷とはかなり売れたのだろう。話題になったのだろうか。当時の私は、こんな本が出ていることなんてまったく知らなかった。

はじめ、木々が話しかける場面がある。わからないでもない。荘子もこれぐらいのことは言ってもおかしくないし、木々の声に耳を傾けるという態度はちょっといい。

芹沢はこの本を書くのに躊躇したのだろう。はじめの章でこう書いている。
「神について書いたら、それこそ老いぼれたかと、読者に蔑まされるかもしれない。しかし、それでも、書くことにした」と。

このシリーズの本の巻末にある出版社の広告に、この本について、「書き下ろし長編小説」と書いてある。しかし、内容は、小説というより、著者の回想記であり、体験記のようなスタイルだ。事実をそのまま書いているように見える。内容が内容だけにあえて「長編小説」ということにしたのだろうか。

芹沢光治良の家は大きな網元で裕福な暮らしをしていたそうだが、父親が天理教の信仰のために全財産を神に捧げ、貧しい布教師として故郷も光治良も捨て、光治良は祖父のもとで貧しい暮らしをすることになったそうだ。

その芹沢に、晩年、突然、天理教の中山ミキが姿を現す。まったく、ミステリアスではないか。

芹沢の前には、中山ミキだけでなく、釈迦、イエス・キリストも現れる。老子や荘子も出してほしかった(笑)。

芹沢光治良をちょっと読んでみようと思っている。