虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

「銃口」から雑感

2009-07-03 | 読書
三浦綾子の「銃口」を読んだ。

主人公はすばらしい担任教師の影響で、自分も小学校教師になった青年。舞台は旭川。時代は戦前から戦争をはさんで戦後まで。

主人公は、綴り方教育連盟の集会に署名した、というだけの理由で独房にいれられてしまい、また、恋人との念願の結婚式直前に軍に召集され満州へいくというちょっと暗く悲惨なストーリーなのだが、一気に読める。読みやすいのだ。次はどうなるのだろう、という展開はさすが読者のために本を書く三浦綾子だからなのだろうか(といっても、三浦綾子は、この本と「母」しか読んでいないけど)。

軍隊では善良な上官や主人公を助けてくれる同僚にめぐりあったり、恋人とも最後には結婚でき、教職にも復帰できるなど、文学にうるさい人からは都合よすぎないか?といわれるかもしれないが、読者はやっぱりハッピーエンドがほしいのだ。

主人公は、クリスチャンでも反権力の思想をもった人でもなく、平凡で、ただ真面目でよい教師になろうとした青年だ。この平凡だが真面目な青年を通して当時の、自由な思想が許されなかった時代を描く。三浦綾子は小林多喜二の「母」を書きあげてから、改めてこの時代を書きあげたのかもしれない。

北海道の「綴り方教育連盟事件」というのは知らなかった。教師が子供たちに作文を通して生活を見つめさせる、そんな指導が当局には不穏な、反権力の思想とみなされた。もう、なんにでもいちゃもんをつけて、自由な思想を許さない、自由の思想の芽をつむ時代だったのだろう。(だまって100マス計算だけしていれば指弾されることはない?)

警察が主人公の本箱を調べて、人に借りて置いていただけの本をも問題にする場面がある。本箱点検。こういうことは当時、実際、あったのだろうと思う。小さなささいなことにも目を光らせる。

しかし、これは昔のことだろうか。わたしの本箱には一揆の本がたくさんあるし、また、ブログでも一揆や新聞の悪口を書いたりすることもよくあるが、いつ、なんどき、時代は豹変し、あのブログにこんな文を書いていた、非国民と糾弾してくるかもわからない(笑)。ブログが普及したけど、公安にとっては思想調査は今はすごくやりやすくなったかもわからない。ブログをチェックする係はきっとあるにちがいない。いや、係がなくても、ご注進する人々はいるだろう。

東京都では、卒業式のときに教師が起立するか、歌を歌うか、その口元、口の開け方にまで委員会の職員が監視するほどになっているのだから、この「銃口」は昔話ではない。

さて、わたしの家に戦前の特高のような人がきて、「君は不穏な本ばかり集めている。赤化思想にかぶれている」などとといわれたらどうしようか。

大丈夫だと思う。おもちゃの日本刀は持っているし、髭も板についてきて右翼浪人の雰囲気がでてきたし、「拙者は右翼の大元祖、尊王攘夷の清河八郎を敬愛するもの。貴殿は清河八郎の虎尾の会をご存じかな。そもそも帝さまは・・・」と草莽の国学を語り、やおら刀をひきつけてみせる(笑)。


Amazonマーケット

2009-07-03 | 日記
図書館で「Amazonマーケットプレス徹底活用」(横手久光、森英信 ソフトバンク刊)という本を借りてきた。
これは「ネットの古本屋の作り方」という題にしたほうがいいくらいで、副業としてのネットショップの古本屋作りのノウハウを書いている。これによると、Amazonのショップを利用したほうがよい、と書いてある。

わたしは、amazonはほとんど利用していなかった。あの「登録」がむづかしくて(かんたんなはずなのに)、登録してもパスワードがまちがえています、とか出て、めんどうだった。古本はもっぱら「日本の古本屋」ネットを利用していた。

しかし、読むと、なるほど、自分の店のHPで本を売るだけでなく、アマゾンとかヤフオクも利用するのは必要かもしれない、と思った。

インターネットが普及してネットショップが大流行だけど、中でも古本屋ネットが一番多いのかもしれない。この本は、2005年の出版。それから5年、この本を見てネットショップを始めた人もたくさんいるにちがいない。いったい、今、ネットショップは何万店くらいあるのだろう。何百万だろうか。

ブックオフにいっても、いちいち携帯で何かを調べている若い人を見る。あれは携帯のネットで相場を調べて買うのだそうだ(高い相場の本を安く仕入れて、ネットで売る)。本の値打ちくらいは自分で判断しろ、といいたいけど(笑)。

だれもが、みんなが、古本ネットをしている時代。あとからのこのこ出ていっても大丈夫やろか?と思わないでもない。