虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

五四運動

2007-12-05 | 読書
丸山松幸「五四運動ー中国革命の黎明」(紀伊国屋書店)を読んだ。
著者が35歳のときに書き上げた作品で、行間に若い情熱があふれ、一気に読めた。おもしろい。

五四運動は、中国革命を五四運動以前と五四運動後に分けられるほどの画期的な民衆運動だった。五四運動前は、革命は一部の志士、政客、秘密結社たちが主だったが、これ以後、学生、労働者、農民、中国民衆の課題になったといわれる。中国共産党も、このあとに生まれる。

あの中江丑吉が放蕩無頼の生活から足を洗い、学問の研鑽にとりくんだのも五四運動からだった。中江丑吉は、学生たちから売国奴とののしられ、焼き討ちになった高官の家に突入し、高官を救い出す(縁の深い人物だったので)。生涯にたった1度の決死の行動だった。

辛亥革命がなったあと、すぐに権力欲しかない袁世凱が権力をにぎり、かつての革命党も豹変し、中国の人々にとっては、暗黒の世だったようだ。辛亥革命が成功すると、かつての革命派も、草莽の決起を弾圧し、利権を守る側についたのも、ちょっと明治政権に似ている。中国にも赤報隊のような悲劇はあったのだ。

袁世凱が皇帝になるために、有識者の審議会、やらせの陳情団、やらせのデモ、やらせのタウンミーチングみたいなことをして、ニセの民意をつくりあげるところなど、昔のこととは思えない。

民意を無視しして、ニセの民意をテレビや新聞、学識経験者たちがつくりあげているのは、今日でも同じ。今日も暗黒の世というべきかもしれない。五四運動は、その暗黒の世をふきはらう運動だった。

もちろん、五四運動の直接のきっかけは、日本だけど。

丸山松幸、その後、どんなものを書いているか調べると、「中国近現代史」、「原典近代中国思想史」のあとは、史記、とか十八誌略、易経、中国の名句、だとか古典に変わっている。

この本が出版されたのは学生運動が盛んだった1969年。もう今ははやらないと思ったのだろうか、あるいは、こんな政治的な運動や事件を書くのはこりごりしたのだろうか・・・・。五四運動は、古い中国文化、古典などに鉄槌をくだす運動でもあったそうなのだが。