らんかみち

童話から老話まで

悲しいかな、ボラが美味しかったのです

2011年06月09日 | 酒、食
「子どもを産んだけど、今が旬だよ」と、おばちゃんたちが鰯釣りに興じる季節となりました。去年はぼくも釣ってオイルサーディンにしたけど、食ってる尻から尿酸値が急上昇するのが分かるほど、鰯って危険な魚です。
 なので本日は餌も付けずに釣り糸を垂れ、サビキに寄ってきたハギを引っかけてやろうとしたら、ボラを引っかけてしまいました。釣り糸が切れそうになりながら上げてみたら40cmほどあるじゃないですか。

 天然の鯛が当たり前に釣れる当地ですからボラはだれも喜びませんが、真冬の寒ボラはなかなかの美味。しかし梅雨ボラってのは聞いたことがない。つまり不味いのだろうと思いながら母に作ってもらったら、臭みもなくバカにしたもんじゃなかったです。

 ずいぶん昔、とある田舎町の居酒屋で飲んでいたときのこと、「この辺の旅館じゃ鯛の刺身の中にボラを混ぜて出してるよ。あんたらには見分けがつかんでしょ」と、大将が言いながらボラの刺身を作ってくれました。
 なるほど、ぼくには鯛なのかボラなのか、もしかしたら一杯食わされて、本当は鯛だったのかも知れないけど、両者の違いが分からなかったのです。

 人工イクラというのが売られてますが、ときどき出来の悪いのを買って人工だと分かるくらいで、食べ比べせずに出来の良い人工物を食べたら分からないと思います。残念ながらその程度の味覚しか持ち合わせておりません。

 まあしかし考えようによっては、なんでも美味しくいただけるのは一種の才能じゃないでしょうか。非常に鋭敏な味覚を持っていたとして、「こ、このトラフグ、サバフグが混ぜてあるじゃないか!」みたいなことにいちいち腹を立てなくてはいけないというのも辛いものがあるのでは。サバフグの中にハギを混ぜられても分からない方が幸せだよねって、負け惜しんでいる今日この頃です。