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らんかみち

童話から老話まで

グスタフ・レオンハルト氏を偲んで

2012年01月21日 | クラシック音楽
 1677年というと、イタリアの作曲家ヴィヴァルディの生誕が1678年だから、音楽史でいえばルネサンスからバロックと呼ばれる時代に移ったころだろうか。ちょうどそのころ我が島では、今治藩の殿様が猪鹿退治を命じ大きな成果を上げた、と記録に残っている。
 時は移り、今治市長が猪退治を命じても我が島の猪は減る様子がない。ハンタさんたちも頑張ってはいるらしいが、300年以上も前にできたことがなぜ今できないのだろう。

 この島を闊歩している猪だけど、厳密にいえば猪豚だ。野生の猪のメスには乳房が四つあるらしいけど、猪豚は六つあるという。つまり本種の猪が1年に一度出産するのに対し、1年に二回出産する上に多産であるという。
 しかし近年の研究では、猪豚が野生化したら本種の猪と同じ程度にしか出産しないという説もある。ということになると、生息条件は300年前より今の方が良くないはず。島では農業の担い手が減ってしまったのだから。

 昔の火縄銃と違い、現代の散弾銃を使えば効率よく狩猟ができるはず。猪を仕留めたらデジカメで撮影し、お役所に提出すると1頭につき1万円いただける。撃ったイノシシは現場でさばいて流通させることもできるはず。
 確かに100㎏の猪をさばくのは体力的にも厳しかろうが、日本の猪なんて可愛いもんだ。アメリカでは体長約2.8m、体重約470kgもの猪が仕留められという記録が写真付きで紹介されていた。アニメ映画、もののけ姫に出てくるような巨大猪は実在するのだ。

 300年前は普通にできたことがなぜ今できないのか、それはやっぱり謎で、当時作曲されたJ.Sバッハのバイオリン曲だって演奏法がスッキリ解明されているわけではない。たとえばビオラ・ポンポーサとかヴィオロン・チェロなんて楽器は、古楽ブームに乗って復刻され「たぶんこんな楽器で、こんな風に演奏したのだろう」という程度にしか分かっていない。その古楽奏者であったグスタフ・レオンハルト氏が亡くなった。

Bach JS Suite en mi mineur pour luth BWV 996 par Gustav Leonhardt, 12.12.2011.avi


 氏は3.11震災のすぐ後に東京でリサイタルを開いてくれた。原発禍のなかで海外から来てくれたのが巨匠と呼ばれる人だったのだから驚いた。どうして亡くなったのか、まさか放射能とは関係ないと思うが、昨年の12月に演奏されたとする動画があったので共有したい。
 ぼくなんか氏の演奏をレコードで聴いて楽しんだ世代なので、かなりショックだ。たびたび共有したバッハの組曲ホ短調を聴きながら、巨匠の冥福をお祈りしたい。

明治製菓のCM「ショパン」に物申したい

2011年11月02日 | クラシック音楽
 このところショパンのポロネーズ15番が頭の中で鳴り響くのは一体どうしたことかと気に病んでおりましたが、明治製菓のCM『ショパン』3のサブリミナル効果と判明しました。

 通称「別れのポロネーズ」と呼ばれるこの曲は、ロッシーニのオペラ「泥棒かささぎ」から、第1幕第1場のアリア「さあこの腕の中に (Vieni fra queste braccia)」のテーマが中間部に使われているそうです。ショパンが友人と一緒にオペラを観に行ったことを思い出し、友人もそれを思い出せるようにアレンジしてこの曲を贈ったのだとか。

La Gazza Ladra, Viene fra questa braccia


 それにしても明治製菓のCMに「おばさま」役で登場する夏木マリさんの還暦を目前にした魔性の色香はどうよ! 
 おばさまが夏木マリさんだということも分からなかったし、他の登場人物も、執事の「sho-pan」が稲垣吾郎さんだというのは教えてもらったら分かるけど、お嬢様が松本莉緒さんだと聞いても、それはだれ? 
 こんな芸能音痴でも、このCMは夏木マリさんの「おばさま」なくしては成功し得なかった、と思い知らされるほどの圧倒的な存在感。おもわずWikipediaで調べて、ほぅ中島みゆきさんも同い年ですか。

 ロッシーニからショパン、夏木マリ、中島みゆき、と連鎖するのは良いとして、ショパン「ほどけるいちご」「からまるカカオ」「第五番」「第七番」っていうネーミングもだけど、ここまで有名人にあやかるのはどうか。ショパンがChopinではなくsho-panなんだけど、バックに流れるのは紛れもなくChopinの曲ですからねぇ。
 友人だったフランツ・リストにでさえ「自分のオリジナリティーを主張せんかい」とたしなめたほどのショパンですから、このCMを知ったら化けて出るような気もするなぁ……古いCMみたいだけど、今でもショパンが売られているなら買いに行こうっと。

さよならの夏もそうだけど、子どもらしい選曲とは

2011年09月20日 | クラシック音楽
 ついこの前まで「トイレの神さま」だったように思うけど、今は「コクリコ坂から」のテーマ曲「さよならの夏」がスーパの店内で聴けます。なのでYoutubeに頼らずとも、あるいはCDなど買わなくても十分に堪能できますね。

 もう一つ良く聴かされるのは、ラフマニノフの「鐘」でしょうか。これは浅田真央ちゃんが流行らせたんでしたね。
 どうしてそんな暗鬱な曲で滑るの! そう感じたのはぼくだけじゃないと思いますが、この曲を演奏したがる子どもが増えたというのです。もっと子どもらしい選曲がありそうなもんですがねぇ……。

   Rachmaninoff 前奏曲嬰ハ短調OP3-2鐘 ラフマニノフ 11歳

名探偵コナンを見て断捨離モード

2011年08月25日 | クラシック音楽
 アニメ映画「名探偵コナン」は、クラシック演奏会を舞台に事件が起きるという設定でした。建物の焼け跡からフルート胴部管がが発見されたシーンで、おいおい、そんなフルートたとえ売っていてもだれも買わないよ、と突っ込みたくなりました。
 おっと、ピアノの鍵盤とかバイオリンとか、絵が少々ラフなだけで本筋は推理だろうが、みたいな反省をしてしまいました。疑問点もいくつかあったけど、とても面白かった。

 そんなわけでフルートを思い出し、バッハの名曲を一つ。無伴奏フルートパルティータ BWV 1013です。
 現代のフルートで演奏するのなら技術的な足枷はないと思いますが、演奏家は曲の解釈で苦しみつつ、オリジナリティーを出そうと頑張ります。

Kaori Fujii: Allemande BWV 1013 - J.S. Bach


Partita in A minor BWV 1013 2nd mvt. Corrente for solo violin


Bram van Sambeek - J.S. Bach/ Uit: Partita voor fluit Sarabande


Bouree Anglaise


 アルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレ・アングレーズのそれぞれを違う楽器で演奏してますが、どの曲もその楽器のために書かれたと思い込みそうです。それにしても、楽しそうに弾いてるな~、コンチキショー!ぼくもフルートを取り出したくなったけど、若いころと違ってオッサンの時間は経つのが早い。
 このところ断捨離モードに入っていて、毎日のように捨てる物の吟味をしてます。新聞すらじっくり読めないのに、昔録画したクラシック演奏のビデオなんて今後も見ることもないでしょう。じゃんじゃん捨てます。

バイオリニストの苦行

2011年08月08日 | クラシック音楽
 千住真理子さんが「題名のない音楽会」でデュランティを弾いておられましたが、正直なところ良く分かりませんでした。録音が良くないのか、うちのテレビがボロなのか、音のバランスが良いなというのだけは感じました。

 ぼくが最初にバイオリンを習った先生は「このバイオリンは800万円です」とおっしゃっていましたが、だれがそんなもんに800万も出すねん、と内心では訝っていたほど4本の弦の音量が違っていました。低音にパワーが無かったのです。
 
 次に習った先生はお嬢様育ちで、親が1000万円で買ってくれたバイオリンを弾いてました。弾かせていただくと、パワーもあって4本の弦のバランスも良かったのですが、全体の音が雑な印象を受けました。

 ぼくのバイオリンはドイツ辺りで作られた手作りの量産品で、古いものではありません。初めのうちは鳴らなかったんですが、弾き込むうちにいい音が出るようになりました。6万円で買った物です。

Boris Goldstein plays Wieniawski Violin Concerto No 1, 3 movm


 ヘンリク・ヴィェニャフスキのコンチェルト第1番ですが、良い曲なのに第2番ほど演奏される機会は多くありません。そのわけは、前奏が始まってソロバイオリンが登場するまでに、なんと3分間もかかる第1楽章にあるんじゃないかと睨んでます。

 カップラーメンにお湯を注いで待つ3分間というのは長いですよ。ぼくなんか2分40秒くらいで我慢できなくなってふたを開けてしまいます。しかしそれでは社会人としての節度が疑われるのではないかと、最近は般若心経を三回唱えて待つことにしておりますが、これはこれで苦行なのです。

 まさか舞台の上で鼻くそもほじれんし、3分間という時間をソロバイオリニストはどうやって過ごすのでしょう。J-POPなら1曲が大団円ではありませんか。この長い時間を何もせずにただひたすら出番まで待ち続けるのが苦痛であるから演奏しないのではないかと勘ぐったりするのです。
 共有したのは第3楽章で、発表会などで第1楽章を演奏するときはたいがい3分間を省いてますね、もちろん本番では苦行を強いられるのですが。

TSUKEMENできたね

2011年08月05日 | クラシック音楽
 クラシカル・エンタメバンドとでも呼ぶのか、VanillaMoodという美女バンドがあります。それの男性バージョンかな、TSUKEMENがこのところメディアに登場しているようで、クラシック愛好家としても嬉しいです。

 バニムが東京藝大でまとめているのに対し、TSUKEMENは桐朋学園と東京音大ですか。入学できただけでプロの道が約束されているような音大ですから、腕は確かなんでしょうけど、まだまだクラッシック演奏してる硬さがあるよねぇ。

TSUKEMEN チャルダッシュ




口笛で世界を取った天才少女


 ガキのくせに、えらそうに口笛なんか吹いてんじゃネーゾとむかつく御仁も、ここまで上手だと脱帽でしょうね。

Roby Lakatos ~ Czardas


 バイオリンの怪人、ロビー・ラカトシュ。こちらは本場の演奏。超速のパッセージはいうまでもなく、やり過ぎず抑えすぎずの程良いコブシがよろし。
 TSUKEMENがイケメンかどうかはさておき、彼らもいつかは自分たちのスタイルを確立するんでしょう、楽しみです。

レディーの嫁ぎ先

2011年06月26日 | クラシック音楽
 レディー・ガガさんという方のことはほとんど知らないのですが、超大物の彼女が原発禍まっただ中の日本に来てくれたとあれば、オートバイレーサーたちも考え直してくれるでしょうか、ありがたいことです。
 やって来るレディーがいれば出て行くレディーもいましたね、レディー・ブラントのことです。12.7億円で嫁にもらわれていったのは、祝福すべきなのかそうでないのか。

 日本音楽財団は収益の全てを東日本大震災の復興に充てると発表されてますが、なにもストラディバリウスでなくても良かったんじゃないか、という声も聞かれます。バイオリンは工芸作品ですから、飾っていても仕方ないという意見と、楽器制作家の指標となるから手を付けるべきではない、という意見の狭間で財団も苦しんだことでしょう。

 どこのどなたが落札したのか知らないけど、あの楽器は財団が保有していたときと同じように、今後も演奏されないような気がします。現在活躍しているストラディバリほどには鳴らないだろうから。
 300年にわたって名手たちに演奏され続けてこそのストラディバリであって、当時はドイツ人制作家、ヤコプ・シュタイナーのバイオリンの方が良く鳴ったといわれてます。

 ストラディバリには伝説も多くあって、「木が絶滅してしまった」とか、「ニスの処方が失われてしまった」などと、もっともらしい理屈はあるんですが、ほとんどは価格をつり上げるために流布されたもの、とのことです。
 製作技術に関しては今の製作家の方が上であるだけでなく、中国の量産品だって負けてはいないはず。だって、ストラディバリは昔の量産品なのですから。

 現代の名工が製作した新作バイオリンとストラディバリを弾き比べる催しなどもありますけど、聴衆は両者の違いが分からないといいます。そりゃそうでしょう、弦をどのメーカーにするのか、弓をだれのにするかで音は変わるんですから。
 千住真理子さんも改造されていないストラッド「デュランティ」を演奏されてますが、鳴り具合というのは演奏家本人にしか分からないと思います。演奏家が鳴らしやすいと感じたならそれが全てでしょう。


アントニオ・ストラディバリ(1644-1737)

レディ・ブラント(1721年)日本音楽財団→?

デュランティ(1716年)千住真理子

ポリニャック伯爵夫人(1699年)ギル・シャハム


 ギル・シャハムさんくらいの演奏家に嫁ぐのなら、レディー・ブラントも幸せだろう、などと思ったりしてます。

童話講座に敵討ちをフルートで

2011年02月11日 | クラシック音楽
 いつだったか、童話講座の広島教室と福山教室の合同合評会が開かれたとき40枚ほどの作品を提出たんですが、作中で小学生の子が難易度の高いフルート曲を演奏する場面について「そんなの胡散臭い」と指摘されて落ち込みました。

 ご指摘はごもっとも、でもそういうことって実際にあり得ることなんですよ、などと頭の硬い御仁を口説こうっても無理なんです。なぜかというと、作品が描写力を欠いていたからです。でもこれはつい最近になって気がついたことで、半年前は分からなかった。

 あのときのことはまだ根に持っておりますが、童話講座を破門になった今、あの作品を書き直して「これで、どや!」と突きつけることは叶いません。せめて他人様の力を借りて報復できないかと考えていて、見つけました!

Flute Concerto in D, Allegro and Cantabile, by A. Vivaldi (part one of two)


 これはヴィヴァルディが孤児院の女の子のたちのために書いた曲で「ゴシキヒワ」という作品です。当時の楽器で演奏するなら難曲だけど、現代のフルートでならそんなに難易度は高くない、とはいっても9歳の演奏とはとても思えません。
 途中で大ミスをしでかしてますが、その後も動じることなく演奏を続けているところなんざ、もしかしてぼくの師事したフルートの先生よりすごいかも。童話講座の遺恨はさておき、この子が今後どんな風に成長するのか、要チェック!

寝た子も起きる名曲

2011年02月08日 | クラシック音楽
 ショパンのノクターンは19番までが生前に出版されたもので、20番と21番は彼の死後に発見された曲とのことです。20番は言わずと知れた名曲中の名曲ですが、21番も冬の夜空に冴え冴えと輝く冷たい月をイメージさせる好曲じゃないでしょうか。

Chopin - Nocturne No.21 in C-Minor Op.Posth


 この曲をピアノで弾いて喜んでいたんですが、右手のパートはフルートで演奏しても素敵なんじゃないかってトライしてみたら、一番高い音が出せない。やっぱ安フルートはダメだなと、フルートメーカーのショールームに出かけて「この曲が吹けるフルートが欲しい」と楽譜を見せたけど、なぜか話が通じない。

 そこで別のメーカーに行って同じ話をしたら、「この音は出るけど、どんな名人でも一瞬の音にしかなりません」だって。そりゃもうがっかりしたのなんの。自棄を起こしてフルートを新調しようと、試奏したフルートを手に「よっしゃ、このフルート気に入った」と口走ってしまったもんだから大変。平常心を取り戻したころ、28万円の請求が来ました。
 大枚をはたいた元を取ろうと、あの頃は良く吹いたもんですが、今じゃ押し入れで安らかに眠り続けております。寝た子を起こすような名曲に巡り会いたいぞ。

 

ご乱心の殿方は去り

2010年12月06日 | クラシック音楽
 昨日の演奏がとても良いので、引き続きヘンデルのメサイアから「彼はレビの子らを清める」です。ご乱心の男性が装飾音をごてごて付け、芝居がかった粘着質な歌い方を披露したのと打って変わり、合唱は抑制が効いていて沈鬱です。

 近年のメサイア演奏では古楽器が主流のようです。これも300年ほど前の楽器をコピーしたり復元した楽器で演奏しているようですが、youtubeなどで聴いても軽薄な印象を受けない素晴らしい演奏だと思います。

     Handel: And He shall purify (Messiah, HWV 56)
     

and He shall purify the sons of Levi, that they may offer unto the Lord an offering in righteousness.

彼はレビの子らを清める。彼らが主に献げ物を正しくささげる者となるためである。

 たったこれだけの台詞ですが、大勢で合唱するとあたかも一編の物語が歌われたかと錯覚しそうです。そういやメサイアの楽譜を買って訳し始めたことが昔あったな、でも古語を調べるのが苦痛で最初の辺りで挫折したんだったよな。あれを自力で訳していたら人生が変わっていたかも知れないと思うと、良かったのやら悪かったのやら。

 それにしても、ご乱心の男性は外に飛び出し、棺は運び出され、これから一体どんな物語が展開するんだろう。続きを見たくて探したんですが、見つからないんです。乙女が神の子イエスを身ごもったぞーっていう部分が抜けているみたいなんですぅ残念!