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■絹谷幸二 色彩とイメージの旅 (2018年12月8日~19年1月27日、札幌)

2019年01月21日 21時41分00秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 「棟方志功展」以来およそ1年間にわたって続いてきたSTV(札幌テレビ放送)創立60周年記念の展覧会シリーズもこれで一段落。
 今回は、2017年秋に京都国立近代美術館で開かれた「絹谷幸二 色彩とイメージの旅」からの巡回であり、そのため、図録も販売している。ただし、京都の作品リスト(リンク先はpdf)と見比べると、初期作品など、札幌には来ていない作品がけっこうあるようだ。
 一方で、道立近代美術館所蔵の超大作「日月燦々北海道」など、京都会場では展示していない(そのため図録にも未掲載)の作品もある。

 結論から先に言うと、筆者はあまり期待しないで見に行ったのだが、近作の風景画や龍のシリーズはなかなか良かったと思う。
 「日本の絵画」とは何かーという問題意識が感じられるところが好ましいのだ。


 しかし、この人選はどうなんだろう。
 筆者のような現代アートの好きな人(まあ、北海道ではごく少数派なんだけど)は、あまり期待をもたないだろう。
 かといって、美術にとりたてて興味の無い人にアピールする存在ということでもあるまい。黒田清輝や横山大観なら「名前ぐらいは知っている」だろうけど、そこまでのビッグネームとはいえない。

 絹谷幸二さんは、気の毒なところもあるのだと思う。
 東京藝大油画科にストレート合格、史上最年少で安井賞(画壇の芥川賞といわれた賞)を受賞、独立美術の会員に20代のうちに推挙されている。
 経歴を見ると、洋画の世界では10年か20年に1人の逸材というべき輝かしさだ。

 彼が東京藝大で学んでいたころは、西洋画が美術の最前衛であることはほとんど疑問の余地がなかった。セザンヌやマティスやポロックが敷いたレールの上を、美術史が進んでいるように思われていた。
 いま、現代アートの世界で、マルセル・デュシャンは参照されても、セザンヌやマティスが引き合いに出されることはほとんどない。

 時代は変わったのだ。
 日本画や版画は独自の国内マーケットを有してそれなりの存在感を保っているが、西洋画が美術界の中心に君臨する時代は終わっている。
 世界各地の芸術祭やトリエンナーレではインスタレーションや映像、写真などが、普通の表現方式になっている。
 アートの文脈がすっかり変わってしまったといっていいだろう。

 これは非常に主観的な見方だが、絹谷幸二は必死なように見える。
 必死なのが本人なのか周囲なのかは不明だが、自らの名を冠した美術館や絵画賞を創設し、長嶋茂雄とのコラボーレションによるラベルをつけたワインを発売し、文化功労者にもなっている。
 この展覧会からもわかるように、洋画の枠にとどまらず、九谷焼やガラス工芸、立体にも進出し、絵画のモチーフが動き出す映像作品まで制作されている(これ、ちょっと見ると、チームラボっぽい)。
 にもかかわらず、西洋画というジャンルが日本で地盤沈下しているために、彼がどんなに
「画壇の第一人者」
という地位を固めたとしても、一般的な知名度を得るまでには至らないのである。
 もちろん、そんな知名度などは、結局のところはどうでも良いことだと、筆者も思う。大切なのは、作品が良いかどうか、ということだけだから。


 で、作品だが、2枚目の画像の「蒼天富嶽龍宝図」などは、背後の平坦な部分が多くて、あまり感心しなかった。
 ちょっと長文になってきたので、続きは項を改めたい

(なお、筆者が訪れたときは、会場の終わりの部分は、写真撮影可だった。混雑してきたら、どうなるかわからないが、とりあえずカメラやスマートフォンをお忘れなく)
  


2018年12月8日(土)~19年1月27日(日)午前9時半~午後5時(入場は30分前)、月曜休み(ただし12月24日と1月14日は開館し翌火曜休み)、12月25日と29日~1月3日も休み
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)

当日券 一般1300円、高大生800円、中学生600円。65歳以上は1100円(証明できるものが必要)
所蔵品展との共通券などもあります




□画家 絹谷幸二 公式サイト http://kinutani.jp/

□STV(札幌テレビ放送)の公式ページ https://www.stv.jp/event/kinutani/index.html





・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」で降車、すぐ(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)

・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分

・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分




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