棟方志功の展覧会は、道内でもずいぶんと開かれている。
道立函館美術館では1990、98、2012年と3度も開催されているし、釧路でも2008年、帯広でも12年と、日本の美術家で個展が企画されている回数では間違いなくトップクラスだろう。
札幌での展覧会は意外と少ない。もっとも、筆者は昨年3度も「二菩薩釈迦十大弟子」を見ている(新青森駅を含む)。道民がとりわけ棟方好きというのではなく、やはり戦後日本を代表する芸術家の一人として幅広い層に認知されているゆえなのだろう。
今回は、巨大すぎて通常は展示する機会が少ないであろう「大世界の柵・乾」「大世界の柵・坤」(いずれも277×1358センチ)が見られる、道内ではめったにないチャンスだと思うので、見て損はない。
代表作といえる作品はかなりきている。すなわち
「萬朶譜」
「大和し美し」
「善知鳥版画巻」
「二菩薩釈迦十大弟子」
「雨ニモ負ケズ板画柵」
「鐘渓抄」
「宇宙頌」
「湧然する女者達々」
「華狩頌はなかりしょう」
「恐山の柵」
「捨身飼虎の柵」
などである。
種類別にみても、板画(棟方志功は、版画をこのように表記する)はもちろん、油絵や、本人が倭画と呼ぶ着彩画、さらにはリトグラフ、青森ねぶたの様子を描いた絵巻物など、小品から超大作まで多彩であり、また、初期の油絵や版画(川上澄生に酷似していて、笑ってしまう)などもあって、足りないという感じは全くない。
協賛に、もりもと、みちのく銀行が、協力には「棟方志功記念館」とRABサービスが、それぞれ名を連ねている。「RAB」は青森放送の略称である。
おそらく青森側の全面的なバックアップで実現した展覧会なのだろう。
好みでいうと「華狩頌」かなあ。
リズミカルに配された馬上の女性と、弓矢を描かず弓を射るポーズだけで行為を表現した面白さ。そして、棟方芸術の一大特徴ともいえる装飾性が、うまいぐあいに融合している。
棟方は1940年代以降、人物の大半は裸婦を描いているが、その場合、裸婦の肌に文様を刻むことで装飾性を表すことが多かった。これも悪くはないが、やはり「華狩頌」のように、着衣の女性だと文様が自然に見える。
「大世界の柵」は、道立近代美術館のいちばん長い? 壁面にぴったりおさまるほどの巨大さだが、大きすぎるゆえにいささか粗さが目立つ。
晩年、60年代以降になると、裸婦は鋭い直線で囲まれるようになり、顔も人間のものとは思えなくなってくる。岡本太郎の「太陽の塔」の顔にも似ているようである。
ただ、この展覧会、図録がないのだ。
北海道は、図録の売れ行きが、大都市圏よりも悪いことで知られている。とはいえ、音声ガイドを用意して、図録を作らないというのは、信じられない。
展覧会に図録は必須であり、悪い前例をつくってしまったと、嘆かわしく思う。
2018年2月3日(土)〜3月25日(日)午前9時30分〜午後5時(最終入場4時半まで)、月曜休み(ただし2月12日は開館し、翌日の13日休館
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
□公式サイト http://www.stv.jp/event/munakata/index.html
一般1300(1100)円、高大生800(600)円、中学生600(400)円 小学生以下無料
※( )内は、前売料金及び10人以上の団体、リピーター割引料金
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」で降車すぐ
(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分
道立函館美術館では1990、98、2012年と3度も開催されているし、釧路でも2008年、帯広でも12年と、日本の美術家で個展が企画されている回数では間違いなくトップクラスだろう。
札幌での展覧会は意外と少ない。もっとも、筆者は昨年3度も「二菩薩釈迦十大弟子」を見ている(新青森駅を含む)。道民がとりわけ棟方好きというのではなく、やはり戦後日本を代表する芸術家の一人として幅広い層に認知されているゆえなのだろう。
今回は、巨大すぎて通常は展示する機会が少ないであろう「大世界の柵・乾」「大世界の柵・坤」(いずれも277×1358センチ)が見られる、道内ではめったにないチャンスだと思うので、見て損はない。
代表作といえる作品はかなりきている。すなわち
「萬朶譜」
「大和し美し」
「善知鳥版画巻」
「二菩薩釈迦十大弟子」
「雨ニモ負ケズ板画柵」
「鐘渓抄」
「宇宙頌」
「湧然する女者達々」
「華狩頌はなかりしょう」
「恐山の柵」
「捨身飼虎の柵」
などである。
種類別にみても、板画(棟方志功は、版画をこのように表記する)はもちろん、油絵や、本人が倭画と呼ぶ着彩画、さらにはリトグラフ、青森ねぶたの様子を描いた絵巻物など、小品から超大作まで多彩であり、また、初期の油絵や版画(川上澄生に酷似していて、笑ってしまう)などもあって、足りないという感じは全くない。
協賛に、もりもと、みちのく銀行が、協力には「棟方志功記念館」とRABサービスが、それぞれ名を連ねている。「RAB」は青森放送の略称である。
おそらく青森側の全面的なバックアップで実現した展覧会なのだろう。
好みでいうと「華狩頌」かなあ。
リズミカルに配された馬上の女性と、弓矢を描かず弓を射るポーズだけで行為を表現した面白さ。そして、棟方芸術の一大特徴ともいえる装飾性が、うまいぐあいに融合している。
棟方は1940年代以降、人物の大半は裸婦を描いているが、その場合、裸婦の肌に文様を刻むことで装飾性を表すことが多かった。これも悪くはないが、やはり「華狩頌」のように、着衣の女性だと文様が自然に見える。
「大世界の柵」は、道立近代美術館のいちばん長い? 壁面にぴったりおさまるほどの巨大さだが、大きすぎるゆえにいささか粗さが目立つ。
晩年、60年代以降になると、裸婦は鋭い直線で囲まれるようになり、顔も人間のものとは思えなくなってくる。岡本太郎の「太陽の塔」の顔にも似ているようである。
ただ、この展覧会、図録がないのだ。
北海道は、図録の売れ行きが、大都市圏よりも悪いことで知られている。とはいえ、音声ガイドを用意して、図録を作らないというのは、信じられない。
展覧会に図録は必須であり、悪い前例をつくってしまったと、嘆かわしく思う。
2018年2月3日(土)〜3月25日(日)午前9時30分〜午後5時(最終入場4時半まで)、月曜休み(ただし2月12日は開館し、翌日の13日休館
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)
□公式サイト http://www.stv.jp/event/munakata/index.html
一般1300(1100)円、高大生800(600)円、中学生600(400)円 小学生以下無料
※( )内は、前売料金及び10人以上の団体、リピーター割引料金
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」で降車すぐ
(小樽、手稲方面行きは、都市間高速バスを含め全便が停車します)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分
(この項続く)