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■森山誠と仲間たち展 (2019年4月3~7日、札幌)

2019年04月05日 13時54分06秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 資料によって展覧会名が微妙に異なっていて、たとえば「大通情報ステーション」では「自由美術北海道グループ展」、札幌市民ギャラリーのサイトでは「自由美術北海道支部 グループ展 森山誠と仲間たち」となっている。当ブログは、いただいた案内はがきの文面に従う。
 
 会場構成は、左側の壁面に、一昨年亡くなった札幌の画家で自由美術協会会員の森山誠さんの遺作17点が並び、右側には、自由美術協会の道内のメンバー16人が絵画1点ずつを陳列している。
 「メンバー」という言い方をしたのは、自由美術協会は展示の際に会員・一般出品者の区別を記さないのが伝統であるため。 

 森山さんの作品と略歴については、2018年1月に書いた森山誠さんのことで書いたので、ぜひクリックして読んでほしい。
 また、上の記事にも引用しているが、自由美術協会のページに、森山さんが自ら、絵画についての自説を詳しく述べている。

 今回の展覧会では、略歴が壁に貼ってあるだけで、制作年も分からない作品も少なくない。昔だったら、吉田豪介さんあたりがテキストを書いて故人の画業をしのんだだろうと思うと、いささかそっけない会場がちょっとさびしく感じられる。

 さて、冒頭画像は、左から
「風景の記憶 03」
「Aの肖像 2000」
「Mの墓標」
「黒い窓」。

 題に附された数字は、制作年と思われる。

 「黒い窓」の人物はこちらに背中を見せて座っているようだが、上半身が台座の上にのり、下半身が切断されているように見えなくもない。

 「風景の記憶」は、とくに鳴鶴にモティーフが描かれているわけではない。
 それでも、遠景には海が広がり、近景には雪原や斜面があるように感じられる。
 「空間そのもの」、あるいは、「風景といわれる何か」が提出されている、といってもよい。


 「Aの肖像」も、室内に男性がすわっている様子なのだが、男も、卓上のテレビや皿も、筆は最小限である。
 離れた位置から見ると、存在感があるが、キャンバスに近づくと、驚くほど少ない筆で描かれていることがわかる。
 皿の右側には置かれているフォークは、走り書きのような黒い線が1本と、白い絵の具の盛り上げが1カ所だけ。2枚目の画像でわかると思うが、近づけば近づくほど、モノが遠ざかっていくようなのだ。
 皿の左手前の、ガラスのコップも同様で、白い曲線が上部のふちを表すように走っているだけである。
 単に「すごい筆力」と片付けてしまってはいけないような気がする。
 ものが存在するとはどういうことか、見えるとはどういうことなのか。
 そういうことを根本から問う作品ではないのだろうか。



 この3点は、画風からいって、比較的古い時期の作品であると推察される。

 左の「沈黙」は、新聞を手にしている右側の人物の頭部が異様な形状をしている。
 ヘルメットをかぶって口をタオルで覆った、デモの学生のようだが、仔細に見ると、貝殻のようである。
 ふたりの人物の関係も表情もよくわからない。
 ただ、手前側の床に落ちる光だけが、確かな存在感をたたえる。見る人に、現代人の不安を抱かせる一枚。

 中央の「ボールート 93-2」は、両手を前で組み合わせて、椅子に腰掛ける男性を描く、森山さんには多いタイプの一枚。
 背景が鮮やかな黄色に塗られているのが、後年と異なる特徴だといえる。

 右の「風」は、青空にはためく白い旗がモティーフだが、左のさおとの結び目が人間の手になっているのが特徴。
 旗ではなく、まるで白い服の人物がさおにしがみついているようだ。
 中身が空っぽな人間ということなのだろうか。


 森山さんの出品作は他に次の通り。
卓上(花) 07-2
風景の記憶 00-2
memory 10-1
風景の記憶 00-1
緑のある室内

風景ー蝕
卓上 03-8
卓上 03-2

 どうでもいい話だが「刻」の手前に「ILFO」という文字が見える。
 これは「イルフォード」という英国の写真印画紙などのメーカーのロゴの一部だろう。
 森山さんは写真も撮っておられたのだろうか。

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 さて、仲間たちのほうは、自由美術らしく、ほとんどが抽象画か、半抽象画である。

 画像の右端は、高橋靖子さん「オーロラピンクに寄せて-」。
 日記のように紡がれた言葉が、画面のところどころに走り書きされている。

 そのとなりは杉吉篤さん「重い羽」。
 顔の見えない天使?から、おもりのようなものがぶら下がっている。
 背景は灰色に塗りつぶされており、重々しい空気を感じる。

 他の出品作は次の通り。 

黒田孝 「花」
佐藤泰子「さくら色に染まるとき―ふたつのかげ-」
さとうえみこ「Laurent - Perrier」
永野曜一「流星群」
北島裕子「光の旅 オアシス」
河合キヨ子「何処へ」
小林久美「メッセージ」
杉山フジオ「深海烈風」
岡野修巳「眠れない宙」
澤田弘子「気流」
工藤敏子「はかない、雪」
深谷栄樹「花のように鳥のように」
中條倫子「MK-HE」
牧輝子 「砂漠の風」


2019年4月3日(水)~7日(日)午前10時~午後6時
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)


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