1937年(昭和12年)に「自由美術家協会」として発足した公募展。
その後、モダンアート協会、主体展が分裂しましたが、現在も抽象画を中心にユニークな画家が参加しています。
北海道展は毎年この時期にひらかれており、秋の本展に先立って、出品作をお披露目しているようです。(ただし絵画部だけ。彫刻部のメンバーはほとんど参加しない)
今回の出品者は、案内状によると
北島裕子、工藤牧子、黒田孝、佐々木俊二、佐藤栄美子、佐藤泰子、澤田弘子、杉吉篤、高橋靖子、中間弥生、永野曜一、深谷栄樹、宮崎亨、森山誠、山本昇、和田義雄、大崎和男
で、道内在住の自由美術の画家ってけっこう多いなあと、あらためて思うのですが、そういや川森巧さんがいませんね。
あと、自由美術は、「会員」「一般」の2段階しかなく、しかもそれを会場などに明記しないのが伝統で、今回も、だれが会員でだれが一般出品者かはわかりません。
今回は2階の3室をつかっているため、ひとり2-4点の出品となり、なかなか充実した展覧会になっていると思います。
なお、冒頭の画像は、手前が大崎さん。
縦に細長い「イランカラプテ」を1から4まで4点。
紫や緑の線、色斑からなる抽象ですが、以前に比べるとかなりすっきりしてきたという印象があります。
奥に見えるのが和田義雄さん。
「からまってしまった」「チョットした行き違いから」「静けさの中に」の3点を出品しています。
深谷栄樹さん。
手前はA室の「大地 Earth C」。
奥に見えているのが、ロビーに展示されている「大地 Earth A」です。
ほかに、ロビーに「大地 Earth D」が、A室に「大地 Earth B」が陳列されています。
深谷さんは、以前は人間など具象的なモティーフがあったように記憶していますが、今回はご覧のとおり、完全な抽象。
「大地 Earth C」は、縦長のカンバス2枚からなる組作品。
これといったかたちは見られず、暗い色とレモンイエローが不規則に配されています。
個人的な印象としては、なんだか陰惨な感じがしますが、しかし人生って陰惨なものでもありますから、これはこれでとてもいいと思います。
どうも森山誠さんの絵を撮影しわすれたようです。
森山さんは「memory ’07-2」「memory ’07-4」「卓上07-4」の3点。
このうち「memory」は、どこか森山さんを思わせる男性が描かれています。「卓上」のほうは、人物がおらず、森山さんの絵にはめずらしくテレビが描かれ、水色のつめたい光を放っています。
それにしても、少ない要素だけで画面を「持たせて」しまうことにかけては、森山さんはあいかわらず天才的だと思います。
佐々木俊二さん「帰還 A」。
ほかに「帰還 B」「帰還 C」も出品。
佐々木さんのいう「帰還」って、筆者には、帰還兵のように思えます。
戦場で人間性をずたずたにされ、帰ってきた兵士。
それは、しかし、わたしたちの像でもあるのです。
佐藤泰子(たいこ)さん「finish A」。
ほかに「finish B」も出品。
ストロボを見た後で網膜に焼きついた痕のような、鮮烈な色。
パステルとは思えない、厚みのある絵画空間がつくられています。
高橋靖子さん「作品B」。
ほかに「作品A」「作品C」。
A、Bは赤が基調(ただし、色合いは微妙に異なる)、Cはビリジャンが基調です。
もともと日記をつむぐように描かれていた高橋さんの絵ですが、ここにきて、日記そのものになっています。
などと白の絵の具であちこちに描きいれてあるんですから。
これまで模様のように描かれていたアルファベットは、ハチの巣のような模様に変わりました。大きく細い「Y」の文字は以前と同様です(もちろん、遺伝子などではなく、彼女のイニシャルです)。
もちろん、文字といっても、絵の要素のわけですが…
杉吉篤さん「仮面」。
ほかに「泳ぎ続けて」。
ここ5年ほどは、骨でできたような奇妙な動物を真横から見たような、背景の白い、シンプルな絵を制作している杉吉さん。
「仮面」は、わずかに動物が斜め前を向き、尻が上がり気味になっています。
妙な存在感があります。
黒田孝さん「ひこうせん」。
ほかに「MONUMENT」。
モノクロームの暗い画面に、石のような物体を描く黒田さんです。
澤田弘子さん「無常」。
ほかに「祈りて尚」。
立木を組み立てた人形のようなモティーフを描き、全道展で頭角をあらわしている澤田さんですが、「無常」は、かなり雰囲気がかわりました。
スケール感が大きいのですが、わざと狂わせた遠近法が、かえって木の存在感を引き出しています。
宮崎亨「決していやされない渇き」。
ほかに「道」(同題2点)「いやらしい空気」。
苦悩する人間存在にまっすぐ向き合う宮崎さんの絵は、こちらに迫ってくる力強さがあります。
中間弥生さん「花よりも花の如く」(中央)と「幸福の女神の前髪はすばやくつかんで決してはなさず」。
ほかに「主夫の正しいソッコウカンソウ法」。
ひじょうに輪郭線の太い絵を描く中間さん。ますますカラフルさが増してきたようです。
左は北島裕子さん、右は山本昇さん。
北島さんは「光の旅<還>」「光の旅<オアシス>」「風の音」。
画像でも分かるように「風の音」は、作風がかなり変化しています。
以前の、黄色など明るい色彩の矩形をつらねた絵ではなく、曲線や、藍色といった暗い色が用いられ、画面に動きがくわわっています。
山本さんは「北方の詩」「道東のうた」「子供のころのおもいで」の3点。
あいかわらず、ひょろひょろとした線で人物を描いた、独特の画風です。
手前が工藤牧子さん、左奥が佐藤榮美子さん。
工藤さんは「萌芽I」「萌芽II」。
佐藤さんは「シャルトリューズの丘」「SOMETHING ELSE」。
(27日追記。永野さんの画像をアップしていませんでした。さがして追加します)
永野曜一さん「塩の塔」。
ほかに「朝の光」「海の声」も。
「塩の塔」。題名がいい。
以前の永野さんの絵は、抽象でありながらどこか風景のようなスケール感をただよわせていたが、さいきんは、なにものをも連想させない純粋抽象になっている。
この作品は完成まで1年8カ月かかったという。
07年8月20日(月)-25日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□自由美術協会
■自由美術/北海道 2006年(画像なし)
■2003年
■2002年
■2001年(画像なし)
■佐々木俊二個展(2002年)
■森山誠個展(02年)
■森山誠個展(04年)
■森山誠個展(06年)
■杉吉篤個展(2000年)
■杉吉篤個展(01年)
■杉吉篤個展(02年)
■杉吉篤個展(03年)
■佐藤泰子展(01年)
■佐藤泰子展 さくらさくら(02年)
■佐藤泰子展(03年)
■佐藤泰子展(05年)
■佐藤泰子さくらさくら展(06年)
■中間弥生個展(06年)
■金山当子・中間弥生ふたり展(04年)
■中間弥生個展(03年)
■中間弥生個展(01年、画像なし)
■高橋靖子展(01年、画像なし)
■札幌の美術2003
■高橋靖子展(03年、画像なし)
■高橋靖子展(05年)の出品作品
■芸術団Jam.(宮崎さんが出品)
■北島裕子個展(02年)
その後、モダンアート協会、主体展が分裂しましたが、現在も抽象画を中心にユニークな画家が参加しています。
北海道展は毎年この時期にひらかれており、秋の本展に先立って、出品作をお披露目しているようです。(ただし絵画部だけ。彫刻部のメンバーはほとんど参加しない)
今回の出品者は、案内状によると
北島裕子、工藤牧子、黒田孝、佐々木俊二、佐藤栄美子、佐藤泰子、澤田弘子、杉吉篤、高橋靖子、中間弥生、永野曜一、深谷栄樹、宮崎亨、森山誠、山本昇、和田義雄、大崎和男
で、道内在住の自由美術の画家ってけっこう多いなあと、あらためて思うのですが、そういや川森巧さんがいませんね。
あと、自由美術は、「会員」「一般」の2段階しかなく、しかもそれを会場などに明記しないのが伝統で、今回も、だれが会員でだれが一般出品者かはわかりません。
今回は2階の3室をつかっているため、ひとり2-4点の出品となり、なかなか充実した展覧会になっていると思います。
なお、冒頭の画像は、手前が大崎さん。
縦に細長い「イランカラプテ」を1から4まで4点。
紫や緑の線、色斑からなる抽象ですが、以前に比べるとかなりすっきりしてきたという印象があります。
奥に見えるのが和田義雄さん。
「からまってしまった」「チョットした行き違いから」「静けさの中に」の3点を出品しています。
深谷栄樹さん。
手前はA室の「大地 Earth C」。
奥に見えているのが、ロビーに展示されている「大地 Earth A」です。
ほかに、ロビーに「大地 Earth D」が、A室に「大地 Earth B」が陳列されています。
深谷さんは、以前は人間など具象的なモティーフがあったように記憶していますが、今回はご覧のとおり、完全な抽象。
「大地 Earth C」は、縦長のカンバス2枚からなる組作品。
これといったかたちは見られず、暗い色とレモンイエローが不規則に配されています。
個人的な印象としては、なんだか陰惨な感じがしますが、しかし人生って陰惨なものでもありますから、これはこれでとてもいいと思います。
どうも森山誠さんの絵を撮影しわすれたようです。
森山さんは「memory ’07-2」「memory ’07-4」「卓上07-4」の3点。
このうち「memory」は、どこか森山さんを思わせる男性が描かれています。「卓上」のほうは、人物がおらず、森山さんの絵にはめずらしくテレビが描かれ、水色のつめたい光を放っています。
それにしても、少ない要素だけで画面を「持たせて」しまうことにかけては、森山さんはあいかわらず天才的だと思います。
佐々木俊二さん「帰還 A」。
ほかに「帰還 B」「帰還 C」も出品。
佐々木さんのいう「帰還」って、筆者には、帰還兵のように思えます。
戦場で人間性をずたずたにされ、帰ってきた兵士。
それは、しかし、わたしたちの像でもあるのです。
佐藤泰子(たいこ)さん「finish A」。
ほかに「finish B」も出品。
ストロボを見た後で網膜に焼きついた痕のような、鮮烈な色。
パステルとは思えない、厚みのある絵画空間がつくられています。
高橋靖子さん「作品B」。
ほかに「作品A」「作品C」。
A、Bは赤が基調(ただし、色合いは微妙に異なる)、Cはビリジャンが基調です。
もともと日記をつむぐように描かれていた高橋さんの絵ですが、ここにきて、日記そのものになっています。
8月5日(日)くもり23℃ 濕度高し ギャラリー法邑 東区本町1-1 谷口一芳展
07年7月26日 木曜日 晴 薄曇り 28℃ むし暑し 文京台→野幌ヒダ煉瓦工場→岩見沢朝日町 作品移動
などと白の絵の具であちこちに描きいれてあるんですから。
これまで模様のように描かれていたアルファベットは、ハチの巣のような模様に変わりました。大きく細い「Y」の文字は以前と同様です(もちろん、遺伝子などではなく、彼女のイニシャルです)。
もちろん、文字といっても、絵の要素のわけですが…
杉吉篤さん「仮面」。
ほかに「泳ぎ続けて」。
ここ5年ほどは、骨でできたような奇妙な動物を真横から見たような、背景の白い、シンプルな絵を制作している杉吉さん。
「仮面」は、わずかに動物が斜め前を向き、尻が上がり気味になっています。
妙な存在感があります。
黒田孝さん「ひこうせん」。
ほかに「MONUMENT」。
モノクロームの暗い画面に、石のような物体を描く黒田さんです。
澤田弘子さん「無常」。
ほかに「祈りて尚」。
立木を組み立てた人形のようなモティーフを描き、全道展で頭角をあらわしている澤田さんですが、「無常」は、かなり雰囲気がかわりました。
スケール感が大きいのですが、わざと狂わせた遠近法が、かえって木の存在感を引き出しています。
宮崎亨「決していやされない渇き」。
ほかに「道」(同題2点)「いやらしい空気」。
苦悩する人間存在にまっすぐ向き合う宮崎さんの絵は、こちらに迫ってくる力強さがあります。
中間弥生さん「花よりも花の如く」(中央)と「幸福の女神の前髪はすばやくつかんで決してはなさず」。
ほかに「主夫の正しいソッコウカンソウ法」。
ひじょうに輪郭線の太い絵を描く中間さん。ますますカラフルさが増してきたようです。
左は北島裕子さん、右は山本昇さん。
北島さんは「光の旅<還>」「光の旅<オアシス>」「風の音」。
画像でも分かるように「風の音」は、作風がかなり変化しています。
以前の、黄色など明るい色彩の矩形をつらねた絵ではなく、曲線や、藍色といった暗い色が用いられ、画面に動きがくわわっています。
山本さんは「北方の詩」「道東のうた」「子供のころのおもいで」の3点。
あいかわらず、ひょろひょろとした線で人物を描いた、独特の画風です。
手前が工藤牧子さん、左奥が佐藤榮美子さん。
工藤さんは「萌芽I」「萌芽II」。
佐藤さんは「シャルトリューズの丘」「SOMETHING ELSE」。
(27日追記。永野さんの画像をアップしていませんでした。さがして追加します)
永野曜一さん「塩の塔」。
ほかに「朝の光」「海の声」も。
「塩の塔」。題名がいい。
以前の永野さんの絵は、抽象でありながらどこか風景のようなスケール感をただよわせていたが、さいきんは、なにものをも連想させない純粋抽象になっている。
この作品は完成まで1年8カ月かかったという。
07年8月20日(月)-25日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□自由美術協会
■自由美術/北海道 2006年(画像なし)
■2003年
■2002年
■2001年(画像なし)
■佐々木俊二個展(2002年)
■森山誠個展(02年)
■森山誠個展(04年)
■森山誠個展(06年)
■杉吉篤個展(2000年)
■杉吉篤個展(01年)
■杉吉篤個展(02年)
■杉吉篤個展(03年)
■佐藤泰子展(01年)
■佐藤泰子展 さくらさくら(02年)
■佐藤泰子展(03年)
■佐藤泰子展(05年)
■佐藤泰子さくらさくら展(06年)
■中間弥生個展(06年)
■金山当子・中間弥生ふたり展(04年)
■中間弥生個展(03年)
■中間弥生個展(01年、画像なし)
■高橋靖子展(01年、画像なし)
■札幌の美術2003
■高橋靖子展(03年、画像なし)
■高橋靖子展(05年)の出品作品
■芸術団Jam.(宮崎さんが出品)
■北島裕子個展(02年)
毎年のことですが「東京にだすのどれがいいかしら」と聞いています。
今のところ「花よりも花の如く」(中央)の作品になりそうです。
たしかに真ん中の絵が一番明るいのかな。
2003年の個展に出た絵の写真が当時の美術ネットにありますが、いまよりずっと濃い色が多くて、やよいさんの絵も変わってきてますね。