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■第55回学生美術全道展 (2013年10月5~9日、札幌)

2013年10月08日 01時01分01秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 学生美術全道展は、団体公募展の全道展を開催している全道美術協会と北海道新聞社が主催し、今年で55回目になる美術展。専門学校生や大学生も出品しているが、高校生が過半数を占める。
 また、絵画、版画、彫刻、工芸の4部門があるが、大半が絵画。今年も、展示265点中、絵画が209点だった。

 他都府県の実情を確かめたわけではないが、高校生がこのように100号大の大作をどんどん描くというのは、道外ではあまりないらしい。また、全道展会員が、大人とおなじように審査をするというのも珍しいという。
 道展(北海道美術協会主催)がかつて「こども道展」というのを始めたことがある。これは学生道展に引き継がれたが、長続きせず、1952年で幕を閉じた。2008年に「道展 u21」を開始。こちらはS50号以下という規定で、いまや学生全道展を上回る出品数となっている。

 一時期よりはかなりおとなしくなったと思うが、高校生が技術よりも自分の思いを大きな画面にぶつけているのを見るのは、すがすがしい。キャンバスは高価なので、ベニヤ板に描いている高校生がけっこう多いようだ。
 表現主義的な、絵の具をぶちまけた作品が減ったのは、北海高校の作風が変化しているからかもしれない。

 ことしの最高賞(全道美術協会賞・北海道美術館協力会賞)は、北星女子高3年の浅井菫さん「在世倫理」。
 低い位置から魚眼レンズのような構図で無人の街をとらえた作品。高層ビルがたつさまは、苗穂あたりから札幌の街並みを切り取ったようにも見えるが、舗装道路はこなごなに剥がれている。電線は無事であることから、洪水の後だろうか。世界の終わりのような、不思議な静けさを感じさせる。
 北星女子は学生全道展の常連だが、意外にも最高賞の受賞はこれが初めて。

 同校では、賞には漏れたが、藤田諒子さんの「コーヒー」も印象に残った。
 スタバかなにかの店の前でしゃがんでコーヒーを飲んでいる少女の絵で、色使いが派手目なのだが、彼女の足元で、舗道が粉々に砕けつつあるのだ。日常性が足元から崩れる恐怖がさりげなく描かれているが、題で損したような気がする。

 2席の「北海道新聞社賞」は、北海高勢が2点を独占。
 「アンダー・グラウンド」は、複雑な地下都市の様子を描き、文明への批評的なまなざしを感じる。

 あと、札幌厚別高・松岡奈々美さん「アリガトウ」は、自分の好きなものを自画像?の周囲に配し、3年間の高校生活の思いをすべてぶつけたというのが、ひしひしと伝わってきた。絵画としてみると、構図が整理されていないとか、いろいろ欠点はあるのだろうが、思いの強さは他に負けていないと思った。


 ところで、会場に行くと、入り口には全道展会員が受け付けですわっていた。
 以前は、アルバイトの女性がいたのに。道新は、こんなところまでケチってどうすんだろう。
 開催期間も事実上4日間しかないし、いまの道展が「u21」を育てようとしている姿勢に比べると、なんだかな~と思うんだけど、でも、よい展覧会なので、見ていただきたいのです。


2013年10月5日(土)~9日(水)午前10時~午後5時(最終日~午後4時30分)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)

□公式サイト http://www.zendouten.jp/gakusei/

第50回学生美術全道展








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