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■田中咲絵画展「春画展」 (2018年11月13~25日、札幌)

2018年12月05日 18時17分12秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 「春画」といっても性交そのものを描写した絵ではなく、性や愛を主題にした絵画を並べた展覧会。
 というか、これまでよりも直接的な描写は減っている。
 田中咲さんは星槎道都大中島ゼミの出身だが、版画はほとんど発表せず、タブローや漫画などによる個展を矢継ぎ早に開いてきた。

 冒頭画像は、左から「身支度する男」「身支度する女」。
 考えようによっては、性交よりもエロティックな場面かもしれない。
 直接関係ない話だけど、昔「Wの悲劇」という映画(1984年、澤井信一郎監督)で、薬師丸ひろ子が世良公則のアパートで朝、歯ブラシがないので指を口に突っ込んで歯を磨いているシーンがあり、行為を描かなくても、一夜をともにしたことを暗示できるのだな~と、感心した記憶がある。
 

 今回の個展でいちばん大きな作品で、かつ印象的だったのが、この「牧神の午後」。

 1909~29年のパリで絶大な人気を誇り、舞踊の歴史に名を刻む「バレエ・リュス(ロシアバレエ団)」。ピカソやコクトーなど数多くの芸術家がコラボーレションしたことでも名高い。
 「牧神の午後」は、19世紀フランスを代表する詩人マラルメの作品を原作に、1912年に発表した題目(音楽はドビュッシー)。
 ここで描かれているのは、主演で振り付けのニジンスキー(1890~1950年)である。
 この天才ダンサーは、絵では踊っているのではなく、花模様のふとん(ニンフが残したベール)のようなところに横たわっている。片手がベールの中にもぐっているが、これは、自慰行為をする場面だそうだ。実際にそれをにおわせる場面があり、スキャンダルになったらしい。
(ただし、ニジンスキーは1913年に退団し、19年には統合失調症で入院しているので、バレエ・リュスでの活動時期は短く、まさに伝説の存在であった)



 ところで、筆者がこれらの絵を見ながらなにを考えていたかというと、若いうちは愛や性についてあれこれ考えをめぐらせるものだけど、考えるより実行する方が楽しい、ということだ。
 全くよけいなお世話なのだが、この先田中さんに恋人ができて結婚してーということになれば、愛についての絵を描く動機も薄れるかもしれない。いや、どんな境遇になっても、何か足りない感覚はおさまらず、愛を求める絵を描き続けてこそアーティストなのかもしれないが。


 このほかの出品作は「sex symbol」「rainy day I」「rainy day II」「朝の風景」「思春期」「drier」など。


2018年11月13日(火)~25日(日)午前10時半~午後9時半(日曜~8時)、会期中無休
TO OV cafe / gallery(ト・オン・カフェ 札幌市中央区南9西3 マジソンハイツ)


□田中咲さんツイッター @me_rry__

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