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■ 第38回道彩展 (2018年9月19~24日、札幌)

2018年09月26日 12時25分46秒 | 展覧会の紹介-団体公募展
 北海道水彩画会が主催する団体公募展。
 会員56点、会友17点、一般57点の計130点が展示された。搬入数は計207点。

 日本水彩画会や水彩連盟とはいささか画風の傾向が違い、表現主義的というか、激しいストロークや大まかなタッチの人物画や静物画が多かったが、近年は写実的な絵も増えてきて、以前よりも多彩になってきている。
 とはいえ、通りいっぺんの写実的な風景画は、入選はしても、入賞とまではいかないようなので、そういう絵を描きたい人は、他の団体を狙ったほうがよいのではないかと思う(というか、そんなことは会場を見ればすぐにわかるはずなのだが…)。道内で、この団体に加入していない水彩画家の方が多いのは、言うまでもない。

 リアル路線の最右翼といえば大橋頼子(札幌)「もみぢ」(なぜ歴史的かな遣いなのだろう)。
 だいだい色のカエデと緑の竹林の対比が、補色の効果で鮮烈だ。大橋さんは背景などは大胆に省略することも多く、いわゆる「写真みたいな洋画」とは一線を画する。

 会員推挙となった阿部勝美(札幌)「木造廃船」も、題材は珍しくないが、描写力にすぐれる。特に遠くから見ると、古い木片が貼ってあるのではないかと思うほどだ。
 廃船に焦点をしっかり当て、よけいなものを省いた構図も力強い。

 一方で、写実的な一般公募作品で、個人的に良かったと思うものも何点かあった。
 雪をかぶったクマザサを題材にした林正行(同)「冬を装う」、水面に浮かぶハスの群落をモティーフにした大久保純子(同)「水面みなも」などだ。
 後者は、右側を大きくあけた構図もうまい。
 前谷米子(日高管内新ひだか町)「生命(はかないもの)」も目を引いた。線描で、ユリなどの花が画面をびっしりと覆っている。色をたくさん用いた作が並ぶなかで、白と藍色系のみに絞って効果をあげている。

 最高賞の道彩展賞は、宮武輝久(江別)「イルミネーション02」。
 写実的に電飾を描くのでも、抽象やフォーブでもなく、闇の中に浮かぶ人込みや明かりを描いていて、「現代の印象派」とでもいえば良いだろうか。たしかに、遠い記憶の中の風景とはこんな感じだなあ。

 あとは、気になった作品を順不同で。

 佐藤展子(空知管内長沼町)「今日の食卓」
 青い瓶、ワイングラス、魚を載せた皿とフォーク・ナイフ、パン、果物などがテーブルに置かれているが、一般的な静物画と異なるのは、視点が真横ではなく、俯瞰気味であること。
 テーブルクロスなど背景が、薄く青みがかった灰色で、まるでガラス絵のように見えるのが魅力的。

 中田やよひ(札幌)「sur la table」
 一般的に、縦構図の静物画は珍しい。
 灰色が全体を覆い、空間の感覚というか、空気感のようなものを描こうという画家の静かな気魄が伝わってくる。

 今村紀子(那覇)「遠くに春が」
 全く沖縄っぽくない、灰色が基調の風景画。紙をもんだり、しわをつけたりして、画面に変化をつけようとしている。

 中島恭代(江別)「にわ→さんさく」
 抽象。青紫の地の上に、緑や白、ピンクの色斑が明滅し、単純に美しい。うっとりしてしまう。

 小堀清純(札幌)、武田輝雄(同)の両氏はベテランらしく例年と同様の風景画なのだが、2人ともわずかに左に傾いているように見えるのは筆者だけだろうか。

 


2018年9月19日(水)~24日(月)午前10時~午後6時(入場5時半まで、最終日入場4時まで)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)

入場500円


□北海道水彩画会 http://www.ne.jp/asahi/so-bi/net/dousai/


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