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藤枝晃雄さんの死去について

2018年05月07日 22時02分00秒 | 新聞などのニュースから
 ニュースとしては旧聞に属するが、美術評論家の藤枝晃雄さんが4月末に死去した。
 北海道新聞には掲載がなく、それ以外の各紙の扱いも小さなものだったが(末尾に日本経済新聞の死亡記事を転載しておいた)、デュシャンやポロックから現代の日本の作家に至るまでの批評で一時代を画した評論家であったことは間違いないだろう。

 筆者は「現代美術の展開」をかなり以前に読んだだけで、昨年出版された「モダニスム以後の美術」もお恥ずかしいことに積ん読状態であるから、ここで何かを記す用意はない。
 藤枝氏の批評はフォルマリズムであった。しかし、日本では、20世紀中葉の西洋美術で最大の潮流であったフォルマリズムの受容が徹底される前に、ポストモダニスムの流行が始まってしまった。ニューマンもロスコもフランケンサーラーもゴーキーもポロックもきちんと咀嚼され、影響が行き渡るよりもはるか以前に、「なんでもあり」の状態が到来してしまったといえるのではないか。

 そしてこれは思いつき発言に過ぎないかもしれないが、藤枝氏のフォルマリズム批評が日本に不十分な受容しかされなかったという事態こそが、西洋画のアカデミスム受容がほとんどなされないまま黒田清輝の折衷的画風が日本洋画の基盤をつくり、さらにさまざまな画風が意匠の流行として接ぎ木されていった近代日本の美術史(正確に言えば洋画史)を、あたかも反復しているかのように、筆者の目には見えてきて仕方がないのである。


 ご冥福をお祈り申し上げます。


 藤枝 晃雄氏(ふじえだ・てるお、本名=照容=てるかた、武蔵野美術大名誉教授) 4月26日、誤えん性肺炎のため死去、81歳。告別式は近親者で行う。喪主は画家で妻、陽子さん。

 美術評論家としてジャクソン・ポロックら米国の現代美術家らの作品を評論。著書に「現代美術の展開」など。


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