ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

“こんな啖呵、私も切ってみたい”

2015-10-20 06:22:44 | 日記
「何が子育て支援だ。
 いくら選挙目当てでも、どうせやるんなら、
 若い姐ちゃん集めて昼は保育所、夜はキャバクラの二毛作ってのはどうだ」
「それに、私らも、いまさらガキのおむつなど替えたくないし…………」

高村 薫さんの小説『四人組がいた』(2014年8月刊・文芸春秋社)を読んでみました。
好きな作家の一人ですが、作品の好みから言えば「太陽を曳く馬」とか「マークスの山」ですが、
この小説、“えっ、何これ”って言う感じ。
小気味のいい、落語の市井の人たちの啖呵を思わせます。

図書館の書籍内容紹介によれば
【村の老人四人組の元には不思議な来客ばかり。
 タヌキのアイドルに、はたまたキャベツの大行進。
 最後には閻魔様まで。
 ニッポンの偉大な田舎から今を風刺する著者初めてのユーモア小説】と。

上記の会話は、保育所は必要だが先立つ予算がない市長が考え出した保育施設(子どもたちの
面倒を見るのはジジババのボランティア)提案に対するジジババの反論。
ジジババといっても、元村長・元助役・郵便局長、そしてキクエ小母さんの四人組。

この四人組の考え出す奇想天外な町おこし。
24時間託児所付きで営業するホストクラブ、
思いっきり田舎町という風情の駅前にそびえ立った高さ三〇メートルの巨大看板には、
赤、青、黄の電飾付きで、
 『ホストクラブと水子地蔵の街へようこそ!』と。

シルバー会の慰安旅行は、ひとまず無難な東京スカイツリーを中心に多数決で決定。
旅行会社の商品説明は、
 「そうですねぇ、お盆に間に合う豪華療養施設見学&スイカ食べ放題」
 「お安いところでは、豪華墓地霊園巡り&スイカ食べ放題・医師、看護師付き。
  いま お申し込みいただきますと、三割引きとなっております、はい」

シルバー会の要望としては、
 「バスガイドは二〇代で」
 「トイレ休憩は多めに」
 「念のため、らくらくパンツも忘れずに」(各自心得)

元村長曰く、
 「第一に、善人なんて反吐が出る。
  私らは退屈な善人にはなる気もないし、善人であったこともない………
  山の生きものはみな友だちだ。
  しかし、人間は嫌い。
  社会秩序も嫌い。
  勤勉や労働はとんでもないし、嘘もつけば、人も騙す。
  ひるがえって好きなものは一に金、二に金、三四がなくて五に異性、もしくは美食、
  もしくは名誉といったところだ」

したたかな「四人組」の造反ぶり。
“あぁ、こんな啖呵、私も切ってみたい”
一人、声を出して笑いながら読みました。

“なにか面白いことはないか”
とヒマを持て余していた四人組は、ちょうどやって来ていた「閻魔」と「アミダ」の誘いで、
浄土と地獄への、ツアーへ。

四人組も「閻魔」と「アミダ」も、見る間に薄く透明になって、
手を振りながら煙の様に…………。
コメント
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