散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

交通網の発達で人もお金も地方から大都市へ~木下斉と飯田泰之との対話(1)

2014年10月09日 | 現代社会
突如、降って湧いたかのような安倍政権の重要課題、「地方創生」。選挙対策とは巷の噂であるが、日本の衰退を加速する政策との批判も大きい。地方の現実、裏を返せば都会の現実を、先ずは冷徹に認識する必要がある。

まちの立て直す事業に携わる木下斉氏と都市と地方のあり方を模索する飯田泰之氏との対談、「地方の現実を見よ」は4回シリーズで「ウェッジ」に掲載される。第1回は表題の如く、戦後日本と地方の関係を象徴する「新幹線」を問い直すことから始まった。以下、エッセンスを抜き書きする。

木下:北陸新幹線が来春に開通→地元に流入するお金が増加するのか?
飯田:頻繁に東京とその地区を行き来する人にとっての利便性
  :空港から大きな街が近い、新幹線の駅前が中心街…関東近県の不便
   なところよりも「東京に近い」
木下:アクセス圏内に駅か空港…地域内から外への人の移動は確実に増大
飯田:入ってくる人が多く→出ていく人が多くなる

木下:お金に余裕、消費意欲がある人の財布ほど、消費地に吸い寄せられる
   企業などの場合…新幹線が開通…分散して支社・支店を統廃合。
   東京資本の企業の支店勤務者は地方では高所得者層…一気に薄くなる。
   事務所機能…大都市に、一気に吸い上げられていく。
飯田:交通網の発達…地方から大都市に吸い寄せられる「ストロー現象」
   近年の典型例は東北新幹線…割を食うのが盛岡と仙台
   地方の富裕層が東京に出て消費…地元経済には非常に深刻な問題

木下:地方の富裕層は本当に良いモノを知っている…消費地に出る生活
   北陸新幹線の開通…吸い上げられる危機感を優先すべき
飯田:大消費地→新規顧客のチャンス…「地元のため」ではない面
木下:便利→「国」はメリット、「地方」は同じ構造とは限らない
飯田:交通手段の発達→都市への集中はますます進む
木下:今後はさらにより大きな都市への集中がどんどん進む。
   危機感を持たなければいけない人たちが、今は持っていない

飯田:知的生産やクリエイティブな職種ほど、同じ職種の人が集積
木下:「分散するだろう」と言われていたのとは、逆の現実
飯田:なぜシリコンバレーがいまだに存在…を考えれば明白
木下:わざわざ全てを分散させるメリットを探すほうが難しい
   多くは付加価値の高い生産…大都市で暮らすコストは吸収…
   規模が大きくなったらやはり大都市に出てこざるを得ない

飯田:何をすれば「地域活性化」なのか
木下:「域内を会社として見立てる」…その「会社」の収支を改善する
   地域に入る金を増加させ、出て行くお金をセーブする
   域内に留保させ、地域内での消費を活性化させる環境を整備
   今は資金も人材も出て行く一方というのが多くの地方の現実
   「地方の衰退」=「地方の貧困」として捉えている
   教育機会も低下、学力の高い子ほど高校入学時点から地域外に出る
   地域の人口規模減少で出せる教育負担の総額は縮小
   これは貧困の連鎖…産業、所得、税収の問題…経済に立脚

飯田:稼げる都市か否かの方が収入には有意に影響する
   そのキーになる移住の可能性を高めるのは学歴
   大卒者が少ない地域…「大学に行く」概念が希薄…文化資本の問題
   先進国に共通の現象…大卒者の年収の伸び→経済成長率と同じペース
   マーケティング理論…「消費者の選択肢に入る」を重視…人生も同じ
   カルチャーの有無…世代を重ねる…地域間の格差を拡大させる

木下:分離していく方向性は強い…Uターン組が役所に就職
飯田:大卒、地方で雇われる…選択肢は公的セクターに
木下:地元に残った人達が、自分でできる範囲の商売
   高度教育を受けた人材が行政で地域経済の重荷
   リスクを取って起業する志向がない→地元に戻って役所に就職
   仕事の枠組み、進め方を自分で開拓しない
   若手の一部には環境に毒されずに…このあたりを狙い撃ちに
   やる気、リスクもとる人…地域で事業を起こし始める
   地元で相容れない層が、互いのメリットを認めて事業をやる枠組
飯田:合理的に判断する人ほど、給料が高ければ公務員になる

木下:ビジネスマインドのある人は東京に…海外に行く
   行政のポジションが低い「大都市集中」が進むのは自然な流れ
   地域経済の規模は小さいが、さまざまな「調整」要
   ビジネスの自由さや公正さでいえば、大都市のほうがフェア
飯田:「都市は人を自由に」…地方で事業を興して継続…難しい現実